
管理栄養士の就職先というと病院や学校といった施設や企業をイメージされる方も多いでしょう。
しかし最近では、予防歯科の観点から患者さんの栄養管理を目的に管理栄養士を採用する歯科医院があります。
そこで今回は歯科医院で働く管理栄養士に注目し、具体的な仕事内容について徹底解説します。
管理栄養士の資格をお持ちで、これから就職・転職をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
歯科医院で管理栄養士が求められる理由
日本の歯科業界においては、虫歯ができたら治療をするのが一般的な歯科の治療の考え方でした。
しかし、1980年代に日本に予防歯科の考え方が持ち込まれて以降、虫歯や歯周病にかからないためのオーラルケアが注目されるようになったのです。
そのため歯科医院では、歯の治療だけでなく、歯周病などを予防する取り組みも行うようになりました。
歯科に関する研究が進むにつれて、口腔内の健康を維持するためにはクリーニングや定期検診だけでなく、普段の食生活も非常に重要であることがわかってきました。
そのため、歯科医院では咀嚼機能の改善に加えて、摂食機能の改善や栄養状態の改善もトータルケアする時代となったのです。
このような理由から、歯科医院では栄養面で患者さんに直接指導できる管理栄養士の人材が求められています。
歯医医院で歯医者と一緒に働く管理栄養士の役割
ここからは、歯科医院で働く管理栄養士の役割について詳しくご紹介しましょう。大きく分けて次の2つの役割があります。
患者さんの口内環境整備を行う
治療前のカウンセリングや検査時に食事と生活習慣についての聞き取りを実施し、患者さんの口腔環境に関するヒアリングを行います。
そのなかで改善すべきポイントがあった場合、管理栄養士による指導を適宜行っていきます。
歯周病などの原因は、口腔内にもともと存在する細菌によるものだけではありません。乱れた食生活からも口腔内環境が悪化することが多々あるのです。
食事の大切さや指導によって、口腔内環境や健康に関する正しい知識を患者さんに持っていただくことで、からだ全体の健康維持につながります。
栄養管理の専門家として患者さんに指導
歯科医院で勤務する管理栄養士は、食べ物を通して患者さんの健康管理を指導する大切な役割を担っています。
管理栄養士は、以下のような患者さんを中心にカウンセリングを行います。
【歯科医院の管理栄養士が指導する主な患者さん】
- 摂食嚥下障害がある方
- 咀嚼障害がある方
- 糖尿病や歯周病などの生活習慣病がある方
- 発達期のお子さん
嚥下障害・咀嚼障害などがある高齢者の方や障害がある方に対して、食事形態や栄養状態の改善を提案していきます。
また、離乳食期の乳幼児や発達期の小さなお子さんたちの食事指導も大切な業務の一つです。
妊娠中や出産後のママたちは、カルシウムが不足して口腔内の状態も揺らぎがちです。
そのため、口腔内のケアと一緒にお口の健康を維持する食について提案もしていきます。
歯科医院で働く管理栄養士の主な仕事内容
ここからは、歯科医院で働く管理栄養士の主な仕事内容について詳しくみていきましょう。
口腔カウンセリング
歯科医院に訪れる患者さんたちの口腔内カウンセリングは、管理栄養士の非常に重要な業務内容です。
嚥下障害がある患者さんなど特別なケアが必要な方をはじめ、患者さん一人ひとりに対して口腔環境や歯に関するお悩みについてカウンセリングをします。
カウンセリングを通して、以下の内容を詳しく聞き取りします。
【口腔カウンセリングの聞き取り内容】
- 生活習慣のチェック
- 特別なケアが必要な患者さんに対する最適な食材・調理方法の見極め
カウンセリングを実施する際には、患者さんにリラックスしてもらうことがとても重要です。
笑顔で対応すること、そして患者さんの悩みに寄り添った対応を心がけます。
食習慣指導
毎日の食生活指導を行うことも、管理栄養士の大切な業務です。
日頃の食事内容をもとに、口腔内の健康を維持するために指導を行います。
食習慣が整うと、口のなかに生息する細菌や微生物である口内フローラのバランスも整い、歯周病や虫歯の原因を防ぐことができるので、予防歯科にも非常に効果的です。
