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ヘルパーができないこととは?できることとの違いや断る際の注意点も解説

「ヘルパーができないことってどんなこと?」
「できないことを利用者さんから頼まれたらどうすれば良いの?」

訪問介護のヘルパーとして働き始めたばかりの方は、本来のサービスとは異なる物事を利用者さんから頼まれ、困惑することがあるかもしれません。
目の前の利用者さんが困っていれば、サービスに含まれない内容であっても、つい助けてあげたくなることもあるでしょう。
しかし、訪問介護のヘルパーにできることは、介護保険法に基づき限られています。

本記事では、ヘルパーのできること・できないことについての、明確な線引きを紹介します。
加えて、できないことの具体例や、できないことを頼まれたときの断り方についても見ていきましょう。

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訪問介護のヘルパーは介護保険対象外のことはできない

訪問介護のヘルパーは介護保険対象外のことはできない

訪問介護のヘルパーは、介護保険の対象外となることはできません。
なぜなら、介護保険法に基づいた訪問介護は、国民からの保険料や公費によって成立するサービスであり、公平性が重視されるためです。
日本ホームヘルパー協会のホームページでは訪問介護サービスを以下のとおり定義しています。

「介護保険法」に基づく訪問介護とは、要支援・要介護高齢者を対象に、その居住する住居において、要介護状態の軽減または悪化の防止に資するよう目標を設定し、計画的に「身体介護」(排泄、入浴、食事などの介助)や「生活援助」(掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助)を行うものです。

引用元:訪問介護員の仕事とは

例えば、利用者さんが日常生活を送るうえでヘルパーがやらなくても差し支えがないサービスや、ご家族・ペットなど、利用者さん以外への支援は介護保険の対象外となります。
また、介護行為の域を超えた医療行為にあたる支援もヘルパーにはできません。

訪問介護のヘルパーは利用者さんと一対一で向き合う分、関係性が深まりがちですが、公私をしっかり区別した利用者さんとの関係性が大切です。

ヘルパーの仕事内容については下記のサイトをご参考にされてください。

【一覧】訪問介護でヘルパーができることとできないこと

ヘルパーは、訪問介護の現場で予想外のことを頼まれる場合があります。
頼まれごとをされたときに、引き受けて良いのかわからず困惑することのないよう、介護保険の対象となるサービスへの適切な知識を身につけておきましょう。
以下では介護の分類ごとにやって良いこと・やってはいけないことを解説します。

身体介助

訪問介護で提供できる身体介助サービスは、利用者さんが最低限の日常生活を送るうえで、自力では困難な動作を直接的に介助するものです。
下記では身体介助サービスの範囲内でできることとできないことを紹介します。

サービス できること できないこと
排泄介助 ・トイレへの声かけや誘導、移動・移乗介助
・オムツ交換
・尿器や便器での排泄介助
ありません。
食事介助 ・配膳
・食事介助
・姿勢の保持
・専門的な配慮のもと行う調理(嚥下が困難な場合でのとろみづけやミキサー使用など)
ありません。
入浴介助 ・全身浴や部分浴、清拭などの介助
・更衣介助
・移動介助
ありません。
身体整容の介助 ・ひげ・髪の手入れや簡単な化粧 ・散髪
体位変換の介助 ・ベッド上での体位変換
・緩衝用のクッションを使用した楽な体位の保持
ありません。
移動・移乗介助 ・車椅子での介助
・歩行器や杖の準備
ありません。
通院・外出介助 ・受診の手続き
・乗車・降車の際の移動・移乗介助
・院内での付き添い(介助が必要な場合のみ)
・院内での排泄介助
・院内での付き添い
・ヘルパーもしくは利用者さんの自家用車を使用しての送迎
起床・就寝介助 起床・就寝時の移動・移乗介助や寝具の整備 ありません。
服薬介助 服薬の声かけや介助、あと片付け ありません。

生活介助

訪問介護の生活介助は、利用者さんが独居で、ADL(日常活動動作)の低下により一人で家事が行えない場合や、同居家族が何らかの事情で家事が行えない場合に提供できるサービスです。
身体介護と比べると、生活介助にはできることとできないことの線引きが曖昧なため、判断が難しい場面もあります。
下記の表を参考に、それぞれの具体的な内容を確認してください。

