精神保健福祉士にはさまざまな就職先があり、職場によって仕事内容も異なります。
この記事では、精神保健福祉士の主な就職先8つと、それぞれの仕事内容について見ていきましょう。
精神保健福祉士をめざしている方や、将来の就職先に悩んでいる方、転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
精神保健福祉士の就職先8グループと仕事内容
下表は、精神保健福祉士の主な就職先8つと、それぞれで働く人の割合をまとめたものです。
グループ | 働く人の割合 |
障がい者福祉 | 24.4% |
医療機関 | 23.3% |
高齢者福祉 | 15.2% |
行政機関 | 10.8% |
児童・母子福祉 | 5.3% |
学校教育 | 4.1% |
司法分野 | 0.8% |
ひきこもり支援 | 0.6% |
精神保健福祉士の就職先は障がい者福祉と医療機関が多くなっています。
働く人の割合が多い順に仕事内容を紹介します。
精神保健福祉士について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
障がい者福祉
障がい者福祉に含まれる就職先は主に以下の3ヵ所です。
- 障がい者支援施設
- 相談支援事業所
- 就労支援事業所
障がい者支援施設
障がい者支援施設とは、障がいのある方に対して介護を提供したり、生活に必要な支援を行ったりする施設です。
障がい者支援施設で働く精神保健福祉士は、入所者の生活上の悩みや就労支援などを担当します。
相談支援事業所
相談支援事業所は、都道府県や市区町村が指定した福祉サービスの利用を相談できる窓口です。
相談支援事業所で働く精神保健福祉士は、障がいのある方の相談や疑問に対応します。
寄せられる相談の内容としては、「福祉サービスの申し込みをしたいが、どこに行けば良いのかわからない」「長期間障がい者支援施設に入所していたが、施設を出て一人暮らしをする方法を知りたい」といったものが挙げられます。
就労支援事業所
就労支援事業所は、障がいのある方の就職や就労のサポートを行う施設です。
精神保健福祉士は、精神疾患を抱えている方の状態を把握したうえで、どのような環境が必要なのか、社会復帰するために必要な福祉サービスはどれなのかを検討し、提供します。
ときには見学に同行し、就職活動を手伝うこともあります。
医療機関
医療業界の精神保健福祉士は、主に以下の職場で働きます。
- 総合病院・大学病院の精神科
- 精神科や心療内科
- 訪問看護ステーション
総合病院・大学病院の精神科
総合病院や大学病院では、退院支援やリハビリテーションを医師や看護師、理学療法士、作業療法士と協力して行います。
その他、医療費に関する相談対応や、医師の診断に必要な情報のヒアリング、退院後の患者さんを家庭訪問といったことも、重要な役割です。
精神科・心療内科
精神科や心療内科では、受診する際に患者さんとご家族の不安や悩みを聞き、医師とのカンファレンスを実施します。
必要であれば関連施設との連携を実施するため、患者さんとより密接に関わることになるでしょう。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションでは、自宅で暮らす利用者さんの困りごとに対して解決方法を提案したり、支援体制をコーディネートしたりします。
スタッフ会議では、精神保健福祉士の情報をもとに受け入れの判断をするため、いかに詳細な情報を聞き取れるかが重要です。
高齢者福祉
精神保健福祉士が勤務する主な高齢者福祉施設は以下の3種類です。
- 介護老人福祉施設
- 居宅介護支援事業所
- 地域包括支援センター
介護老人福祉施設
介護老人福祉施設は特別養護老人ホームとも呼ばれ、生活相談員の設置が義務付けられています。
精神保健福祉士は生活相談員の資格要件に含まれているため、生活相談員として働くことが可能です。
生活相談員の主な仕事内容は以下のとおりです。
- 施設の入退所の手続き
- ケアマネジャー、地域の関係機関との連絡、調整
- デイサービスなどの個別援助計画の立案、ケアプラン作成のサポート
居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所は、在宅で介護保険サービスを利用する方からの相談や、サービス利用の調整を行う施設です。
精神保健福祉士は、統合失調症やアスペルガー症候群、うつ病といった、精神障がいのある利用者さんを担当します。
地域包括支援センター
地域包括支援センターでは、認知症の方とご家族に対して以下の業務を行います。
- グループホームや認知症疾患医療センターとの連携
- 地域の住民やキャラバンメイトと協力し認知症高齢者を見守る体制作り
- ご家族の負担を軽減し在宅介護を継続できるよう医療機関と連携し支援する
行政機関
精神保健福祉士が働く主な行政機関は以下のとおりです。
- 精神保健福祉センター
- 保健所
- 市区町村役場
