臨床心理士とは臨床心理査定を行い、さまざまな臨床心理学的技法を用いてクライエントの心を支援する職業です。
臨床心理士という職業をめざすにあたっては、やはり向き・不向きが気になるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、
- 臨床心理士に向いている人の性格・特徴
- 臨床心理士で必要な能力・適性
- 臨床心理士に向いていない人の特徴
を解説していきます。
本記事を参考にして、自分が臨床心理士に向いているのか判断しましょう。
目次
臨床心理士に向いているのはどんな人?
自分に向いていない仕事を選んでしまうと、「仕事をするのが苦痛」「やりがいを感じない」などの感情が芽生えてしまう可能性があります。
臨床心理士になりたいと思っている人は、まず自分が臨床心理士に向いているのかを把握することが重要です。
性格と能力の面でなにが求められるかを知る必要があるでしょう。
臨床心理士に向いている人の性格・特徴
まずは、臨床心理士に向いている人の性格・特徴を3つ挙げます。
世話好き/誰かの役に立ちたい人
臨床心理士にとって最も基礎的な要素の一つは、他人に関心があり、世話好きで「誰かの役に立ちたい」と思えることです。
なぜなら臨床心理士は、クライエントの感情に共感しながら「心の問題を援助する」立場だからです。
根底に人を思う気持ちがなければ、忍耐強くクライエントの心に寄り添うのは困難となります。
自分が普段から人の立場に立ち、
- 「共感してあげたい」
- 「理解してあげたい」
- 「なにか力になりたい」
と考えている人ならば、臨床心理士の基本的な資質を備えているでしょう。
詳しく自分の性格を知りたい方は、YG性格検査、MMPI、TEGといった信頼性の高い人格検査を受けることで、自分自身のパーソナリティを可視化することができます。
心理学/カウンセリングが好き
臨床心理士の仕事は、心理学やカウンセリングに対して興味や関心が強くないと続けられません。
心理援助を行うためには、高い人間性だけでなく自身の情緒安定も求められます。
そのための心理学的な自己分析は欠かせませんし、心理学に関する専門的知識も必要です。
臨床心理士は5年ごとに資格の再認定を受ける必要があり、生涯学習が求められることからも、心理学という分野への強い関心が土台になるといえます。
また、年齢や領域にもよりますが、年収は300~400万円付近が多いとされ、大学院修了を要件とする専門職としては年収が低く推移しています。心理学やカウンセリングが好きでなければ、生涯学習を続けながら働くことは難しいかもしれません。
勤勉な人
臨床心理士は、常に知識や技術をアップデートする意欲や、勤勉で勉強熱心であるといった向上心が必要です。
そもそも臨床心理士が必要とする知識・技術は数年ですべて身につく内容ではなく、仕事ができるようになるまでには時間がかかります。
日々進化する臨床心理学領域の動きや流れを知るためには、職に就いたあとも常に学習していく必要があります。
また臨床心理士は、クライエントそれぞれの多種多様な価値観と向き合い、さまざまなケースに向き合わなければなりません。
特に資格を得たばかりの臨床心理士は、クライエントから学ぶことがたくさんあります。
新たなクライエントと接するたびに、クライエントの価値観を理解する姿勢が必要となるでしょう。
研修や学会に積極的に参加して、常に新たな知識を取り入れようとする勤勉性が臨床心理士には必要です。
臨床心理士で必要な能力・適性
臨床心理士として働くうえで、実際にどのような能力や適性が必要なのでしょうか。
臨床心理士に必要な能力や適性を3つ挙げて解説します。
自分に当てはまるか確認してください。
コミュニケーション能力が高い
臨床心理士にとってコミュニケーション能力は必須です。
例えば、臨床心理士が行うカウンセリングは対話を中心に行います。
ただコミュニケーションを取るのではなく、心理カウンセラーとして以下のような対応も求められます。
- クライエントにとって話しやすい環境や雰囲気を作る
- 対話をしながら信頼関係を構築する
- 適切に言語反応と非言語反応を返し、クライエントに共感を示す
- 必要な情報を面接中に聞き取る
また、地域支援やコンサルテーション、他機関との連携も臨床心理士の業務であるため、職場内だけでなく、多くの人と円滑にコミュニケーションを取る力が必要です。
以上のことから、臨床心理士は高いコミュニケーション能力が必要となるでしょう。
観察力が高い
臨床心理士はクライエントを観察する力が必要になります。
クライエントが発した表面的な言葉だけでは、汲み取れない感情や本音があるためです。
例えば、次のようなものがあります。
