「ヘルパー2級ってどんな免許なの?」
「介護の仕事を始めるなら何の資格をめざせば良いの?」
「ヘルパー資格取るには何から始めれば良いの?」
異業種から介護業界への転職を考えている方は、まず手始めにヘルパー2級の資格を取ろうと考えた経験があるかもしれません。
ヘルパー2級は、過去には訪問介護の資格として広く知られていました。
しかし現在では廃止され、代替として初任者研修が設けられています。
本記事ではヘルパー2級の概要や代替する資格との違い、介護福祉士との関連性などを解説します。
介護士としてのキャリアパスを描くうえでの参考にしてください。
目次
ヘルパー2級の概要
ヘルパー2級は、正式な名称を訪問介護員2級養成研修課程といいます。
名称どおり、訪問介護員を育てるために設けられたヘルパー2級の講習は、訪問介護での生活援助・身体介護を中心とした内容です。
なお、ヘルパー2級は2013年4月に改正された介護保険法により廃止されました。
ヘルパー2級を引き継ぐ資格として創設され、現在も基礎的な介護知識を身につけるための入門資格となっているのが「介護職員初任者研修」です。
ヘルパー2級と初任者研修の受講内容は似ていますが、施設実習や修了試験の有無で差異があります。
両資格の具体的な違いを下記にて確認していきましょう。
ホームヘルパー2級 | 初任者研修 | |
受講時間 | 130時間 | 130時間 |
講義時間 | 58時間 | 40時間程度 |
実技時間(通学) | 42時間 | 90時間程度 |
施設実習 | 30時間 | なし |
受講内容 | 主に訪問介護を中心とした内容 | 居宅・施設双方のサービスに通ずる内容 |
修了試験 | なし | あり |
ヘルパー2級の仕事内容を知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
初任者研修(ヘルパー2級)を修了するとできること
無資格の介護員と初任者研修修了者の間には、できる仕事に差異があります。
基本的に無資格の状態では、介護補助や介護助手の立ち位置となり、任される業務は主に生活援助です。
一方、初任者研修修了者やヘルパー2級の資格取得者は、介護業務の全般を担当できます。
下記にて、初任者研修を修了するとできるようになる業務を確認していきましょう。
身体介護
初任者研修修了者やヘルパー2級取得者が無資格者と大きく異なるのは、身体介護ができるかどうかです。
身体介護とは利用者さんの体に直接触れて行うサポートを指し、下記に挙げる介護行為が該当します。
- 排泄介助
- ベッド上での体位変換
- 入浴介助など
- 清拭
- 更衣介助
- 移動・移乗介助
- 食事介助
初任者研修は介護の基礎的な知識やスキルを身につけるための入門的な資格であるため、専門的な技術を要する身体介護には、初任者研修以上の有資格者でなければ携われません。
訪問介護
ヘルパーが一人で利用者さんの自宅に伺い支援を行う訪問介護の仕事は、専門知識やスキルが不可欠であるため、無資格では務まりません。
厚生労働省の規定にも、訪問介護員になる条件として初任者研修の修了が必要であると記述されています。
訪問介護員は、介護保険法施行令に掲げる研修の課程のうち、介護保険法施行規則第22条の23に規定された介護職員初任者研修課程を修了し、当該研修を修了した旨の証明書の交付を受けた者とされている
引用元:介護員養成研修の取扱細則について
まれに訪問介護でも「未経験可」の求人情報がありますが、実際に無資格の状態で訪問介護サービスを提供するわけではありません。
そのようなケースでは、就職後に初任者研修を受講し、修了した後に訪問介護の仕事を務めることになります。
初任者研修の取得をめざすには
ここでは、初任者研修を受講するための手順を解説していきます。
初任者研修は誰でもめざせる
初任者研修には明確な受験資格は設けられておらず、中学校を卒業していれば誰でも受講が可能です。
年齢制限や必要な学歴・資格、実務経験の必要年数などがないため、介護に従事したい方であれば手軽にチャレンジできる資格といえます。
また、介護職をめざす方以外にも、年老いたご家族の介護に備えて基礎的な知識やスキルを身につけておきたい方が受講するケースもあるでしょう。
初任者研修の認定機関を調べる
初任者研修は、厚生労働省の指針により、各都道府県が指定した養成機関で行われます。
各都道府県の福祉保健局ホームページでは、初任者研修を実施する事業所の一覧を公開しています。
例えば、東京都福祉保健局のホームページでは、以下のページにて東京都で初任者研修が受けられる機関の確認が可能です。
東京都介護員養成研修事業 指定事業者一覧
アクセスのしやすい機関をいくつかピックアップし、情報収集したうえで、受講先を選びましょう。
初任者研修を受ける
初任者研修の受講形式は、通学と通信の2種類があります。
