介護士は人材不足の職種といわれていますが、実際にはどの程度の人数が必要なのでしょうか。
本記事では、介護士が人材不足に陥っている背景に触れたうえで、現在行われている対策を紹介していきます。
今後介護業界で働こうと考えている方や、現在介護士として働いている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
介護士の人手不足の背景
介護士が不足している背景には、以下の2点があります。
- 必要な介護士の数が増えている
- 介護士の確保が難航している
それぞれ見ていきましょう。
必要な介護士の数が増えている
高齢化が進んでいるため、必要とされる介護士の数は増えています。
厚生労働省の資料「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、令和元年の時点で介護職員の総数は約211万人でしたが、これを令和5年までに約22万人、令和7年までに約32万人、令和22年までには約69万人も増やさなければなりません。
介護士の確保が難航している
必要な介護士の数が増えている一方で、介護士の人材の確保は順調とはいえません。
その要因として、以下の3点が挙げられます。
- 離職率が高い
- 給料が高くはない
- 人間関係による問題
順番に説明します。
離職率が高い
介護士の確保が難航している理由の1つ目には、離職率が高いことが挙げられます。
以下のグラフは、平成24年度から令和3年度までの10年間における、介護職員の離職率、全産業の平均離職率の推移を比較したものです。
介護職員の離職率は、令和元年度を除くすべての年度で、産業全体の平均を上回る水準でした。
とはいえ離職率そのものは下降傾向にあり、10年間で約3%改善しています。
給料が高くはない
介護士の確保が難航している2つ目の理由は、給料の低さです。
以下は令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果をもとにした、介護業界の職種別の年収です。
職種 | 年収 |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 約452万円 |
介護福祉士 | 約397万円 |
実務者研修修了者 | 約362万円 |
介護職員初任者研修修了者 | 約360万円 |
無資格の介護従事者 | 約322万円 |
医療福祉系の平均年収 | 約456万円 |
上表におけるすべての介護系の給料は、医療福祉系の平均年収を下回っています。
しかし、関連資格の取得やキャリアアップをめざせば、年収アップすることは可能です。
人間関係による問題
公益財団法人介護労働安定センターが実施した「令和4年度 介護労働実態調査」によると、介護士の離職理由は「職場の人間関係に問題があった」が27.5%で、全体の1位でした。
その他の退職理由と割合は以下のとおりです。
退職理由 | 割合 |
職場の人間関係に問題があったため | 27.5% |
法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため | 22.8% |
他に良い仕事・職場があったため | 19.0% |
収入が少なかったため | 18.6% |
介護士の人手不足に対して行われている対策
介護士の人手不足は深刻ですが、何の対策も取られていないわけではありません。
ここでは、人手不足に対して現在行われている対策を紹介します。
- 労働環境の改善
- 給料アップ
一つずつ見ていきましょう。
労働環境の改善
介護業界では、以下のような労働環境の改善が行われています。
- ユニットケアの導入
- ITシステムの導入
ユニットケアとは、入居利用者10人程度を1つのユニットとし、ユニットごとに担当の介護職員を配置することです。
ユニットケアの利用者さんは、個室に加えて、ユニットごとのリビングスペースで生活するため、配置する介護職員が従来型よりも少なくて済みます。
介護の方法や仕事の進め方もユニットごとに変えられるので、仕事に対する不満や人間関係のストレス減少にもつながります。
ITシステムの導入は、介護士の業務効率化や仕事量削減が見込める施策です。
例えば、介護ソフトを導入すれば申し送りや請求業務の簡略化が図れるほか、音声入力を利用すれば他の業務を行いながら介護記録を入力することができます。
給料アップ
介護職員に対しては、政策として給料アップが行われています。
具体的には、介護職員処遇改善支援補助金や処遇改善加算などです。
これらの政策の効果もあり、令和4年と令和3年の介護職員の給料は以下のように推移しています。
令和3年 | 令和4年 |
304,830円 | 322,550円 |
今後も介護職員の給料がアップする可能性は高いでしょう。
介護士の人手不足は加速しているが改善に向けて対策も実施されている
高齢化の影響を受け、介護士の需要はますます高まっています。
しかし、必要とされる介護士の数が増えているのに対し、介護士の離職率は全産業の平均よりも高く、人手不足は深刻な状況です。
介護士不足への対策としては、労働環境の改善や、給料アップなどの施策が取られています。