
救急認定薬剤師は、高い専門性を活かして救急医療の現場で活躍する薬剤師です。
患者さんの怪我や感染症、持病の悪化など、緊急性の高い症例に対応し、適切な薬物治療を行います。
また、災害時には避難所や被災病院などで重要な役割を担うケースもあり、緊急性の高い現場において、薬剤師としての職能を最大限発揮することが求められるでしょう。
本記事では、救急認定薬剤師の役割や仕事内容、資格取得方法などを解説します。
薬剤師からのキャリアアップを検討中の方は、参考にしてみてください。
目次
救急認定薬剤師とは
救急認定薬剤師は、日本臨床救急医学会が認定する資格です。
救急医療の現場で求められる高度な知識と技術を有し、医師や看護師とともに救急患者の治療に携わります。
まずは、救急認定薬剤師の役割と仕事内容をチェックしてみましょう。
救急認定薬剤師の役割
救急認定薬剤師は、救急救命センターや集中治療室(ICU)、被災地の避難所、被災病院などで働きます。
救急現場における救急認定薬剤師の役割は、患者さんの怪我や感染症、持病の悪化などに対する薬物治療への関与です。
災害時には、他医療スタッフとともに、あらゆる可能性を考慮しながら薬物治療を行います。
限られた資源のなかで最適な治療を提供するために、専門的な知識と判断力が求められるでしょう。
救急認定薬剤師の仕事内容
救急認定薬剤師の業務内容は、勤務する現場によってさまざまです。
救急現場では、医薬品の管理や薬剤処方設計、TDMと呼ばれる治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring)などを行います。
適切な薬剤の選択や投与量の調整、副作用のモニタリングなどが主な仕事です。
災害時には、避難所の巡回診療に同行し、被災者の服薬管理や衛生管理などを行います。
また、医薬品の供給や在庫管理にも携わることになるでしょう。
人によっては、救急医療についての教育に関わるケースもあるかもしれません。
医療スタッフや一般市民を対象とした講習会・勉強会などで、薬物治療に関する知識の普及に努めます。
救急認定薬剤師になるには
救急認定薬剤師になるためには、一定の要件を満たし、認定試験に合格する必要があります。
救急認定薬剤師の認定要件や更新手続き、費用を見てみましょう。
認定要件
救急認定薬剤師の認定試験を受験するには、以下の要件を満たしていなければなりません。
- 日本の薬剤師免許を持っていること
- 日本臨床救急医学会の正会員であること(2年以上)
- 薬剤師として病院や診療所に5年以上勤め、そのうち2年以上は救急医療に関する実務経験であること
- 患者の治療に携わった症例が25以上あること
- 救急医療に関する講習会や学術集会に参加していること など
日本臨床救急医学会の定める要件をすべて満たしたうえで、申請・審査を経て、認定試験の受験資格が与えられるという流れです。
認定試験は年1回実施され、口頭試問があります。
試験に向けて、実務経験を積みながら要件を満たすようにしましょう。
更新手続き
救急認定薬剤師の資格取得後は、5年ごとに更新が必要です。
更新手続きにあたっては、以下の要件が設けられています。
- 引き続き日本臨床救急医学会の正会員であること
- 過去5年間に救急医療に関する実務経験があること
- 過去5年間に認定委員会が指定した講習会や学術集会に参加して、指定した 80 単位(必修 45 単位以上を含む)を取得していること。ただし、日本臨床救急医学会が主催する学術集会に少なくとも 1回は参加していること
- 認定委員会が開催した講習会を2回以上受講していること。うち1回は認定委員会が指定した講習会の受講で認められる
- 更新申請書とその他必要書類の提出
必要書類を準備し、救急認定薬剤師認定委員会宛てに郵送しましょう。
更新手続きを怠ると、資格を失効してしまうため注意が必要です。
費用
救急認定薬剤師資格の新規取得・更新には、費用がかかります。
まず、認定試験受験資格の適否判定を受ける際、手数料として10,000円が必要です。
更新にも同額の手数料がかかります。
認定料は、新規取得時が20,000円、更新時が10,000円です。
また、資格取得や更新のために必要な学術集会や講習会への参加費用も別途かかります。
交通費や宿泊費などを含めると、少なくない金額になることを念頭に置いておきましょう。
救急認定薬剤師のやりがい
救急認定薬剤師は、高度な専門性を活かして救急医療の現場で活躍できます。
薬のスペシャリストとして日々の業務に取り組むなかで、知識と技術を磨いていけるでしょう。
また、救急認定薬剤師は、適切な薬物治療によって重篤な症状を改善に導き、回復への道筋を作り上げるためにも重要な存在です。
患者さんの命を救うことに直接貢献できるのは、大きなやりがいにつながります。
医師や看護師など、他の医療スタッフとチームを組んで働けることも、救急認定薬剤師の魅力の一つです。
お互いの専門性を尊重し合い、一丸となって患者さんの治療にあたります。
チームで成果を上げたときの喜びは、大きなものでしょう。
救急認定薬剤師の年収
救急認定薬剤師の年収は、勤務先や経験年数によって異なりますが、基本的には通常の薬剤師と同じ本給が支払われます。
薬剤師の平均年収は、577.8万円です。
ただし、職場によっては救急認定薬剤師の専門性が評価されて昇給したり、資格手当が支給されたりする可能性があるでしょう。
夜間や休日の勤務が多い場合、そのぶん夜勤手当や休日手当などが支給されます。
これらの手当によって、年収アップを期待することも可能です。
救急認定薬剤師になってチーム医療に携わろう
救急認定薬剤師は、救急医療の現場で重要な役割を担う薬剤師です。
高度な薬学知識と技術を駆使して、重症性や緊急性が高い症例に対応します。
救急認定薬剤師の仕事は、患者さんの命に直接関わることから、専門性を高めるべく継続的なスキルアップに努めなければなりません。
そのぶん、チーム医療の一員としてやりがいを感じながら働くことができるでしょう。
資格取得のためには、一定の要件を満たしたうえで、認定試験に合格する必要があります。
薬剤師としてキャリアアップしたい方や、救急医療の現場で活躍したいと考えている方は、救急認定薬剤師の資格取得をめざしてみてはいかがでしょうか。