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、地域住民の精神的健康の保持増進や、精神障がい者の自立と社会参加の促進を目的とした施設です。
精神保健福祉についての普及啓発活動や精神医療審査会の事務作業も担当します。
保健所
保健所で働く精神保健福祉士は、対面または電話での相談対応を行っています。
主に寄せられる相談内容は以下のとおりです。
- 心の健康相談
- 診療を受けるにあたっての相談
- 社会復帰相談
- 思春期・青年期に関する相談 など
相談の結果次第で、診療所や障がい福祉サービス事業所を紹介したり、医学的指導やケースワークを実施したりします。
市区町村役場
市区町村役場で働く場合は、福祉関係の窓口業務を担当する場合が多いです。
住民からの精神保健福祉相談や、地域の精神障がい者への支援方法の提案を行うのも、精神保健福祉士の役割です。
その他、障がい者手帳の交付といった事務作業も担当します。
児童・母子福祉
精神保健福祉士が働く児童福祉施設には、以下のようなものがあります。
- 障がい児施設(入所・通所)
- 児童養護施設
- 母子生活支援施設
障がい児施設(入所・通所)
障がい児施設は、知的障がいや精神障がいのある児童が通所または入所する施設です。
精神保健福祉士は、施設を利用する児童に対して、生活に必要な訓練や自立支援、保護者との面談を行います。
なお、精神保健福祉士が障がい児施設で働くためには、児童指導員任用資格を取得しなければいけません。
児童養護施設
児童養護施設は、保護者がいない児童や、何らかの理由で保護者と生活できない児童を養護する施設です。
児童養護施設で働く精神保健福祉士は、家庭支援相談員として、児童の着替えや食事、勉強といった、基本的な生活のサポートを行います。
母子生活支援施設
母子生活支援施設は、配偶者との離婚や死別、暴力などにより、家にいられなくなった18歳未満の子供を持つ母親が入所する施設です。
精神保健福祉士は母子支援員として働きます。
母子生活支援施設には複雑な背景を抱えた方が入所しているので、支援するためには一定の社会経験や専門的な知識が必要です。
学校教育
小学校、中学校、高校、大学、短大といった、教育現場で働く精神保健福祉士は、スクールソーシャルワーカーと呼ばれます。
業務内容は、家庭訪問などを通して適切な機関とつなげる「直接的支援」と、学校での支援体制の構築や専門知識を生かしたアドバイスを行う「間接的支援」の2種類です。
直接的支援の具体例としては、児童相談所や児童家庭支援センター、子ども家庭支援センターといった関係機関の利用や、生活保護の利用につなげることなどが挙げられます。
司法分野
司法分野の精神保健福祉士は主に以下の場所で働いています。
- 矯正施設
- 保護観察所
矯正施設
矯正施設とは、刑務所や拘置所、少年院などの総称です。
精神保健福祉士は2014年から福祉専門官として採用されることが決まりました。
業務内容は、矯正施設に収容された高齢者や障がいを持った受刑者が、出所後に社会復帰できるよう、医療機関や福祉施設と連携し、必要な調整を行うことです。
なお、福祉専門官になるには、主に以下の施設で5年以上働く必要があります。
- 福祉施設
- 社会福祉協議会
- 福祉事務所
- 医療機関
- 行政機関
保護観察所
保護観察所の精神保健福祉士は、社会復帰調整官として活躍しています。
仕事内容は、対象者の生活環境を調査し、適切な精神保健福祉サービスを利用できるよう調整することです。
また、対象者の生活を見守り、必要に応じて助言や指導をしたり、ご家族からの相談に応じることもあります。
社会復帰調整官として働くための条件は、8年以上の実務経験と大学卒業以上または大学卒業と同等と認められる資格を有していることです。
ひきこもり支援
ひきこもり地域支援センターは全国の指定都市に設置されており、支援コーディネーターとして相談支援や地域の関係機関と連携して支援を行います。
支援コーディネーターの仕事内容は、電話や対面での相談支援や同じ悩みを持つ方が集まれる場所の提供です。
ひきこもり当事者だけでなく、ご家族からの相談にも対応します。
ひきこもりを解決するために連携している主な支援機関は以下のとおりです。
- 福祉事務所
- 児童相談所
- 精神保健福祉センター
- 発達障がい者支援センター
- 自立相談支援機関
- 当事者会
- 家族会
- 民間カウンセラー
- 病院
- 地域若者サポートステーション
- ハローワーク
- 障がい者雇用促進関連施設
- 学校
- 教育委員会
精神保健福祉士の就職先は複数あるのでどこで働くかについても検討しよう
精神保健福祉士の就職先は8グループに分けられます。
- 障がい者福祉
- 医療機関
- 高齢者福祉
- 行政機関
- 児童・母子福祉
- 学校教育
- 司法分野
- ひきこもり支援
各就職先で仕事内容は異なり、相談支援の対象も変わります。
自分が精神保健福祉士として、どのような方の相談支援をしたいのか考え、就職先を決めましょう。