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介護福祉士の国家試験の試験内容についてわかりやすく解説

この記事の監修者
さとひろ
​​資格​
​​社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員・介護福祉士・第二種衛生管理者など​

​​【プロフィール】​
​​特別養護老人ホームの生活相談員。介護職員やケアマネジャーも含めて約20年の経験あり。施設に勤めながら、ライターとして介護・福祉系の記事を執筆。​

介護福祉士は、介護系の資格のなかで唯一の国家資格です。
資格の取得をめざすにあたり、「試験内容を詳しく知りたい」と考える方もいるでしょう。

本記事では、介護福祉士国家試験の概要と、筆記試験・実技試験の内容について解説しています。
介護福祉士の資格を取得できれば、スキルや給料、職場での信頼度が向上し、今後のキャリア形成にも良い影響を期待できます。

介護福祉士の資格取得に興味があり、試験内容を把握したい方はぜひ参考にしてください。

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介護福祉士国家試験の内容

介護福祉士国家試験の内容

介護福祉士の資格を取得するルートには以下4つがあります。

  • 養成施設ルート
  • 実務経験ルート
  • 福祉系高校ルート
  • EPAルート

多くの方は筆記試験のみですが、福祉系高校ルートとEPAルートの一部の方は実技試験が必要です。

試験の概要

介護福祉士国家試験は、社会福祉振興・試験センターが実施しており、毎年1月下旬に筆記試験が、3月上旬に実技試験が行われています。
試験勉強を効率良く進めるためには、合格基準や出題形式などを理解する必要があります。

合格基準

筆記試験の合格基準は以下の2つです。

ア 問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者。
イ アを満たした者のうち、以下の試験科目11科目群すべてにおいて得点があった者。

[1] 人間の尊厳と自立、介護の基本
[2] 人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
[3] 社会の理解
[4] 生活支援技術
[5] 介護過程
[6] こころとからだのしくみ
[7] 発達と老化の理解
[8] 認知症の理解
[9] 障害の理解
[10] 医療的ケア
[11] 総合問題
(注意) 配点は、1問1点の125点満点である。

引用:[介護福祉士国家試験]合格基準:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

合格基準値は60%程度ですが問題の難易度で補正されるため、60%では合格できない年があるので注意が必要です。
第35回(令和4年度)は60%(75点)、第34回(令和3年度)は62%(78点)、第33回(令和2年度)は60%(75点)が合格基準でした。

また、実技試験の合格基準は総得点100点の60%程度を基準としています。
筆記試験同様、課題の難易度で補正した点数以上であれば合格となります。
第35回(令和4年度)は53%(53.33点)が合格基準でした。

試験時間

試験時間は午前100分・午後120分となっており、合わせて220分です。
午前は3つの領域「人間と社会」「こころとからだのしくみ」「医療的ケア」、午後は領域「介護」と総合問題が行われます。

経済連携協会(EPA)に基づく外国人の介護福祉士候補者や日本語を母国語としない候補者などに配慮し、午前は130分または150分、午後は160分または180分に延長されることがあります。

受験場所

筆記試験は以下の35試験地で受験できます

北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、福島県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

ただし、会場については受験票に記載されますが、事前の案内はありません。

また、実技試験を受験できる場所は、東京都・大阪府の2試験地のみです。

回数制限

介護福祉士試験の合格率はおおむね70%程度であり、約3人に一人は落ちてしまいます。
受験できる回数に制限はなく、一度試験に落ちても再受験が可能です。
なお、2回目以降の試験では、初回に提出した実務経験証明書の提出は不要です。

筆記試験の問題

筆記試験の問題は、以下の4領域に総合問題を加え、分野ごとの13科目(11科目群)から出題されます。

  • 人間と社会
  • 介護
  • こころとからだのしくみ
  • 医療的ケア

介護技術に関する内容だけではなく、関係する法令やコミュニケーション技術、事例を用いた総合問題への対策など、幅広い分野の学習が必要です。

出題数は125問あり、1問1点です。
合格基準は60%程度の正答ですが、すべての科目で最低1点は取らなければならないため、まんべんなく点を取れるよう対策しましょう。

第35回(令和4年度)の出題数は以下のとおりです。

領域 科目 問題数(第35回)
人間と社会 人間の尊厳と自立 2
人間関係とコミュニケーション 4
社会の理解 12
こころとからだのしくみ こころとからだのしくみ 12
発達と老化の理解 8
認知症の理解 10
障害の理解 10
医療的ケア 医療的ケア 5
介護 介護の基本 10
コミュニケーション技術 6
生活支援技術 26
介護過程 8
総合問題 総合問題 12

