
介護福祉士は、数ある介護資格のうち、唯一の国家資格です。
介護士として働きながら、さらに活躍の場を広げたい方が、介護福祉士をめざすケースは少なくありません。
この記事では、介護福祉士の資格について、概要や取得方法などを解説しています。
さらに上位資格の認定介護福祉士についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
国家資格「介護福祉士」とは?
介護福祉士は、厚生労働省に認定された国家資格です。
介護士として働きながら、介護福祉士の資格取得をめざす方も多くいます。
ここでは介護福祉士の資格取得をめざす方へ向けて、資格の概要や介護士との違いなどをそれぞれ解説いたします。
介護福祉士は介護で唯一の国家資格
介護福祉士は1987年に誕生した、介護職で唯一の国家資格です。
2021年9月時点で、約181.3万人の登録があります。
国家資格には以下のような種類があり、介護福祉士は名称独占資格に分類されています。
業務独占資格 | 医師、看護師、薬剤師、弁護士、公認会計士など |
名称独占資格 | 介護福祉士、社会福祉士、保育士など |
設置義務資格 | 衛生管理者、放射線取扱主任者など |
名称独占資格は、有資格者以外が資格の名称を用いて業務を行えない資格のことです。
有資格者以外の者に対してこのような措置を取ることで、有資格者が提供する業務の質を担保しています。
介護福祉士の定義
介護福祉士は社会福祉士および介護福祉士法の第一章 第二条 二項により、以下のように定義されています。
「介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者をいう
引用元:社会福祉士及び介護福祉士法
介護福祉士と介護士の違い
介護福祉士と介護士の違いは資格や役割などではなく、言葉の意味の違いです。
介護福祉士は国家試験に合格した人の名称で、介護士は介護職で働く従事者全般に向けて使用される言葉です。
介護士として働くこと自体は、無資格の状態からでも可能です。
ただし、介護業務の内容により資格が必要になります。
利用者の自宅でサービスを提供する訪問介護事業の場合、食事介助や着替え介助、入浴介助、排泄介助など、直接身体に触れる介護をするには、介護職員初任者研修の資格が必要です。
介護職員初任者研修の資格の上に介護福祉士実務者研修があり、その上に介護福祉士の資格があります。
介護関連資格のキャリアパスは下図を参考にしてください。
介護福祉士の仕事内容
介護の仕事でおもな業務は、身体介護と生活援助の2つです。
介護福祉士は上記2つの業務に加え、介護分野のスペシャリストとしてマネジメント業務も任され、リーダー職に就く機会もでてきます。
それぞれの業務内容を解説します。
身体介護
介護をする際に直接身体に触れる介助をすることを、身体介護といいます。
仕事内容は、食事介助、入浴介助、清拭、更衣介助、排泄介助、体位変換、移動介助などです。
身体に直接触れませんが、要介護者の自立した日常生活を支援するために、声かけなどをしながら見守る行為も身体介護の一部になります。
要介護者が自分でできない部分をサポートするため、要介護度により介護する頻度が変わります。
介護施設内で利用者にサービスを提供するときは、資格がなくても身体介護を行えます。
一方、利用者のご自宅でサービスを提供する訪問介護事業の場合は、介護職員初任者研修修了者の資格が必要です。
生活援助
生活援助は、日常生活を送るために必要な家事などを代行します。
仕事内容は、食事の支度、掃除、洗濯、生活用品の買物、薬の受け取りなどです。
本人に直接触れたりしないため、特別な資格はいりません。
介護者が自身の生活を不自由なく送るために援助するサービスなので、ペットの世話など本人に関わらない家事は、援助の対象外になります。
マネジメント業務
介護福祉士は、介護の仕事に対して一定の経験や知識を備えた資格者です。
そのため、介護者に対する仕事だけでなく、施設内のマネジメント業務も行います。
介護職員の指導や育成、業務管理など、施設全体の仕事内容の質を向上させ、より良いサービスを提供できるように、介護職員のチームリーダーとしての役割も担います。
介護福祉士の仕事内容の詳細は、以下の記事を参考にしてください。
>>介護福祉士とはどのような仕事?1日のスケジュールや仕事内容を紹介
