薬剤師になるためには、大学在学時に事前学習や共用試験に合格し、実務実習を受ける必要があります。
しかし、薬剤師の実務研修はずっと同じ状況ではありません。
薬学教育が4年制から6年制に変わったことで、薬剤師の実務実習も変化しています。
今回は、薬剤師の実務実習の内容や期間・スケジュール、指導員などについて詳しく解説します。
目次
薬剤師の実務実習とは?
薬学部の6年制教育では、実務実習が義務づけられています。
ここではまず、薬剤師の実習内容や期間、スケジュールなどを紹介します。
薬剤師の実習内容
具体的な実務内容は以下のとおりです。
- 薬学臨床の基礎
- 処方せんに基づく調剤
- 薬物療法の実践
- チーム医療への参画
- 地域の保健・医療・福祉への参画
薬物臨床の基礎では以下の内容を学びます。
- 臨床における心構え
- 臨床実習の基礎
処方せんに基づく調剤では以下の内容を学びます。
- 法令・規則等の理解と遵守
- 処方せんと疑義照会
- 処方箋に基づく医療品の調製
- 患者・来客者対応、服薬指導
- 患者教育
- 医薬品の供給と管理
薬物療法の実践では以下の内容を学びます。
- 患者情報の把握
- 医薬品情報の収集と活用
- 処方設計と薬物療法の実践(処方設計と提案)(薬物療法における興亜と副作用の評価)
チーム医療への参画では以下の内容を学びます。
- 医療機関におけるチーム医療
- 地域におけるチーム医療
地域の保健・医療・福祉への参画では以下の内容を学びます。
- 在宅(訪問)医療・介護への参画
- 地域保健への参画(公衆衛生、学校薬剤師、啓発活動)
- プライマリ・ケア、セルフメディケーションの実践
- 災害時医療と薬剤師
3期制から4期制に変更
薬学部はかつて4年制でしたが、2006年度より6年制に変わりました。
4年制と6年制の実務実習の違いは以下のとおりです。
4年制 | 6年制 | |
実務期間 | 1〜4週間 | 調剤薬局11週間、病院11週間の計22週間 |
実習場所 | 調剤薬局または病院 | 調剤薬局と病院の両方 |
特徴 | 主に見学型 | 主に参加・体験型 |
実務内容 | 薬局実務実習テキスト | 実務実習モデル・コアカリキュラム |
指導者 | 実習生指導薬剤師 | 認定実務実習指導薬剤師 |
そして、2019年からは実務実習が3期制から4期制に変更しました。
4期制では、薬剤師として必要な資質を明確にし、それを身につけるための内容になっています。
また、多くの患者さんに接して幅広い業務を体験するなど、参加・体験型学習を行います。
3期制では事前学習と病院実習、薬局実習の3領域に分かれていましたが、4期制では共通している業務の評価が統一されたため、病院または調剤薬局のどちらかでの修得が可能です。
実習期間とスケジュール
薬剤師の実習には、調剤薬局11週と病院11週の計22週の期間が必要です。
実習は第Ⅰ期から第Ⅳ期に分かれており、実習期間は第Ⅰ期の開始は4年次の2月下旬以降であり、第Ⅳ期の終了は5年次の3月までになっています。
各期の間は学生のフォローや施設の準備期間として2〜4週間、8月中旬と年末年始は1週間あけなければなりません。
また、調剤薬局、病院の順に2期連続で実習を受ける必要があります。
薬剤師の実習は5ヵ月近くに及ぶため、スケジュールと照らし合わせながら時期を選ぶようにしましょう。
実務実習はどこで行われる?
薬剤師実習は、病院と調剤薬局の2ヵ所で行われています。
実習場所は拡張性機構や大学が受け入れ先を決めるのが一般的です。
ここからは、病院と調剤薬局の受け入れ内容を紹介します。
薬剤師の病院実習
病院実習では、処方監査・疑義照会、注射剤調剤・無菌調製、病棟業務の実践、チーム医療への参画、医薬品情報業務などを行います。
病院実習には研修生受け入れ施設基準があり、以下の5つが当てはまります。
1. 一般病床が概ね100床以上であること
2. 認定実務実習指導薬剤師または実務経験 10 年以上の十分な指導力を有する薬剤師が いること
3. 薬歴管理指導業務を行っていること(救命救急入院料等に関わる業務を行っていることが 望ましい)
4. 院外処方せんを発行していること
5. 日本病院薬剤師会賠償責任保険(病院薬局契約)又はこれと同等の賠償責任保険に加 入していること
薬剤師の調剤薬局実習
調剤薬局実習では、調剤や服薬指導、薬物治療の評価、セルフメディケーション支援、在宅両方支援、学校薬剤師などの地域保健・衛生活動を行います。
また、病院実習と同じく処方監査・疑義照会も行いますが、これは病院と調剤薬局のどちらかで構いません。
調剤薬局の実習にも研修生受け入れ施設基準があり、以下の5つが当てはまります。
1. 保険薬局であること
2. 認定実務実習指導薬剤師または実務経験 10 年以上の十分な指導力を有する薬剤師が いること
3. 薬剤管理指導業務を行っていること
4. 一般用医薬品および医療関連用品の販売を行っている薬局であること
5. 麻薬小売業免許を有する薬局であること
6. 在宅患者訪問薬剤管理指導届出薬局であること
7. 薬剤師賠償責任保険又はこれと同等の賠償責任保険に加入していること
実務実習の指導員はどのような人?
実務実習の指導員は認定実務実習指導薬剤師と呼ばれており、これは一般社団法人薬学教育協議会によって認定された指導員です。
認定されるためには、認定実務実習指導薬剤師養成研修をすべて修了する必要があります。
ただし、誰でも養成研修を受けられるわけではなく、受講には以下の資格が必要です。
- 薬剤師実務経験が5年以上
- 薬剤師実務の勤務継続が3年以上
- 病院または調剤薬局に、1週間あたり3日以上かつ20時間以上勤務している
実務実習の内容を知って早めに計画を立てよう
薬剤師になるため、大学在学時に実務実習を受ける必要があります。
実務実習は薬学教育の変化とともに改訂されているため、詳しく知りたい場合は最新の情報を仕入れるようにしましょう。