
服薬指導は薬剤師の重要な業務の一つです。
患者さんに適切な服薬指導を行うことで、薬の効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えることができます。
ただし、患者さんによって理解度や関心度が異なるため、一人ひとりに合わせた服薬指導を行わなければなりません。
そこで本記事では、服薬指導の会話例と患者さんに伝わりやすくなるコツを紹介します。
目次
【シーン別】服薬指導の会話例
服薬指導は、患者さんと会話をしながら行う薬剤師の重要な業務です。
場面ごとに適切な会話をすれば、患者さんとの信頼関係を築き、必要な情報を収集できるでしょう。
ここでは、服薬指導の場面ごとに注意点と会話例を紹介します。
声かけ
まずは窓口で患者さんを呼びます。
このとき、立って歩くのが苦痛でない場合は窓口まで来てもらい、立ったり歩いたりが不自由な場合は、患者さんのところまで移動して服薬指導を行うこともあります。
患者さんと対面したら、薬剤師から自己紹介をします。声かけで大切なのは、アイコンタクトと表情です。その後の服薬指導でも円滑にコミュニケーションを取るために、明るい笑顔で目線を合わせた声かけを心がけましょう。
また薬の取り違えがないよう、名前もフルネームでしっかり確認してください。
薬剤師「お薬の処方でお待ちの〇〇様。」
患者さん「はい。」
薬剤師「こんにちは、薬剤師の△△です。〇〇〇〇様で間違いないですか?」
患者さん「はい、間違いありません。」
症状や服用薬の聞き取り
次に症状や服用薬についての聞き取りをします。
来局がはじめての患者さんへ服薬指導する場合は、質問票を用いて細かく症状を確認してください。
また、定期的に来局されている患者さんでも、アレルギーや副作用、妊娠など、体調の変化がないか確認しましょう。
子どもの場合、体重が変化しやすいので、毎回確認します。
処方箋以外の市販薬やサプリメントを服用しているかどうかも、忘れずにヒアリングしてください。
薬剤師「〇〇様は、今回が初めてなので、いくつか質問させてください。
現在治療中の病気や飲んでいるお薬はありますか?」
患者さん「特にありません。」
薬剤師「アレルギーや今までにかかった病気はありますか?」
患者さん「ありません。」
薬剤師「過去に薬を飲んで調子が悪くなったことはありますか?」
患者さん「ありません。」
薬剤師「煙草を吸ったりお酒を飲んだりする習慣がありますか?」
患者さん「お酒は飲むことがあります。」
薬剤師「お酒は週にどれくらい飲みますか?」
患者さん「毎日飲みます。ビール1杯くらいです。」
薬剤師「今日はどのような症状で受診されましたか?」
患者さん「朝から胃が痛くて。」
薬剤師「今回医師からは、どのような説明がありましたか?」
患者さん「胃が荒れているので、薬を出すと聞いていています。」
薬剤師「〇〇様前回の処方時から症状は変わりありませんか?」
患者さん「頭痛が楽になりました。」
薬剤師「前回処方されたお薬を飲んで、体調の変化はありましたか?」
患者さん「わからないです。」
薬剤師「眠気やのどが渇くといった感じはありませんでしたか?」
患者さん「ありません。」
医薬品の説明
症状や服用薬を確認して問題がなければ、処方された医薬品の説明をします。
ここでは、患者さんと医薬品本体や処方された量を実際に確認しながら、わかりやすく説明しましょう。
一つひとつ、薬袋や薬剤情報提供書にチェックをつけながら、患者さんが理解したかを確認しながら進めてください。
薬剤師「今日先生から処方されているのはA(薬の名前)です。」
薬剤師「薬について先生から説明がありましたか?」
患者さん「熱に効く薬と聞いています。」
薬剤師「わかりました。私のほうからも薬の説明をいたします。」
説明が必要な薬の情報として、以下のような項目があります。
- 名前
- 効能
- 服用方法
- 起こりうる可能性がある副作用
- 飲み合わせで注意すること
- 保管方法
質問事項の確認
医薬品の説明が終わったら、患者さんからの質問を受けましょう。
答えは相手の理解度に合わせて調整します。
具体的な例を挙げながら、疑問を解消することが大切です。
薬剤師「お薬に関する説明は以上です。保管方法や服用タイミングなどについて、なにか質問はありますか?」
患者さん「飲み忘れてしまった場合はどうすれば良いですか?」
薬剤師「もし薬を飲み忘れてしまったときは、気付いたらすぐに飲んでください。ただし、もう次に飲むタイミングが近くなっていたら1回分とばしてください。忘れそうなら、アラームをかけるといいですよ。」
患者さん「わかりました。」