介護福祉士の資格取得までのルート
出典:介護福祉士の資格取得方法
介護福祉士の資格取得のルートは4つあります。
- 養成施設ルート
都道府県知事に指定された介護福祉養成施設などで、必要な知識と技能を修得したのち、国家試験に合格して資格を取得する方法 - 実務経験ルート
3年以上の介護業務に関係する実務経験、もしくは都道府県知事が指定する実務者研修などにより必要な知識と技能を修得したのち、国家試験に合格して資格を取得する方法 - 福祉系高校ルート
文部科学大臣および厚生労働大臣に指定されている福祉系高校にて必要な知識と技能を修得したのち、国家試験に合格して資格を取得する方法 - 経済連携協定(EPA)ルート
公益社団法人国際厚生事業団が紹介した受入機関と雇用契約を結んだ施設にて、インドネシア人、フィリピン人、ベトナム人が就労をしながら研修を受け、必要な知識と技能を修得したのち、国家試験に合格して資格を取得する方法
介護福祉士国家試験の受験資格の詳細は、下記の記事を参照してください。
>>介護福祉士の受験資格は?介護福祉士になる方法や必要な資格を解説
また、介護福祉士国家試験の合格率は、下記の記事を参照してください。
>>介護福祉士の合格率を年度別に紹介!性別や受験年齢で差はある?
介護福祉士の年収
厚生労働省の令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、2021年度における介護福祉士常勤者の平均月収は約328,720円です。
また、ハローワークの求人によると、介護福祉士の賞与は2~4ヵ月分が一般的でした。
このことから計算すると、介護福祉士の年収は約493万円程度となります。
2019年10月から運用が開始された介護職員処遇改善加算により、2021年の平均月収は2020年の平均月収より6,040円上昇しました。
2022年10月以降には「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が開始され、月額9,000円相当の介護職員の収入の引き上げが実施される予定です。
上位資格「認定介護福祉士」について
高齢化により、現在の介護現場では介護利用者の増加にともなうニーズの多様化や、介護サービスの高度化が起きています。
この動きに対応するために、介護職の指導、教育、医療職との連携など、より専門性の高い人材が求められ、介護福祉士の上位資格として認定介護福祉士がつくられました。
認定介護福祉士の概要と、なり方について解説いたします。
認定介護福祉士とは
認定介護福祉士は、介護福祉士の上位資格として一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構が2015年12月に設立した民間資格です。
介護福祉士が、つぎの3項目に対応するための考え方や知識、技術などを研修で修得することを目的としています。
- 介護利用者の多様な生活環境やニーズに対応した質の高い介護の実践
- 介護サービスと介護職チームのマネジメント
- 医療との連携強化、地域包括ケア
また、介護福祉士資格取得後の継続的な自己研鑽の指標とキャリアパスを形成する側面も持っています。
認定介護福祉士になる方法
認定介護福祉士になるには、認定介護福祉士養成研修を受講し、全22科目の単位を修了する必要があります。
講習の受講条件はつぎのとおりです。
- 介護福祉士の資格を有していること
- 介護福祉士資格取得後の実務経験5年以上
- 介護職員を対象とした現任研修で100時間以上の研修歴があること
- 研修実施団体の課すレポート提出または受講試験において一定の水準の成績を修めていること※免除の場合有
※3の現任研修が200時間以上の場合は、4のレポート提出または受講試験は免除
介護福祉士についてよく理解して資格取得を検討してみよう
介護福祉士は、介護資格のなかでも上位の資格であり、唯一の国家資格です。
介護現場のリーダーとして、介護利用者の対応だけでなく、介護職チームの管理や教育指導などのマネジメント業務まで行います。
高齢化が進み介護利用者の増加が見込まれるなか、介護福祉士には介護現場を牽引する役割が期待されています。
介護福祉士の資格取得の方法を理解して、今後も需要が増えていく介護業界で活躍できる人材をめざしましょう。