
介護に従事されている方のなかには、介護福祉士としてステップアップを考えていたり、施設や事業所から薦められたりして、介護福祉士実務者研修課程修了(実務者研修)の取得を検討している方もいるでしょう。
この記事では、実務者研修の概要や研修内容、受講するメリットなどを解説していきます。
受講を考えている方は、参考にしてみてください。
目次
介護福祉士実務者研修とは?
介護福祉士実務者研修課程修了は、介護に関わる資格の一つです。
その名のとおり、介護福祉士実務者研修を修了することで取得できます。
なお、研修そのものも、修了によって取得できる資格も、ともに「実務者研修」と略すのが一般的です。
実務者研修は介護職員初任者研修課程修了(初任者研修)の上位資格にあたり、介護福祉士の国家試験を受験するために必須の資格でもあります。
ここでは、実務者研修の概要や受講の仕方、おおよその費用を見ていきましょう。
実務者研修の概要
実務者研修の概要は、以下の表のとおりです。
受講資格 | なし | |
受講の仕方 | 昼間課程・夜間課程・通信課程あり | |
受講期間 | 6ヵ月・450時間以上 | |
費用の目安 | 無資格 | 10~25万円 |
初任者研修、ヘルパー2級資格あり | 10~15万円 | |
ヘルパー1級資格あり | 5~10万円 | |
介護職員基礎研修経験あり | 3~5万円 | |
申し込み | 各養成施設 |
なお、実務者研修受講後の修了試験は義務付けられておりませんが、実施している養成施設もあります。
受講資格
実務者研修には受講要件がないため、誰でも受講できます。
初任者研修の上位資格に位置付けられていますが、初任者研修を未受講でも受講可能です。
しかし初任者研修の知識やスキルがないと、研修カリキュラムについていけない可能性もあります。
初任者研修と実務者研修の違いについては、「受講期間」のパートでふれるので確認してみてください。
受講の仕方
実務者研修を実施している実務者養成施設は全国に318課程あり、年間総定員は約9万人です。
各養成施設は都道府県に認可を受けているため、どの養成施設でも同じカリキュラムを受講できます。
養成施設での課程は「昼間課程」「夜間課程」「通信課程」の3種類であるため、自分のライフスタイルと照らし合わせ、受講できる養成施設を選択しましょう。
受講期間
実務者研修は、20科目450時間のカリキュラムです。
このなかに初任者研修のカリキュラム9科目130時間が含まれているため、初任者研修の資格所有者は、実務者研修の9科目130時間が免除されます。
費用の目安
概要表のとおり、実務者研修の費用は保有している資格や養成施設によって異なります。
あくまでも目安になるため、詳細を知りたい方は厚生労働省がまとめている<実務者養成施設指定一覧>から養成施設へ問い合わせをしてみてください。
養成施設によっては、割引制度や保有資格による免除などを受けられる場合もあります。
研修内容
実務者研修の到達目標は、「幅広い利用者に対する基本的な介護提供能力の修得」です。
20科目450時間の実務者研修の内容は、以下のようになっています。
- 社会福祉制度(介護保険等)
- 認知症の理解
- 医療の知識
- 障害の理解
- 介護技術
- 介護過程
- たんの吸引、経管栄養等
研修の読替も一部可能であり、例えば過去に受講したヘルパー2級研修や認知症研修受講者は、実務研修を一部免除できます。
介護福祉士実務者研修を修了するメリット
実務者研修を受講するメリットは、以下の4点です。
- 介護福祉士の国家試験の受験資格が得られる
- サービス提供責任者として働ける
- たん吸引と経管栄養が実施できる
- 転職に有利
それぞれを順番に解説します。
介護福祉士の国家試験の受験資格が得られる
実務者研修を取得すると、3年以上の実務経験と併せることで、介護福祉士の国家試験の受験資格が得られます。
国家試験の受験資格は、「実務経験ルート」「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」の3種類です。
実務経験ルートで国家試験を受験するためには、介護の実務経験3年以上に加えて、実務者研修修了が必須となります。
サービス提供責任者として働ける
実務者研修を取得すると「サービス提供責任者」として働けます。
サービス提供責任者とは、訪問介護事業所に必須の職種であり、介護サービス利用者やケアマネジャー、介護職員間の連絡や調整などのコーディネートが主な業務です。
初任者研修のみでサービス提供責任者として働くためには、別途実務研修3年(540日)が必要になります。
実務者研修を取得するとサービス提供責任者の資格を有するので、実務経験の有無は問われません。
たん吸引と経管栄養が実施できる
実務者研修の修了者は、喀痰吸引等研修を併せて修了することで、たん吸引と経管栄養を実施できるようになります。
たん吸引と経管栄養は医療行為にあたり、従来は医師や看護師といった医療従事者しか実施できませんでした。
しかし2012年の法改正により、実務者研修と喀痰吸引等研修を修了した介護職員も、これらの医療行為を行えるようになったのです。
転職に有利
実務者研修を取得すると、無資格者や、初任者研修しか取得していない人よりも高い専門知識を保有していると認められ、高待遇の仕事に応募できます。
また、勤めている施設や事業所においても、処遇改善が期待できます。
厚生労働省が発表している「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」では、介護職員の平均給与額は以下のとおりです。
- 実務者研修:307,330円
- 初任者研修:300,510円
介護福祉士の実務者研修を修了して活躍の場を広げよう
介護福祉士実務者研修を修了すると、介護福祉士国家試験の受験資格を一部満たせたり、サービス提供責任者として働けたり、一部の医療行為が実施できたりと、介護職員としての活躍の場が広がります。
また、処遇の改善や転職が有利になるなどメリットは豊富です。
実務者養成施設における年間総定員は約9万人ですが、定員が10〜20名程度の施設もあります。
居住地や介護施設、事業所から通える実務者養成施設を<実務者養成施設指定一覧>から見つけて、不明点などを問い合わせてみてください。