薬剤師になるには、6年制の大学で専門課程を修了し、薬剤師国家試験に合格することが必要になります。
今回は、薬剤師になるまでのルートや薬剤師国家試験の概要、薬剤師の就職先などをわかりやすく解説します。
薬剤師をめざしている人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
薬剤師になるには
薬剤師になるには、大学の薬学部で6年間の専門課程を修了後、薬剤師国家試験に合格することが必要です。
従来、薬学部は4年制でしたが、社会情勢の変化を受け、医療の高度化や医療分業の進展に対応できる薬剤師を育成することを目的に、2012年4月以降は6年の課程修了が必須となりました。
独学ではもちろんのこと、専門学校を経て薬剤師になることもできません。
薬剤師への道のり最短ルートは24歳
薬剤師になるための最短ルートでは、高校卒業後浪人せず6年制の薬学部に入学し、留年せずストレートで卒業したのちに、薬剤師国家試験に一発合格することが必要です。
この場合、24歳で薬剤師としてデビューできることになります。
薬学部で過ごす6年間はどのようなものなのでしょう。
まず、1~3年次に薬学に関する基本的な知識・技術を学習します。
続いて4年次には、5年次からの実務実習に向けて、必要になる知識や技術、意識が備わっているかどうかを確認する薬学共用試験を受けます。
薬学共用試験は、パソコンで受ける知識のテストと、調剤や患者さんとのコミュニケーションなどを実践する技能のテストがあります。
薬学共用試験を突破できなければ、実務実習に進むことはできません。
続いて5年次には病院と調剤薬局で実務実習をこなし、調剤や管理の実践と医薬品や患者さんとの関わりについての知識、チーム医療、地域医療などについて学びます。
6年次には卒業研究・論文と国家試験対策に取り組むことになります。
薬剤師に年齢制限はない
薬剤師になるために年齢制限はありません。
高校卒業の資格さえあればいつでも薬学部受験に挑戦できるので、主婦でも社会人でも薬剤師をめざすことは可能です。
しかし、あらためて大学に入学し直さなければならず、時間とお金が必要になります。
薬学部には通信制などが存在しないため、フルタイムの仕事は続けられず、パート・アルバイトも継続が難しいかもしれません。
主婦や社会人が薬学部入学を検討する際は、十分な費用を備えてからの入学や、奨学金制度の利用をおすすめします。
薬剤師国家試験の受験資格は薬学部課程修了が必須
薬剤師になるには、6年制の薬学部課程の修了が必須です。
そのため、独学や専門学校に通うといった方法で薬剤師になることはできません。
また、夜間部や短期大学、通信大学等もないため、薬剤師をめざす場合は6年制の薬学部に通える環境をつくる必要があります。
薬剤師の国家試験は年1回
薬剤師国家試験は年に1回のみの施行で、例年2月に2日間の日程で実施されています。
令和4年の試験地は、北海道、宮城県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、広島県、徳島県、福岡県の9都道府県でした。
薬剤師国家試験の試験科目は、必修問題、一般問題(薬学理論問題・薬学実践問題)の2科目で、それぞれ分野は物理・化学・生物、衛生、薬理、薬剤、病態・薬物治療、法規・制度・倫理と実務に分けられます。
受験資格は以下のとおりです。
(1)大学において薬学の正規の課程(6年制薬学課程)を修めて卒業したもの(卒業見込みの者を含む)
(2)外国の薬学校を卒業または外国の薬剤師免許を受けた者で、平成24年4月1日以降に厚生労働大臣が(1)に掲げた者と同等以上の学力および技能を有すると認定した者
なお、2004年の薬剤師法改正前に4年制薬学課程を修了した人や、4年制修了後に大学院へ進んだ人などでも、一定の条件を満たせば受験資格が得られるケースがあります。
晴れて薬剤師国家試験に合格したら、薬剤師登録申請を行うことで厚生労働省の薬剤師名簿に登録され、厚生労働大臣から薬剤師免許を与えられます。
薬剤師国家試験の難易度
令和4年に実施された第107回薬剤師国家試験の合格率は、68.02%でした。
7割を切る合格率ですので、高いとはいえないでしょう。
薬剤師国家試験に不合格であった場合、薬剤師国家試験予備校に通うこともおすすめします。
大学薬学部卒業後に、翌年の薬剤師国家試験合格をめざした学習を行える薬剤師国家試験予備校があり、予備校に通ったほうが明らかに合格率が高いことがわかっています。
薬剤師の国家試験の受験資格が得られる大学
薬剤師の国家試験を受けるためには、どのような大学に進学すれば良いのでしょうか。
