
介護福祉士になるためには、介護福祉士の国家試験に合格することが必須です。
受験する誰しもが1回での合格をめざしますが、合格するためにはどのような試験であるかを理解しておかなければなりません。
介護福祉士国家試験に含まれる実技試験の概要や、合格基準、当日の流れ、勉強方法などを解説します。
実技試験の受験を予定している方は、参考にしてみてください。
目次
介護福祉士の実技試験とは?
介護福祉士の実技試験は、毎年3月上旬に東京と大阪で実施されています。
介護福祉士国家試験の近年の合格率は70%程度で、実技試験では60%程度の得点が必要です。
試験の概要
介護福祉士国家試験には筆記試験と実技試験の2種類があり、実技試験は先行して実施される筆記試験の合格者のみが受験できます。
試験の概要は以下の表のとおりです。
筆記試験 | 実技試験 | |
試験日 | 1月下旬 | 3月上旬 |
試験地 | 全国各地 | 東京都・大都府 |
試験科目 | 13科目 | 介護等における専門的技能 |
総得点 | 125点 | 100点 |
受験申し込み期間 | 8月上旬から9月上旬 | |
合格発表 | 3月下旬 | |
受験料 | 18,380円(令和4年度 第35回) |
合格率
近年の介護福祉士国家試験の合格率は70%以上、令和2年度から令和4年度までの合格率は以下のとおりです。
令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | |
受験者数(人) | 84,483 | 83,082 | 79,151 |
合格者数(人) | 59,975 | 60,099 | 66,711 |
合格率(%) | 71.0 | 72.3 | 84.3 |
実技試験は総得点が100点であり、60%程度の得点が必要といわれています。
介護福祉士実技試験の受験対象者は?
介護福祉士国家試験では、2016年度から多くの方が実技試験免除となっています。
なお、実技試験の免除には期間が設けられていることを知っておきましょう。
では、実技試験の免除期間はどのくらいなのか、実技試験を受ける必要がある人や免除期間を過ぎた人はどのような人なのか、具体的に解説します。
実技試験を受ける必要がある人
介護福祉士の資格を取得するには、養成施設・実務経験・福祉系高校・経済連携協定(EPA)ルートの4つがあります。
そのなかでも、実技試験を受ける必要がある人は、以下のルートに該当する人です。
- 福祉系高校ルート:平成20年度以前入学者
「介護技術講習」「介護過程」「介護過程Ⅲ」のいずれか一つを修了していない、または履修していない人 - 福祉系高校ルート:特例高等学校(専攻科を含む)卒業者
9ヵ月以上介護等の業務に従事したが、「介護技術講習」「介護過程」「介護過程Ⅲ」のいずれか一つを修了していない、または履修していない人 - 経済連携協定(EPA)ルート
「介護技術講習」「介護過程」「介護過程Ⅲ」「実務者研修(EPA介護福祉士候補者のみ)」のいずれか一つを修了していない、または履修していない人
実技試験の免除期間を過ぎた人は?
「介護技術講習」履修後に実施される3回までの実技試験が、免除申請により免除されます。
つまり、介護技術講習を修了してから3回目以降の介護福祉士国家試験を受験する場合は、実技試験が必要です。
介護福祉士実技試験を免除するために介護技術講習を受講した方は、免除期間が限られていることに注意しておきましょう。
介護福祉士の実技試験当日の流れ
介護福祉士の実技試験当日の流れは以下のとおりです。
1.受付 | 受付で本人確認を行います。 受験番号がわかるように準備しておきましょう。 不正防止のために、スマートフォンやパソコンは受付に預けます。 |
2.待機室で待機 | 受験人数が多い場合は待機室で待機し、試験の準備や着替えなどを行います。 受験人数によっては待ち時間が長くなることも想定し、参考書を読んだり、リラックスできるように準備をしておきます。 また、待機室が寒い可能性もあるため、寒さ対策も準備しておきましょう。 |
3.控室で準備 | 試験の順番が近くなると控室へ移動します。 控室で課題が発表されるため、参考書などを読むことはできませんが、約10分間のシミュレーションの時間があります。 |
4.実技試験本番 | 試験会場に入り、約5分間の実技試験を受けます。 |
5.終了 | 試験を終えると別室へ移動します。 試験問題の漏洩防止のために、受験者全員が試験を終えるまで、別室で待機します。 |
介護福祉士の実技試験の内容
実技試験の内容や制限時間を紹介します。
具体的試験内容
実技試験で確認するポイントは、介護現場で適切に介護を行えるかどうかです。
具体的な試験内容は、以下のような課題が与えられ、被介護者に扮したモデルを相手に必要な介護を考え、実践します。
- 被介護者の名前
- 年齢
- シチュエーション(リビングで横になっている、テラスでくつろいでいる)
- 身体状況(身体の麻痺、利き手、視力低下)
- 被介護者が望んでいること(トイレに行きたい、ベッドで体勢を変えたい)
与えられた課題に沿って適切な介護行動を選択し、正しく行えるかどうかが判定されます。
制限時間
制限時間は、全体で15分程度です。
試験時間は約5分で、被介護者の状況確認や介護のシミュレーションを考える時間として、事前に約10分の準備時間があります。
被介護者は能動的な動きをしないため、どのように声かけをするのかも重要なポイントです。
10分の準備時間で被介護者の状況を把握し、声かけの内容やどこの部位を支えるのかをイメージして、約5分の実技試験に臨みましょう。
介護福祉士の実技試験合格に向けて
介護福祉士の実技試験合格に向けて、何を準備すれば良いのでしょうか。
合格に向けた準備のために、試験のチェックポイントや過去問、試験対策を紹介します。
実技試験のチェックポイント
実技試験のチェックポイントは、介護現場で適切な介護ができるかどうかであり、基本となる介護の3つの心得は、「安全・安楽」「自立支援」「個人の尊厳」です。
過去問の具体例
過去に出題された一例を紹介します。
2016年に実施された第28回実技試験問題です。
移乗は一部介助が必要です。
車いすを使用して、全介助で移動しています。
山田さんは、テラスでレクリエーションを終えて、車いすに浅く座っています。
山田さんは、少し疲れたと言って、飲み物を希望しています。
途中にある段差を超えて食堂まで移動してください。
そして、いすに移動して、飲み物を勧めるまでの介助を行ってください。
山田さんの返事は、「はい」またはうなずくだけです。
試験対策
実技試験当日に実力を十分に発揮するために、日頃からさまざまな課題を想定して研鑽を積むことが大切です。
一方で、試験問題にはある程度パターンがあるといわれているため、以下のような状況の介助は繰り返し練習しておきましょう。
- 被介護者の状況:「右上下肢麻痺」「左上下肢麻痺」などの片麻痺
- 代表的な介助:
- 歩行の介助
- 移乗の介助
- ベッドでの介助
介護福祉士の実技試験内容を理解して試験に臨もう
介護福祉士の実技試験合格のために大切なことは、試験内容をきちんと理解して万全の準備をしておくことです。
準備が万全であれば、試験当日に想定外の出来事があっても落ち着いて対応できます。
試験当日に実力を十分発揮して1回の試験で合格できるように、実技試験の準備を行いましょう。