サービス できること できないこと
調理 ・利用者さん分の調理
・配膳・あと片付け
・正月や節句など特別な手間のかかる調理
・利用者さん以外への調理〜あと片付け
洗濯 ・洗濯(手洗いを含む)
・洗濯物干し
・洗濯物の取り込みと収納 ・アイロンがけ
・利用者さん以外への洗濯〜収納、アイロンがけ
掃除 ・利用者さんの居室やトイレ、洗面所などの掃除
・ゴミ出し
・利用者さんが使っていない部屋の掃除
・換気扇の掃除
・草木の手入れ
・花の水やり
・ベランダ掃除
・ペットの世話
・窓ガラス拭き
・模様替えや引越しの準備
買い物 ・日常生活に最低限必要な物品の購入(生活圏内にある近隣の店舗を使用)
・薬の受け取り
・公共料金の支払い
・遠方の店舗での購入
・利用者さん以外用の買い物
・お歳暮や嗜好品の購入
外出 ・通院の同行
・公共サービスの申請
・選挙や納税の同行
・買い物同行
・生活資金を引き出すための金融機関への同行
・理美容院への同行
・墓参りや法事など宗教的行為への同行
・嗜好品への資金を引き出すための金融機関への同行
その他 ・衣服の整理 や補修
・シーツの交換
・免許更新への同行
・住民票の代行受け取り
・話し相手や接客
・散歩の介助
・車の清掃や洗車
・単なる安否確認や留守番
・家屋の修理やペンキ塗り

医療に携わる行為

訪問介護のヘルパーは、医療行為を行うことができません。
医療行為とされる処置ができるのは、医師や歯科医師、看護師などの医療従事者のみです。
しかし、一見すると医療行為とみなされがちな処置のなかにも、医療関連行為にあたり、医療の免許がなくても携われる行為があります。
下記では間違いやすい医療関連行為と医療行為の具体例を紹介しましょう。

サービス できること できないこと
爪切り 正常な状態での爪切りやヤスリがけ ・爪に炎症や化膿などの異常がある場合
・糖尿病などで専門的な管理を要する場合
口腔ケア 歯ブラシや巻き綿子、綿棒などを使った口腔内の掃除 重度の歯周病をともなう口腔ケア
薬にまつわる介助 ・一包化薬の服薬介助
・軟膏の皮膚への塗布
・湿布の皮膚への貼り付け
・点眼薬の点眼介助
・肛門への座薬の挿入
・点鼻薬の鼻腔内への噴霧介助
服薬の区分・仕分け
耳掃除 耳掃除 耳垢塞栓の除去
測定 ・水銀体温計や電子体温計の使用
・自動血圧測定器の使用
・パルスオキシメーターの使用
・左記以外の測定器の使用(水銀血圧計など)
処置 ・軽い切り傷や擦り傷、やけどなどの処置(ガーゼ交換を含む)
・ストーマ装具のパウチ内の排泄物の除去
・自己導尿の補助(カテーテルの準備や姿勢の保持)
・市販のグリセリン浣腸の使用
・専門的な判断・技術を要する傷の処置
・肌に直接接着したパウチの交換
・血糖の測定
・導尿
・摘便
・インスリン注射などの皮下注射

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【具体例別】できないことを頼まれたときの対処法

【具体例別】できないことを頼まれたときの対処法

利用者さんからの依頼が介護保険の対象外であるとわかっていても、困り果てている利用者さんを前にすると、断りづらく困ってしまう場面もあるでしょう。
以下では利用者さんから提供できない支援を頼まれた際の対処法をシチュエーションごとに解説します。

その1:家族分の昼ごはんも一緒に作ってほしい

訪問介護は介護保険のサービスであるため、利用者さん本人の支援しかできないことを伝えましょう。
しかし、「できません」の一言では、利用者さんに対して、冷たい印象を与えてしまうかもしれません。
利用者さんの気持ちを配慮しつつ、代替案を用いながら丁重に断るように心がけましょう。

【断り方の例】お力添えしたい気持ちはあるのですが、ヘルパーの私どもは◯◯さんの支援しかできないことになっているのです。
理由は訪問介護が介護保険のサービスだからです。
とはいえ、◯◯さんのご家族を想う気持ちもお察しします。
もし良ければ、別途で料金が発生しますが訪問介護の自費サービスを利用されてみてはいかがでしょうか。
また、民間業者が取り扱う宅配弁当・配食なども手軽にバランスの良い栄養が取れておすすめですよ。

その2:飼い犬の餌やりをしてほしい

先述のとおり、訪問介護は介護保険のサービスであるため、利用者さん本人の支援しかできません。
「利用者さんの愛犬だからお世話してあげたい」と思われるかもしれませんが、丁重にお断りしましょう。

ただし、餌やりのタイミングや犬の様子を利用者さんに伝える程度ならヘルパーにもできます。
間接的にでもペットのお世話をサポートできれば、利用者さんとの信頼関係をより深められるかもしれません。

