
調剤事務(調剤薬局事務)は、未経験でもチャレンジが可能で、ライフスタイルに合わせて働き方を選べることから、女性に人気の職業の一つです。
そのため、一件の募集に応募が殺到することも少なくありません。
調剤事務の求人という狭き門を突破するために、資格を取ろうと考えている方も多いのではないでしょうか。
調剤事務の資格にはさまざまな種類があり、どれがいいのか迷ってしまいますよね。
そこで今回は、調剤事務の代表的な6つの資格をご紹介します。
受験資格、試験の内容、合格率、取得にかかる費用から、選ぶ基準や講座のポイントまでをわかりやすくまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
目次
調剤事務は資格がなくても働ける
調剤事務は、薬剤師や登録販売者のように、国家資格が必要な仕事ではありません。
しかし、処方箋の内容をパソコンに入力するなど、業務を行う上で専門的な知識が求められます。調剤事務の資格取得は必須ではありませんが、調剤事務として働く上で基本的な知識を持っているという証明になります。
調剤事務の資格を取るメリットは?
調剤事務は医療事務に比べて求人数自体が少なく、「未経験OK」と書いてある場合はなおさら、応募者が多くなると予想されます。
面接官によって重視するポイントは異なりますが、入社後の新人教育の手間を考えると、資格を持っている応募者を優先して採用する可能性は高いでしょう。
また、すでに調剤事務として働いてきた経験者も、調剤事務の資格を取得することによって、転職時に有利に働きます。
資格取得のために、調剤事務の仕事について基礎から体系的に学ぶことで視野が広がるというメリットもあります。
調剤事務の資格取得は難しい?
調剤事務の資格にはさまざまな種類がありますが、一般的に学習期間は1~6ヵ月、合格率は60~90%程度となっています。
半分以上の受験者が合格していることがわかるので、しっかりと対策をすれば合格は可能です。
試験は主に学科と実技の二部構成となっています。
学科では「医療保険制度」「調剤報酬請求の算定」「薬剤」などの知識、実技では「調剤報酬明細書(レセプト)の作成・点検」のスキルが求められます。
調剤事務資格の難易度や費用を一覧で比較
調剤事務の代表的な6つの資格は次のとおりです。
受験資格を設けておらず、独学で取得できる資格もありますが、多くは指定の講座などを受ける必要があるため、その費用も含めて比較してみましょう。
資格・試験名 (主催・認定団体) |
合格率 | 試験概要 | 費用 |
---|---|---|---|
調剤報酬請求事務専門士 (調剤報酬請求事務専門士検定協会) |
1級:約20% 2級:約40% 3級:約50~60% |
【受験資格】不問 【日程】年2回(7月・12月) 【場所】1級は全国6都市での会場受験のみ、2・3級は通信受験も可(NTT回線FAX使用) |
【受験料(個人会場受験)】 1級:6,380円 2級:5,280円 3級:5,280円 ※併願可能。通信受験は受験料が異なる【講座】e-ラーニング講座(2ヵ月コース2,750円、6ヵ月コース7,920円) ※受講は必須ではない |
調剤事務管理士 (技能認定振興協会) |
約60% | 【受験資格】不問 【日程】年6回(奇数月) 【会場】現在は在宅受験のみ |
【受験料】6,500円 |
調剤事務認定実務者 (全国医療福祉教育協会) |
60~80% | 【受験資格】不問 【日程】毎月 【場所】一般:自宅(郵送) 団体:認定機関(学校、スクール) |
【受験料】一般:5,000円 団体(認定機関の通学受講生):4,500円 【講座】全国の認定機関により異なる ※受講は必須ではない |
調剤報酬請求事務技能認定 (日本医療教育財団) |
約90% | 【受験資格】講座を修了した者 【日程・会場】所定カリキュラムに適合する講座の修了試験に合格した人に対する認定のため記載なし |
【認定料】3,000円 【講座】ニチイ(通信4ヵ月:36,667円、通学2ヵ月45,049円) ※受講必須 |
調剤薬局事務検定 (日本医療事務協会) |
約90% | 【受験資格】講座を修了した者 【日程】通学コース:年6回(奇数月) 通信コース:毎月 【場所】通学コース:指定会場 通信コース:自宅 |
【受験料】4,950円 【講座】日本医療事務協会(通信3ヵ月:32,780円、通学3日:41,800円) ユーキャン(通信39,000円) ※受講必須 |
医療保険調剤報酬事務士 (医療保険学院) |
非公開 | 【受験資格】指定講座の中間テストに合格した者 【日程】毎月 【場所】自宅(郵送) |
【受験料】4,500円 【講座】医療保険学院(通信4ヵ月:36,000円) ヒューマンアカデミー(通信33,600円) |
※試験概要や講座費用などは変更されることがあります。主催団体および講座にて最新情報を確認しましょう。
あなたが目指すべき調剤事務資格はコレ!
