保育士の退職金は、保育園の運営団体により規定が異なります。
本記事では、保育士の退職金に関する金額相場や条件について、公立保育園と私立保育園に分けて解説していきます。
現在保育士として勤務しており、退職金がいくらなのか気になる人や、これから保育士として働くうえで、退職金を勤務先選びの指標にしたい人は、本記事を参考にしてみてください。
目次
【勤続年数別】保育士の退職金の相場
保育士の退職金は、勤務先によって従う条令や規定が異なり、算出方法は退職時の基本月給や勤続年数が大きく関わってきます。
まずは、公立保育園と私立保育園の退職金の相場を解説していきます。
公立保育園で働く保育士の退職金相場
公立保育園で働く保育士は、地方公務員の扱いです。
したがって、退職金の決定は勤務している保育所ではなく、各地方公共団体の定めた条例に基づきます。
総務省による退職金の支給率の計算方法 は、以下のとおりと定められています。
退職手当額 = 基本額 + 調整額
基本額 = 退職日給料月額 × 退職理由別・勤続年数別支給率
調整額 = 調整月額のうちその額が多いものから 60 月分の額を合計した額
出典元:退職手当条例(案)の改正について
基本額は、退職時の月給に、支給率をかけたものが支払われます。
支給率は勤続年数、退職理由によって異なります。
支給率の詳しい数値は下記の表を参照してください。
勤続年数(年) | 自己都合(率) | 定年(率) | 整理退職(率) |
1年 | 0.6 | 1.0 | 1.5 |
5年 | 3.0 | 5.0 | 7.5 |
10年 | 6.0 | 10.0 | 15.0 |
15年 | 12.4 | 19.375 | 23.25 |
20年 | 23.5 | 30.55 | 32.76 |
24年 | 31.5 | 38.87 | 39.624 |
25年 | 33.5 | 41.34 | 41.34 |
30年 | 41.5 | 50.7 | 50.7 |
35年 | 47.5 | 59.28 | 59.28 |
45年 | 59.28 | 59.28 | 59.28 |
調整額とは、退職者の等級や区分によって決められる額である調整月額のうち、最も多かった60ヵ月ぶんの合計額が支払われます。
私立保育園で働く保育士の退職金相場
私立保育園で働く保育士の場合、自治体が運営する公立保育園とは異なり、それぞれの運営団体で 退職金制度が決められています。
私立保育園の運営団体には、社会福祉法人やNPO法人、他にも株式会社が運営する保育園もあります。
各運営団体が、独自の規定で退職金の計算が行われるため、支給額にバラつきがあるのが特徴です。
また、運営団体のなかには、退職金共済や、社会福祉法人が利用する退職手当共済事業 に加入している場合があります。
その場合は、加入している共済のホームページから支給額を確認できます。
早見表で確認
退職金共済とは、中小企業向けに政府が運営している退職金制度です。
勤務している私立保育園がこの退職金共済に加入している場合、公式ホームページの早見表 で退職金の支給額が確認できます。
表は、勤続年数と毎月の退職金共済の掛金額から見ることができます。
勤務している保育園が退職金共済に加入しているか不明な場合、就業規則を確認してみましょう。
また、自分の掛金額が不明な場合も同様に、勤務している保育園に確認をしてみましょう。
シミュレーションサイトをチェック
自分の働いている保育園の運営団体が社会福祉法人の場合、退職手当共済事業に加入している可能性があります。
この場合、福祉医療機構の公式ホームページから退職金の計算シミュレーションを行えます。
勤続年数5年、7年、10年で自己都合退職のモデル例を見てみましょう。
- 勤続年数5年 基本月給22万=574,200円
- 勤続年数7年 基本月給25万円=913,500円
- 勤続年数10年 基本月給28万=1,461,600円
退職金は、勤続年数が多いほど、退職直前の基本給が高いほど支給額が上がります。
保育士が退職金をもらう条件
保育士が退職金をもらうためには、勤続年数や手続きが必須条件となる場合があります。
ここからは、公立保育園、私立保育園に分けて退職金が支払われる条件を説明します。
公立保育園の条件
公立保育園に勤務している保育士の場合、地方公務員の扱いとなるため、退職金は自治体の定める条令に基づき支払われます。
自治体の定める条例によると、公立保育園の保育士が退職金を貰える条件は、勤務期間6ヵ月以上とされています。
私立保育園の条件
私立保育園に勤務している場合、退職金を貰える条件は、各運営団体の就業規定に基づきます。
そのため、一概に条件が定められているわけではありません。
平均すると勤続年数1〜3年以上で退職金が支払われる場合が多いです 。
しかし、勤務する私立保育園が社会福祉法人であり、退職金手当共済制度に加入している場合は、勤続年数1年での受給が可能です。
保育士の退職金はいつ振り込まれるのか
保育士の退職金の支払日は、保育園の運営団体によって異なります。
退職金支払い日の違いを公立保育園、私立保育園で見ていきましょう。
公立保育園の退職金支給日は1ヵ月以内
地方自治体の定める条令では、公立保育園の場合、基本的に退職後1ヵ月以内 に指定の口座へ退職金が支払われます。
支払いまでの取り決めが法律により定まっているため、遅れる心配もありません。
私立保育園の退職金は規定によって異なる
私立保育園の場合、退職金制度は各団体の運営方法によるため、振込期日にはバラつきがありますが、多くは退職から3ヵ月程度 で振り込まれます。
支払期日が法律により定まっていないため、もし気になる場合は退職前に事前に保育園に支払期日について相談しましょう。
保育士の退職金に関する気になる質問
ここからは、保育士の退職金に関してよくある質問をまとめました。
非正規職員の退職金や、必要な手続きも紹介しているため、チェックしてみましょう。
Q1:保育士の退職金に手続きは必要?
公立保育園の場合、退職金手続きはほぼ必要ありません。
振込先の口座を指定したい場合には、勤務先の指示に従い手続きを行う必要があります。
私立保育園では、加入している共済により手続きが必要です。
各公式ホームページから必要書類が確認できます。
Q2:保育士の退職金はパート・アルバイトも支給される?
保育士の退職金は、基本的には正社員が対象となっています。
そのため、非正規職員は退職金を貰えないことがほとんどです。
しかし、勤続年数や就業時間によっては、退職金が貰える場合があります。
例えば、私立保育園に勤務しており、運営団体の社会福祉法人が退職手当共済事業に加入している場合、1年以上かつ正社員の3分の2以上、就業時間が超える場合には退職金が支払われます。
Q3:保育士は転職先に退職金を引き継ぎできる?
私立保育園に勤務している場合、退職金の引き継ぎが可能になるケースがあります。
辞めた保育園と、次に勤める保育園の双方が社会福祉機構の退職金共済事業に加入している場合、合算制度を利用して退職金を引き継ぐことができます。
この場合、保育園を辞めたあとに退職金を請求せず、3年以内に新しい保育園に勤務すること、その際に合算制度を利用する旨を申し出ることが必要です。
保育士の退職金は勤務先によって異なる
本記事では、保育士の退職金は運営団体ごとに異なることを紹介してきました。
公立保育園では、 勤務期間6ヵ月以上ですべての正社員に退職金が支払われる一方、私立保育園では最低でも1〜3年以上の勤務が必要となります。
私立保育園に勤務している場合は、手続きの時間がかかることも考慮し、退職前から手続きの準備をしておくと良いでしょう。
また、これから保育園の就職を考えている場合は、事前に公立保育園、私立保育園の退職金制度の違いを把握しておくと、就職先選びの参考になります。