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薬局DXとは?必要な理由とともに成功事例も紹介

この記事の監修者
藤野紗衣
【資格】
薬剤師

【プロフィール】
ライター。東北大学薬学部卒業後、おもに病院薬剤師として勤務。現在は医療関連のコラムや取材記事の制作に関わる。専門知識を一般の方にわかりやすく伝える記事や働く人を支える記事を書いている。

デジタル化が進む現代社会において、薬局業界もその波に乗る必要性が高まっています。
薬局DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なる技術導入ではなく、患者サービスの向上と業務効率化を両立させる重要な取り組みです。

本記事では、薬局DXの概要や必要性、そして成功事例をご紹介します。
薬局経営者や薬剤師にとって、今後の戦略を考えるうえで参考になる情報が満載です。

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薬局DXとは?

薬局DXとは?

薬局DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称です。
単にデジタル技術やツールを導入することではなく、データや最新技術を活用して調剤薬局の業務を根本から変革し、患者さんにより良い医療サービスを提供することを指します。

具体的には、電子処方箋システムの導入やオンライン服薬指導の実施、在庫管理のデジタル化などが挙げられます。
これらの取り組みにより、薬剤師の業務効率が向上し、より多くの時間を患者さんとのコミュニケーションに充てられるようになることが狙いです。

さらに、薬局DXは薬剤師の働きやすさにもつながります。
繁雑な事務作業が削減されることで、本来の専門性を発揮できる環境が整うでしょう。
結果として、患者さんへのサービス向上と薬剤師の職務満足度向上の両立が期待できます。

薬局DXが必要な理由

薬局DXの導入は、今や業界全体で避けては通れない課題となっています。
その背景には、薬剤師不足や調剤薬局の経営悪化、そして薬剤師の役割の変化といった複数の要因があります。

これらの課題に対応するためには、従来の業務形態見直しと、デジタル技術活用による効率化・高度化が不可欠です。
以下では、薬局DXが必要とされる具体的な理由について詳しく見ていきましょう。

薬剤師不足が予想される

薬剤師の数は年々増加傾向にあります。
厚生労働省の統計によると、2018年には311,289人だった薬剤師数が、2022年には323,690人まで増加しています。

しかし、この数字だけを見て安心することはできません。
日本社会の高齢化が急速に進んでおり、2023年には高齢者人口が総人口の29.1%と過去最高を記録しました。
さらに、2045年には36.3%にまで上昇すると予想されています。

高齢化にともない、医療需要は今後さらに増加することが見込まれます。
そのため、薬剤師の絶対数が増えているにも関わらず、地域によっては深刻な薬剤師不足に悩まされる調剤薬局が少なくありません。

特に、都市部と地方の間で薬剤師の偏在が顕著になっており、地方の調剤薬局では人材確保に苦心しているケースが多々見られます。
この状況下で、薬局DXによる業務効率化は、限られた人材で質の高いサービスを提供するための重要な解決策となっています。

調剤薬局の売上減少が予想される

薬局経営を取り巻く環境は、年々厳しさを増しています。
その主な要因として挙げられるのが、薬価差益の縮小です。
かつては薬価差益が調剤薬局の主要な収入源でしたが、度重なる薬価改定によりその利益幅は大幅に縮小しています。

一方で、薬剤師に期待される役割は拡大の一途をたどっています。
服薬指導の充実や在宅医療への参画、健康サポート薬局としての機能強化など、求められる業務の量はどんどん増加しています。

しかし、薬局経営の観点からは、人件費を無制限に増やすことはできません。
限られた人員で増大する業務をこなすには、業務の効率化が不可欠です。

ここで重要な役割を果たすのが薬局DXです。
デジタル技術を活用することで、事務作業や在庫管理などの業務を効率化し、人的リソースを本来の薬剤師業務に集中させることができます。
これにより、経費削減と収益性の向上を同時に実現することが可能となります。

薬剤師が果たすべき役割の変化に対応するため

薬剤師の役割は、近年大きく変化しています。
従来は調剤業務が中心でしたが、「患者のための薬局ビジョン」に基づくかかりつけ薬剤師・調剤薬局の推進などにより、より幅広い役割が求められるようになりました。

具体的には、医療安全の確保や医薬品の適正使用の推進、患者さんの健康管理支援など、対人業務の重要性が増しています。
これらの役割を十分に果たすためには、対物業務(調剤作業など)の効率化が不可欠です。