調剤事務資格は、実際の業務に必要な知識とスキルの習得を目的としているため、学ぶ内容にそれほど大きな差はありません。
そのため、どの資格を目指すべきかは、自身が何を重視するかによって決まってきます。
【目的別おすすめの資格】
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次で詳しく説明します。
一番人気の資格を取りたい人は「調剤事務管理士」
調剤事務管理士は独学でも取得を目指せるため人気があります。
合格率は60%程度ですので、しっかりと対策すれば十分取得が可能です。
学科試験はマークシート形式で10問、実技はレセプト点検問題1問とレセプト作成2問です。
技能認定振興協会のホームページに試験問題のサンプルが掲載されています。
試験は資料の閲覧が可能なので暗記の必要はありませんが、レセプトをたくさん書くことが合格の秘訣です。
スキルアップしたい人は「調剤報酬請求事務専門士」
1級は教育者・リーダーレベル、2級は中堅社員レベル、3級は新入社員レベルとなっており、試験中の資料参照不可(実技試験のみ点数表配布)なので、比較的難易度が高い資格です。
最新の保険知識の習得をバックアップするため、2年に一度の更新制度が導入されています。
学科試験60分と実技試験60分となっており、全級共通問題のほか、1級と2級はレベルに応じた追加問題があります。
1級の実技以外はマークシート形式です。
合格率が高い資格を探している人は「調剤薬局事務検定」
受験には所定の講座を受講する必要がありますが、主催者である日本医療事務協会の講座受講者の合格率は91.2%です。
通学コースは会場受験(1時間30分)、通信コースは自宅受験(翌日返送)で、いずれも教材を見ながら受験できます。
試験はマークシート形式で、学科は調剤報酬算定に関わる基礎知識、実技は調剤報酬の算定および調剤報酬明細書作成となっています。
最短で資格取得したい人は「調剤事務認定実務者」
講座受講などの受験資格がなく、毎月試験が実施されているため、集中して勉強すれば1ヵ月で取得できます。
試験はマークシート形式で、参考資料の閲覧や電卓の使用が可能です。
学科は医療関連法規に関する知識、薬理・薬剤に関する知識、調剤報酬請求に関する知識から15問出題。
実技は調剤報酬明細書作成について出題されます。
あなたにぴったりの学習方法は?
調剤事務の資格取得を目指す上で、自分に合った勉強法を選択することはとても大切です。ここでは、通信講座・通学講座・独学のメリットとデメリットを紹介します。勉強法を考える際の参考にしてください。
マイペースに学べる「通信講座」
平均3~4ヵ月の学習期間で、初めて勉強する人でもスムーズに学習できるカリキュラムが特徴です。
テキストもわかりやすく、DVD付きの講座も多数あります。
自分のペースで学習できるのは独学と同じですが、コツコツ進めたい人や独学で挫折しそうな人におすすめです。
添削指導をはじめ、各種サポートが充実しているのも魅力です。
疑問があれば質問できるので、一人で悩まなくて済みます。
短期間で合格を目指せる「通学講座」
スケジュールさえ調整できれば、最短3日の通学で修了できるコースもあります。
もちろん3日の通学だけで合格できるほど簡単ではありませんが、対面で講師に教わったほうが理解が深まるはず。
一人で勉強するのが苦手な人も、通学講座のほうがモチベーションを保ちやすいでしょう。
費用を抑えるには「独学」
調剤事務の通信講座や通学講座の費用は、35,000円~45,000円程度となっています。
市販のテキストや問題集なら2~3冊買っても5,000円くらいなので、とにかく費用を抑えたいなら、独学で頑張るのも選択肢の一つです。
独学で資格取得を目指す場合、テキストの選び方が重要になります。
テキストはインターネットでも購入できますが、本屋さんで中身を確認し、自分に合うものを選びましょう。
調剤事務の資格取得におすすめの講座
調剤事務の資格のなかには独学で取得できるものもありますが、お金を払って効率的に勉強したい方や、独学が得意ではないという方には講座の受講がおすすめです。