出典元:[介護福祉士国家試験]合格基準:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

出題形式は下記のような5肢択一のマークシート式で、問題には図などを用いることがあります。

<領域:人間と社会>

人間の尊厳と自立

問題 1 著書『ケアの本質-生きることの意味』の中で,「一人の人格をケアするとは,最も深い意味で,その人が成長すること,自己実現することをたすけることである」と述べた人物として,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 神谷美恵子
2 糸賀一雄
3 フローレンス・ナイチンゲール(Nightingale, F.)
4 ミルトン・メイヤロフ(Mayeroff, M.)
5 ベンクト・ニィリエ(Nirje, B.)

引用元:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター 第34回(令和3年度)介護福祉士国家試験 筆記試験問題

それでは、各出題科目の詳細を見ていきましょう。

人間の尊厳と自立

介護福祉士として働くうえで基本となる理念や概念などに関する問題で、2問出題されます。
「人間の尊厳と人権・福祉理念」「自立の概念」という大項目から、利用者のQOLを高めるための介護実践や人権の尊重、利用者主体の考え方などについて出題されます。

介護を受ける側とサービスを提供する側で対等な関係を築き、自己決定を尊重するという考え方が大切です。
社会人としての基本的な倫理観や用語の意味を理解していれば解ける問題も多く、難易度は低めといえます。

人間関係とコミュニケーション

介護の仕事は、利用者やご家族だけでなく、スタッフ同士や他事業所の関係者とのコミュニケーションが求められます。
この科目では「人間関係の形成とコミュニケーションの基礎」「チームマネジメント」が大項目となっており、出題数は4問です。

自己覚知や他者理解から始まるコミュニケーションの考え方や、言語的コミュニケーション、非言語的コミュニケーションなどの技法について問われます。
また、OJTやOff-JT、ティーチングとコーチングの違いなど、人材育成に関する問題も出題されています。

社会の理解

社会の理解では、家庭の機能やライフスタイルの変化、家族の概念といった社会生活の仕組みや、社会保険や介護保険、障害者福祉に関する制度に関する出題で、12問あります。
令和4年の第35回試験では、要介護認定の手続きに関する問題や、障害のある方への合理的配慮に関する問題も出題されています。

介護の現場ではなじみの薄い制度に関する問題や、ふだんの仕事とは異なる分野からの出題もあり、制度の幅広い理解が求められることから難易度は高めです。

こころとからだのしくみ

こころとからだのしくみは12問あります。
健康の概念や欲求の理解、脳の働きや学習・記憶・感情などのこころのしくみ、人体の構造や生命維持といったからだのしくみに関する科目です。

疾患による症状が生活の場面でどのような影響があるのか、介護福祉士として気をつけなければならないことは何かを問われます。

脳の部位別の機能に関する問題や廃用症候群の症状、褥瘡の好発部位など、医療的な内容を含むため、むずかしいと感じるかもしれません。
しかし、ふだんの業務と関連づけて勉強できる科目であるため、難易度としては高くはないでしょう。

発達と老化の理解

人間の発達と、胎児期から老年期までの発達段階別に見た課題や特徴的な疾患、老化にともなうこころとからだの変化に関する科目で、出題は8問です。
幼児期の体重に関する問題や、加齢による認知機能の変化に関する問題など、幅広い年代に関する問題が出題されています。

知識がないと解けない問題が多いですが、脱水や尿路感染など一般的な疾患について出題されることが多い傾向があります。
そのため、過去問を繰り返し解いて、頻出テーマを押さえておきましょう。

認知症の理解

認知症に関する内容が網羅的に出題される科目で、出題数は10問です。
中核症状・BPSDといった認知症の症状や、認知症の種類に関する問題以外にも、認知症ケアの方法や原因疾患などについても出題されています。

また、本人へのケアだけでなく、ご家族への支援や地域で生活していくための施策などの社会的な背景についても問われています。
認知症の症状や種類について理解していればある程度点は取れますが、社会的な背景まで理解できると高得点につながるでしょう。

障害の理解

障害の種類や原因と特性、障害を受け入れるまでのプロセスなどの基礎的な理解や、本人やご家族への支援に関する出題で、出題数は10問です。
ノーマライゼーションやリハビリテーション、アドボカシーなどの用語や、障害関連の法律からも出題されています。