- 服装や髪型
- 歩き方や姿勢
- 表情や仕草
- 話す速度や量
全体をよく観察することで、クライエントの人物像の理解に役立ちます。
「本音を語っていない」「猜疑心が強いようだ」など、臨床心理士には、会話以外から読み取る観察力が必要となります。
人の価値観を聞き入れる力がある
臨床心理士はクライエントの価値観を尊重して、その人の自己実現を支援するのが仕事です。
世間一般的な価値観を知識として知っておくことは大切ですが、より大きな視点をもち、柔軟に物事を捉えてクライエントと接します。
そのためには、
- 自分の価値観や倫理観を押し付けない
- 差別的な視点を持たない
- 自分の経験をもとに判断しない
- クライエントの価値観を尊重する
などの訓練が必要です。
外国にルーツのある人のカウンセリングをすることもあるため、日本の文化や価値観にとらわれない対応も大切です。
以上のように、臨床心理士は多種多様な価値観を抱くクライエントと、誠実に向き合う能力が必要になるでしょう。
臨床心理士に向いていない人の特徴
臨床心理士に向いている人の説明からも想像できるとは思いますが、あらためて臨床心理士に向いていない人の特徴を4つ指摘します。
人とのコミュニケーションが苦手な人
人とコミュニケーションを取るのが苦手な人は、臨床心理士に向いていません。
臨床心理士の仕事は、クライエントとのコミュニケーションから始まるためです。
クライエントによっては、以下のようなケースもあります。
- 親やパートナーに無理やり連れてこられて心を開かない
- 過緊張で会話がまともにできない
- 怒りや不信感など、負の感情をぶつける
臨床心理士は、対人関係における忍耐力や自制心があること、沈黙や攻撃に対しての耐性があることも、大切な資質です。
コミュニケーションを諦めてしまうと、クライエントの支援はできません。
どのようなクライエントに対してでも、丁寧に時間をかけて、受容的な雰囲気でコミュニケーションを試みるのが、臨床心理士に必要な資質になります。
人を正そうとする人
臨床心理士はクライエントのさまざまな価値観を尊重して、自己実現を支援する仕事です。
つまり「こうしたほうが良い」「あなたの考えは間違っている」と、自分の価値観や判断を押し付けるような関わりをする人は、臨床心理士に向いていません。
臨床心理士はクライエントに指導、指示するのではなく、クライエントの希望に寄り添ってサポートする仕事です。
敏感すぎる人、感受性が強すぎる人
クライエントは怒りや悲しみなど、さまざまな心の問題を抱えています。
クライエントの心理援助にあたる臨床心理士は、共感的理解が大切であり、相手の立場となり物事を考えることが必要です。
共感的理解とは、相手の世界をあたかも自分自身のものであるかのように感じとることですが、その”あたかも”という性質を決して失ってはいけません。
そのコントロールができず、必要以上に感情移入しすぎると、自分までクライエントの心の問題にとらわれてしまう可能性があり、心理カウンセラーとして機能しなくなる恐れがあります。
自分とクライエントとの適度な距離を保ち、きちんと感情コントロールができる能力が必要となるでしょう。
臨床心理士は儲かると思っている人
年齢と領域にもよりますが、臨床心理士は、決して儲かる仕事ではありません。
会社員とは異なり、コストパフォーマンスや利益を第一に追求する職業でもありません。
実際に臨床心理士と全国一般企業の平均年収を比較してみると、臨床心理士のほうが低くなっています。
職種 | 平均年収 |
臨床心理士 | 300~400万円 |
一般企業 | 433万円 |
以上のことから、「臨床心理士になって稼ぎたい、儲けたい」と考えている人は、臨床心理士に向いていないでしょう。
臨床心理士の給与面の詳細が知りたい方は、下記の記事を参考にしましょう。
臨床心理士をめざすなら、自分の性格・適性を見極めよう
今回は臨床心理士に向いている人・向いていない人を解説しました。
まとめると、それぞれ以下のとおりです。
- 臨床心理士に向いている人:広い視点を持ち、相手を尊重して受容的なコミュニケーションを行い、言葉以外から現れる情報を読み取れる人
- 臨床心理士に向いていない人:他者への関心が低く、相手を尊重した共感的なコミュニケーションができない人、また、情緒が不安定な人や儲けたいだけの人
本記事を見て、向いている人に当てはまった人は、臨床心理士をめざすことをおすすめします。
臨床心理士に興味があるものの、その資質や適性に不安がある場合は、どうすれば問題点を改善できるのか考えてみましょう。
臨床心理士は「どんな仕事?」と疑問を持った方は、下記の記事を参考にしてください。