介護福祉士になるには資格が必要なのか、もし必要なら、資格試験を受験するためにどのような要件を満たさなければならないのか、気になる人も多いでしょう。
結論からいうと、介護福祉士になるには国家資格が必要で、その国家資格試験には受験資格が設定されています。
受験資格を得るためのルートは大きく分けて4つです。
本記事では、介護福祉士国家試験を受験するための4つのルートを詳しく解説します。
介護福祉士になりたい人や興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
介護福祉士の受験資格の概要
介護福祉士の受験資格を知るためには、概要を把握しておく必要があります。
ここではまず、介護福祉士の受験資格の概要として、以下の2つを紹介します。
- 年齢などの制限はなし
- 数年に一度改正される
では、一つずつ見ていきましょう。
年齢などの制限はなし
介護福祉士国家試験を受ける条件には、国籍や性別、年齢、学歴などの制約はありません。
そのため、受験資格さえ満たしていれば誰でも受験が可能です。
受験資格を満たすには、養成施設で学んだり実務経験を積んだりする必要があります。
受験資格については次の章で詳しく解説していきます。
数年に一度改正される
介護福祉士の受験資格は数年に一度改正されるため、動向を注意深く確認する必要があります。
直近の改正では、養成施設ルートからの受験資格が改正されました。
どのように変更されたかというと、養成所・養成学校といった各種養成施設の卒業者も国家試験を受験し、合格することが必須になったのです。
ただし、2026年度までに卒業する人には、5年間の経過措置が用意されており、すぐに国家試験を受験しなくても問題ありません。
5年の経過措置のあとの資格について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
介護福祉士国家試験の受験資格を得る4つのルート
介護福祉国家試験の受験資格を得るルートは、以下の4つです。
- 養成施設ルート
- 実務経験ルート
- 福祉系高校ルート
- 経済連携協定(EPA)ルート
ここでは、それぞれのルートについて詳しく解説します。
養成施設ルート
養成施設ルートは、介護福祉士の受験資格を得るために高卒後に養成施設に通う方法です。
高校卒業後に養成施設に通う方法では、以下の2つの道があります。
- 高校卒業後に2年以上養成施設で学ぶ
- 高校卒業後に4年制の福祉系大学や社会福祉士養成施設、保育士養成施設などを卒業し、1年以上介護福祉養成施設で学ぶ
上記のように指定された養成施設を卒業すれば、介護福祉士国家試験の受験資格を満たせます。
実務経験ルート
実務経験ルートには、実務経験が3年以上必要です。
この方法では、以下の2つの道があります。
- 実務経験(従業期間3年以上かつ従事日数が540日以上)+実務者研修(EPA介護福祉士候補者以外)
- 実務経験(従業期間3年以上かつ従事日が540日以上)+介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修
まずは介護の世界で働いてみて、さらに飛躍したいと考える人などは、このルートが向いているでしょう。
なお、介護職員基礎研修は2012年に廃止されているため、今から介護福祉士をめざす方は「実務者研修+3年以上の実務経験」のルートになります。
過去に介護職員基礎研修を修了している場合は、実務経験と喀痰吸引等研修の修了で受験資格を得ることが可能です。
実務経験ルートで介護福祉士の受験資格を満たすために必要な、実務経験、実務者研修、介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修については、以下で解説します。
実務経験ルートに必要な日数
上述したとおり実務経験ルートに必要な実務経験には、3年以上の従事期間と540日以上従事日数の両方を満たさなければなりません。
いずれの日数も、試験を受ける年度の3月末日までの合計になります。
<従業期間とは>
実務経験の対象となる現場で働いていた期間であり、産休・育休や病休などの休職期間も含まれます。
また、従業期間3年以上は1,095日以上と定められています。
<従事日数とは>
実際に業務に従事した日数であり、休暇で実際に従事しなかった日は除かなければなりません。
ただし、1日の勤務時間は問わないため、1時間働いても7時間働いても1日と計算されます。
同じ日に複数の事業所で働いた場合も1日として扱われるので注意しましょう。
実務者研修とは