令和4年現在、薬学系の学部や学科を設置している大学は全国に70以上存在しています。
国公立・私立別の内訳は、国立14校(14学部)、公立4校(4学部)、私立57校(59学部)です。
薬剤師資格の合格率は大学によって大きく異なる
薬剤師国家試験の合格率は、大学によって大きく異なります。
合格に近づきたければ、大学選びも重要なポイントです。
令和4年に行われた第107回薬剤師国家試験における、薬学系大学6年制課程修了者(新卒)の卒業学校種別合格率は以下のとおりです。
大学種別 | 合格率 |
国立 | 91.55% |
公立 | 90.32% |
私立 | 84.72% |
私立<公立<国立の順に、合格率が高くなっていることがわかります。
もちろん、どの大学に進学したにせよ勉強は大切ですが、大学受験時に国公立大学をめざすことができれば、より安心して勉強や実習に臨めるでしょう。
続いて、主要大学の合格率をみてみましょう。
以下は第107回薬剤師国家試験での、薬学系大学6年制課程修了者(新卒)の大学別合格率です。
合格率 | |
東京大学 | 100.00% |
京都大学 | 92.86% |
日本薬科大学 | 80.68% |
第一薬科大学 | 94.87% |
北海道医療大学 | 75.19% |
なかでも、東京大学卒業者の薬剤師国家試験合格率は100%と高く、全国の平均と比較しても30%以上も高くなっています。
また、ほとんどの大学では卒業試験を通らなければ国家試験が受けられないため、合格率が高くても、多くの学生が留年し国家試験を受けていない場合もあります。
合格率だけでなく、入学者の数と、最終的な国家試験合格者の数を比べた「ストレート合格率」も参考にすると良いでしょう。
「薬剤師になりたいけれど、どこの大学に進学するか悩んでいる」人は、オープンキャンパスへ足を運んでみてはいかがでしょうか。
その際、校風だけでなく、大学のカリキュラムや薬剤師国家試験対策などもチェックしておきましょう。
薬剤師の主な就職先とは
薬剤師の就職先には、以下のようなところがあります。
- 調剤薬局
- ドラッグストアの調剤部門
- 医薬品販売業(ドラッグストア、卸売販売業)
- 病院・診療所
- 試験・研究機関
- 大学
- 行政
- 企業
薬剤師としてのキャリアを積むなら就職先に注目
薬剤師国家試験を突破したら、いよいよ薬剤師としてのキャリアを形成していくこととなります。
薬剤師の就職先にはさまざまな所がありますが、特に最初の就職先は慎重に選ぶ必要があります。
最初の就職先での経験が、薬剤師としてのキャリアに大きく影響するからです。
まずは、薬剤師が活躍できる場は多数あることを知り、それぞれの職場での業務内容や給与条件、研修・教育制度や雰囲気までリサーチしておきましょう。
就職の際に、組織の知名度や規模だけで決めるのは危険です。
医療の現場が医療機関だけでなく在宅・地域に広がりつつある現在、大手調剤薬局よりも地域密着型の中小調剤薬局のほうがキャリアアップしやすいケースも考えられます。
特に調剤薬局では中小規模の組織も多いため、視野を拡げて職場探しを行うと良いでしょう。
薬剤師として独立を考えているなら早めに資金集めを
将来、薬剤師として独立を考えている場合は、早めに資金調達をしておくことをおすすめします。
独立には、親の調剤薬局を継ぐ、自分で新規に調剤薬局を立ち上げるなど、さまざまな背景があることでしょう。
いずれの場合も資金がかかるため、大学卒業後から独立までのキャリアを考えて貯金や資金調達の準備をしましょう。
公務員薬剤師をめざす場合は年齢制限に注意
冒頭で、薬剤師に年齢制限はないことを解説しましたが、公務員薬剤師をめざす場合のみ、年齢制限があります。
厚生労働省管轄の麻薬取締官など国家公務員採用試験の受験資格は30歳未満とされており、地方公務員も自治体によって年齢条件が課されるケースがあります。
公務員薬剤師をめざす場合は、資格取得に必要な期間を見込んで逆算したうえで準備をはじめなければなりません。
薬剤師になるには薬学部進学から始めよう
今回は、薬剤師になるための方法や注意すべきポイントを解説しました。
薬剤師になるには、薬学系の大学で6年制の専門課程を修了し、薬剤師国家試験に合格することが必要になります。
「薬剤師をめざしたい」と思ったら、できる限り早い段階で「自分が将来どのような薬剤師になりたいのか」「どのようなキャリア形成をめざすのか」ということを具体的にイメージしましょう。
それに合った大学や就職先を選択していくことが、理想のキャリアを築くうえで重要です。
薬剤師自体に年齢制限はありませんが、公務員薬剤師になる場合には年齢制限が生じることもあるので、受験準備や就職対策などは計画的に進めましょう。