
介護保険サービスを利用する高齢者は、年々増加傾向にあります。
その一方で、介護保険サービスには苦情もつきものです。
実際に利用者さんと接するヘルパー(訪問介護員)に、苦情が直接向けられることもあります。
苦情を言われると、感情的になってしまうかもしれません。
しかし、苦情対応には基本的な流れがあり、対処方法もあります。
この記事では、ヘルパーに関する苦情の具体例を紹介しながら、苦情対応について解説していきます。
目次
介護保険に対して多い苦情はサービスの質
国民健康保険中央会の資料によると、令和3年度の苦情相談件数は全国で5,865件でした。
さらに令和3年度の1年分の苦情申立内容の内訳を詳しく見ると、一番多いのは「サービスの質」、次いで「管理者等の対応」、「説明・情報の不足」となっています。
ヘルパー(訪問介護員)としては、サービスの質という点が大きく関わってくるでしょう。
ヘルパーに対する苦情・クレームの具体例
ここからは、ヘルパーに対してどのような苦情やクレームがあるのか、実際に寄せられた具体例を紹介していきます。
物が壊された・なくなった
- ヘルパーに水道タンクを壊されたため支払いの話をしたら、ヘルパーに「こちらの責任ではない」と言われた。
- ヘルパーに掃除を依頼していたが、ある日、本来掃除を頼んでいない引き出しの中が整理されており、そこにあったはずの指輪がなくなっていた。
そのためヘルパーが指輪を盗んだのではないかと疑っている。 - ヘルパーが来た日に物やお金がなくなっている。
もちろんヘルパーが本当に窃盗をしていた場合は、しかるべき処罰を受けることとなります。
しかし、このような「物が盗られた、なくなった」などの苦情には、認知症の利用者さんが自分で別の場所にしまい込んだことを忘れ、ヘルパーを訴えているケースも含まれています。
強引なサービス提供
- ヘルパーをお願いしているが、連絡なしにヘルパーが来たり、来なかったりする。
- ヘルパーの訪問回数が多く、自分には必要のないサービスを提供される。
本来、居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプランを作成し、それに基づいてヘルパーが派遣される流れであるため、ヘルパーが自己判断でサービスを提供してはいけません。
仕事の質が低い
- ヘルパーに掃除を頼んでいるが、冷蔵庫やトイレがいつも汚い状態である。
- ヘルパーに家事支援をお願いしているが、仕事は雑で料理もおいしくない。
- オムツ交換が乱暴であったり、廊下をバタバタ歩いたり、粗雑なヘルパーで仕事の質が低い。サービス提供責任者にヘルパーを替えて欲しいと要望したが、断られた。
このように、ヘルパーの家事能力や社会的常識が低いと利用者さんの苦情を招くこととなります。
苦情対応の基本はまず傾聴から
慣れていないうちは、苦情を言われて焦ってしまい、何をすれば良いのかパニックになるかもしれません。
しかし、苦情対応にはきちんとした順序があり、順序を守って対応することで、事態の深刻化を防げます。
ここでは、苦情対応の基本、流れを解説していきます。
傾聴することで事実確認と訴えを把握
はじめに、介護サービスに対して問題を訴える利用者さんに時間をかけて向き合い、話をよく聴くことが大切です。
加えて、利用者さんが不満や怒りといった感情を表出できるように配慮し、まずは気持ちを受け止めます。
ここで重要なのは、傾聴することで利用者さんが何を訴えていて、何を求めているのかを正確に把握することです。
さらにこのような苦情を受けたことで、事業所のサービスをより向上させられるといった感謝の気持ちを表明すると、利用者さんも落ち着いて不満を訴えることができます。
必要であれば速やかに調査を依頼
訴えの内容によっては、速やかに苦情処理案件として対応する必要があります。
調査とは、利用者さんの訴えが、事実なのかそうでないのかを明確にし、さらに事実であった場合は、事業所に非があるのかを確認することです。
特にサービスの質に関しては、同じサービスを提供しても利用者さんやご家族が違えば、受け止め方が異なることを念頭におく必要があります。
対応策を提示し再発予防に努める
調査の結果、事業所に非があることが明らかになった場合は、利用者さんの自宅へ出向き謝罪し、今後どう改善していくのかなどの対応策を提示します。
反対に、事業所やヘルパーに非がないとわかった場合は、相手の気持ちを汲み取り、共感しながら、説得を試みます。
このような話をするときは、利用者さん本人だけではなく、できればご家族も含めた話し合いの場をもうけると良いでしょう。
ヘルパーへの苦情内容を理解し、利用者さんの気持ちに寄り添おう
ヘルパーはさまざまな利用者さんと直に接するため、ときには苦情を向けられることもある仕事です。
苦情を向けられた際は焦らず、ヘルパー自身の間違いや、利用者側の理解不足など、苦情の背景をしっかりと分析することが重要となります。
苦情対応の基本は、しっかりと利用者さんの話に耳を傾け、利用者さんの気持ちに寄り添うことです。
そうすることで、相手が落ち着いて話すことができ、こちら側も状況把握がしやすくなります。
苦情を受けたとしても、誠心誠意、利用者さんと向き合い、利用者さんが今後もサービスを継続していけるように納得のいく回答をすることが大切です。