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薬剤師は人手不足?現在の状況と将来性を解説

薬剤師は人手不足だという話を、どこかで聞いたことがあるかもしれません。

現時点では大きな需要があったとしても、将来性がなければ、薬剤師をめざすのをためらってしまうこともあるでしょう。
薬学部に入学できる学力、経済力と時間があれば、他の道を選ぶことも可能です。

この記事では、薬剤師になってから後悔しないように、薬剤師不足の現状と将来性について解説します。
都道府県別の人口10万人あたりの薬剤師数や有効求人倍率の推移もまとめています。
これから薬剤師をめざす方や、薬剤師として就職先を模索している方は、ぜひ参考にしてください。

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薬剤師の人手不足の現状

薬剤師の人手不足の現状

令和3年度 薬剤師確保のための調査・検討事業の報告書によると、少子高齢化の進行によって医療の需要が高まることから、地域の状況に合わせた医薬品体制を確保することが必要とされています。

では薬剤師の人手不足の現状について、不足している理由と、地域格差があることの2つの観点から見ていきましょう。

薬剤師が不足している理由

薬剤師が不足している理由は、次の2つと考えられています。

  • 潜在薬剤師が多い
  • 薬局数の増加

それぞれを詳しく解説します。

潜在薬剤師が多い

潜在薬剤師とは、薬剤師の資格を持っているが、薬局などの現場で働いていない薬剤師のことです。

潜在薬剤師のなかで大きな割合を占めているのは高齢者ですが、20〜30代の女性も一定数存在しています。
出産などのライフイベントで退職したのち、職場へ復帰できていないのが要因の一つです。

薬剤師の男女比は約3:7の割合になります。
男性よりも女性の方が多い傾向にあるのです。

女性は出産や育児などの理由で退職を選択し、復帰したとしてもパート・アルバイト勤務を選ぶケースが少なくありません。
これにより、薬剤師の免許を持っている人数の割に、現場で働く人員に不足感があらわれていると考えられます。

薬局数の増加

医薬分業は近年急速に進み、2003年には院外薬局が受け取る処方せんが全体の50%を超え、2020年には75%を突破しました。
分業化の拡大にあわせて、調剤薬局やドラッグストアの数も急増しています。

調剤薬局の店舗スタイルも多様化しており、病院やクリニックなどの近場で営業する門前薬局や大手ドラッグストアのチェーン店、コンビニエンスストアに併設する調剤薬局などさまざまです。

厚生労働省の発表によると、2019年3月末時点における調剤薬局の数は60,171施設にのぼり、前年度と比べて558施設増えています。

調剤薬局数の増加に対し、薬剤師の増加が十分でなく、不足感があらわれているのです。

薬剤師不足には地域差がある

薬剤師の需要には都市圏と地方で偏りがあり、地方では特に人手不足が深刻化しています。

下表に、都道府県別の調剤薬局・医療施設に従事する人口10万人に対する薬剤師数を、ランキング形式でまとめました。

総務省統計局のデータによると、人口10万人あたりの薬剤師数が平均以上の都道府県は12の地域です。
全体の約7割を占める残りの35地域では、差はありつつも薬剤師の数が平均より不足していることがわかり、地域差があることを示しています。

順位 多い都道府県 少ない都道府県
地域名 人数 地域名 人数
1 徳島 238.6 沖縄 148.3
2 東京 234.9 福井 157.0
3 兵庫 233.9 青森 161.2
4 広島 221.2 山形 167.8
5 香川 216.4 福島 171.0
6 大阪 216.0 岐阜 171.4
7 高知 215.0 三重 171.7
8 山口 213.6 新潟 174.3
9 神奈川 213.5 愛知 174.8
10 福岡 211.3 富山 175.2

総務省統計局「人口10万対薬局・医療施設従事薬剤師数の年次推移,従業地による都道府県-指定都市・特別区・中核市(再掲)別」を参考に作成

薬剤師不足改善に向けた国の対策

薬剤師不足改善に向けた国の対策

薬剤師不足を解消するために、国が講じている代表的な施策は次の2つです。

  • ファーマシーテクニシャンの導入
  • ICTツールの導入

それぞれ解説します。

ファーマシーテクニシャンの導入

ファーマシーテクニシャンとは、薬剤師の指示に基づき医薬品のピッキングといった調剤業務の一部の業務を行うスタッフのことです。
日本では「調剤助手」「調剤技師」「調剤補助員」などと呼ばれています。

欧米ではすでに活躍していましたが、日本では2019年4月の厚生労働省の通達により、薬剤師免許を持たない人も、専門知識を必要としない一部の調剤業務を実施可能となりました。

