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介護福祉士実務者研修とは?受験資格や修了のメリットも解説

この記事の監修者
さとひろ
​​資格​
​​社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員・介護福祉士・第二種衛生管理者など​

​​【プロフィール】​
​​特別養護老人ホームの生活相談員。介護職員やケアマネジャーも含めて約20年の経験あり。施設に勤めながら、ライターとして介護・福祉系の記事を執筆。​

介護福祉士実務者研修は、質の高い介護サービスを提供するための実践的な知識と技術の習得を目的としており、介護福祉士の国家試験を受けるために必須の研修です。
介護の仕事をしている方のなかには、介護福祉士の資格取得をめざすために実務者研修の受講を考える方もいるでしょう。

本記事では、介護福祉士実務者研修の概要や研修を修了するメリットについて解説しています。
よくある疑問についても触れていますので、介護職員としてステップアップを考えている方は、ぜひ参考にしてください。

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介護福祉士実務者研修とは?

介護福祉士実務者研修とは?

介護福祉士実務者研修課程修了は、介護に関わる資格の一つです。
その名のとおり、介護福祉士実務者研修を修了することで取得できます。
なお、研修そのものも、修了によって取得できる資格も、ともに「実務者研修」と略すのが一般的です。

実務者研修は介護職員初任者研修課程修了(初任者研修)の上位資格にあたり、介護福祉士の国家試験を受験するために必須の資格でもあります。

ここでは、実務者研修の概要や受講の仕方、おおよその費用を見ていきましょう。

実務者研修の概要

実務者研修の概要は、以下の表のとおりです。

受講資格 なし
受講の仕方 昼間課程・夜間課程・通信課程あり
受講期間 6ヵ月・450時間以上
費用の目安 無資格 10~25万円
初任者研修、ヘルパー2級資格あり 10~15万円
ヘルパー1級資格あり 5~10万円
介護職員基礎研修経験あり 3~5万円
申し込み 各養成施設

なお、実務者研修受講後の修了試験は義務付けられておりませんが、実施している養成施設もあります。

受講資格

実務者研修には受講要件がないため、誰でも受講できます。
初任者研修の上位資格に位置付けられていますが、初任者研修を未受講でも受講可能です。

しかし初任者研修の知識やスキルがないと、研修カリキュラムについていけない可能性もあります。
初任者研修と実務者研修の違いについては、「受講期間」のパートでふれるので確認してみてください。

受講の仕方

実務者研修を実施している実務者養成施設は全国に318課程あり、年間総定員は約9万人です。
各養成施設は都道府県に認可を受けているため、どの養成施設でも同じカリキュラムを受講できます。

養成施設での課程は「昼間課程」「夜間課程」「通信課程」の3種類であるため、自分のライフスタイルと照らし合わせ、受講できる養成施設を選択しましょう。

受講期間

実務者研修は、20科目450時間のカリキュラムです。
このなかに初任者研修のカリキュラム9科目130時間が含まれているため、初任者研修の資格所有者は、実務者研修の9科目130時間が免除されます。

費用の目安

実務者研修は、保有資格によって免除される科目があり、受講科目によって費用が異なります。
また、研修を実施する養成施設によっても受講費の金額設定はさまざまです。

保有資格ごとの受講費の目安は以下のとおりです。

  • 無資格:10~25万円
  • 介護職員初任者研修、ホームヘルパー2級資格あり:10~15万円
  • ホームヘルパー1級資格あり:5~10万円
  • 介護職員基礎研修あり:3~5万円

この金額はあくまで目安であるため、詳細を知りたい方は、厚生労働省がまとめている「実務者養成施設指定一覧」から、養成施設へ直接問い合わせてください。
養成施設によっては、割引制度や保有資格による免除を利用できる場合もあります。

研修内容

実務者研修の到達目標は、「幅広い利用者に対して基本的な介護を提供する能力の修得」です。
カリキュラムは20科目450時間あり、決められたカリキュラムをすべて受講する必要があります。

