
サービス提供責任者(サ責)は、1施設あたりどれだけの人数が必要なのでしょうか。
この記事ではサービス提供責任者の配置基準を図解し、注意点も解説していきます。
目次
サービス提供責任者の配置基準とは
サービス提供責任者の配置基準とは、指定訪問介護事業所で利用者の数に合わせて配置する必要人数の基準のことです。
ここでは人員基準や必要な人数、常勤換算などの配置基準を詳しく説明します。
常勤換算方法について
指定訪問介護事業に配置するサービス提供責任者の人数を考える際には、実際に働いている人数でなく、常勤換算数を用います。
常勤換算とは、全従業員の勤務時間を足してフルタイムの労働時間で割り、平均職員数を表すことです。
介護業界で働くのは、毎月フルタイムで稼働する人ばかりではありません。
パート・アルバイトなど、働き方によって労働時間はばらばらです。
そのため、労働時間が異なる人をすべて一人として数えるのではなく、全員の労働時間がフルタイム(常勤)何人分になるかで計算を行います。
常勤換算のやり方は、以下のとおりです。
人員基準・必要な人数
訪問介護事業所は必ず、常勤で1人以上のサービス提供責任者を配置しなければいけません。
加えて、直近3ヵ月における、1ヵ月あたりの利用者数が40人増えるごとに、必要な人数が1人増えていきます。
1ヵ月あたりの利用者数(直近3ヵ月の平均) | 必要なサービス提供責任者の人数 |
0~40人 | 常勤1人以上 |
41~80人 | 常勤2人以上 |
81~120人 | 常勤3人以上 |
121~160人 | 常勤4人以上 |
サービス提供責任者が50人に対して1人で良い条件は限定的
通常、サービス提供責任者は、1ヵ月あたりの利用者数が40人増えるごとに、必要な人数が1人増えますが、以下の条件を満たした場合のみ条件が緩和され、50人増えるごとに1人の追加で良くなります。
- 常勤のサービス提供責任者を3名以上配置している
- サービス提供責任者の業務に主として従事する者を1人以上配置している
- サービス提供責任者が行う業務が効率的に行われている場合
この条件はサービス提供責任者の基準緩和のために2015年に改正され、現在も条件として使用されています。
各都道府県で配置基準が異なる
サービス提供責任者の配置基準は、都道府県や市町村によって異なる場合があります。
各自治体のホームページを事前に確認しておくと良いでしょう。
複数のサービスを行う事業所でのサービス提供責任者の配置基準
同一の施設で複数のサービスを行う場合、サービス提供責任者の配置基準は各自治体で定められています。
今回は、名古屋市の2つの例を紹介します。
- 障がい福祉サービス(居宅介護等)と訪問介護等を合わせる場合
- 障がい福祉サービスのうち複数サービスを併せて行う場合
障がい福祉サービス(居宅介護等)と訪問介護等を合わせる場合
サービス名 | 利用者数 | |
重度訪問介護の利用者数 | 10人以下の場合 | 10人を超える場合 |
居宅介護 | 40人ごとに1人 | 重度訪問介護利用者10人ごとに1人 + それ以外の利用者 40 人ごとに 1 人 |
同行援護 | ||
行動援護 | ||
重度訪問介護 | ||
移動支援 | ||
訪問介護等 |
障がい福祉サービスと訪問介護を合わせる場合、サービスが単体ならばどれを選んでも人員数は同じです。
重度訪問介護の利用者数が10人以下の場合は、40人ごとに1人を配置しなければなりません。
また、10人を超える場合は、重度訪問介護利用者10人ごとに1人+それ以外の利用者40人ごとに1人を配置する必要があります。
障がい福祉サービスのうち複数サービスを併せて行う場合
障がい福祉サービスのうち、複数のサービスを併せて行う場合は算出方法が複雑になります。
重度訪問介護の利用者が10人以下の場合と10人以上の場合、重度訪問介護とそれ以外の利用者を分けて算出する方法を詳しく解説します。
