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保育士の処遇改善手当とは?特徴から実例まで幅広く解説

一般的に、保育士は仕事量のわりに給与や賞与が少ないといわれています。
その状況を改善し、離職率を下げるために導入された「処遇改善手当」をご存知でしょうか。

処遇改善手当を知ることで、今後のキャリアパスや自身の給料を考えるきっかけとなることでしょう。

今回は、保育士のための処遇改善手当について、実例をふまえながら詳しく解説します。

保育士がもらえる処遇改善手当とは?

保育士がもらえる処遇改善手当とは?

保育士処遇改善手当とは、保育士の賃金をアップさせ、保育士不足を改善するために導入された補助金のことです。
長年にわたり課題であった保育士の待遇を改善し、高い離職率を下げることをめざしています。

保育士の給料は全国の平均年収約461万円に比べて約382万円と低い水準にあります。
厚生労働省が保育士へ行なった調査でも、約60%が給料や賞与を改善してほしいと意見しているのです。

そんな中で、保育士処遇改善手当は、平成23年に月収の3%(約9,000円)の支給からスタートし、平成30年には12%(約38,000円)までアップしています。

保育士に支給される処遇改善手当には、2つの種類があります。
処遇改善加算Ⅰと処遇改善加算Ⅱです。
違いを詳しくみていきましょう。

処遇改善加算Iと処遇改善加算IIの具体的な違い

処遇改善加算Ⅰと処遇改善加算Ⅱの違いを、以下の表で確認してみましょう。

処遇改善加算Ⅰ 処遇改善加算Ⅱ
制度内容 平均勤続年数に比例して、加算率が上がる制度 役職者でない一定の実務経験のある職員に加算される制度
対象者 正規職員・1日6時間以上勤務、かつ月20日以上勤務する非正規職員 3年以上の保育士経験があり、所定のキャリアアップ研修を規定数修了した職員
加算額 基礎分・賃金改善要件分・キャリアパス要件分により加算割合が変動 ・専門リーダーと副主任保育士に最大月4万円加算
・職務分野別リーダーに月5,000円加算

処遇改善加算Iについて

処遇改善加算Ⅰは、平成27年にスタートした平均勤続年数に応じて加算率が上がる制度です。
正職員に限定されることなく、派遣職員やパート・アルバイト勤務など、非正規職員も対象となります。

では、処遇改善加算Ⅰの目的や条件などについて、詳しくみていきましょう。

処遇改善加算Iの目的

処遇改善加算Ⅰは、保育士の給与を安定させるために導入された制度です。
保育士が職場に定着し、働き続けられる給与水準の確保を目指しています。

対象となる保育士の条件

処遇改善加算Ⅰは、正規職員だけでなく、1日6時間以上、かつ月20日以上勤務する派遣職員やパート・アルバイトなどの非正規職員も対象 です。

そして、処遇改善加算Ⅰの加算率に影響する「勤続年数」には、以下の施設での勤務経験も合わせることができます 。

・教育・保育施設、地域型保育事業所
・幼稚園、小 学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校、専修学校
・社会福祉事業を行う施設・事業所 ・児童相談所における児童を一時保護する施設 ・認可外保育施設
・病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、助産所(保健師、看護師または准看護師に限る

引用元:令和2年10月 内閣府子ども・子育て本部

処遇改善加算Iの配分方法

処遇改善加算Ⅰは、①基礎分、②賃金改善要件分、③キャリアパス要件分の3つの配分構成で成り立っています。

  1. 基礎分
    基礎分は、各施設の職員一人あたりの平均勤続年数に応じて加算され、もともとの賃金に対し2〜12% 上乗せされます。
    施設の平均勤続年数は、「対象職員の勤続年数の合計」÷「対象職員の数」で算出し ます。
  2. 賃金改善要件分
    賃金改善要件分は、賃金改善計画・実績報告をもとに、施設において賃金改善の取り組みが実施されているかどうかにより加算される要件です。
    平均勤続年数により加算率が異なり、11年未満で一律6%、11年以上で一律7 %です。
  3. キャリアパス要件
    キャリアパス要件は、職員のキャリアアップに関する取り組みで加算されます。
    役職や職務内容、職員の資質向上などに向けた、計画や研修などの取り組みが条件となります。
    万一、キャリアパス要件の条件が満たされない場合、賃金改善要件分から2%減額 となります。

処遇改善加算Iのもらえる額

処遇改善加算Ⅰは、明確な金額の定めはありませんが、経験した年数に応じて給与のベースアップや賃金改善が実施されています。
平成25年にスタートした頃は給与の約3%(月額約9,000円)でしたが、平成30年には給与の約12%(月額約38,000円)にまで改善されています。

処遇改善加算IIについて

処遇改善加算Ⅱは、保育士のキャリアパスを広げ、賃金改善を行うための制度です。
処遇改善加算Ⅱの目的や条件を詳しく解説していきます。

処遇改善加算IIの目的

処遇改善加算Ⅱは、平成29年に始まった保育士のキャリアアップを目的とした制度で す。
今まで、保育士の役職は、「園長」「副園長」「主任保育士」しかありませんでした。
そのため、なかなか役職に就くことが難しく、給与が上がりにくいといわれていました。
しかし、処遇改善加算Ⅱが新たに導入、3つの新しい役職 が追加され、キャリアアップしやすい職場環境が整いつつあります。