許可されているおもな業務内容は以下のとおりです。

  • 医薬品の必要量を取り揃える
  • 一包化した薬剤の数量の確認
  • 調剤済みの薬剤を患者さんのお薬カレンダーなどへ入れる
  • 服薬指導が済んだあとの薬剤を郵送

ICTツールなどの導入

ICTツールは、薬剤師の負担を軽減させるものとして導入されました。
ICTツールの活用により、服薬情報のデジタル管理ができ、以下のような効果があります。

  • 薬歴記載の時間短縮
  • 患者情報の共有が簡便に
  • データベースを使用した処方監査が可能

上記の効果により、薬剤師による目視監査の負担が軽くなり、患者対応に時間を割けるようになります。

2020年よりはじまったオンライン服薬指導も後押しし、導入の流れは今後も増えていくでしょう。

また、厚生労働省も2025年を目標に、すべての調剤薬局を「かかりつけ薬局」にするため、ICTの活用に力を入れています。

ICTツールなどの導入

出典:患者のための薬局ビジョン 概要

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薬剤師の求人状況と将来性

薬剤師は国家資格であるため、どこの地域でも仕事につけます。
有効求人倍率も高く売り手市場のため、勤務先を探すのに困ることはありません。

しかしひと昔に比べると、有効求人倍率は低下傾向です。

そこで、気になる将来性と現在の求人情報について解説します。

薬剤師の求人状況

厚生労働省が毎月公表している「一般職業紹介状況」によると、医師、薬剤師などの有効求人倍率は年々低下しています。

しかし他の職種と比べるとそれでも約2倍と高いため、就職先を見つけることは難しくないでしょう。

下の表に、一般職業紹介状況の過去5年分のデータをまとめました。

医師・薬剤師 全職業の平均
2018年8月 4.51 1.46
2019年8月 3.44 1.44
2020年8月 2.10 0.95
2021年8月 1.88 1.03
2022年8月 1.96 1.18

薬剤師の将来性

薬剤師の将来性について、代表的な4つの勤務先別に解説します。

病院

高齢化により医療の需要が高まり、それにともなって病院薬剤師の需要も高まることが予想できます。

専門薬剤師の資格を取得する条件を満たしやすく、最先端の医療に触れる機会も多いので、学生や若い薬剤師には人気のある職場です。
2020年の病院薬剤師数は2018年よりも増加しており、病院で働く薬剤師の将来は、明るいといえるでしょう。

調剤薬局

現在、調剤薬局で働く薬剤師の数は増加傾向ですが、将来的には減っていくと言われています。

人口減少による処方せんの減少と、法改正により調剤助手(ファーマシーテクニシャン)の業務代替が可能となったためです。

2019年に制定された改正医薬品医療機器等法(薬機法)により、調剤薬局は順次、在宅医療などに対応する「地域連携薬局」と、抗がん剤など特殊な薬を扱う「専門医療期間連携薬局」などに分類されていきます。

薬剤師としてより多様化、専門化する現場に対応できるスキルが求められるといえるでしょう。

ドラッグストア

ドラッグストアは年々市場規模が拡大しており、将来性も期待できる職場です。

店舗数の増加や調剤薬局の併設にともない、ドラッグストアでの薬剤師の需要は今後も増えていくと予想されます。
セルフメディケーションの意識も高まっており、ドラッグストアの利用自体も増えていくと予想されています。

24時間営業や深夜営業の店もあり、薬剤師の人員確保が難しくなるとともに待遇面の向上も見られるため、業態としての将来性だけでなく、収入面でも期待できるかもしれません。

製薬企業

ジェネリック医薬品の登場や、新薬開発の需要減少、薬価改定などの影響も受け、製薬会社の規模は縮小していくと見られています。

厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師調査の概況によると、医薬品関係企業で働く薬剤師の数は年々減ってきており、厳しい状況が続く見込みです。

人手不足の現状や問題点を理解して、活躍できる薬剤師をめざそう

潜在薬剤師や調剤薬局の数の増加などが原因で、薬剤師の数は、現在不足傾向にあります。
不足状況には地域差があり、地方では人手不足が特に深刻です。

この状況に対し、厚生労働省もICTの活用やファーマシーテクニシャンの登用など、さまざまな施策を講じています。

薬剤師の有効求人倍率は以前に比べると低下傾向にあるものの、一般の職業と比較すると約2倍高いため、就職できないことはありません。

特に将来が期待できる業態は、ドラッグストアです。
市場規模が拡大しており、店舗数も増えています。
今後も成長する見込みがあり、待遇面でも向上が見られます。

人手不足の現状や問題点を理解して、活躍できる薬剤師をめざしましょう。

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