ただし、保有している資格によって免除される科目があります。
例えば、介護職員初任者研修を修了している場合には、130時間分の受講が免除の対象です。
旧介護職員基礎研修を修了している場合は、医療的ケア以外の科目は免除になるため、50時間という比較的短期間で研修を修了できるでしょう。

また、旧ホームヘルパー(訪問介護員養成研修課程)修了者の場合は、取得している級によって30〜355時間の免除を受けられます。
自分の保有している資格を確認し、効率良く修了できるようにしましょう。

各科目と受講時間は以下の表のとおりです。

科目 受講時間 訪問介護員養成研修課程1級修了者の免除科目 訪問介護員養成研修課程2級修了者の免除科目 訪問介護員養成研修課程3級修了者の免除科目 介護職員基礎研修 介護職員初任者研修修了者の免除科目 その他全国研修の免除科目
人間の尊厳と自立 5
社会の理解Ⅰ 5
社会の理解Ⅱ 30
介護の基本Ⅰ 10
介護の基本Ⅱ 20
コミュニケーション技術 20
生活支援技術Ⅰ 20
生活支援技術Ⅱ 30
介護過程Ⅰ 20
介護過程Ⅱ 25
介護過程Ⅲ(スクーリング) 45
発達と老化の理解Ⅰ 10
発達と老化の理解Ⅱ 20
認知症の理解Ⅰ 10 認知症介護実践者研修
認知症の理解Ⅱ 20 認知症介護実践者研修
障害の理解Ⅰ 10
障害の理解Ⅱ 20
こころとからだのしくみⅠ 20
こころとからだのしくみⅡ 60
医療的ケア 50(※) 喀痰吸引等研修

※「医療的ケア」は50時間の講義とは別に演習を受ける必要がある

出典:実務者研修における「他研修等の修了認定」の留意点について
実務者研修の指定基準について

介護職員初任者研修との違い

介護職員に関する研修には、介護職員実務者研修の他にも、介護の入門的な資格といえる介護職員初任者研修があります。
実務者研修と初任者研修には、どのような違いがあるのでしょうか。
その違いを以下の表にまとめています。

実務者研修 初任者研修
受講科目数 20科目 9科目
受講時間 450時間 130時間
医療的ケアの基礎知識習得 喀痰吸引、経管栄養 なし
修了試験 なし(養成施設によってはあり) あり
サービス提供責任者の資格要件 不可

なお、実務者研修は初任者研修の上位資格ですが、初任者研修を修了していない状態でも受講可能です。
実務者研修は、初任者研修と比べると受講時間が長いですが、初任者研修を修了していると、その分のカリキュラムは免除されます。

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介護福祉士実務者研修を修了するメリット

実務者研修を受講するメリットは、以下の4点です。

  • 介護福祉士の国家試験の受験資格が得られる
  • サービス提供責任者として働ける
  • たん吸引と経管栄養が実施できる
  • 転職に有利

それぞれを順番に解説します。

介護福祉士の国家試験の受験資格が得られる

実務者研修を取得すると、3年以上の実務経験と併せることで、介護福祉士の国家試験の受験資格が得られます。
国家試験の受験資格は、「実務経験ルート」「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」の3種類です。
実務経験ルートで国家試験を受験するためには、介護の実務経験3年以上に加えて、実務者研修修了が必須となります。

サービス提供責任者として働ける

実務者研修を取得すると「サービス提供責任者」として働けます。
サービス提供責任者とは、訪問介護事業所に必須の職種であり、介護サービス利用者やケアマネジャー、介護職員間の連絡や調整などのコーディネートが主な業務です。

初任者研修のみでサービス提供責任者として働くためには、別途実務研修3年(540日)が必要になります。
実務者研修を取得するとサービス提供責任者の資格を有するので、実務経験の有無は問われません。

たん吸引と経管栄養が実施できる

実務者研修の修了者は、喀痰吸引等研修を併せて修了することで、たん吸引と経管栄養を実施できるようになります。
たん吸引と経管栄養は医療行為にあたり、従来は医師や看護師といった医療従事者しか実施できませんでした。
しかし2012年の法改正により、実務者研修と喀痰吸引等研修を修了した介護職員も、これらの医療行為を行えるようになったのです。

