高度な介護の専門知識や技術を持つとされ、国家資格にもなっている介護福祉士。
医療施設や養護施設など、介護が必要とされる現場で活躍している介護福祉士ですが、働く場所はそれだけではありません。
介護福祉士の専門知識と技術は、介護を直接行わない職業でも求められているのです。
今回は、介護福祉士の資格を活かし、介護の現場以外で働きたいと考えている方におすすめの職業を詳しく解説します。
目次
介護福祉士の現場以外の仕事
介護の現場以外で介護福祉士が活躍できる、おすすめの仕事は以下のとおりです。
- 介護福祉士養成施設の教員
- 福祉系高校の教員
- 初任者研修や実務研修の講師
- 福祉用具専門相談員
どの職業も直接現場に関わりませんが、介護福祉士の専門技術と知識が活かされる仕事です。
それぞれの職業を詳しく解説します。
介護福祉士の仕事内容をもっと詳しく知りたい方は、以下のページもご参照ください。
介護福祉士養成施設の教員
介護福祉士養成施設は、介護福祉士に必要な専門知識と技術を学べる学校のことです。
介護福祉士養成施設は全国に480校以上設置されており、介護福祉士の実務経験を持つ教員らが、介護に関わる講義や技術指導、実習などを行っています。
介護福祉士が介護福祉士養成施設の教員になるには、まず次の条件を満たすことが必須です。
- 高等学校・旧制高等学校・旧制女学校を卒業した者か、それと同等以上の学力があること
- 介護福祉士の実務に5年以上従事した経験があること
必要条件を満たしたうえで介護教員講習会を受講し、すべての課程を終了すると、介護福祉士養成施設の教員になれます。
福祉系高校の教員
介護福祉士は、福祉系高校の教員もめざせます。
ここでの福祉系高校とは、介護福祉士の国家試験受験資格を得られるものとして認定を受けた教育課程を設けている高等学校のことです。
全国に100校以上あります。
担当するのは、介護福祉基礎やコミュニケーション技術・介護実習など、介護に関する科目です。
介護福祉士から福祉系高校の教員をめざす場合は、次の条件のうちどちらかを満たすことが必須です。
- 介護福祉士の資格を取得しており、5年以上の実務経験があること
- 介護福祉士の資格を取得しており、文部科学大臣と厚生労働大臣が別に定めている講習会(介護福祉等に係る講習会)を修了していること
初任者研修や実務者研修の講師
介護福祉士は、初任者研修や実務者研修の講師もめざせます。
ただし、講師になるための要件は各都道府県によって異なるため、事前によく確認してください。
例えば、宮城県で初任者研修の講師をめざす場合、介護福祉士の資格取得後に3年以上の実務経験が必要です。
沖縄県では、介護福祉士の資格取得後5年の実務経験があると、初任者研修の講師をめざせます。
各都道府県の公式ホームページで詳細な情報が公開されているので、要件を満たしているか調べてみましょう。
福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員は、介護に必要な福祉用具のアドバイスを行う専門家です。
国家資格ではありませんが、介護保険の指定がある福祉用具レンタル事業所や販売業者では、2名以上の福祉用具専門相談員在籍が義務付けられています。
福祉用具専門相談員の資格は、各都道府県が指定した事業者による講習を受け、試験に 合格すれば取得可能です。
介護福祉士の資格がある人は、講習を受けなくても福祉用具専門相談員の仕事を担うことができます。
介護福祉士の現場以外の上級職
介護福祉士が現場以外の仕事を検討する場合、上級職をめざす方法もあります。
おすすめの上級職は次のとおりです。
- 介護支援専門員
- サービス提供責任者
- 施設長・管理者
- 看護師
- 理学療法士・作業療法士
それぞれの職業を、以下で詳しく解説します。
介護支援専門員
介護支援専門員は、介護を受ける人やご家族などの介護を担う人と、自治体や介護サービスを提供する事業者をつなぎ、橋渡しをする仕事です。
ケアマネジャーとも呼ばれ、要介護者の状態からケアプランを作成し、必要な介護サービスが受けられるよう支援します。
介護福祉士がケアマネジャーになるためには、資格取得後に実務業務を5年以上かつ900日以上経験し、介護支援専門員実務研修受講試験に合格することが条件です。
サービス提供責任者
サービス提供責任者とは、簡単にいうと介護サービスを行う事業所のまとめ役です。
在籍しているホームヘルパーの手配やスケジュール管理のほか、介護をしているご家族の相談にのったり、訪問介護の計画書を作成したりします。
サービス提供責任者は、介護福祉士や看護師・准看護師などの国家資格や、実務者研修の修了者・介護職員基礎研修の修了者、ホームヘルパー1級の人がめざせます。
介護福祉士の経験を活かし、広い視点で介護に関われる職種です。
施設長・管理者
介護福祉士が現場以外で働く場合、介護に関連する施設の施設長や管理者になるケースも見られます。
ただし、働く施設によって要件が異なるので、事前に情報を集めることが大切です。
具体的な例として、次の3つのケースを解説します。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- グループホーム・小規模多機能型居宅介護
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、簡単にいうと公的な老人養護施設です。
設備や運営などはもちろんのこと、施設長の要件も法律で基準が定まっています。
特別養護老人ホームの施設長をめざすには、次の条件を満たしていなければなりません。
- 社会福祉事業に2年以上従事している
- 社会福祉主事になる要件を満たしている