通学のメリットとしては、モチベーションを維持しやすいところです。
学校やコースによっては夜間や休日に開校しているところもあるので、仕事と両立しながら学習できます。
一方、通信は実技のカリキュラムを除いた座学の講座を自己学習できるのが特徴です。
勉強する場所や時間に縛りがないので、家事の合間や通勤時間などでも学習を進められます。
ご自身の性格やライフスタイルに合った学習方法で、初任者研修の修了をめざしましょう。
初任者研修を修了するメリット
初任者研修を修了するメリットは数多くあります。
下記では無資格者が初任者研修を修了するメリットを見ていきましょう。
キャリアパスを明確にできる
初任者研修は、厚生労働省が体系化する介護業界のキャリアパスのなかで、入門資格に位置づけられています。
そのため、介護士としてのキャリアアップを考えるうえで、初任者研修の修了は必須といえるでしょう。
現場のプロフェッショナルである介護福祉士や認定介護福祉士は、初任者研修で土台となる基礎知識を身につけておくとめざしやすくなります。
また、初任者研修を修了した者が、さらに応用的な知識を問われる実務者研修を受講する場合、全450時間の講習のうち130時間分を省略できる点もメリットです。
実務者研修は介護福祉士の受験資格の一つであるので、現場のリーダーやサービス提供責任者をめざす場合、修了しておく必要があります。
したがって、初任者研修は現場で長く活躍したい介護士にとって、正にキャリアの登竜門的な研修といえるでしょう。
収入アップにつながる
初任者研修を修了すれば、より条件の良い求人に応募できたり、資格手当の給付を受けられたりするメリットがあります。
令和4年度に行われた厚生労働省による介護従事者処遇状況等調査結果では、平均月収に下記のような違いがあることがわかりました。
【平均月収】
- 無資格者・・・270,530円
- 初任者研修修了者・・・302,910円
両者には約3万円弱の差異が認められます。
介護の仕事で収入アップをめざしたい場合、初任者研修を修了しておくと良いでしょう。
転職に有利に働く
初任者研修の修了は、転職の際にも有利に働きます。
実際、施設や居宅サービスの求人には未経験可の情報もありますが、多くの事業所で求められるのは現場での即戦力となる有資格者です。
初任者研修を修了するとできる業務範囲が広がるため、応募できる求人の幅も広がります。
日常生活にも生かせる
初任者研修を修了するメリットは、介護職ではない方にもあります。
要介護者のサポートする機会は、介護の現場に限られません。
例えば、高齢のご家族を自宅で介護する場合、日常的にあらゆる介助を行う必要があります。
また、飲食店やホテル、タクシーなどサービス業に携わる場合も、高齢者を支援する機会があるでしょう。
日常生活で介護に携わる際、介護への知識やスキルがない状態では「今やっていることは本当に正しいの?」と不安を感じてしまっても無理はありません。
初任者研修で介護の基礎的な知識を身につけておくことで、心身の負担を軽くできるでしょう。
初任者研修(ヘルパー2級)と介護福祉士はどう違う?
初任者研修と介護福祉士の明確な違いは、国家資格であるかどうかです。
厚生労働省が定める認定資格である初任者研修に対し、介護福祉士は介護資格で唯一の国家資格です。
仕事内容では、介護全般を担う点で初任者研修修了者と介護福祉士に大きな違いはありません。
しかし、介護福祉士は現場の指導や指揮を任されやすくなるため、初任者研修修了者よりも責任あるポジションに就くことが多くなるでしょう。
また、介護福祉士の試験の難易度は初任者研修よりも高いため、利用者さんやご家族の方からベテラン介護士として強い信頼を得られるのは介護福祉士です。
なお、先にお伝えしたように、初任者研修は介護福祉士へのキャリアパスの過程的な位置付けにあります。
介護福祉士を働きながらめざす場合の受験資格は、3年以上かつ540日以上介護の実務に携わること、実務者研修を含む定められた研修を受けることです。
初任者研修を修了すれば実務者研修の一部カリキュラムが免除されるため、よりキャリアアップをめざしやすくなります。
初任者研修(ヘルパー2級)は重要かつ身近な資格
介護の入門資格である初任者研修は、修了することでさまざまなメリットを受けられます。
介護士としての仕事の幅が広がり、収入アップやキャリアアップにもつながる初任者研修は、介護の仕事を始めるすべての方がめざすべき資格といえるでしょう。
また、初任者研修の受験資格は設けられていないため、誰でも受験が可能です。
長く介護の世界で働きたい方はもちろん、日常生活での高齢者のサポートに備えたい方も初任者研修の受講により介護技術が身につけられます。
無資格者でも介護の求人に応募できますが、就職してから苦戦するケースがあるでしょう。
スムーズに業務を行うためにも、初任者研修の受講をおすすめします。