薬剤師は、専門性を活かして幅広い場所で活躍できますが、勤務先によっては業務量が多く、多忙な日々が続くこともあるでしょう。
自分のペースで働きたい、ワークライフバランスを重視したいという場合、職場選びにいくつかのポイントがあります。
労働時間が長く業務に追われる日々は、薬剤師である自分自身の健康にも影響を与えかねません。
自分の希望する働き方を明確にし、仕事だけでなく私生活も大切にできる職場を見つけましょう。
本記事では、のんびり働きたい薬剤師の方に向けて、理想の職場を見極めるうえで重視したいポイントや避けたい働き方を解説します。
目次
のんびり働きたい薬剤師が重視すべき職場環境

のんびりと働きたい薬剤師の方は、職場を選ぶ際に以下10個のポイントに注目してみましょう。
- 残業が少ない
- 休みが取りやすい
- 経営者を含め、働く人間の考え方がしっかりしている
- 対応に困る患者さんが少ない
- 処方箋の数が少ない
- 調剤の内容がわかりやすい
- 在宅患者の訪問や薬の配達がない
- 業務を自分でコントロールできる
- 単科医院と併設された調剤薬局で働く
- 新店舗を狙う
いずれも、ストレスの少ない環境でワークライフバランスを実現しながら働くために重要なポイントです。
順に詳しく見ていきましょう。
残業が少ない
薬剤師の方が、のんびり働ける職場を見極めるうえでは、まず確認しておきたいのが残業の量です。
就業時間が明確で、定時に帰りやすい環境は、プライベートの充実に大きく影響します。
日中は多少忙しくても、帰り際に追加業務が発生しにくく残業の少ない職場であれば、退勤後に自分の時間を確保できるでしょう。
診療時間が長引かないクリニックに併設された調剤薬局などは、残業が少ない可能性があり、のんびり働きたい薬剤師にとって魅力的な職場の選択肢となります。
休みが取りやすい
休暇を取得しやすい職場かどうかも、薬剤師の働きやすさを左右する要素です。
休みたいときに休める環境は、ストレスを溜め込みにくくなり、仕事へのモチベーションも維持できます。
急な体調不良時にも無理をして出勤する必要がなく、休暇を取れるよう周囲が協力してくれる職場の場合、健康を維持しつつ長く働けるでしょう。
また、休暇を利用して勉強や趣味、旅行などの時間を確保できれば、自分らしく充実した生活の実現にもつながります。
経営者を含め、働く人間の考え方がしっかりしている
経営者をはじめとした職場の人たちの考え方が自分に合っていることも、薬剤師がのんびり働くうえで重視したいポイントです。
経営者の方針や職場の雰囲気に共感できない場合、希望する働き方を叶えにくいばかりか、人間関係にも不満を抱えかねません。
就職・転職活動の際は、面接や職場見学の機会を利用して、社風などをよく観察しておきましょう。
また、従業員の考え方に共感できる職場であれば、コミュニケーションも円滑になり、不要なストレスを抱えることなく業務に取り組めます。
対応に困る患者さんが少ない
薬剤師の仕事は、患者さんとの関わりがメインになるため、対応に迷いやすい患者さんが多い環境は、働きやすさや業務の意欲に影響します。
治療に対する不安や悩みを抱えている患者さんに寄り添う対応力は、薬剤師に欠かせないスキルです。
しかし、暴言やクレームの多い患者さんや複雑なニーズを持つ患者さんばかりだと、薬剤師自身が精神的な負担を感じてしまう可能性もあります。
職場見学をしたり、転職エージェントに近隣の病院の特徴や地域性に関する情報を尋ねたりして、患者さんの傾向を事前にある程度把握しておきましょう。
処方箋の数が少ない
処方箋の数が多くなりすぎない職場は、落ち着いて業務に取り組みたい薬剤師にとって魅力的です。
処方箋の数が適度であれば、業務に追われてキャパオーバーになる心配もなく、調剤業務や服薬指導の一つひとつに丁寧に取り組めるでしょう。
監査や患者さんとのコミュニケーションに十分な時間をかけられることは、薬剤師の業務品質を高めるうえでも重要な意味を持ちます。
処方箋の数が適度だと、職場全体に余裕が生まれ、従業員同士のコミュニケーションのすれ違いを防ぎやすくなるのもメリットです。
ただし、処方箋の数が極端に少ない場合、経営面で問題が生じる可能性もあるため、安定性も考慮しつつ適度なバランスの職場を見極める必要があります。
調剤の内容がわかりやすい
慌ただしい環境を避けてのんびりと働きたい方は、調剤の内容がわかりやすい職場を選択肢に入れてみましょう。
抗がん剤や糖尿病治療薬、抗血液凝固剤などのハイリスク薬を扱う機会が少ない職場であれば、業務の負担を軽減しやすくなります。