重度訪問介護の利用者が 10 人以下の場合
重度訪問介護の利用者数が10人以下の場合、以下のいずれかの方法で算出します。
- 利用者人数40人ごとに1人
- サービス提供時間は450時間ごとに1人
- 従業者数は10人ごとに1人
サービス名 | 利用者数 | サービス提供時間 | 従業者数 |
居宅介護 | 40 人ごとに 1 人 | 450 時間ごとに 1 人 | 10 人ごとに 1 人 |
同行援護 | |||
行動援護 | |||
重度訪問介護 | |||
移動支援 |
重度訪問介護の利用者が 10 人を超える場合
重度訪問介護の利用者数が10人 を超える場合は、以下のいずれかの方法で算出します。
- 重度訪問介護利用者10人ごとに1人+それ以外の利用者人数40人ごとに1人
- サービス提供時間は450時間ごとに1人
- 従業者数は10人ごとに1人
サービス名 | 利用者数 | サービス提供時間 | 従業者数 |
居宅介護 | 重度訪問介護利用者 10人ごとに1人 + それ以外の利用者 40人ごとに1人 | 450時間ごとに1人 | 10人ごとに1人 |
同行援護 | |||
行動援護 | |||
重度訪問介護 | |||
移動支援 |
重度訪問介護とそれ以外を別で算出し合計する方法
重度訪問介護とそれ以外を別々に算出し、合計する場合は、以下のいずれかの方法で算出します。
- 重度訪問介護利用者10人ごとに1人+それ以外の利用者人数40人ごとに1人
- サービス提供時間1,000時間ごとに1人+サービス提供時間450時間ごとに1人
- 重度訪問介護専従の従業者数20人ごとに1人+重度訪問介護とその他の双方の従業者10人ごとに1人
サービス名 | 利用者数 | サービス提供時間 | 従業者数 |
居宅介護 | 40人ごとに1人 | 450時間ごとに1人 | 10人ごとに1人 |
同行援護 | |||
行動援護 | 10人ごとに1人 | 1,000時間ごとに1人 | 重度訪問介護専従の 従業者 20人ごとに1人 + 重度訪問介護とその他の 双方の従業者10人ごとに1人 |
移動支援 | |||
重度訪問介護 |
サービス提供責任者の配置基準の注意点
サービス提供責任者の配置基準の注意点は2つあります。
- 配置基準を満たさなかった場合
- サービス提供責任者の人員配置は複雑
では、詳しく見ていきましょう。
配置基準を満たさなかった場合
訪問介護事業所では、稼働できる訪問介護員が2.5人以上常駐していなければなりません。
各自治体の実地指導が行われた際に配置基準を満たしていないと、監査で著しい運営基準違反と判断され、指定の取り消しにつながる可能性があります。
実地指導は適正な運営のために行われるものであり、目的は処分ではありません。
そのため、配置基準を満たせないとわかった時点で自治体に相談することが大切です。
ごまかすための虚偽の報告は決してしないようにしましょう。
サービス提供責任者の人員配置は複雑
サービス提供責任者の人員配置は、端数がでるたびに増員をしたり、常勤換算で考える必要があったりと複雑です。
特に複数のサービスを行う事業所では、重度訪問介護の有無で人員配置が異なるため、さらに計算に苦労するでしょう。
その他、例外や特例もあるため、間違えていないか不安になる人も少なくありません。
わからない場合はそのままにせず自治体に相談すると良いでしょう。
サービス提供責任者の配置基準は各自治体で確認しよう
サービス提供責任者の配置基準は、計算が複雑なうえ、例外や特例、自治体ごとの細かな違いもあり、間違えることの多い部分です。
少しでも疑問がある場合は自治体に相談してください。
この記事であらかじめ基本を抑え、所属している事業所の状態を把握してから自治体に連絡をすれば、スムーズに対処できるでしょう。