対象となる保育士の条件

処遇改善加算Ⅱを受給できる保育士は、「3年以上の保育士経験があり、所定のキャリアアップ研修を規定数修了した職員であること」 です。
なお、職務分野別リーダーは園長・主任保育士を除き職員の5分の1の人数まで、専門リーダー・副主任保育士は3分の1までと定められています 。

キャリアアップ研修は、各地で開催されており、研修内容は以下のとおりです。

  • 幼児教育
  • 乳児教育
  • 障害児教育
  • 教育・アレルギー
  • 保健衛生・安全対策
  • 保護者支援・子育て支援
  • マネジメント研修
  • 保育実践研修

研修は、1分野で15時間以上の受講が必須 です。
開催場所が年度ごとに異なるケースもあるため、自治体に確認することをおすすめします。

処遇改善加算IIの配分方法

職務分野別リーダーは、月5,000円の加算を受けることができます。
副主任保育士、専門リーダーには、一人あたり最大で月額4万円の加算が可能です。
ただし、以下の条件を満たした場合に、副主任保育士や専門リーダーの加算分は、他の職員に振り分けることも可能です。

  • 月額4万円を支給する職員を一人以上確保する
  • 一人あたりの配分額を月額5,000円以上4万円未満とする

処遇改善加算IIはいくらもらえる?

処遇改善加算Ⅰに加え、処遇改善加算Ⅱは、副主任保育士や専門リーダーに月額約4万円、職務分野別リーダーには月額約5,000円上乗せされます。

最大4万円の 副主任保育士や専門リーダーに支給される加算分は、保育園ごとに独自で定めることができます。
そのため、支給額は、保育士の人数や勤続年数などの要因によって、さまざまです。

処遇改善手当が支給される期間

平成27年に処遇改善加算Ⅰ、平成29年に処遇改善加算Ⅱがスタートした 処遇改善手当の支給期間は、令和4年4月時点で明確に定められていません。

現在も「待機児童問題」が完全には解消されておらず、いまもなお保育士の確保が必要だからです。
今後も、保育士の数を維持し続けるために、処遇改善手当の支給は継続が予想されます。

保育士が処遇改善手当をもらえないパターンとは

ここまでで保育士の処遇改善手当の詳しい内容をみてきました。
処遇改善手当が受けられない場合もあるため、確認していきましょう。

認可保育所以外の場所で働く場合

保育士の処遇改善手当は、認可保育園を対象とした手当です。
そのため、認可保育園以外の保育園で働く場合には、受けることができません。
すべての保育園で処遇改善手当が受け取れるわけではないため、注意しておきましょう。

また、処遇改善手当を受け取るためには、保育園側が受給手続きをする必要 があります。
受け取った処遇改善手当は、基本給とは別で支給されるため、給与明細で確認してみてください。

パート・アルバイトなど正社員でない場合

処遇改善手当は、要件を満たしたすべての職員が対象です。
パート・アルバイトや派遣など、非正規職員も受け取ることができます。

また、保育園で働く保育士だけでなく、栄養士・調理員やバスの運転手なども処遇改善手当の対象となります。

国だけではない、地方自治体の処遇改善の取り組み

保育士の処遇改善は国だけではなく、地方自治体でも独自で積極的に取り組んでいます。
保育士の家賃補助や独自の手当支給などの取り組みがあるため、みていきましょう。
ここでは、東京都江戸川区と千葉県流山市の例をご紹介します。

江戸川区保育士確保プラン

東京都江戸川区では、保育士の待遇や保育現場を改善するため、以下の4つの取り組みが行われています。

  • 保育士の家賃補助
    保育士として勤務する人の家賃の上限82,000円まで、江戸川区から事業所へ補助が出ます。
  • 2歳以降の育児休業給付金の延長制度
    国の育休手当は最長で子どもが2歳になるまでなのですが、江戸川区では認定された事業所に勤務する場合、最長3年まで延長が可能です。
    勤務先や育休者の要件が定められているため、利用したい人は役所やホームページで確認しておきましょう。
  • 潜在保育士の就職支援
    潜在保育士の就職への不安を解消するため、支援を行い、働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
  • 保育士の子どもが入園する際の配慮
    保育士自身の子どもが、保育園に入園する際の申し込みで、一定の配慮がなされます。

流山市保育士就職支援制度

流山市では、保育士を確保するために次のような取り組みがされています。

  • 保育士の家賃補助
    保育士として勤務する人の家賃を最大67,000円まで、流山市から事業所へ補助が出ます。
  • 流山市独自手当の支給
    正規保育士の場合は月額43,000円、準保育士の場合は月額20,000円の手当を独自に支給しており、給与に上乗せされます。
  • 就職奨励金の支給
    毎年4月に新たに採用された保育士に対して、奨励金を支給していて、新卒の場合は最大30万円の就職奨励金が受け取れます。
  • 保育士の子どもが入園する際の配慮
    保育士自身の子どもが保育園へ入園する際には、入所の優先度がアップします。

処遇改善手当について理解して理想の働き方を叶えよう

国が実施する処遇改善手当は、保育士不足の改善を目的として実施されています。
処遇改善加算ⅠとⅡでは、仕組みや対象となる保育士など、内容が異なるため、違いを理解しておくことが大切です。

保育士の処遇改善を知ることで、今後のキャリアや働き方もイメージしやすくなるでしょう。
また、国の処遇改善手当だけでなく、地方自治体独自で行われている制度もあります。
家賃補助や手当などさまざまなので、自分の自治体でも確認してみましょう。

執筆者について

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