
介護福祉士は主に高齢者の介護を行う職種であり、保育士は乳幼児のお世話や教育を担う職種です。
まったく異なる職業に見えますが、両方とも福祉職の基礎となる部分が共通しており、世の中の需要が高い職業です。
今回の記事では、介護福祉士と保育士の両方の資格を取得する方法やメリットについて紹介していきます。
目次
介護福祉士は保育士試験の一部が免除される
介護福祉士の資格を持っている場合、保育士試験の一部が免除されます。
一般に、保育士の資格を取得するためには、年に2回実施される筆記試験と実技試験を受けて合格しなければなりません。
筆記試験は、以下の9科目で構成されています。
- 保育原理
- 教育原理
- 社会的養護
- 子ども家庭福祉
- 社会福祉
- 保育の心理学
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
介護福祉士の資格取得者は、上記の9科目のうち、社会的養護・子ども家庭福祉・社会福祉の3科目の試験が免除されます。
介護福祉士と保育士の両方の資格を取得する方法
介護福祉士と保育士の資格の両方を取得するには、どのような方法があるのでしょうか?
介護福祉士の資格のみ取得している場合、保育士の資格のみ取得している場合、どちらの資格も取得していない場合の3パターンに分けて紹介していきます。
介護福祉士の資格を持っている場合
保育士資格の取得方法は最終学歴によって異なりますので、それぞれ確認していきましょう。
最終学歴が指定保育士養成施設は、試験を受けずに保育士資格を得られます。
それ以外の4年制大学・短大・専門学校卒業の場合、そのまま保育士試験を受けられるため、筆記・実技ともに合格すれば保育士資格を取得できます。
最終学歴が高等学校卒業の場合は上記2つのルート、もしくは児童福祉施設で実務を2年以上経験し、かつ総勤務時間数で2,880時間以上従事するという条件を満たすことで、保育士試験の受験資格が得られます。
介護福祉士の資格は、保育士試験の科目の免除の際に有効になるため、保育士試験の受験申請時に登録証のコピーの提出を忘れないようにしましょう。
保育士の資格を持っている場合
介護福祉士の資格取得方法として、一般的に実務経験ルート、養成施設ルート、福祉系高校ルートがあります。
各ルートの内容は以下のとおりです。
- 実務経験ルート:3年以上の介護業務を経験後に実務者研修を受け、介護福祉士の国家試験を受験
- 養成施設ルート:介護福祉士養成施設で2年以上学習したあと、介護福祉士の国家試験を受験
- 福祉系高校ルート:福祉系高校に3年間通い、介護福祉士の国家試験を受験
保育士養成施設を卒業した場合は、1年制の養成施設修了で国家試験の受験資格を得られるため、最短1年間で介護福祉士の資格を取得できることになります。
しかし、養成施設を経ずに保育士試験を受験して保育士資格を取得した場合、介護福祉士の資格取得方法は一般的な方法と変わりありません。
どちらの資格も持っていない場合
現段階でどちらの資格も取得しておらず、かつ最終学歴が大学・短大・専門学校の場合は、保育士試験を受験して保育士資格を取得したのちに介護福祉士養成施設に通うことにより、最短2〜3年で両方の資格取得が可能となります。
また、最終学歴が高等学校卒業の場合は、指定保育士養成施設に通って保育士資格を取得後、1年制の介護福祉士の養成施設に通うことで、介護福祉士資格取得をめざせます。
この方法であれば最短3年間で2つの資格取得が可能となるためおすすめです。
介護福祉士と保育士の両方の資格を取得するメリット
介護福祉士と保育士の両方の資格を取得すれば、自身の将来性を広げられます。
両方の資格を取得するメリットを見ていきましょう。
働き方・場所の選択肢が増える
両方の資格を取得することで、介護福祉士としても保育士としても働くことができるため、働く場所の選択肢が増えます。
自身のライフスタイルに合った就職先を探すことはなかなか難しい場合もありますが、働く場所の選択肢を増やすことで、転職活動を行いやすくなるでしょう。
また、近年では、幼児向けの施設と高齢者向けの施設を組み合わせた幼老複合施設もあり、そのような施設では、介護福祉士と保育士の両方の資格を持った方が歓迎される可能性もあります。
福祉分野のスキルを広げることができる
両方の資格を取得することによって、高齢者介護と乳幼児保育の両方の知識と技術を身につけることができ、自身のスキルアップにつながります。
例えば、障がい児支援施設などでは、障がいに対する介護福祉士の知識に加え、子どもの発達についての保育士の知識があることで、より良いサービスが提供できるかもしれません。
福祉関係の知識を幅広く身につけることで、それぞれの分野での応用を活かすことができたり、より価値の高いサービスを提供できる人材をめざせます。
介護福祉士と保育士の違い
介護福祉士と保育士は両方とも福祉系の職業ではありますが、働く場所やサービスを提供する相手はまったく異なります。
両者の違いを詳しく見てみましょう。
働く場所が異なる
介護福祉士の主な勤務先としては、介護老人福祉施設や居宅介護支援事業所などの高齢者福祉関係が81.8%と最も多く、次いで障がい者(児)福祉関係が9.4%、医療関係が6.1%となっています。
一方で保育士の勤務先は、認可保育所が64.4%と最も多く、次いで認証保育所が7.4%、認定こども園は5.4%です(東京都の場合)。
他にも、割合は少ないですが、ベビーシッター、学童クラブ、子育て広場や医療機関、企業内保育所など、幅広い勤務先があります。
このように介護福祉士と保育士では、勤務先が大きく異なります。
どのような年代の方を支援したいかを考えることで、どちらの資格を実際の仕事に活かすのか決めることができるでしょう。
仕事内容が異なる
介護福祉士と保育士は仕事内容が異なります。
介護福祉士の主な仕事内容は、利用者の入浴介助や食事介助などの身体介護、買い物や洗濯などの生活支援や、ご家族・利用者への指導・生活相談です。
他にも、介護福祉士は、介護業界で唯一の国家資格であるため、介護の専門職として経験を経ることで、現場スタッフへの指示などマネジメント業務を行うこともあるでしょう。
一方で、保育士の主な仕事内容は、外で働いている保護者の代わりに乳幼児を預かり、保育を行うことです。
保育の知識を持った専門職として、子どもの成長に合わせた遊びや活動を提供し、保護者とともに子どもの成長を支援していきます。
介護福祉士と保育士は資格が一本化される?
厚生労働省は急速な少子高齢化に対応するため、平成27年に「厚生労働省まち・ひと・しごと創生サポートプラン
そのなかの医療・介護、福祉サービスの取り組み方針として、高齢者福祉・障がい者福祉・児童福祉といった福祉サービスの融合や、それにともなう介護福祉士・保育士といった専門職の統合、連携の強化を掲げています。
現時点では、介護福祉士と保育士の資格の一本化はまだ決まっていませんが、一本化の動きがあるのは事実といえるでしょう。
介護福祉士と保育士の資格を取得して仕事の選択肢を増やそう
介護福祉士と保育士の両方の資格を取得することで、就職先の選択肢が広がったり、自身のスキルアップにつなげられます。
また、介護福祉士の資格を取得している方は、保育士資格取得の際に試験科目の免除など優遇措置を受けられます。
現時点でいずれかの資格を取得しようか迷っていたり、もう一方の資格取得を考えている方は、この機会に両方の資格取得をめざしてみてはいかがでしょうか?