幼児であれば、虫歯になりにくいおやつや与えるタイミングについての指導も行いますし、成人の方には間食の内容や虫歯になりにくい食生活の指導も実施していきます。
生活習慣指導
食習慣同様、生活スタイルについてもヒアリングと指導を行います。
課題や問題点がある場合は、具体的な改善指導や提案をして、生活習慣の改善を図っていきます。
生活習慣が乱れることで考えられる症状は次の3つです。
【生活習慣の乱れによって引き起こされる症状】
- むし歯
- 歯周病
- 歯が抜けることによる咀嚼機能の低下
これらの歯科疾患を放置しておくと、次のような重度の生活習慣病を発症する可能性が非常に高くなります。
【歯科疾患による生活習慣病や食生活の乱れの代表例】
- 糖質過剰摂取による高血糖と2型糖尿病
- 炎症物質による糖質代謝阻害と脂質代謝阻害
- 咀嚼機能低下による栄養の不足とカロリーの摂りすぎ
このような生活習慣病や食生活の乱れを防ぐためにも、管理栄養士による生活習慣指導はとても重要な意味を持つのです。
訪問診療での勉強会
最近では、さまざまな理由から来院することが難しい患者さんがおり、歯科の訪問診療の需要が増えています。
訪問診療の際に医師と一緒に同行し、患者さんやそのご家族に向けて食事指導などの勉強会を実施する医院も存在します。
勉強会で使用する資料の作成などを任される場合もありますので、パソコンに関する基本的な知識も求められるでしょう。
受付業務
歯科医院で勤務する管理栄養士のメインの業務はカウンセリングや指導ですが、通常の歯科医院スタッフと同様に受付業務につくこともあります。
【歯科医院の受付業務内容】
- 診察券の受け渡し
- カルテの準備
- 診察室への誘導・案内
- 予約管理
- 電話対応
- 会計
- 待合室やトイレの清掃
受付での応対はもちろんのこと、患者さんの予約管理や電話応対など受付業務は多岐にわたります。
このように歯科医院で働く管理栄養士は、さまざまな業務に携わり、歯科医院の運営に大きく関わっている重要な存在なのです。
歯科医院で働く管理栄養士の口コミ
実際に歯科医院で管理栄養士として働く方は、日々どのようなことを考えながら働いているのでしょうか。
歯科医院で働く管理栄養士の口コミをご紹介します。
【歯科医院で働く管理栄養士による口コミ】
私が入局した当初は歯科医院で働く管理栄養士がどんな仕事をしているのか全くイメージできませんでした。また大学においても歯科知識についての講義は全くなかったので、不安はありましたが、実際に入局してみると、院長やスタッフの方々が勉強会や仕事の合間に熱心に教えて下さり、日々色々な事を吸収することができました。
歯科の知識が学べて資格を活かした働き方が出来ているのも、続けてよかったと思える理由です。
歯科の知識は思った以上に覚えることが多くて大変でした。しかし覚えていくと、「もっと早く知りたかった…!」と思うものや、「今まで不思議だったけどこれだったのか」という発見が沢山ありました。
また栄養の知識に関しても、大学で学んだこととは違う視点の、実践向けのものを多く学べました。
新卒で歯科クリニックに入って4年目になりますが、これまでの経験や身につけたことをまとめると、歯科医療の分野で管理栄養士は必ず必要ということがいえるかなと思います。これから歯科医療の分野で働こうと思う管理栄養士にとっては、まだまだ環境が整っていない部分が多くあり、苦労する点も多いと思います。ただ、それを苦と思うのではなく、これから自分たちで仕組みを作り上げることができるという点をやりがいがあると感じられるかどうかが大事だと思います。
引用元:歯科医療での管理栄養士の活躍の場 〜優歯科クリニック〜
高い志を持って歯科医院で働く管理栄養士の声がありました。
歯科に関する知識を新たに身につける必要があるようですが、やりがいを感じて取り組んでいる方もいました。
新たな業界で活躍したいなら歯科医院への転職も検討してみて
歯医者で働く管理栄養士の具体的な仕事内容について詳しく解説しました。
今までと違う業界で働くことは、ハードルが高いと感じる方も多いでしょう。
しかし、患者さんと密接に関わりながら健康維持のサポートができる歯科医院の管理栄養士は、とてもやりがいを感じられる職種といえるでしょう。
興味のある方は、ぜひ歯科医院への転職を検討してください。