介護福祉士の実務者研修は、実務経験だけでは身につけることが難しい、知識や技術の習得を目的とした研修です。
研修時間はトータルで450時間と決められていますが、自宅学習と通学を組み合わせて行うため、働きながら進めることができます。
喀痰吸引等研修とは
喀痰吸引等研修とは、たんの吸引と経管栄養を行える介護職員を養成する研修です。
経管栄養とは、胃ろうや腸ろうなど、管を取り付けて口を介さずに栄養を直接補給する方法です。
喀痰吸引等研修には第1号と第2号、第3号があり、対処できる処置や対象者が異なります。
どれも基本研修+実地研修が必要ですが、受講時間などが異なるので注意しましょう。
福祉系高校ルート
福祉系高校とは福祉系高等学校等と特例高等学校等を指し、文部科学大臣および厚生労働大臣によって指定されています。
福祉系高校ルートは、平成21年度以降の入学者や特例高校等、平成20年度以前入学者の3つで介護福祉士になる道のりが異なるので注意が必要です。
3つのルートの受験資格の要件は以下のとおりです。
- 平成20年度以前に福祉系高校入学の場合
卒業後、介護技術講習または介護過程・介護過程Ⅲを受講。受講しない場合は実技試験を受ける。 - 特例高校等に入学する場合
実務経験を9ヵ月以上積む。介護技術講習または介護過程・介護過程Ⅲを受講。受講しない場合は実技試験を受ける。 - 平成21年度以降に福祉系高校に入学する場合
卒業と同時に受験資格を得る
特例高校や平成20年度以前入学の場合は、卒業後に講習を受ける、または実技試験を受ける必要があります。
福祉系高校は卒業すれば受験資格が得られるため、最短で福祉介護士になれる道といえるでしょう。
経済連携協定(EPA)ルート
経済連携協定(EPA)ルートとは、いわゆるEPA介護福祉士候補者のルートです。
公益社団法人国際厚生事業団では、EPA介護福祉士候補者について以下のように説明しています。
公益社団法人国際厚生事業団が紹介した受入機関と締結した雇用契約に明示された受入施設において、研修責任者の監督の下で日本の介護福祉士資格を取得することを目的とした研修を受けながら就労するインドネシア人、フィリピン人及びベトナム人をいいます。
EPA介護福祉士候補者に選ばれた人が以下の実務経験の要件を満たすことで、受験資格を得ることができます。
- EPA介護福祉士候補者が3年以上の実務経験を積む。介護技術講習、介護過程・介護過程Ⅲ、実務者研修(EPA介護福祉候補者のみ)のいずれかを受講。受講しない場合は実務試験を受ける。
このルートで受験資格を得るためには、まずEPA介護福祉士候補者に選ばれなければなりません。
選ばれる要件は看護学校卒業または4年制大学卒業者であり、母国の介護資格認定者などですが、国によっても異なります。
また、EPA介護福祉士候補者が実務経験を積むための受入施設も細かく設定されています。
介護福祉士の受験資格に関して知っておきたいこと
ここからは、介護福祉士の受験資格に関して知っておきたいこととして、以下の2つを紹介します。
- パート・アルバイト勤務における実務経験の扱い
- 試験の申し込み方法
パート・アルバイト勤務における実務経験の扱い
実務経験ルートで受験資格を満たしたい場合「正社員じゃないとだめ?」と気になる人も多いでしょう。
実は、正社員に限らず、パート・アルバイトの勤務形態でも実務経験にカウントされます。
ただし、実務経験として認められるには、上記で説明したとおり、3年以上の従事期間と540日以上従事日数の両方を満たす必要があります。
その他にも、実務経験の認定要件には、施設や職種での決まりがあります。
実務経験ルートについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。
試験の申し込み方法
試験の申し込み方法をしっかり把握しておくことも大切です。
ギリギリになって焦らないよう、早めに方法を確認しておきましょう。
初めて受験する場合は、必要書類を揃えて郵送で申請します。
過去に受験したことがある場合は、インターネットでの申し込みが可能です。
介護福祉士国家試験の申し込み方法は、以下の記事で詳しく紹介しています。
自分に合ったルートで介護福祉士をめざそう
この記事では、介護福祉士国家試験の受験資格の内容を解説しました。
介護福祉士国家試験の受験資格を得るには、4つのルートのうちどれかを通る必要がありますが、規定の実務経験を積めば誰でも受験資格を得られるのが特徴です。
介護福祉士国家試験の受験資格に必要な時間数などは細かく決められているため、事前のリサーチが必要です。
自分にぴったりなルートを見つけて、ぜひ介護福祉士への道に挑戦してみましょう。