
薬剤師は薬物療法を支える医薬品の専門家として、キャリアプランを立てて進みたい方向性を決めることが非常に大切です。
本記事では、薬剤師がキャリアプランを立てる際のポイントや、勤務先別のキャリアプラン例、キャリアアップに役立つ資格について解説します。
自分に合ったキャリアプランを見つけ、目標に向かって努力していきましょう。
目次
薬剤師にとってのキャリアプランの必要性
薬剤師は、薬物療法を支える医薬品の専門家として、キャリアプランを立てて進みたい方向性を決めることが非常に大切です。
中長期的なキャリアプランを見据えておくことで、自身の将来像が明確になり、経験すべき業務がわかるようになります。
多様な働き方や求められる専門性のレベルなど、同じ薬剤師という職種でも、理想とする薬剤師像は人によって異なります。
自分なりのキャリアプランを立てて、それに向けて実践を重ねることが重要です。
薬剤師がキャリアプランを立てる際のポイント
キャリアプランを立てる際には、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。
まずは、自分自身のキャリアを棚卸しすることから始めましょう。
そして、中長期的な将来像を明確にし、今達成すべき目標を設定していきます。
キャリアを棚卸しする
キャリアプランを立てる第一歩は、自分自身のキャリアを棚卸しすることです。
まずは、これまでに経験してきた業務を整理しましょう。
具体的な方法としては、1日の業務内容を記載し、仕事に対する取り組み方や成果を書き出します。
書き出した内容を整理して、今までのキャリアを客観視することが重要です。
キャリアの棚卸しを行うことで、自分の強みや仕事に対する価値観を把握できます。
自分自身のキャリアを見つめ直すことは、今後のキャリアプランを立てるうえで非常に重要なプロセスといえるでしょう。
中長期的な将来像を明確にする
次に、5年後、10年後になりたい薬剤師像を明確にしていきます。
具体的な将来像を見つけることが難しい場合は、小児分野に関わりたい、後輩の育成をしたいなど、漠然としたビジョンでも構いません。
同僚や職場の先輩と相談しながら考えていくことも一つの方法です。
中長期的な将来像を明確にすることで、自分がどのような薬剤師をめざすのかが明らかになります。
めざす薬剤師像が明確になると、それに近づくためには、何を勉強しなければならないかを理解できます。
今達成するべき目標を明確にする
中長期的な将来像を明確にしたら、今達成するべき目標を設定しましょう。
めざす将来像に向けてのステップをいくつかの段階に分け、今取り組むべきことが何なのかを明らかにします。
1年ごとなど期間を区切って、達成すべき目標を細かく設定することが重要です。
中長期的な将来像と現在のギャップを把握し、身につけるべきスキルをピックアップしていきましょう。
【勤務先別】薬剤師のキャリアプラン例
薬剤師のキャリアプランは、勤務先によって異なります。
ここでは、病院、調剤薬局・ドラッグストアに勤める薬剤師のキャリアプランについて紹介していきます。
病院のキャリアプラン
病院薬剤師のキャリアプランは、さまざまです。
後述する認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取得して専門性を高める他に、薬剤部長や治験コーディネーター(CRC)などもあります。
薬剤部長
病院薬剤師のキャリアプランの一つは、薬剤部長(薬局長)をめざすことです。
薬剤部長は、所属する薬剤師のマネジメントを行います。
病院の一つの部署の責任者として、部署に求められている役割を果たさなければなりません。
そのためには、薬剤師をマネジメントして、適切に業務分担する必要があります。
また病院によっては、患者さんの服薬指導や調剤業務に加え、医薬品の管理、医薬品に関する情報の収集・周知、医療業務のサポートなどを行います。
具体的な業務内容やマネジメントする薬剤師数は勤めている医療機関によって異なるため、自分がめざす薬剤部長像を明確にすることが大切でしょう。
治験コーディネーター(CRC)
治験コーディネーターは、医療機関において、治験業務をマネジメントする役割を担っています。
治験に参加している患者さんの対応をはじめ、治験実施企業担当者との連絡や調整、同意取得の補助、データ入力など業務内容は多岐にわたります。
医師や看護師をはじめ、患者さんやそのご家族など多くの人とコミュニケーションを取る必要があるため、高いコミュニケーション能力が求められます。
治験コーディネーターをめざす際は、治験に関する知識を深めることはもちろん、コミュニケーション能力を磨くことが重要なポイントです。
調剤薬局・ドラッグストアのキャリアプラン
調剤薬局・ドラッグストアで働く薬剤師のキャリアプランとして、管理薬剤師やエリアマネージャーをめざすことが挙げられます。
それぞれの役割や求められるスキルを見ていきましょう。
管理薬剤師
管理薬剤師とは、一般的な薬剤師業務に加えて、医薬品の管理業務や情報提供業務、従業員の監督を行う薬剤師のことです。
管理薬剤師になるためには、原則として「調剤薬局での実務経験が5年以上ある」「中立的かつ公共性のある団体の認証を受けた制度またはそれらと同等の制度に基づいて認定された薬剤師である」の2つの要件を満たすことが必要です。
管理薬剤師をめざすなら、これらの要件を満たすことが重要なポイントとなります。
また、管理業務に必要なマネジメントスキルを身につけることも大切です。
エリアマネージャー
エリアマネージャーとは、複数の調剤薬局を担当し、管理を行う立場です。
エリアマネージャーの役割は、管理薬剤師と調剤薬局開設者をつなぐことにあります。