こうしたハイリスク薬は、併用薬や検査結果に細心の注意を払う必要があり、薬剤師のプレッシャーも大きくなりがちです。
総合病院前や循環器内科の門前薬局など、急性期医療と密接に関わる職場よりは、処方内容が変わりにくい患者さんや比較的シンプルな処方が多い職場を検討してみてください。
在宅患者の訪問や薬の配達がない
在宅医療の訪問サービスや薬の配達業務がない職場は、落ち着いて働きたい薬剤師に適した環境といえるでしょう。
訪問・配達業務は、患者さんの都合に合わせる必要があり、イレギュラーな対応を求められる場面も珍しくありません。
余裕を持ったスケジュールを組んでいても、思わぬトラブルから予定がずれ込むと、そのあとの業務にも影響が出てしまいます。
自分のペースで仕事を進めたい方は、在宅療養患者の訪問や配達業務のない職場を選ぶことで、こつこつと業務に取り組みやすくなるでしょう。
ただし、在宅医療に関わる業務にやりがいを感じる薬剤師もいるため、自分の関心分野もふまえて検討する必要があります。
業務を自分でコントロールできる
薬剤師が活躍できる職場のなかには、業務量を自分である程度コントロールできるところも存在します。
無理のないペースで効率的に業務を進められる場合、仕事とプライベートのバランスを取りやすくなるでしょう。
例えば、薬の相談窓口などを開設している職場では、予約制を採用することで、業務量やスケジュールのコントロールが可能です。
自分に合った働き方で、効率的に業務を進められる環境は、生産性の向上にも寄与します。
ただし、企業に雇用される以上、完全に自分の采配で仕事ができるとは限りません。
現実的な範囲内で、働き方に柔軟性を持たせられる職場を探してみてください。
単科医院と併設された調剤薬局で働く
のんびり働ける職場を探している薬剤師の方は、単科医院と併設された調剤薬局での勤務も視野に入れましょう。
単科医院は、総合病院などと比べると取り扱う薬剤の種類が限られる傾向にあり、薬剤師の業務の負担を軽減できる場合があるためです。
内科や小児科といった単科医院の併設薬局は、処方内容が比較的シンプルで、業務の流れも把握しやすいでしょう。
ただし、専門性が高い単科医院だと複雑な処方も多くなるため、事前の確認は不可欠です。
新店舗を狙う
新しく開設される調剤薬局も、のんびり働きたい薬剤師の職場の選択肢です。
開設されたばかりの新店舗は、継続的に来局するかかりつけの患者さんがまだ少なく、担当患者も限られるため、比較的ゆとりを持って業務に取り組めます。
新しい環境で人間関係を一から構築できるため、職場の雰囲気に馴染めないといった心配もありません。
職場によっては、最新の調剤機器が導入されており、働きやすい環境が整っている可能性もあります。
オープン時から携わることで、効率的な動線や棚配置を自分から提案できる点もメリットです。
ただし、長期的に働くなかでいずれは処方箋が増加し、忙しくなる可能性があることも念頭に置いておきましょう。
薬剤師にとってのんびり働くことの恩恵

薬剤師がのんびりと働ける環境を選ぶことには、次のようなメリットがあります。
- 仕事に追われずストレスが軽減
- 業務の生産性が向上
- 家族や友人との時間の確保
- 自分の勉強時間の確保
- 長期的なキャリアを構築
仕事だけでなくプライベートも大切にしたい方、専門性を磨くための勉強時間を確保したい方などは、のんびりとした働き方のメリットを享受しやすくなるでしょう。
仕事に追われずストレスが軽減
薬剤師がのんびりと働ける職場では、仕事に追われるストレスが軽減され、気持ちに余裕が生まれます。
時間的な余裕も持てるため、過度な焦りや緊張感に悩まされることなく、一つひとつの業務に丁寧に取り組めるでしょう。
日々の業務があまりに忙しいと、モチベーションを保ちにくく、働く理由や目標まで見失いかねません。
自分のペースを大切にできる環境であれば、日々の業務や患者さんと向き合う心のゆとりを持ちながら、理想とする薬剤師像の実現をめざせます。
業務の生産性が向上
自分のペースで無理なく働ける環境は、業務の生産性向上にも寄与します。
時間にも気持ちの面にもゆとりがあることで、ミスの発生を防ぎやすくなるとともに、効率的な業務の進め方を考える余裕も生まれるためです。
患者さんにより良いサービスを提供するためには、ただ業務をこなすのではなく、問題点や改善点を見つめ直す時間をこまめに作る必要があります。
