
「介護タクシーのドライバーに必要な資格ってあるの?」
「福祉タクシーとはどう違うの?」
介護タクシーのドライバーをめざしたい方には上記のような疑問を持たれることが多いはず。
介護タクシーの具体的な業務内容や最低限必要な資格がわかれば、就職・転職活動もスムーズに進められるのではないでしょうか。
そこで今回は、介護タクシードライバーに必須の資格やあると役立つ資格、福祉タクシーとの違いについて解説します。
目次
介護タクシーのドライバーになるために必要な資格
一般的なタクシー乗務員とは異なり、介護タクシーのドライバーになるには普通自動車二種免許の取得だけでなく介護職員初任者研修の修了が必要です。
以下では両資格の試験内容や受験要件などについて解説します。
普通自動車二種免許
利用者を輸送することが目的の介護タクシーを運転するには、普通自動車二種免許の取得が必須となります。
普通自動車二種免許は普通免許に比べると試験の難易度が高く、合格率は低めです。
特に、教習所を通さず直接会場で試験を受けた場合の合格率は1割程度とされています。
資格の取得をめざすのであれば、教習所への通学や免許合宿を通して試験に備えることをおすすめします。
項目 | 内容 |
取得条件 | ・満21歳以上 ・他の第二種運転免許を持っているか、または普通自動車・中型自動車・大型自動車・大型特殊自動車のうち、いずれかの第一種免許を3年以上保持していること ・視力が片眼で0.5以上かつ両眼で0.8以上あること。深視力(立体視での遠近感・立体感を判別する力)で2cm以下であること ・日常会話を聞き取れ、10mの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえること |
受験費用 | ・一般受験の場合:受験手数料 4,800 円 、試験車使用料 2,850円 ・自動車学校卒業の場合:受験手数料1,700円 ※上記それぞれに免許証交付手数料2,050円がかかる |
試験日 | 年末年始を除く平日 |
試験内容 | ・学科試験:マークシート形式の問題が95問(文章問題が90問、イラスト問題が5問) ・技能試験:自動車教習所での校内試験と路上試験 |
取得難易度 | ・合格率は3割から4割程度 ・学科試験で9割以上の得点、技能試験では8割以上の得点が合格基準 |
介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
介護職員初任者研修はかつてのホームヘルパー2級にあたり 、介護技術習得に関わる入門的な資格です。
介護タクシーのドライバーは、運転に加え介護サービスも提供するため、介護職員初任者研修の修了が必要となります。
研修を修了するには、民間のスクールで厚労省から定められた130時間のカリキュラムを受講し 、受講後に行われる修了試験をクリアする必要があります。
項目 | 内容 |
受講要件 | 特になし |
受験費用 | 5万円から8万円程度 (スクールによって異なる。カリキュラム受講費用と修了試験費用込み) |
試験日 | 受講するスクールのコースによって異なる |
試験内容 | 筆記試験のみ |
取得難易度 | スクールによっては受かるまで何度でも受けられる |
介護タクシー業に役立つ資格
運転だけでなく介護サービスの提供も行う介護タクシーのドライバーには、利用者の異変への気付きや些細な心配りも求められます。
以下では介護タクシーのドライバー業に必須ではないものの、取得しておくと役立つ資格を紹介します。
ユニバーサルドライバー研修
ユニバーサルドライバー研修は主にタクシードライバーを対象としており、乗務員の接遇や介助、コミュニケーションのスキルの向上をめざすものです。
研修では、座学の他にもグループディスカッションや車椅子を使用しての演習もあり、 高齢者・障がい者を輸送するうえでの実践的なスキルを身につけられます。
項目 | 内容 |
受講要件 | 一般財団法人全国福祉輸送サービス協会かつ一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会会員の会社に属するタクシー運転手と個人タクシー事業者 |
受験費用 | 実施機関によって異なる(例えば、東京ハイヤー・タクシー協会の場合では受験費用は5,700円) |
試験日 | 試験なし。研修日程は実施機関によって異なる |
取得難易度 | 7時間の研修を受講すると修了となるため、難易度は設けられていない |
ハートフルアドバイザー研修
ハートフルアドバイザー研修は、さまざまな高齢者向けサービスの研修を展開する一般社団法人シルバーサービス振興会などが運営する研修の一つです。
サービス業で幅広く取り入れられているこの研修は、より質の良い接客サービスを実現するための心構えやスキル、知識を身につけるための内容となっています。
介護タクシーのドライバーは通常のタクシーと異なり、目的地に着いてからも利用者を介助したり、行動をともにしたりすることがあります。
したがって、利用者さんの心に寄り添ったサービスを提供するにはドライバーの丁寧な接遇が重要です。
ハートフルアドバイザー研修でおもてなしの心を学んで実践すれば、介護タクシードライバーとしてより求められる存在になれるかもしれません。
項目 | 内容 |
受講要件 | 百貨店や銀行、宿泊施設、その他サービスを含む接客サービスに従事していること |
