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災害時に求められる薬剤師の役割とは?活動事例も紹介

この記事の監修者
岡本妃香里
・名前
岡本妃香里

・資格
薬剤師

・プロフィール文章
2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年にライター活動を開始。現在は医薬品や化粧品、健康食品など健康と美に関する正しい情報を発信中。医療ライターとしてさまざまなジャンルの記事執筆を行っている。

日本は地震大国であり、いつどこで災害が起きてもおかしくありません。
災害時には、医療資源が限られるなかで、薬剤師を含む医療従事者の活躍が求められます。
では、実際に災害が起きたとき、薬剤師はどのような役割を担うのでしょうか。
本記事では、災害時の薬剤師の活動事例も交えながら解説します。

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災害が起きたときの薬剤師の役割

災害が起きたときの薬剤師の役割

災害が発生すると、被災地では医療への需要が高まります。
そのため、被災地以外の地域から薬剤師などの医療従事者が派遣されます。
東日本大震災の際には、被災地を除く全国から延べ8,378人の薬剤師が派遣され、支援活動が行われました。

災害時、薬剤師は主に以下の4つの活動を行います。

  • 服薬指導や薬の割り出し
  • 医師や看護師への情報提供
  • 医薬品の管理や仕分け
  • 医薬品などの供給

以下では、それぞれの仕事内容について説明します。

参照:社団法人 日本薬剤師会「東日本大震災における活動報告書」

服薬指導や薬の割り出し

災害時、薬剤師は被災地の救護所や避難所に赴き、服薬指導や薬の割り出しを行います。

被災地では、薬歴やカルテなどが見られない状況にあることがほとんどです。そのため、患者さんから聞き取りを行い、服用していた薬を割り出す必要があります。
とはいえ、服用している薬の名前をきちんと覚えていらっしゃる方はあまり多くありません。そこで薬の形状や、診断された病名などをヒアリングし、薬を特定して限られた医薬品のなかから適切な薬を選択します。
お薬手帳があれば、薬歴の確認がスムーズにできるため、薬の提供において非常に便利です。

参照:厚生労働省「厚生労働省防災業務計画」

医師や看護師への情報提供

被災地では、医師や看護師なども患者さんの健康管理に携わります。
薬剤師は、医師や看護師から医薬品についての問い合わせを受けることも多いため、その都度情報提供を行うことも重要な役割です。

被災地で提供できる医薬品は限られているため、代わりになる薬の提案を求められる場合もあります。

医薬品の管理や仕分け

被災地では医薬品が不足してしまう状況がよくあります。
そのため、全国から支援物資として医薬品が届けられることが多いです。

厚生労働省防災業務計画にも記載されているとおり、薬剤師は医薬品の迅速な供給と適正使用に努める必要があります。
支援物資として送られてきた医薬品の種類や数量を把握し、適切に保管・管理しましょう。

医薬品などの供給

支援物資として届けられた医薬品は、分類・仕分けされたあと、救護所や救護センターへ供給されます。
救護所や救護センターでは、医療用医薬品だけでなく、便秘薬や風邪薬などの市販薬も供給されることがあります。
また、マスクや消毒キットなどの衛生用品を供給することも多いです。
被災地のニーズに合わせて、適切な物資を供給しましょう。

災害時に薬剤師が抱える課題

災害時には、全国から薬剤師を含む医療従事者が派遣されますが、課題も多く残っているのが現状です。
人手だけでなく、医療資源も限られるなかで対応しなければならないため、さまざまな困難がともないます。
ここでは、災害時に薬剤師が直面する主な課題を2つ紹介します。

災害が発生したときでも医療を継続して提供できる環境を整える

被災経験のある東北の病院では、災害時に直面した問題点として以下の内容を提言しています。

  • 暖房機能が使えないことによる低体温症への対応
  • エレベーター停止時の医療器材や患者さんの搬送対応
  • 通信手段の喪失
  • 電気やガス、水道などのライフラインが停止した際の備え
  • 非常用の医薬品や水、食料などの備蓄

エレベーターは、震災直後は安全確保のため使用不可能になることがほとんどです。東日本大震災のときは、医療器材や患者さんの搬送は階段を使って行われました。医薬品や水、食料などを備蓄しておらず不足に陥った医療機関も多くあります。
災害はいつどこで起こるかわからないため、災害対策マニュアルを充実させ、日頃から対策を講じておくことが大切です。