- 社会福祉施設長資格認定講習会を受けて修了している
介護福祉士は社会福祉事業ですから、資格取得後2年以上の実務経験があれば特別老人ホームの施設長・管理者になれます。
介護老人保健施設
介護老人保健施設とは、介護が必要な老人が自立して生活できるよう、医学的なケアやリハビリテーションを行う施設のことです。
介護老人保健施設は、介護というよりも医学的ケアがメインなので、介護老人法第95条により医師が管理者になることが推奨されています。
しかし、介護老人保健施設の開設者が都道府県知事からの承認を得られれば、介護福祉士でも管理者になれます。
介護老人保健施設の施設長・管理者をめざすときは、募集要項をよく確認しましょう。
グループホーム・小規模多機能型居宅介護施設
認知症の方を対象にしたグループホームや、小規模多機能型居宅介護の施設長・管理者も、介護福祉士のキャリアアップでよく見られるケースです。
特に小規模多機能型居宅介護は、利用者の要望に合わせて宿泊と通所を組み合わせる介護形態で、地域包括ケアの一環として期待されています。
小規模多機能型居宅介護施設の管理者は、現場で3年以上介護業務に従事した人が求められやすいでしょう。
グループホームは認知症の方が対象なので、認知症介護の現場を3年以上経験した人や、認知症対応型サービス事業管理者研修を修了した人が望まれます。
資格や要件を指定していない事業所もあるので、興味がある人は応募要件をよく確認してみましょう。
看護師
介護福祉士が看護師の資格を取れば、介護と医療の両面で活躍できます。
例えば、訪問看護を行っている医療施設で働いた場合、患者さんの様子を医療と介護の2つの側面からサポートできるでしょう。
看護師は国家資格なので、文部科学大臣が指定した大学や、都道府県知事が指定した養成所で医療・看護の専門知識を身につけ、国家試験に合格することが条件です。
働きながら看護師の資格を取得するのは難しいので、よく検討してからチャレンジしましょう。
理学療法士・作業療法士
理学療法士や作業療法士も、介護福祉士の上級職に最適です。
理学療法士は、おとろえた身体機能を向上させるため、温熱療法や電気療法などを行いつつリハビリを提供します。
作業療法士は、心身に障がいがある人の機能を向上させ、日常生活のなかでスムーズに動作が行えるよう訓練します。
理学療法士も作業療法士も、介護からもう一歩踏み込んだ仕事なので、さらにやりがいを感じることでしょう。
両方とも国家資格で、国が指定した大学や短大・養成施設で3年以上学んだあと、国家試験を受けます。
働きながら学べる学校もあるので、将来の選択肢に加えてみましょう。
介護福祉士にできる介護以外の職業
介護福祉士の知識や技術を活かしつつ、介護以外の分野で働くこともできます。
おすすめの職業は次のとおりです。
- 介護用品の営業職
- 介護事務
- 保育士・保育補助
- 社会福祉士
以下で詳しく解説します。
介護用品の営業職
介護の知識と経験を活かし、介護用品の営業職として働くケースです。
営業職に必要なのは、提供するサービスや商品の詳しい知識と、相手を安心させ信頼してもらうためのコミュニケーション能力です。
介護の現場で身につけた知識とスキルを、存分に活かせることでしょう。
営業職にはインセンティブ制が取り入れられているケースもあり、成績や評価が給与アップにつながる可能性もあるので、収入面でも魅力的です。
人と話すのが好きで、介護用品の知識に自信がある人は、介護用品の営業職を検討してみましょう。
介護事務
介護事務は、夜勤や力を使う仕事が難しい人におすすめです。
介護事務が行うのは、主に介護報酬請求事務や電話対応・窓口業務などで、事務作業全般から利用者やスタッフのフォローまで、幅広くサポートします。
例えば、事業所を利用している方からの電話に対応したり、スタッフの出勤状況を確認したりするのも介護事務の仕事です。
介護の関連機関への問い合わせや、ケアプランなどの書類作成を手伝うこともあります。
介護福祉士の知識と経験があれば、介護事務の仕事でも活躍できることでしょう。
保育士・保育補助
介護福祉士から、保育士や保育補助の仕事へキャリアチェンジするのも良い方法です。
一見かけ離れているように見えますが、実は介護福祉士の免許を持っていると、保育士試験の科目が一部免除されます。
勉強する科目が少し減ると、気持ち的にもチャレンジしやすくなるでしょう。
保育士と介護の仕事は、両方とも人とふれあい絆を育みます。
介護福祉士で身につけたケア精神やコミュニケーション能力を、保育の現場で活かしてみましょう。
社会福祉士
社会福祉士は、心身に問題を抱えている人や、ひとり親・高齢者・生活困窮者の相談を受け、適切なサービスを受けられるように調整する仕事です。
ソーシャルワーカーとも呼ばれています。
福祉にたずさわる仕事として共通する点もあるので、介護福祉士から社会福祉士をめざす人もいることでしょう。
社会福祉士は国家試験に合格すれば資格を取得できます。
介護の現場から離れて、新たな形で福祉の仕事に関わってみたい人におすすめです。
介護福祉士は現場以外の仕事も豊富にある
介護福祉士は、介護の現場以外でも多種多様な仕事で知識と経験を活かせます。
介護の専門知識と技術をそのまま活かし、介護福祉士養成施設や福祉系高校、初任者研修・実務者研修の講師として人材育成に関わるのも良いでしょう。
また、介護現場をはなれて上級職につくなら、介護支援専門員や施設長・管理者がおすすめです。
看護師や理学療法士・作業療法士にチャレンジしたり、思い切って営業や介護事務に転職する人もいます。
介護現場以外の仕事にも目を向けて、これまでのキャリアを活かせる仕事を探してみましょう。