
病気や怪我などで、日常生活におけるさまざまな動作が難しくなった対象者に対し、医師の指示のもと作業療法を行う作業療法士。
理学療法士、言語聴覚士とともに、リハビリテーション専門職と称されます。
国家資格の医療職として、将来は作業療法士をめざそうと考えている学生の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、どのような人に作業療法士の適性があるのか、作業療法士として必要な能力はどのようなものなのかを、詳しく解説していきます。
目次
作業療法士に向いていない人の特徴
作業療法士の仕事を楽しくできるかどうか、仕事が合わないと感じてしまうかどうかは、元々の気質や性格によるところもあります。
一般的に作業療法士に向いている、または向いていないといわれる気質や性格を知ることで、自分の作業療法士への適性を考えてみるのも一つの方法です。
まずは作業療法士に向いていない人の特徴からご紹介します。
自分に当てはまるところがあるか、参考にしてみてください。
コミュニケーションが苦手
コミュニケーションが苦手だと、対象者の希望や困っていることを引き出すことが難しく、業務をスムーズに進められない場合があります。
作業療法士が対象とするのは子どもから高齢者まで幅広い年代にわたる人です。
そして、病気や障がいによって耳が聞こえなかったり、言葉が話せなかったり、意思が通じづらかったりする人もいます。
対象者をサポートするために、思いを汲み取り、引き出し、ともに目標に向かっていけるような関係性を築くことは、作業療法士にとって大変重要です。
そのために、さまざまな工夫を凝らしてコミュニケーションをとることは必須といえるでしょう。
他人と協力できない
一人で黙々と作業を進めたい、他人に自分のペースを乱されたくないといったタイプの方は、作業療法士の業務にストレスを感じるかもしれません。
作業療法士は、対象者をとりまく医療チームの一員として働きます。
同じチームのメンバーとして、治療方針を決定し外科的・内科的治療をする医師、対象者の状態をモニタリングし日常生活を介助する看護師、医療機関と在宅とをつなぐソーシャルワーカーなど、さまざまな職種が関わります。
チームで目標を共有し、それぞれ密に連携を取り合うことで、作業療法士としても対象者に良いリハビリテーションを提供することができます。
他人との協力も、作業療法士には必要不可欠です。
好奇心が薄い
新しいこと・難しいことへの好奇心や他人への関心が薄い方は、業務へのモチベーションが低くなってしまうかもしれません。
作業療法士が対象者に提供するリハビリテーションは、いわば一人ひとりに合わせたオーダーメイドです。
対象者がどのような状況か、何に困っていてどのような希望があるか、どのような方法であればうまくリハビリテーションを進められそうかなど、作業療法士の日常は試行錯誤の繰り返しとなります。
対象者をより深く理解し、いろいろな知識や経験を身につけるためには、好奇心をもって業務に臨むことが大切です。
根気や忍耐力がない
病気や障がいの状態によっては、リハビリテーションが長期にわたる場合や、見込んだ効果が得られない場合もあります。
挫折感やいらだちを感じたり、あきらめて投げ出したりする対象者に出会うことも少なくないでしょう。
対象者と向き合う作業療法士があきらめてしまっては、元も子もありません。
焦らずコツコツと、少しずつ前に進めるよう励ましながら、さまざまなアプローチ方法でリハビリテーションを行うためには、根気や忍耐力をもって対象者と関わることが重要です。
作業療法士に向いている人の特徴
作業療法士に向いていない人の特徴の逆で、コミュニケーションが得意な人・他人と協力できる人・好奇心旺盛な人・我慢強い人は作業療法士に向いているといえます。
その他にも作業療法士に向いている人の特徴を、いくつかご紹介します。
親身になって患者さんに寄り添える
他人の悩みや困りごとを親身になって聞ける人、信頼関係を築きその関係性を大切にできる人は、作業療法士に向いているといえるでしょう。
作業療法士はリハビリにおいて、対象者のパートナーです。
医療・技術的な面だけではなく、精神面にも気を配り、対象者をサポートしていかなければなりません。
対象者の気持ちを考え、共感を示し、寄り添うことが大切です。
思いやりがある
前項ともつながっていますが、思いやりを持って他人と接する人は、作業療法士として対象者に信頼され、良いリハビリテーションを提供できるでしょう。
仕事上の関係を持っていても、作業療法士と対象者は人間同士です。
そのため、対象者が初対面ですぐに作業療法士に悩みを打ち明けてくれるとは限りません。
対象者に信頼してもらい、療養やリハビリにおける本音を引き出しながらサポートしていくために、相手がどのような気持ちを抱えているか思いやり、察する力が必要です。
他人と会話するのが好き
作業療法士にとって、コミュニケーション能力が大切なのは大前提ですが、加えて他人と会話するのが好きで楽しくコミュニケーションをとれる人は、作業療法士向きです。
対象者との会話のなかで、どのようなことが好きか嫌いか、どのような希望を持っているかを引き出し、対象者の人となりを知ることができれば、オーダーメイドでより個別性の高いリハビリテーションを実現できます。
対象者から感謝される機会も増え、自らの仕事のやりがいにもつながっていくでしょう。
作業療法士の仕事には影響の少ない特徴
ここからは、一見向いていなさそうに思えるものの、作業療法士の適性とはあまり関わりのない特徴を解説していきます。
手先が不器用
作業というほどですから、美術や手芸などが苦手で手先が不器用だと、作業療法士としてやっていけないのではないかと思う方もいるかもしれませんが、まったく問題ありません。
たしかに作業療法の一環として、絵を描いたり工作をしたりすることは多くあります。
しかし、実際にリハビリテーションとして作品をつくるのは対象者であり、作業療法士の役割は対象者がリハビリテーションに集中できるようサポートすることです。
作業療法士自身の手先の器用さは重要ではありません。
不器用だからとあきらめようと思っている方も、安心してください。
理系科目が苦手
医療系といえば理系、というイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、理系科目が苦手でも、作業療法士になることは可能です。
対象者の疾患・障がいや、それに合わせたリハビリテーションのために、解剖学や物理など理系の知識が必要な場面もありますが、作業療法士として必要な知識は、高校卒業後の養成校で基礎からじっくり学べます。
高校までの理系・文系の得意不得意で、作業療法士の向き不向きが決まることはありません。
しかし、国公立大学の作業療法科に進みたい場合は、受験科目に数学・理科が必須科目として設定されている場合もあるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
作業療法士に向いていないか確かめたい人は適性診断を受けるのがおすすめ
適性検査は、入試や就職試験で企業側から受験者に対して行われることが多いもので、性格や物事の考え方、思考力などを見られるテストです。
とはいえ、採用側の判断材料として用いられるため、明確な答えや合格ラインはありません。
適性診断を受けることで、自分にどのような思考傾向があるのか客観的に見て、上記に紹介したような特徴と照らし合わせることができます。
診断結果をもとに、作業療法士としての適性があるかを考えてみるのも良いでしょう。
作業療法士に向いていない人の特徴を理解してしっかりと対策しよう
作業療法士に向いている人、向いていない人の特徴を紹介してきました。
今回挙げた特徴は、どれも作業療法士として働いていくうえで大切な姿勢・心構えです。
しかし、自分が向いていない人の特徴に当てはまったからといって、作業療法士になれないというわけではありません。
適性がない部分を補うためにどのような意識が必要なのか、しっかりと考えて対策していきましょう。