
ホームヘルパーの食事作りは、材料の買い出しから調理、利用者への調理支援などを行う介護保険サービスです。
調理をする際は、利用者の病歴やアレルギー、好みを考えながら、食べやすく栄養バランスの良い食事にする必要があります。
ヘルパーとして勤めたいけど「ごはんを作るのが苦手」「時間内に作れない」という方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ヘルパーの食事作りの仕事内容や注意すべき点、調理が苦手な人へのアドバイスを紹介します。
目次
ホームヘルパー(訪問介護員)の食事作りの仕事内容
ヘルパーが食事作りをするのは、ケアマネジャーが作成したケアプランに食事作りが含まれている場合だけです。
ヘルパーの食事作りの仕事内容を次のように3つに分類して、それぞれの要点を解説します。
- 利用者の食事の好みや病歴の引き継ぎ
- 材料買い出し・調理・調理支援
- 作り置き
利用者の食事の好みや病歴の引き継ぎ
食事作りのサービスに入る前にすることが、利用者さんの病歴や味の好みなどの確認です。
- 病歴:禁止食やアレルギー、食事形態などの指示の有無
- 食歴:好きな料理や食材の切り方、味付けの濃さ・薄さ
病歴やアレルギーなどは、ケアプランの基本情報で確認できます。
しかし、食事の好みのような情報は不足している場合があります。
食事の好みを知るには、利用者さんとのコミュニケーションが欠かせません。
材料買い出し・調理・調理支援
ヘルパーの食事作りは、利用者の希望に沿って材料の買い出しから調理、片付けまで、一貫して行います。
また、利用者が自分で料理を作れるように支援するのもサービスの一つです。
食事作りの流れの一例を挙げると、次のとおりです。
- 病歴や食事形態、味付けの好み、アレルギーなどを把握したうえで、何が食べたいかの要望を参考に献立を考える
- 近所のスーパーマーケットなどに材料を買いに行く
- 利用者の自宅にある調理器具を使い調理する
ご家族と一緒に住んでいる場合は、自宅にすでにある材料で料理を作る場合もあります。
「今日の料理はお口に合いましたか」などと料理の感想を聞いて、日々情報収集を重ねていく必要があります。
作り置き
作り置きの対応ができるのは、ケアプランに作り置きが含まれる場合のみです。
作り置きは食中毒の原因となる可能性があり、特に老化や病歴で免疫力が低下している高齢者にはリスクが高いためです。
材料や調理済み食品の保存方法は、厚生労働省 大量調理施設衛生管理マニュアルが参考になります。
- 食肉は10度以下、液卵8度以下、魚介類5度以下、野菜果実類10度前後で保存する
- 食品は中心部まで十分に加熱する
- 手洗いを徹底して清潔な場所で衛生的な容器に保存する
- 加熱調理後は、小分けにしてすばやく10度以下にして保存する
調理後は単純に冷蔵・冷凍保存するのではなく、材料の保存状況や容器・場所の衛生面なども徹底して管理しなくてはなりません。
ヘルパーは、ケアプランに含まれていない業務をしてはいけないことになっています。
ヘルパーにはできないことの詳細を知りたい方は、次の記事を参考にしてください。
ホームヘルパーの食事作りで注意すべきことは?
ヘルパーの食事作りで注意すべきことは、次の3点です。
- 食材や栄養バランスへの配慮
- 味付けの工夫
- 食材の大きさや固さの調整
このように、利用者の立場に立って食事作りをします。
食材や栄養バランスへの配慮
高齢者は、食欲低下などにより低栄養状態になりやすいため、栄養バランスの良い献立を立てる必要があります。
また、せっかく栄養バランスの良い献立を考えても、食べにくければ食事は進みません。
下記の表をバランスが良く、食べやすい献立作りの参考にしてください。
栄養バランスを整える5つの要素 | |
主食 | 炭水化物が豊富でエネルギー源となるお米やパンなどの穀類 |
主菜 | 筋肉や内臓の成分となるタンパク質が豊富な肉・魚・卵・大豆類 |
副菜 | 食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富な野菜・きのこ・海藻類 |
乳製品 | カルシウムが豊富な牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品類 |
果物 | ビタミンやカリウムの供給源となるみかん、りんごなどの果物類 |
食べやすい食材 | |
肉類 | 豚肉・牛肉のロースやバラ肉などのスライス肉、ひき肉 |
魚 | マグロ・カレイ・ブリ・カツオ・サバ |
野菜 | カボチャ・長芋・トマト・大根・なす・ほうれん草・小松菜 |
ただし、お米やパン類は、余分な糖質になりやすいため、取りすぎにならないよう注意が必要です。
食材は火を入れるとやわらかくなり、口に残らないものを選ぶと良いでしょう。
味付けの工夫
食べやすい食材で作られた栄養バランスの良い食事であっても、利用者の好みにあった味付けでなければ食べてもらえないものです。
利用者の好みを理解するには食歴を理解することが大切です。
例えば、次のような嗜好がありえます。
- ベジタリアンである
- 野菜は食べない
- 国産の食材しか食べない
- 同じ献立を食べ続けている
- 濃い味付けが好きである
利用者のこだわりや好みはできるだけ尊重するのが望ましいでしょう。
食材の大きさや固さの調整
食事は利用者各人の嚥下・咀嚼能力に合ったものでなければなりません。
噛みやすく、飲み込みやすくなるように、食材の大きさや固さを調整します。
例えば、次のような工夫を施します。
噛みやすく飲み込みやすいように工夫 | |
噛みやすくする工夫 | ● 食材は一口大の大きさにカットする ● 肉は叩いてやわらかくし、脂身は切れ目を入れる ● できるだけ歯茎で潰せるくらいやわらかくする ● 野菜は皮をすべてむくか、切れ目を入れる ● 根菜は繊維を断ち切るようにカットする ● 葉野菜はやわらかい先端を利用する |
飲み込みやすくする工夫 | ● 顎と舌で潰せるくらいやわらかくする ● 場合によってはミキサー食にしたり、とろみ調整食品を利用したりする |
「料理が苦手」「時間内に作れない」ヘルパーへのアドバイス
はじめから手際良く上手に料理を作れる人はいません。
まずは、次の項目を参考にして、定番の献立を作れるようになりましょう。
- 味噌汁などの汁物
- ほうれん草や小松菜のおひたし
- サバやカレイなど煮魚・焼き魚
- 牛肉・豚肉スライスを使った肉料理
- カボチャや大根の煮物
食事作りは、日々の積み重ねと振り返りが上達のポイントです。
時間内に作れなかったときは、一つひとつの工程に無駄がなかったか確認しましょう。
定番の献立作りに慣れれば、あとは応用が利き、いろいろな料理が作れるようになります。
ホームヘルパーの食事作りは利用者の生活に彩りを提供する仕事
食事は高齢者の健康を維持する重要な要素です。
日々の楽しみでもあり、生活の活力にもなります。
利用者に満足してもらうには、栄養バランスや病歴にも気を配るのはもちろん、日々コミュニケーションを積み重ねて、利用者の食歴を理解することが大切です。
利用者の食への好みやこだわりを理解し、利用者の日常生活に彩りを提供しましょう。