転職に有利

実務者研修を取得すると、無資格者や、初任者研修しか取得していない人よりも高い専門知識を保有していると認められ、高待遇の仕事に応募できます。

また、勤めている施設や事業所においても、処遇改善が期待できます。
厚生労働省が発表している「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員の資格ごとの平均給与額は以下のとおりです。

  • 実務者研修:302,430円
  • 初任者研修:300,240円
  • 無資格  :268,680円

介護福祉士実務者研修についてよくある疑問

ここでは、介護福祉士実務者研修に関するよくある疑問についてお答えします。

実務者研修と初任者研修はどちらを受けるのが良い?

実務者研修と初任者研修のどちらを受けるのが良いか迷った場合は、自身の実務経験をもとに考えましょう。
すでに介護職員としての実務経験が3年以上あるならば、基礎的な知識や技術は身についているはずですので、実務者研修の受講をおすすめします。
研修を修了すれば、介護福祉士国家試験の受験資格を得られます。

また、実務経験が3年に満たない場合でも、ある程度の期間介護職員として働いていて、短期でスキルアップ・キャリアアップをめざしたい方は、実務者研修から受けた方が効率的です。

ただし、まだ介護職員として働き始めたばかりで経験が浅い場合、実務者研修の内容はハードルが高い可能性があります。
まずは初心者研修からはじめて、じっくりと知識やスキルを高めていくのが良いでしょう。

実務者研修の修了試験は難しい?

実務者研修には、修了試験の実施義務はありません。
しかし、スクールによっては、研修の理解度を確認するために試験を実施している場合もあります。

研修修了の判定をするものではなく、あくまで理解度の確認のためのものなので、研修内容を理解できていればそこまで難易度は高くはありません。
不合格になった場合でも、追試を受けて合格すれば問題ありません。

修了試験の有無が気になる場合は、事前に養成施設に確認しておきましょう。

実務者研修は働きながら受講できる?

実務者研修は、働きながら受講することも可能です。
介護福祉士の国家試験を受けるためには、実務者研修の修了とともに3年以上の実務経験が必要であるため、介護職員として勤務しながら実務者研修を受講する人も少なくありません。

前述のとおり実務者研修の修了には6ヵ月・450時間以上かかるため、働きながら受講するのであれば無理のないスケジュールを組むことが大切です。
通信での在宅受講と通学を組み合わせたり、夜間課程を選択したりするのも選択肢の一つです。
施設によっては勤務時間内の受講が認められている場合もあるので、自身が働く施設へ確認しておきましょう。

実務者研修で利用できる支援制度はある?

実務者研修には、以下のような公的な支援制度があります。

  • 教育訓練給付制度:厚生労働大臣指定教育訓練を受けた人に、受講費用の最大70%(年間上限56万円)が支給される制度。厚生労働大臣指定教育訓練に、介護福祉士実務者研修も含まれている
  • 介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度:各都道府県の社会福祉協議会が、無利子で介護福祉士実務者研修の受講費用を貸し付ける制度。上限額は20万円
  • 公共職業訓練:離職後ハローワークで求職中の人を対象に、無料で通学講座を受講できる制度。ハローワークの受講斡旋を受け、さらに面接や筆記試験などの選考がある
  • 求職者支援制度:雇用保険を受給できない求職者を対象に、再就職、転職、スキルアップをめざした講座の無料受講と、月に10万円の生活支援の給付を受けられる制度。ハローワークによる就職支援も受けられる

介護福祉士の実務者研修を修了して活躍の場を広げよう

介護福祉士実務者研修を修了すると、介護福祉士国家試験の受験資格を一部満たせたり、サービス提供責任者として働けたり、一部の医療行為が実施できたりと、介護職員としての活躍の場が広がります。
また、処遇の改善や転職が有利になるなどメリットは豊富です。

実務者養成施設における年間総定員は約9万人ですが、定員が10〜20名程度の施設もあります。
居住地や介護施設、事業所から通える実務者養成施設を<実務者養成施設指定一覧>から見つけて、不明点などを問い合わせてみてください。

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執筆者について

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