合格保証や就職サポート付きの講座もあるので、就職活動のために資格を活用したい方は受講してみてはいかがでしょうか。
【特徴別おすすめの講座】
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最短3日の通学コースもある「日本医療事務協会」
日本医療事務協会の講座は通学コースと通信コースがあり、通学コースは3日で修了できます。
通学コースは開講日に通学しなければなりませんが、担任講師による現場エピソードを交えた講義が魅力。
疑問点をその場で解決できるスピード感も通学コースならではの特徴です。
>>調剤薬局事務講座|医療事務の資格講座なら日本医療事務協会
教育訓練給付が受けられる「ユーキャン」
ユーキャンの調剤薬局事務講座は、教育訓練給付制度の対象講座となっており、給付条件を満たしていれば受講料の最大20%が支給されます。
教育訓練給付制度を初めて利用する方は、雇用保険の被保険者であった期間が通算1年以上で利用可能。
仕事を辞めていても1年以内ならOKです。
以前にも教育訓練給付制度を利用したことがある方は、前回の利用の後、雇用保険の被保険者だった期間が通算3年以上の場合に利用できます。
詳細はハローワークでご確認ください。
100%合格保証のある「ヒューマンアカデミー」
ヒューマンアカデミーの通信講座「たのまな」では、「医療保険調剤報酬事務士」の合格サポート制度があります。
サポート期間内に受講修了もしくは合格できなかった場合は、無料でサポート期間が延長できるので安心です。
さらに、全国にスクールを持つ強みを活かし、就職サポート体制も万全。
通信講座でも近くのスクールに行けば、経験豊富なアドバイザーに就職や転職について直接相談できます。
>>調剤薬局事務講座 医療事務の通信講座・通信教育のたのまな
就職サポートが充実しているのは「ニチイ」
ニチイは医事教育において45年以上の歴史があり、75万人以上の修了生を輩出。
全国約8,000件の医療機関と契約し、現場業務に即したカリキュラムに定評があります。
そのネットワークを活用し、就職サポートにも注力。
修了生一人ひとりの希望に合う就業先を案内しています。
>>調剤薬局事務の資格講座|資格取得応援!ニチイ まなびネット
調剤事務とあわせて取りたい資格
調剤事務の資格を取っても、なかなか思うような仕事に就けなかったら、「Wライセンス※」を検討してみましょう。
調剤事務と相性がいい資格をご紹介します。
※Wライセンス:1つの資格に限らず複数資格を所持すること
「登録販売者」の資格があれば就職にも有利
登録販売者はドラッグストアに就職する人が多いですが、調剤薬局でも即戦力となれる可能性があります。
登録販売者は、処方箋がなくても買える「一般用医薬品」を販売するための専門資格です。
一般用医薬品は第1類・第2類・第3類に分かれており、第1類は薬剤師にしか扱えませんが、登録販売者が扱える第2類と第3類だけで一般用医薬品の9割以上を占めます。
調剤薬局でも一般用医薬品を取り扱っていることが多いため、その接客を登録販売者の資格を持つ調剤事務に任せられたら、薬剤師の負担が減らせるのです。
薬剤師は調剤業務と要指導医薬品や第1類医薬品の販売で手一杯になりがちなので、Wライセンスを大いにアピールできます。
「医療事務」の資格取得で活躍の場が広がる
調剤事務と医療事務の大きな違いは、薬局で働くか、病院やクリニックで働くかです。
Wライセンスならどちらでも働けることになります。
また、主な業務が調剤報酬請求か診療報酬請求かという違いはありますが、関連法規やレセプトに関する基本的な部分は重複しています。
調剤事務の勉強をした人であれば、医療事務資格は取得しやすいといえるでしょう。
自分に合った勉強方法で調剤事務の資格取得を目指そう
調剤事務は人気がある職業ですが、医療事務に比べて求人数が少なく、経験者や有資格者が優遇されることが多いのが現状です。
これから調剤事務として働きたいと考えている方は、まず、気になった資格を取得することを検討してみましょう。
すでに調剤事務として働いている方は、資格を取得することによって、キャリアアップを目指すことも可能です。
本記事を参考に、自分に合った調剤事務の資格と勉強法を探してみましょう。