薬剤師「もし他に気になることがあったら、この袋に書いてある電話番号に連絡してくださいね。」
患者さん「ありがとうございます。」
クロージング
服薬指導の最後に、会計をして患者さんを見送るクロージングを行います。
間違いのないよう会計をして領収書を渡したら、相手を労わる一言を添えて患者さんを見送りましょう。
患者さんの満足度を上げるためにも、最後まで丁寧に対応しましょう。
薬剤師「本日のお会計は〇〇円です。お支払いには現金とクレジットカードがご利用できます。」
患者さん「クレジットカードでお願いします。」
薬剤師「少々お待ちください。」
薬剤師「こちらが明細書です。お大事にしてください。」
患者さん「ありがとうございました。」

服薬指導のコツは?会話での注意点やポイントを紹介
これまで服薬指導の会話例を紹介しましたが、実際の服薬指導では患者さん一人ひとりに合わせた臨機応変な対応が求められます。
ここでは、服薬指導の際の注意点やポイントを紹介します。
患者さんの話を聞く
服薬指導では、患者さんの話を最後までよく聞きましょう。
患者さん一人ひとりの生活習慣によって服用の注意点が変わるため、形式的な服薬指導では十分ではありません。
ライフスタイルを把握することが大切です。
薬剤師が一方的に薬の説明をして終わらせるのではなく、患者さんが疑問に感じていることなどがないかを確認しながら、対話することを心がけましょう。
患者さんの状態を考慮し説明する
服薬指導の対象となる患者さんにはさまざまな人がいるため、以下のような対応が必要な場合があります。
- 高齢者や車いす、あるいは体調の悪い患者さんには、受け渡しカウンターでの服薬指導にこだわらず、患者さんが座っている場所まで、薬剤師が行く
- 目が見えにくかったり、耳が聞こえにくかったりする患者さんであれば、大きな文字を書く、ゆっくり大きな声話す、といった配慮をする
声かけのときに、患者さんの状態を見極めて、臨機応変に対応しましょう。
患者さんの状況に適した説明の長さで説明する
なかには急いでいる患者さんもいます。
「薬の説明はいらないから会計だけしてほしい」と言われるケースもあるでしょう。
その場合は「1点だけ説明させてください」や「重要な部分だけ説明して終わります。」などと内容を要点だけに絞るなどして工夫し、服薬指導の時間を短めに対応します。
一方で薬に不安を感じている患者さんには、しっかりと説明する必要があるでしょう。その際は、処方薬の種類ごとに丁寧に説明します。
「服薬指導はこうでなければならない」とセオリーを固定せず、患者さんの状況に合わせます。
薬剤師の役割を果たすには、臨機応変な対応が重要です。
専門用語を使わない説明を心がける
専門用語を使った服薬指導は、患者さんが意味を理解できず不安になり、薬を飲もうという気持を失うきっかけになるかもしれません。
そのため服薬指導では、難しい専門用語を使わずに、誰にでもわかるような一般的な言葉での説明を心がけましょう。
服薬指導の際に、薬剤師が使ってしまいがちで伝わりにくい専門用語の例と言い換えを紹介します。
- 頓服→症状が出たとき飲む薬のこと
- 食間→食事と食事の間という意味で、食事を終えてから約2時間後が目安
- ステロイド→炎症を抑えたり、免疫の働きを弱めたりする薬で、元は人間の体で作られるホルモン
- 眼軟膏→目の中に塗る軟膏※使用方法を詳しく説明する
他にも専門用語は多いですが「わかるはず」と決めつけずに、患者さんが理解できたかどうか確認しながら説明するよう心がけましょう。
薬剤師として知識を深めるための勉強を怠らない
医薬品業界では日々新しい薬が登場し医薬品情報が更新されています。
そのため、薬剤師は常に知識を深めるための勉強が欠かせません。
薬剤の知識を身につけるには、以下の方法があります。
- セミナーや講演会に参加する
- 勉強会に参加する
- 参考書や入する
- アプリやメールマガジンで情報を仕入れ勉強する
信頼される薬剤師でいるためには、いつも新しい情報を集めようと学び続ける姿勢が大切です。
常に最新の知識を身につけましょう。
服薬指導のコツを理解し患者さんとの会話でうまく伝えよう
服薬指導は、患者さんとの会話を通して行われる重要な業務です。
薬を効果的に服用できるように指導するには、患者さんの話をよく聞き、一人ひとりの状態に合わせた説明を心がけなければなりません。
専門用語を使わずにわかりやすく説明し、患者さんの疑問や不安に丁寧に対応するようにしましょう。
また、薬剤師としてのスキルアップを怠らず、常に最新の知識を身につけておくことも重要です。
服薬指導のコツを理解し、患者さんとの会話でうまく伝えられるよう努めましょう。