また近年では、障害のある人が地域でどのように暮らしていくかに焦点を当てた問題も出題されています。

医療的ケア

医療的ケアは、2017年度の国家試験から導入され、出題数は5問です。

主な内容は医療的ケア実施の基礎、救急蘇生法、喀痰吸引や経管栄養に関する知識や手順などです。
出題範囲は広くはありませんが、介護職員が行える医療的ケアや備品の管理方法など、正確な知識が求められます。

勉強する際は、手技をイメージしながら手順を覚えたり、理解できない部分を職場の看護師に聞いたりすると効果的です。
出題数が少ないため、0点になることがないよう、内容をしっかり理解しましょう。

介護の基本

介護の仕事をする際に必要な法令や倫理観などの基本的な事柄を中心に、10問出題されます。
社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている介護福祉士の責務や、介護保険施設における専門職の役割に関する問題などが出題されています。

日常の業務からイメージできる内容が多いため、基本的な知識があれば解けるでしょう。
ただし、法令に関する問題や障害福祉サービスに関する問題など、知らないと解けない問題もあり、内容をよく理解しておくことが大切です。

コミュニケーション技術

介護福祉士に必要とされるコミュニケーションの目的や方法について問われる科目で、出題数は6問です。
一般的なコミュニケーションの技法や、ご家族とのコミュニケーションのとり方を問われます。

また、視覚や聴覚、認知機能などに障害のある人とのコミュニケーションでは、障害の特性に応じたコミュニケーションのとり方が出題されています。
各障害別に、コミュニケーションをとる際の留意点をまとめておくと良いでしょう。

生活支援技術

利用者の生活を支援するうえで必要な知識と技術について問われる科目で、介護福祉士国家試験のなかで最も多い26問が出題されます。

自立に向けた環境整備や3大介助、看取り介護に関する問題が多く出題されています。

日常業務で行っている介護技術についての出題のため、実際の介助シーンを思い浮かべながら問題に取り組むのも良いでしょう。
出題数が多く、難易度も高くはない科目のため、取りこぼすことなく点を稼ぐことが、高得点につながります。

介護過程

介護におけるケアプラン作成のプロセスや事例研究について問われており、出題数は8問です。
介護過程を展開する目的や、アセスメントから計画立案、実施、評価といった一連のプロセスについて問われます。
また、介護過程を展開するうえでの、カンファレンスやサービス担当者会議の位置付けに関する問題も出題基準に含まれています。

この科目も、日常業務で行っていることが参考になるので、難易度は高くありません。
事例問題もあるため、問題文をよく読み、あせらず着実に得点を稼ぎましょう。

総合問題

「人間と社会」「こころとからだのしくみ」「医療的ケア」「介護」の4領域から出題される事例形式の問題で、12問あります。

総合問題は、すべての分野から出題されるため、横断的な知識が求められます。
総合問題のための勉強ではなく、それぞれの科目をしっかり学習することで、問題への対応力を身につけておきましょう。

事例形式の問題では、文章の言い回しで正誤がわかる場合もあるため、問題文をよく読み、何について問われているかをよく考えるのが、取りこぼしを防ぐポイントです。

実技試験の概要・問題

介護福祉士の資格を取得する4つのルートのうち、以下の条件を満たす方は実技試験が免除されます。

  • 実務経験ルート・養成施設ルート:実務経験3年以上かつ実務者研修を終了している
  • 福祉系高校ルート:平成21年度以降の入学者、介護技術講習・介護過程・介護過程Ⅲのいずれかを終了または履修している
  • EPAルート:介護技術講習・介護過程・介護過程Ⅲ・実務者研修のいずれかを終了または履修している

上記以外の方は筆記試験に合格したのち、実技試験を受験する必要があります。

実技試験では、環境整備・体位交換・車いすへの移乗動作など、介護現場で想定される状況を提示され、適切な介助が行えるかを問われます。

介護福祉士の実技試験の内容は、以下の記事でより詳しく解説しているので参考にしてください。

まとめ

本記事では、介護福祉士国家試験の概要や試験科目ごとの内容について解説しました。
介護に関する資格のなかで、国家資格なのは介護福祉士だけです。
資格を取得できれば、スキルや給料、職場での信頼度が向上し、今後のキャリア形成にも役立つでしょう。

試験の合格率は、例年70%前後で推移しており、他の国家資格と比較すると、難易度はそれほど高くないといえます。
そのため、試験対策をしっかり行えば、働きながらでも合格することは十分可能です。
試験科目についてしっかり理解し、効率良く学習を進めましょう。

介護福祉士の合格率や他の国家資格や介護系資格との比較については、以下の記事を参照してください。

介護福祉士取得のための勉強方法については、以下の記事が参考になります。

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執筆者について

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