ここで大きな力を発揮するのがデジタル機器です。
薬局DXは薬剤師の役割変化に対応し、より質の高い医療サービスを提供するための重要なツールとなっています。

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薬局DX推進の成功事例

薬局DXの必要性は理解できても、実際にどのように導入し、成果を上げているのか気になる方も多いでしょう。
ここでは、実際に薬局DXを推進し、成功を収めている事例をいくつかご紹介します。

規模や地域、取り組み内容はさまざまですが、いずれも患者サービスの向上と業務効率化を両立させている点で共通しています。
導入を検討する際の参考になるでしょう。

患者さんに電子処方箋希望を促進

ある薬局チェーンでは、電子処方箋の普及を積極的に推進し、大きな成果を上げています。その取り組みの中心となったのが、「電子処方箋お願いカード」の導入です。

このカードは、かつてジェネリック医薬品の普及促進で効果を発揮した「ジェネリックお願いカード」をモデルにしています。
電子処方箋やオンライン服薬指導のメリットが大きいと思われる患者さんに対して、このカードを案内し、電子処方箋の利用を促しました。

結果として、この取り組みは患者さんの負担軽減に大きく貢献しました。
特に、慢性疾患で定期的に通院している患者さんや、移動が困難な高齢者の方々にとっては、医療機関での待ち時間が短縮でき、調剤薬局での受け取りがスムーズになるなど、目に見える形で利便性が向上したのです。

また、調剤薬局側にとっても、処方箋の受付や調剤準備の効率化につながり、患者さんへの対応時間を増やすことができました。
この成功事例は、小さな工夫が大きな変革につながる可能性を示しており、他の調剤薬局にとっても参考になる取り組みといえるでしょう。

オンライン資格確認導入できめ細やかな対人業務

ある中規模の薬局チェーンでは、IT機器の積極的な導入により、業務効率化と調剤過誤防止を同時に実現しています。
特に注目されるのが、オンライン資格確認システムの導入です。

導入にあたっては、政府の補助金を活用し、初期投資の負担を軽減しました。
このシステムの最大のメリットは、調剤過誤の種を事前に摘み取れることです。
患者さんの保険資格や薬剤情報を即座に確認できるため、重複投薬や相互作用のリスクを大幅に低減することができました。

さらに、従来は手作業で行っていた保険証の確認や患者情報の入力が自動化されたことで、業務負担が大きく軽減されました。
入力したデータの再チェックの必要がなくなったことも、業務効率化に大きく寄与しています。

これらの効果により、薬剤師は患者さんとの対話時間を増やすことができ、より詳細な服薬指導や健康相談に時間を割くことが可能になりました。
結果として、患者満足度の向上と薬剤師の業務満足度の向上を同時に達成しています。

このケースは、IT投資が単なる業務効率化だけでなく、医療の質の向上にも直結することを示す好例といえるでしょう。

電子版お薬手帳サービスリストを公表

電子版お薬手帳は、薬局DXの重要な要素の一つですが、多くの施設で導入されないとそのメリットを十分に感じられません。
この課題に対し、厚生労働省は啓発普及に努めています。

具体的な取り組みとして、厚生労働省は電子版お薬手帳サービスのリストを公表しています。
このリストは、希望する運営事業者などからの申請に基づいて作成されており、各サービスの特徴や対応機能などが一覧できるものです。

ただし、現時点では具体的な成功事例の公表までには至っていません。
これは、電子版お薬手帳の普及がまだ途上段階にあることを示唆しています。

しかし、このリストの公表自体が、調剤薬局や患者さんに対して電子版お薬手帳の存在を周知し、その導入を促進する効果があるといえるでしょう。
調剤薬局側にとっては自局に適したサービスを選択する際の参考になり、患者さんにとっては利用可能なサービスの把握につながります。

今後、このリストを活用した導入事例が増え、具体的な成功事例が蓄積されていくことが期待されます。
電子版お薬手帳の普及は、患者さんの医療情報の一元管理や、医療機関間の情報共有の円滑化につながり、より安全で効率的な医療サービスの提供に貢献するでしょう。

薬局DXを導入して質の高い医療に貢献しよう

薬局DXは、単なる業務効率化のツールではありません。
患者さんへの医療サービスの質を高め、薬剤師の働き方を改善し、そして薬局経営の持続可能性を高める重要な戦略です。

本記事で紹介した成功事例からもわかるように、電子処方箋の普及促進やオンライン資格確認システムの導入、電子版お薬手帳の活用など、さまざまなアプローチで薬局DXを推進することができます。
これらの取り組みは、患者さんの利便性向上と薬剤師の業務効率化を同時に実現し、結果として医療の質の向上につながっています。

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