受講費用 | ハートフルアドバイザー研修2級:10,267円(通信講座の受講費用) ハートフルアドバイザー研修: 40,019円(集合研修の受講費用・確認テスト費用込み) |
試験日 | 特に定められていない(随時受講の申し込みが可能) |
受講内容 | ハートフルアドバイザー研修2級:25時間相当の通信教育(レポートの提出3回) ハートフルアドバイザー研修: 14時間の集合研修と確認テスト |
取得難易度 | ハートフルアドバイザー研修の確認テストで一定水準を得点すると合格する |
サービス介助士(ケアフィッター)
サービス介助士はケアフィッターとも呼ばれ、ADLに関係なく誰もが社会活動できるように、個々人にフィットした介助を提供する技術を習得するための資格です。
さまざまな介護度や特性、背景を持つ利用者を乗せる介護タクシーのドライバーは、取っておいて損はないでしょう。
項目 | 内容 |
対象者 | 社会人や大学生、専門学校生など |
受験費用 | 41,800円(テキスト代やオンライン授業、スクーリング受講の費用・筆記試験の費用) |
試験日 | 受講の申し込みから12ヵ月以内に受験 |
試験内容 | 筆記試験(50問) |
取得難易度 | 合格率は8割以上 |
普通救命講習
各地の消防本部が行う普通救命講習は、応急処置のスキルを身につけるための講習です。
心肺蘇生や窒息の処置、止血の仕方などを学んだり、AEDの取り扱いを実際に体験したりします。
介護タクシードライバーは、利用者の急な異変に対応しなければならないケースも想定されます。
万が一の事態になった場合、普通救命講習で応急処置を学んでいれば、適切な判断のもと行動できるでしょう。
項目 | 内容 |
受講要件 | 特になし |
受講費用 | 1,500円(テキスト・マウスピースなどの教材費) |
開催日 | 詳細は居住地の消防庁に要問い合わせ |
受講内容 | 人工呼吸や胸骨圧迫(心臓マッサージ)を含む心肺蘇生法、AED(自動体外式除細動器)の使用法 |
取得難易度 | 基本的に講習を受講した人は全員取得できる |
ガイドヘルパー(介助士)
ガイドヘルパーは移動介護従事者とも呼ばれ、サポートする対象者によって以下3種類の資格に分けられています。
- 全身性障害者過程研修(全身性障がい者対象)
- 同行援護従業者養成研修(視覚障がい者対象)
- 知的・精神障害者行動援護従業者養成研修(知的・精神障がい者対象)
利用者の持つ障がいが何であるかによって、外出の付き添いや移動の介助、声かけ誘導などの仕方は異なります。
介護タクシーのドライバーはガイドヘルパーを取得することで、利用者一人ひとりに合った対応を見極め、サービス提供の幅を広げられるでしょう。
項目 | 内容 |
受講要件 | 特になし |
受講費用 | 全身性障害者移動介護従業者の場合:2万円から3万円程度 同行援護従業者の場合:一般課程が3万円程度、応用課程は2万円程度 行動援護従業者の場合:3万円から4万円程度 ※費用は実施する民間の専門学校や自治体によって異なる。 |
試験日 | 試験はなし |
取得難易度 | 講習を受講すれば取得できる |
介護福祉士
介護職員初任者研修の上位資格である介護福祉士は、より高品質な介護サービスの提供に必要な知識・スキルを習得していることを示すための資格です。
介護サービスの提供を行う介護タクシードライバーにとって、介護福祉士の取得はサービスの質の向上につながり、利用者の信頼を得ることに役立つでしょう。
項目 | 内容 |
受験要件 | 下記3つのいずれかを満たすこと。
①実務経験(3年)と下記いずれかをクリアすること |
受験費用 | 18,380円 |
試験日 | 年に1回実施。1月に筆記試験、3月に実技試験を行う。(令和5年度の試験日は筆記が1月29日、実技が3月5日。) |
試験内容 | 筆記試験:マーク形式で全125問。 実技試験:与えられた課題に適した介護を制限時間5分以内で行う。※実技試験の実施は福祉系高校を経た受験者のうち、実技試験の受験を選択した者に限る。 |
取得難易度 | 合格率は7割程度 |
福祉タクシーのドライバーになるために必要な資格
体の不自由な方の移動をサポートする点で、介護タクシーと似た業種として福祉タクシーがあります。
福祉タクシーの正式な名称は「一般常用旅客自動車運送事業」といい、要介護の方や精神障がい者の方、身体障がい者の方を、目的に応じて福祉自動車移送することを指します。
介護タクシーと同じ業務にも思えますが、両者の明確な違いはドライバーが介護サービスを提供するかどうかです。
先に述べたように、介護タクシーのドライバーは利用者の輸送とともに介護保険が適用される介護サービスも提供します。
一方、福祉タクシーのドライバーはあくまで利用者を目的地まで送り届けるだけの業務となり、利用者の乗降介助などは行いません。
したがって、福祉タクシーのドライバーに必要な資格は普通自動車二種免許のみとなります。
両者の違いを認識したうえで、どちらのドライバーをめざすかを判断しましょう。
介護タクシーのドライバーに必要な資格を取ろう
ここまで、介護タクシーのドライバーに必須の資格やあると業務に役立つ資格、福祉タクシーのドライバーとの違いなどを解説してきました。
介護タクシーのドライバーは、利用者にとって生活の潤いとなる外出をサポートしたり、コミュニケーション相手となったりすることができる魅力的な仕事です。
高齢者の心身をサポートしたい、接遇の意識を大切にしたいという方は、介護タクシードライバーの仕事にやりがいを感じられるでしょう。