具体的には、管理薬剤師から現場情報を収集して調剤薬局開設者へ報告したり、調剤薬局内で問題がある場合には、運営面の改善策を提案することなどが主な仕事内容です。
エリアマネージャーをめざす際は、マネジメントスキルに加えて、コミュニケーション能力やリーダーシップも求められます。
また、調剤薬局運営に関する知識を深めることも重要なポイントといえるでしょう。
薬剤師のキャリアアップにおすすめの資格
薬剤師のキャリアアップには、資格取得が有効な手段の一つです。
ここでは、認定薬剤師と専門薬剤師の資格について紹介します。
認定薬剤師
資格名 | 認定機関 |
がん薬物療法認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
外来がん治療認定薬剤師 | 日本臨床腫瘍薬学会 |
緩和薬物療法認定薬剤師 | 日本緩和医療薬学会 |
感染制御認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
HIV感染症薬物療法認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
抗菌化学療法認定薬剤師 | 日本化学療法学会 |
外来抗感染症薬認定薬剤師 | 日本化学療法学会 |
腎臓病薬物療法認定薬剤師 | 日本腎臓病薬物療法学会 |
糖尿病薬物療法認定薬剤師 | 日本くすりと糖尿病学会 |
老年薬学認定薬剤師 | 日本老年薬学会 |
認知症研修認定薬剤師 | 日本薬局学会 |
精神科薬物療法認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
小児薬物療法認定薬剤師 | 日本薬剤師研修センター |
救急認定薬剤師 | 日本臨床救急医学会 |
日本プライマリ・ケア認定薬剤師 | 日本プライマリ・ケア連合学会 |
在宅療養支援認定薬剤師 | 日本在宅薬学会 |
日病薬認定指導薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
研修認定薬剤師 | 日本薬剤師研修センター |
医療薬学専門薬剤師 | 日本医療薬学会 |
日病薬病院薬学認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
漢方薬・生薬認定薬剤師 | 日本薬剤師研修センター |
公認スポーツファーマシスト | 日本アンチ・ドーピング機構 |
核医学認定薬剤師 | 日本核医学会 |
認定薬剤師の資格には、分野別に多くの種類があります。
代表的な認定資格として、「研修認定薬剤師」、「がん薬物療法認定薬剤師」、「緩和薬物療法認定薬剤師」が挙げられます。
これらの資格を取得することで、専門性を高めることができ、キャリアアップにつながるでしょう。
認定薬剤師の資格取得をめざす際は、自分が興味のある分野を選ぶことが重要です。
また、資格取得のための勉強時間を意識して確保することも、大切なポイントといえます。
専門薬剤師
資格名 | 認定機関 |
薬物療法専門薬剤師 | 日本医療薬学会 |
がん専門薬剤師 | 日本医療薬学会 |
がん薬物療法専門薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
外来がん薬物療法専門薬剤師 | 日本臨床腫瘍薬学会 |
感染制御専門薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
HIV感染症専門薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
精神科専門薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
妊婦・授乳婦専門薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
腎臓病薬物治療法専門薬剤師 | 日本腎臓病薬物療法学会 |
緩和専門薬剤師 | 日本緩和医療薬学会 |
救急専門薬剤師 | 日本臨床救急医学会 |
医薬品情報専門薬剤師 | 日本医薬品情報学会 |
医療薬学専門薬剤師 | 日本医療薬学会 |
地域薬学ケア専門薬剤師 | 日本医療薬学会 |
認定女性ヘルスケア専門薬剤師 | 日本女性医学学会 |
専門性を高めて活躍したい人には、専門薬剤師の資格取得がおすすめです。
代表的な専門資格として、「がん専門薬剤師」、「感染制御専門薬剤師」、「精神科専門薬剤師」、「妊婦・授乳婦専門薬剤師」、「HIV感染症専門薬剤師」があります。
専門薬剤師の資格取得をめざす際にも、自分が興味を持って追求できる分野を選ぶことが重要です。
また、業務と並行していかに資格取得のための勉強時間を確保するかも大切なポイントとなります。
薬剤師としてのキャリアプランを立てよう
薬剤師としてのキャリアプランを立てることは、自分の将来像を明確にし、目標に向かって努力するためにとても重要です。
キャリアプランを立てる際は、まずキャリアの棚卸しを行い、自分の強みや価値観を把握することから始めましょう。
そして、中長期的な将来像を明確にし、短期的に達成すべき目標を設定していきます。
また、勤務先別のキャリアプランを参考にすることで、自分がめざすべき方向が見えてくるでしょう。
資格取得もキャリアアップに有効な手段の一つです。
自分が興味を持った分野の資格を取得することで、専門性を高めることができます。
薬剤師という職業には、多様なキャリアパスがあります。
自分なりのキャリアプランを立てて、目標に向かって努力していきましょう。