【断り方の例】こちらとしても△△ちゃん(ペットの名前)のお世話を引き受けたいのですが、訪問介護ではご本人様の支援しかできないことになっております。
ただ、私どもは△△ちゃんの餌やりのタイミングを訪問の際にお伝えすることはできます。
もしお役に立てるのであれば他のヘルパーにも共有しておきますよ 。

その3:換気扇の掃除をしてほしい

換気扇の汚れは、利用者さんの最低限の日常生活に支障を与えるものではありません。
したがって、訪問介護ではサービス対象外となります。
換気扇の掃除の他にも窓ガラスの拭き掃除や庭の草むしりなど日常的な家事の範囲を超える支援が必要な場合、訪問介護の自費サービスの利用をおすすめしましょう。

【断り方の例】換気扇の汚れが気になってお辛いのですね。
お気持ちお察ししますが、ヘルパーの私どもが介護保険サービスで支援できるのは日常的な家事に限られています。
もし良ければ、別途で時間と料金が必要となりますが、自費サービスだと換気扇をきれいにできます。

その4:遠くの百貨店で惣菜を買ってきてほしい

訪問介護のサービスは、利用者さんが最低限の日常生活を送れるように支援を行うのが原則です。
そのため、買い物代行でヘルパーが行けるのは、生活圏内にある商店での物品購入に限られます。

また、介護サービスは提供時間が定められているので、遠方への買い物代行で規定の時間を大幅に超えてしまった場合、次の訪問に間に合わなくなってしまう可能性もあります。
時間的な余裕の無さでケアレスミスや事故が起きやすくなったり、他の利用者さんにも迷惑をかけてしまったりするため、生活圏を超えた買い物代行は避けねばなりません。

【断り方の例】申し訳ありません。私どもヘルパーができるのは◯◯様の生活圏内にある店での購入に限られてしまうんです。
また、遠方に出向くことでサービス提供時間を超えてしまった場合は延長の扱いとなります。
このあとも訪問が続いておりますので、遠くの百貨店まで買い物に行くと他の方にも迷惑をかけてしまうことになります。

その5:プレゼントを受け取ってほしい

利用者さんとの信頼関係が深まると、ときにはサービス提供中にプレゼントを贈られることもあります。
利用者さんからの感謝の言葉はヘルパーにとってのやりがいにつながるものです。
しかし介護サービスの公平性を重視すると、利用者さんからのプレゼントは丁重にお断りする必要があります。
下記のポイントを心に留め、角が立たないように配慮しましょう。

  • 公私を混同しない
  • 利用者さんの気持ちはしっかり受け取る
  • 事業所の方針上、物品を受け取れない旨を伝える
【断り方の例】ありがとうございます。◯◯さんのお気持ちがうれしいです。
しかし、事業所のルールでプレゼントなどは受け取れないこととなっています。
もし私がこのお品を受け取ってしまった場合、事務所に報告しなければなりません。
場合によっては私自身、◯◯さんの訪問に伺えなくなってしまう可能性もあります。
これからも◯◯さんを支援させていただきたいので、お気持ちだけ受け取らせていただきますね。

できないことを断る際の注意点

できないことを断る際の注意点

ヘルパーのできること・できないことが、利用者さんやご家族に正確に伝わっていない場合、ヘルパーはサービス外の支援を繰り返し頼まれることがあります。
トラブルを防ぐためにも、下記の項目に注意して説明すると良いでしょう

  • 原則として、提供できるサービスはケアプランに記載してあるものに限られること
  • 「できないこと」については、解決策や代替策を模索したり提案したりする
  • ヘルパーが提供できないサービス例を一覧化して利用者さんにお渡しする

また、ヘルパーによる支援がどうしても必要な場合は、自費サービスで対応が可能となる旨を伝えておくのも大切です。
「できません」と言い切ってしまうのではなく、利用者さんの目の前にある課題をどうすれば解決できるかを一緒に考える姿勢が、ヘルパーには必要です。

訪問介護のヘルパーには的確な判断力が必要

訪問介護のヘルパーには、できること・できないことがあります。
両者の明確な線引きになるのは、介護保険の対象であるかどうかです。

ときには利用者さんからの頼みを断りにくい場面もあるかもしれませんが、できない旨はきちんと伝えつつ、解決策や代替策を提案することで利用者さんとの信頼関係を深められるのがプロのヘルパーです。

そのため訪問介護のヘルパーには、定められたサービスを提供時間内に終わらせるスキルだけでなく、冷静な判断力や利用者さんに寄り添う共感力、柔軟な提案力が必要といえます。

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