日本では病院としての役割を果たすために、医師以外が病院等を経営することを法律で制限しています。
そのため、通常の法人として病院を開設することはできません。
しかし、一定の条件を満たせば医師以外でも病院の経営は可能です。
本記事では、医師以外が病院を経営する3つの方法と、メリット・デメリットを解説しています。
非医師で病院の経営をしたいとお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
病院経営は医師以外でもできる?
医師以外でも病院の経営は可能ですが、いくつか条件があります。
例えば、病院を経営する方法として個人と法人がありますが、病院の管理者は医師免許を持っていることが条件になります。
そのため、医師免許なしで個人として病院経営はできません。
また、医療法第7条7では、医師以外が営利目的で病院を開設することは許可されないと定められています。
そのため、一般的な株式会社としての病院開設は認められず、非医師が病院を経営するには制限があるのです。
医師以外では、一定の条件を満たして特定の法人を設立することにより、病院の経営が可能となります。
医師以外が病院を経営する方法
医師以外が病院を経営する方法は、以下の3つです。
- 一般社団法人
- MS法人
- 医療法人
それぞれの法人を立ち上げることで医師以外でも病院を経営できる理由と、方法を解説するので、チェックしていきましょう。
一般社団法人
一般社団法人とは、「一般社団法人および一般財団法人に関係する法律」に基づき設立される、営利を目的としていない法人格のことです。
上述のとおり、営利目的ではない法人格のため、医師以外でも病院の経営が可能になります。
営利を目的としないということは余剰利益を分配しないことを指しており、ボランティアではありません。
つまり、余剰利益を株主に配当せず、来年の事業資金として使うことで、病院を経営しながら経営者として報酬を受け取ることも可能です。
ただし、営利目的ではないかどうかのチェックが厳しく、地域や管轄の保健所によっては、医師以外の一般社団法人での病院経営は認められない可能性もあります。
また、一般社団法人の設立から行う必要があり、開業までに時間がかかってしまう点も注意が必要です。
MS法人
MS法人とはメディカル・サービス法人の略で、病院の運営に関わる事業をする法人のことです。
会計や保険請求、医薬品・医療機器・医療器具の仕入れや管理、人材派遣など、医療に直接関わらない事業を担い、法令上の医療機関には該当しないため、医師以外でも開設や運営ができます。
MS法人の代表に就任すれば、医師でなくても実質的に病院の経営が可能です。
通常の医療法人では営利目的での事業が禁止されていますが、MS法人は医療行為に則さない事業のため、株式会社などの一般的な法人と同じものとされています。
MS法人を設立する主な目的としては、事業の拡大や分散が挙げられます。
経営と診療を別で運営することで、業務負担の軽減や、節税効果が見込めるでしょう。
医療法人
医療法人は医療法の規定に基づいて、病院を開設できる法人のことです。
医師・歯科医師以外が開設者になる場合は、自治体の許可が必要になります。
また、医療法人における代表は理事長であり、病院を経営するには理事長にならなければいけません。
ただし、理事長の選出は、理事である医師・歯科医師からと定められています。
例外として、都道府県知事の許可を受けた場合は、医師か歯科医師以外でも理事長への選出が認められます。
しかし、運営実績などをもとに判断されるため、医師以外がいきなり医療法人を設立するのは難しいといえるでしょう。
非医師が病院を経営するメリット
非医師で病院を経営するにはさまざまな条件があり、医師が経営するよりも難しいと感じるかもしれません。
しかし、非医師が病院を経営することで、メリットになることもあります。
経営に集中できる
病院を開業しても医師免許がなければ医療行為は行えません。
一人で経営と診察の両方を行えないのはデメリットに感じるかもしれませんが、反対にそれぞれが自身の業務に集中できるといったメリットにもなります。
医療業務は医師に任せ、自身は経営に集中することで、それぞれの業務の質が向上し、結果的に安定した運営にもつながるでしょう。
医師に開業手続きの負担を与えない
医師が病院を開業する場合、開業手続きや経営から医療環境の整備まで、すべてを担当しなければなりません。
開業手続きには手間や時間がかかるため、医師はスタートから大きな負担を背負うことになります。
開業してすぐは慣れない状態で診療を行うこととなり、ただでさえ医師は負担が大きいと考えられます。
診療にあたる医師とは別の人材が病院を開業することで、手続きや経営など医師の負担を減らせるでしょう。
非医師が病院を経営するデメリット
非医師が病院を開業する際には条件がありますが、開業後にもデメリットが存在します。
開業できたとしても、経営がうまくいかなければ倒産するリスクもあるため、デメリットを事前にチェックしておきましょう。
経営者と医師で経営方針が異なるリスクがある
経営と医療行為を行う人が異なる場合、方針の違いによるトラブルが発生する可能性があります。
最初は同じ意見でスタートしたとしても、運営していくなかで意見が変わることもあるでしょう。
経営者と医師の方針が異なれば、病院の運営に支障をきたすことになり、最悪の場合は経営を続けられなくなる可能性もあります。
運営方針が異なったときの対策も考えておく必要があります。
資金面での負担が大きい
医師が経営をするケースに比べて、経営者と医師を分けるケースでは、役員報酬の支払い先が増えるため、資金面での負担が大きくなります。
また、開業時の費用返済も必要であり、最初のうちは利益を出すのが難しくなってしまいます。
病院を経営する場合、たとえ赤字であっても医師やスタッフに給料を支払わなければなりません。
そのため、スタッフの人数を極限まで減らし、自身が給料以上の働きをするなどの対策が必要になるでしょう。
医師以外でも病院経営は可能だがリスクの覚悟も必要
上述で紹介したとおり、医師以外でも病院の経営は可能ですが、営利目的ではないことが条件です。
ほかにも条件があり、医師以外が病院を経営するには、一般社団法人を設立するか、MS法人で運営のサポートをする、医療法人を立ち上げて理事長になるといった方法をとる必要があります。
医師以外が病院を経営することには、メリット・デメリットがあります。
それぞれを把握したうえで、病院経営に乗り出すべきかどうかを判断しましょう。