平成30年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を定め、事実上の副業解禁となったことをきっかけに、副業や兼業を考えている看護師の方も多いのではないでしょうか?
しかし、勤務先で副業のことは話しにくい雰囲気があるなどなかなか人に相談することが難しいと感じてしまうこともあるはずです。
今回の記事では、看護師をしながら副業を始めたいと考えている人を対象に、副業の可否や副業開始時の注意点、看護師のスキルを活かしたおすすめの副業などを紹介していきます。
目次
看護師の副業はできる?
看護師という職業に対して、法律上副業は禁止されていません。
副業には、時間を有効活用して収入を上げられることに加え、新しい出会いや自身のスキル・知見を広げるきっかけにもなるなど、多くのメリットがあります。
同業種の副業であれば、単発の求人や本業と両立が可能なシフトでの求人を、比較的容易に見つけられるでしょう。
看護師が副業できる病院はどこ?
看護師の副業は法律上禁止されていないとお伝えしましたが、勤務先が副業の可否を定めている場合もあります。
看護師の場合は、勤務先が国公立病院かそれ以外かで、扱いが大きく異なってきます。
【国公立病院の看護師】副業禁止
国公立病院で働いている看護師は、たとえ公務員試験を受けていなくとも、公務員や準公務員という扱いになります。
国家公務員法103条や地方公務員法38条では、営利を目的とする私業は禁止と定められており、独立行政法人の病院や県立病院の看護師、保健師は副業禁止となっているため注意しましょう。
なお、投資信託や株式、不動産などへの投資や、不用品の売却によって収入を得ることは問題ありません。
【民間病院・クリニックなどの看護師】副業の可否は勤務先に確認しよう
民間の医療機関などに勤めている看護師の場合は、基本的には副業が可能です。
しかし、勤務先の就業規則によって副業禁止と定められているケースもあるため、必ず副業開始前に就業規則を確認しておく必要があります。
副業の可否を確認せずに安易に副業をはじめてしまうと、後々勤務先に知られてしまった場合に、罰則を受けてしまう可能性もあるため注意したほうが良いでしょう。
看護師が副業する際の注意点・副業選びのポイント
実際に副業をしたいと考えていても、どのような基準で副業を選べば良いのか分からない場合も多いでしょう。
慣れない副業をはじめて、本業が疎かになってしまっては本末転倒です。
ここでは、副業を始める際の注意点や副業選びのポイントを解説します。
看護師が副業開始する際に気をつけること
無理なく副業を続けて行くためには、必ず副業開始前に気をつけなければいけないポイントがあります。
看護師の副業は、以下のことに注意したうえで開始しましょう。
まずは就業規則を必ず確認する
副業は法律で禁止されていませんが、実際に副業を容認・推進している企業は28.8%(2018年時点)と多くはありません。
企業が副業を禁止する理由としては、長時間労働・過重労働につながり本業への支障が出ることへの懸念や情報漏洩のリスク、利益相反リスクなどが挙下られます。
禁止されている副業が勤務先に発覚してしまった場合、訓戒、戒告などの口頭注意で終わることもありますが、場合によっては減給・出勤停止・降格処分・解雇などの厳しい罰則を受ける可能性もあります。
副業開始前には必ず、副業の可否を就業規則で確認するようにしましょう。
本業に影響しないよう配慮する
副業は本業とは異なり、自分自身で業務量や業務内容を決められるなど、裁量権が大きくなりがちです。
そのため、ついつい副業を増やしすぎてしまったり、副業に注力しすぎて疲れが蓄積してしまったりして、本業に支障が出やすい状況になってしまうこともあります。
そもそも看護師は、勤務時間が不規則であったり、体力や精神力が必要だったりと、ハードな職業です。
副業と本業のバランスを保つことを難しく感じることも多いため、特に副業開始当初は業務量を調節し、自分に無理のない範囲で始めていくようにしましょう。
確定申告を行う
勤務先で年末調整を行っていても、副業で年間20万円以上の収入がある場合は別途確定申告が必要になります。
確定申告を行わないと無申告加算税や延滞税が発生する場合があるため、注意しましょう。
また、年間の収入が20万円以下であっても、医療費控除や住宅ローン控除を受けられる場合には、確定申告をしたほうが支払う税金を安く抑えられます。
看護師の副業選びのポイントは?