全地域で協力できる体制を整える

1995年1月の阪神・淡路大震災の際、平時どおりの救急医療レベルが提供できていれば、500名の命を救えたといわれています。
これ以降、災害時に一人でも多くの命を助けようと厚生労働省が発足したのが、DMAT(災害派遣医療チーム)です。
DMATは、災害時には、全国規模で医療機関と連携し、迅速に適切な医療を提供することが求められます。
薬剤師も、他職種や他地域と協力し、災害時の医療体制を整備していくことが重要です。

参照:厚生労働省 DMAT事務局「DMATとは」

災害時の薬剤師の活動事例

ここでは、実際の災害時に薬剤師が行った活動事例を2つ紹介します。
これらの事例から、災害時における薬剤師の具体的な動き方を見ていきましょう。

慢性疾患をもつ患者さんへの対応

2011年3月に発生した東日本大震災では、慢性疾患をもつ被災者に対する医療ニーズが高い状態が続いていました。
宮城県石巻市にある病院では、慢性疾患に対応する薬剤師チームの編成を実施しています。

薬剤師チームの活躍により、病院や調剤薬局で調剤した薬を被災者へ届けることができました。

お薬手帳を活用した投薬

東日本大震災の際、薬剤師は被災者から聞き取りを行って薬剤を特定し、お薬手帳に薬剤名を記載する取り組みを積極的に行いました。
この取り組みにより、医療チームが連携して効率的に診察・投薬などを行うことができました。

日本薬剤師会は約1万冊、都道府県薬剤師会からは約5万冊のお薬手帳を被災地の救護所などへ提供しています。
救護所には銘柄が異なる医薬品が混在していましたが、お薬手帳に医薬品の詳細を記載することで患者さんの不安を取り除くことができたのです。
さらに、成分変更や銘柄変更の経過を、薬剤師や医師が速やかに把握できるようになりました。

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災害時に専門的役割を果たす薬剤師資格

災害時に専門的役割を果たす薬剤師資格

災害時に専門的な役割を果たすために役立つ資格があります。

それは、災害薬事コーディネーターと災害医療認定薬剤師という資格です。
ここでは、その2つの資格について詳しく説明します。

災害薬事コーディネーター

災害薬事コーディネーターとは、医療救護活動に従事する薬剤師を調整する専門家(薬剤師)のことです。
災害薬事コーディネーターは、災害時のニーズを的確に把握し、医療を提供するために欠かせない存在です。
具体的には、以下のような仕事内容が挙げられます。

  • 薬剤師や医薬品に対する需要を把握し、取りまとめる
  • 災害対応職員(県本部および方面本部)へ医薬品についての専門的なアドバイス
  • 他県からの派遣薬剤師の受入調整
  • 支援医薬品の管理・分配

似たようなものに、災害医療コーディネーターというものもあります。災害医療コーディネーターは、災害時に医療情報を集約して一元化し、医療資源の配分や調整を行う医師のことです。災害時には、この災害医療コーディネーターとも連携を取りながら対応していきます。

災害医療認定薬剤師

災害医療認定薬剤師とは、災害時に対応できる薬剤師のことです。
この資格は、日本災害医療薬剤師学会により登録されました。
災害医療認定薬剤師は、薬剤師免許を有するなど、いくつかの条件を満たす人のみが取得可能な資格です。
災害医療等に関する研修で得た専門的な知識を活かし、被災地で薬剤師のリーダーとして先頭に立つ役割発揮が期待されます。

災害医療認定薬剤師の有する具体的な知識やノウハウは、以下のとおりです。

  • 災害医療に関する基礎的な知識
  • 災害時の薬事基礎(医薬品流通、法的特例措置等)
  • 災害時対応の原則(CSCA)

災害時に効率良く活躍できる薬剤師になるために、この資格を取得することをおすすめします。

災害時にも活躍できる薬剤師をめざそう

災害が発生すると、現場が大混乱に陥り、医薬品の供給がうまくいかなくなることがあります。
そんななかで、薬剤師が落ち着いて迅速に対応することで、救える命があります。
災害はいつ起こるかわからないため、日頃からマニュアルを作るなどの対策を講じておくことが重要です。
薬剤師一人ひとりが災害医療について学び、いざというときに力を発揮できるよう備えておきましょう。

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