よって、余裕を持った薬剤師の働き方は、長期的に見れば業務プロセスの最適化につながるといえるでしょう。
家族や友人との時間の確保
薬剤師の方が、残業が少なく休暇を取得しやすい職場に勤める場合、家族や友人と過ごすプライベートの時間も確保できます。
大切な人との時間を十分に持てることで、薬剤師の仕事とのメリハリも生まれるでしょう。
子育てをしながら働いている方や友人関係を大切にしたい薬剤師にとって、ワークライフバランスを実現しやすい職場は特に魅力的です。
自分の勉強時間の確保
薬剤師の方がのんびりと働く場合、プライベートな時間を使って自己研鑽に励み、スキルアップをめざすことも可能です。
薬剤師は生涯学習が求められる仕事であり、業務の質を維持・向上させるためにも、最新の医療情報や薬学知識を学び続ける必要があります。
新しい治療法や薬剤に関する勉強会への参加、オンライン講座の受講、専門書の購読など、薬剤師の自己学習の方法はさまざまです。
また、資格取得に向けた勉強時間も確保しやすくなり、自分のキャリアプランに合わせた専門性を深めていけるでしょう。
長期的なキャリアを構築
のんびりと働く薬剤師の方は、自己学習や資格取得の時間を確保しやすいと上述しましたが、これらの努力は長期的なキャリアを構築するうえで役立ちます。
薬剤師の実務経験を積みながら、継続的なスキルアップを図ることで、患者さんはもちろん職場でも信頼される存在となるでしょう。
また、自分にとって無理のない働き方ができる環境は、長期間にわたって仕事を続けやすく、早期退職を防ぐ意味でも有効です。
現在のキャリアステージで「のんびりと働く」という選択肢を取ることで、自分のペースでこつこつとスキルを磨き、将来活躍の幅を広げるための基盤を築くこともできます。
のんびり働きたい薬剤師が避けたいこと
のんびりとした働き方を希望している薬剤師の方でも、職場の選び方やポジションによっては、責任と負担が大きくなる可能性があります。
例えば、責任者のポジションや複雑な事例と関わる機会が多い薬剤師は、業務にやりがいを感じられる一方で、のんびりとした働き方からは遠のいてしまう場合があるでしょう。
ここからは、のんびり働きたい薬剤師が避けたい4つのポイントを紹介します。
1.管理薬剤師は避ける
自分のペースでのんびり働きたい薬剤師にとって、管理薬剤師のポジションは、メリットとデメリットの両面がともなうことを理解しておきましょう。
管理薬剤師は調剤薬局の責任者であり、通常の調剤業務に加えて、経営や人材育成などの幅広い役割を担う存在です。
やりがいを感じられる反面、業務量が増加し、肉体的・精神的な負担も大きくなる可能性があります。
また、管理薬剤師になれば年収アップも見込めますが、職場によっては、責任の重さに対して報酬が見合わないと感じるかもしれません。
のんびり働きたい薬剤師の場合、管理薬剤師の昇給のメリットだけでなく、責任と業務量の増加も考慮して、自分に合う働き方かどうかを検討する必要があります。
2.在宅医療が多い企業は避ける
在宅医療に力を入れている職場は、のんびり働きたい薬剤師にとって希望の働き方を実現しにくい可能性があります。
在宅患者は自立生活が困難な方も多く、一包化調剤が基本です。
もし処方内容が変更されれば、予製剤があっても作り直さなければならず、イレギュラーな対応で業務量が増加することも考えられます。
また、業務終了後に施設への薬の配達が必要になるケースもあり、定時退勤を徹底するのはなかなか難しくなるでしょう。
緊急の訪問依頼が入り、突発的な残業や休日出勤を求められる場面も珍しくありません。
ただし、在宅医療に関わる薬剤師は、患者さんの生活を支える重要な存在であり、自分自身が提供したいサービスやキャリアプランによっては、やりがいを感じながら働けます。
3.精神科や循環器内科などに隣接した職場は避ける
のんびり働ける環境を重視したい薬剤師の方は、精神科や循環器内科など、専門性の高い診療科に隣接した調剤薬局での勤務は慎重に判断しましょう。
精神科に併設された調剤薬局の場合、心に悩みを抱えた患者さんが主となるぶん、接し方に悩みやすく、薬剤師自身のメンタル管理も難しくなりがちです。
また、循環器内科や人工透析科は処方内容が複雑で、扱う薬の数も多くなる傾向にあります。
これらの診療科に隣接した職場では、薬剤師にも高度な知識と対応力が求められ、のんびりとした働き方からは遠ざかってしまうでしょう。
ただし、上記の分野で専門性を磨きたい方にとっては、スキルアップに最適な環境といえます。
4.ノルマがある職場は避ける