看護師が副業を選ぶ際のポイントとしては、主に以下の2点が挙げられます。
- 看護師の知識・スキルが活かせる副業にする
- 無理なく副業できる時間・条件を考える
それぞれ詳しく紹介していきます。
看護師の知識・スキルが活かせる副業にする
副業は多くの種類がありますが、副業収入を確実に得たい場合は、看護師としてのスキルを活かせる副業を選択することが重要です。
令和3年賃金構造基本統計調査によると、すべての産業を含めた平均時給は1時間あたり1,265円となっていますが、看護師のパート・アルバイトなどの平均時給は1,424円となっており、看護師として働いたほうが一般よりも給料が高い可能性があります。
また、知識やスキルを活かせる副業を選択することで、新しいことを覚える負担を減らしたり、不安な環境下で働くことを避けたりできるため、自身のストレスを軽減できるというメリットも得られます。
無理なく副業できる時間・条件を考える
看護師は、夜勤やシフト制などによって生活リズムが不規則になってしまったり、人手不足や激務のために体力的に余裕がなくなったりする場合もあります。
しかし、副業であっても契約した以上は責任が伴うため、どんなに疲れている時であっても受けた仕事はきちんと完了しなければなりません。
そのような状況の中で、副業をどのように自身の生活に取り入れていくのか考えることはとても重要となります。
必ず無理なく副業できる時間や頻度を考慮しましょう。
例えば、定時で帰れるクリニックで勤めている看護師の場合は、本業後に短時間でも働ける副業を選ぶのも良いでしょう。
対して、残業が発生しがちな病院に勤めている看護師ならば、本業のある日は副業を避け、本業の休日にしっかりと働ける副業を選ぶべきです。
それぞれ本業の特徴に合わせて、副業を組み込んでいきましょう。
看護師に人気・おすすめの副業5選
先述したように、看護師の副業では知識やスキルを活かせる仕事を選ぶことがおすすめです。
ここでは、看護師としてのスキルが活かせるおすすめの副業5選と、それぞれの特徴を紹介していきます。
【看護師のおすすめ副業1】デイサービス
デイサービスは、体調が安定している利用者が多いため、落ち着いて働けることが特徴です。
また非常勤の求人が多く、仕事を探しやすいのも魅力でしょう。
デイサービスでの看護師の仕事内容は、バイタル測定や問診などの利用者の健康管理、食事・入浴介助、機能訓練の介助などです。
緊急の医療行為はほとんどないため、看護師としてのスキルアップを図ることは難しくなります。
一方で、高齢者のケアについて学びたい方やコミュニケーションをとることが好きな人にとってはおすすめの副業といえるでしょう。
【看護師のおすすめ副業2】訪問入浴
訪問入浴は、日勤のみの仕事であり、単発や週2~3日での勤務も可能であるため、本業との調整を行いやすい特徴があります。
仕事内容としては、看護師・介護士・オペレーターの3人でチームを組み、利用者の自宅を訪問して入浴介助を行います。
看護師の役割は、入浴前の体調確認、入浴介助、入浴後の体調確認です。
利用者によっては介助を多く必要としたり、自宅の環境が整っていない中で入浴介助を行わなければいけないこともあるため、体力が必要な場合もあります。
【看護師のおすすめ副業3】ツアーナース・イベントナース
ライブや野外フェスなどのイベント時に病人や怪我人の対応を行う看護師のことをイベントナース、修学旅行や旅行会社のツアーなどに同行し、旅行中の体調不良者の対応を行う看護師をツアーナースといいます。
イベントナース、ツアーナースともに土日を中心とした単発で働ける求人が多いため、定期的に副業をしたいというよりも、空いている時間を活かして好きなタイミングで副業をしたいと考えている方におすすめです。
また、救急や応急処置などの対応が主となるため、それらの経験がある看護師に適した副業となっています。
【看護師のおすすめ副業4】健診センター・巡回健診
健診センターや巡回検診は、会社や学校などの健康診断などをサポートする業務です。
採血や血圧測定、尿検査など、看護師であれば慣れた内容の業務が多いことが特徴となっています。
どのような現場であっても比較的すぐに慣れることができるでしょう。
【看護師のおすすめ副業5】医療系ライター
医療系ライターは、看護師の知識・経験を活かして医療系の記事を執筆する仕事です。
文章を書くことが好きな方や、分かりやすい文章を書くことが得意な方は、検討してみると良いでしょう。
また、パソコンがあれば自宅で働けるため、子育て中で外出が難しい方、時間に縛られたくない方に適しています。
一方で、初めてライターとして活動する際には記事単価が安くなってしまう傾向もあります。
副業でたくさん稼ぎたいと考えている方にとっては、向いているとは言えないかもしれません。
医療系ライターの詳細はこちらの記事でも紹介しているため、参照してみてください。
看護師の副業の現状
政府が事実上の副業解禁を行ったこともあり、収入を上げたい、自分の活躍の場を広げたいなどの理由から副業という選択肢を考える機会も増えてきました。
では、看護師の副業の現場は実際どのようになっているのでしょうか?
看護師などの医療従事者の副業実施割合、看護師の副業の探し方について紹介していきます。
医療従事者の副業実施割合
看護師を含めた医療従事者で副業を行っている人の割合は9.9%となっており、約10人に1人が副業をしていることになります。
想像していたより多いと感じた人も多いのではないでしょうか?
しかし、この割合の中にはアルバイトの掛け持ちなども含まれており、正社員として病院で働いているなどの人の副業実施割合はもう少し低くなります。
また、医療・福祉業で副業をしている人の約5割は、本業と同じ業種ので副業を行っており、他の業種と比較して、医療・福祉業で働いている方はスキルを活かした副業を行う人が多いことが分かります。
看護師の副業の見つけ方
看護師としてのスキルを活かした副業を探すには、以下のような方法があります。
- 転職エージェントを利用する
- 転職サイトで探す
- 知人に紹介してもらう
副業を検討している方はまず転職サイトに登録して探したり、転職エージェントに相談することで、自分に合った求人に出会えるでしょう。
看護師にできる副業はたくさんあるが、慎重に検討しよう
看護師ができる副業はたくさんあるため、公務員以外の看護師が副業を始めることはさほど難しくないでしょう。
しかし、どのような働き方であっても受けた仕事には責任が伴います。
副業が忙しく、本業が疎かになってしまったりしては本末転倒のため、副業を始める前に自分にとって適切な副業の種類や頻度を考えることはとても重要です。
副業は経験がなく不安だと感じる方は、転職エージェントなどを利用することで客観的な視点をもったアドバイスをもらえるためおすすめです。