のんびり働きたい薬剤師にとって、ノルマのある職場での勤務はハードな部分もあり、負担やストレスにつながる可能性があります。
例えば、かかりつけ薬剤師の指名獲得や売上目標が設定されている場合、ノルマのプレッシャーをつねに感じ、心身が疲弊してしまいかねません。
症例発表会などもスキルアップには有効ですが、休憩時間や退勤後に資料を準備するとなれば、プライベートの自由な時間は必然的に減少するでしょう。
大手のドラッグストアチェーンだと、店舗間の競争を促すため薬剤師にノルマを課しているケースがあります。
自分のペースで働ける職場を探す際は、事前にノルマの有無や内容を確認しておくことが大切です。
のんびり働きたい薬剤師が考えておくこと

のんびりと働ける環境を求めて、薬剤師の方が就職・転職活動を進める際は、以下4つのことを心に留めておきましょう。
- 正社員以外の働き方も考える
- 年収が下がる可能性を視野に入れる
- 自分が職場に求めることを明確化する
- スキルアップのための情報収集は怠らない
自分の状況や薬剤師としてのキャリアプランを整理したうえで、理想とする働き方が実現できる環境を見つけてみてください。
正社員以外の働き方も考える
のんびり働きたい薬剤師の方は、正社員以外の雇用形態も視野に入れましょう。
契約社員やパート・アルバイト勤務なども選択肢に加えることで、自分の希望する柔軟な働き方を実現できる可能性があります。
これらの雇用形態で働く薬剤師は、正社員と比べると労働時間や業務量の融通が利きやすく、ワークライフバランスの実現をめざせるのが特徴です。
また、一時的に正社員以外の雇用形態を選択し、自分の生活状況やキャリアプランに応じたタイミングで正社員を志す方法もあります。
年収が下がる可能性を視野に入れる
のんびり働ける職場へ転職する場合、年収が下がる可能性があることを十分理解しておきましょう。
職場や雇用形態にもよりますが、処方箋の数が少ない、残業が発生しない環境などは、給与水準が低くなる傾向にあります。
生活に困らない程度の収入は確保できても、これまでハードな職場で働いていた薬剤師の方などは特に、収入の下がり幅が大きくなりがちです。
どの程度の収入減少なら許容できるか、収入の下限をいくらとするかを明確にしておくと、職場選びの際の指標にできます。
自分が職場に求めることを明確化する
のんびりと働けて、なおかつモチベーションを保ちながら長く活躍できる環境を見つけるためには、職場に求める条件を明確にしておく必要があります。
収入や労働時間、休暇の取りやすさ、キャリアアップの選択肢など、働くうえで自分が優先したい要素を整理してみましょう。
収入やキャリアを重視する場合、のんびりとした働き方だと自分の希望が叶えられず、職場に不満を感じてしまう可能性もあります。
一方、子育てなどで一時的に労働時間・日数をセーブする方もいるでしょう。
のんびり働きたい薬剤師には、それぞれ異なる事情がありますが、結果的に収入やキャリアに影響を与えうる点では同じです。
のんびりとした働き方は、良い面ばかりではないことを心得ておかなければなりません。
スキルアップのための情報収集は怠らない
のんびり働ける職場では、最新の医療情報や高度な専門知識を得る機会が少なくなる可能性もあり、スキルアップのための積極的な情報収集と自己学習が必要です。
医療・薬学をはじめ、薬剤師の業務に関連する情報にはつねにアンテナを張り、知識のアップデートを心がけましょう。
勉強会への参加や書籍の活用、あるいは資格取得にチャレンジするのも薬剤師のスキルアップにつながります。
のんびり働いて薬剤師とプライベートを両立しよう
のんびり働きたい薬剤師の方は、残業の少なさや休暇の取りやすさ、業務量と複雑さなどさまざまな要素を考慮して、自分に合った職場を見極めることが大切です。
管理薬剤師のポジションや在宅医療を多く扱う職場、ノルマのある環境は、やりがいを得られる反面、のんびりとした働き方からは遠ざかってしまう可能性もあります。
やりがいを感じられる魅力的な働き方も、プレッシャーが大きくなりすぎると、仕事のモチベーションを保てなくなるばかりか、心身に負担を与えかねません。
自分らしく働くために重視したいポイントを明確にし、場合によっては正社員以外の雇用形態も視野に入れてみてください。
のんびり働きながらも自己学習を継続することで、薬剤師の専門性を維持・向上させつつ、将来のキャリアを広げられます。
仕事とプライベートのどちらも大切にできる環境で、薬剤師としてのキャリアを築いていきましょう。

