学校や公立病院など、栄養士が公務員として採用されるケースも少なくありません。
公務員として働くにあたっての条件や仕事内容、公務員の種類などを解説します。公務員として働きたい栄養士の方はぜひ参考にしてください。
目次
栄養士は公務員として働ける?
栄養士が公務員として採用されるケースは少なくありません。どのような条件で公務員になれるのか、民間企業などで働く場合との違いを紹介します。
栄養士として公務員になる条件
管理栄養士または栄養士が公務員として働くためには、栄養士免許取得後に都道府県や市区町村の公務員試験を受験、合格する必要があります。
なお、公務員試験の受験資格には年齢要件や学歴要件、資格要件などがあるため事前に確認しておきましょう。
公務員と民間だと栄養士の仕事内容は違う?
基本的に公務員と民間の栄養士の役割や仕事内容は変わりません。食生活を基本に健康を維持できるよう栄養指導を行います。
公務員と民間企業の違いは、公務員が国や地方公共団体の職員であり、社会のために活動しているのに対し、民間企業は利益を出すことが目的となることです。
公務員として栄養士で働くためには、栄養士の資格に加え、公務員試験の合格が必須です。
公務員試験の倍率は少なくとも3倍と言われていることに加え、さらに年齢制限や学歴などの条件をクリアしなければいけないので、情報を正確に集めて早めに準備することが大切です。
主な就職先を公務員と民間企業でそれぞれ見てみましょう。
主な就職先 | |
公務員 | ・公立学校 ・国公立病院 ・保健所・保健センター ・自衛隊 |
民間企業 | ・上記以外の学校・病院・福祉施設 ・スポーツジム ・食品メーカー ・給食センター ・ドラッグストア ・社員食堂 |
栄養士が働ける公務員の種類
公務員は大きく「国家公務員」と「地方公務員」の2種類に分かれますが、どちらも仕事内容は基本的に変わりません。国民または地方の住民の生活が豊かになるように、栄養学の面から指導・教育をすることが主な仕事です。
またその2つに加え、みなし公務員もあります。それぞれどのような違いがあるのか紹介します。
国家公務員
国家公務員とは、国の機関で働き、行政業務や公共サービスの提供といった政府の運営に携わる職員のことです。
- 職場
国家公務員の栄養士の活躍の場は、厚生労働省や国立病院などがあります。 - 待遇
待遇面では、国家公務員の給与は国家公務員制度によって規定されていて、地方公務員よりも一般的に高く設定されています。給与を管轄しているのは人事院です。 - 休日
年間休日は120日程度確保されます。土日祝日がお休みかどうかは職場によって異なります。 - 異動/転勤
国家公務員の場合、転勤と異動があります。
栄養士としての実務経験を求められることがあります。希望する自治体のホームページなどで、受験資格を満たしているか確認しておきましょう。
地方公務員
地方公務員は、国家公務員より地域に密着した仕事です。地方公務員は自治体・地方公共団体で働き、地域の人びとの暮らしがより良くなるよう指導、教育を行います。
- 職場
職場は、県庁・保健所・公立病院・公立学校などです。 - 待遇
給与面では国家公務員のほうが高めです。地方公務員も毎年の昇給や退職金は規定に沿って支払われます。 - 休日
年間休日は国家公務員同様、120日前後です。 - 異動/転勤
地方公務員には異動はありますが、転勤は原則ありません。
国家公務員・地方公務員ともに就職難易度は高いので、しっかりと勉強し知識をつけるとともに、採用情報を常に検索して情報を集めておくことをおすすめします。
みなし公務員
みなし公務員(準公務員)は、公共性の高い仕事を民間企業で行う職員のことです。
法律上は公務員ではありませんが、一部のルールは公務員と共通しています。
公務員免許の資格は必要なく、各企業に採用されればみなし公務員となります。
- 職場
勤務先は、日本銀行・郵便局・国立大学など、公共性が高い企業(日本の経済や運営に大きく関係し社会への影響力が高い企業のこと)になります。 - 待遇
給与や待遇も公務員のように安定しています。 - その他
守秘義務があるため、公務員と同じように副業は認められていません。
ただし、作家や営利目的でない小規模農業産業、小規模な不動産投資などは認められる場合もあります。
公務員としての栄養士の就職先
公務員として栄養士の主な就職先は公立病院、公立学校、保健所などが挙げられます。
それぞれを詳しくみてみましょう。
公立病院
病院に勤務する公務員の栄養士は「病院栄養士」と呼ばれています。
主な仕事内容は入院患者への栄養管理・指導と食事の提供です。献立作成や食材の発注、調理、経管栄養の準備、栄養指導などの業務があります。
高齢者の方や入院患者さんは、食が細くなったり、病気のため思うように食事がとれなかったりすることは珍しくありません。
食事をうまく飲み込みない方に、食べやすく飲み込みやすい食事を提供したり、糖尿病など退院後も自身で栄養管理をする必要がある方やそのご家族に栄養指導を行ったりといった業務が挙げられます。
公立学校
学校で働く栄養士は「学校栄養士」と呼ばれます。
学校栄養士には学校栄養職員と栄養教諭の2つがあります。
それぞれを比較してみましょう。
学校栄養職員 | 栄養教諭 | |
仕事内容 | ・給食の献立作成 ・衛生管理 ・給食だよりの作成[a-1] [a-2] |
・食育 ・食事の相談指導 |
必要な資格 | ・栄養士 (・管理栄養士) |
・栄養士 (・管理栄養士) ・栄養教諭 |
学校栄養職員
主な業務は学校給食の献立作成と調理です。成長期の子どもたちに必要な栄養素を考えながら、予算内で献立を作ります。
学校給食では、子どもたちが食べやすい大きさに野菜を切ったり、アレルギーのある子どもたちに配慮した献立を作成したりする必要があります。
また、給食室や配膳環境の衛生面にも目を配りながら、子どもたちが安心して楽しめる食事を提供します。
栄養教諭
栄養教諭の制度は、平成17年度に施行されました。
教員免許を持ち「教諭」として食に関しての授業を行うことができます。
栄養教諭は献立作成や調理が主な仕事です。
その他、給食の時間や家庭科、保健体育の授業などを利用して、食事マナーや食の大切さ、食べ物の働きなどを子どもたちに伝えます。
保健所
保健所や保健センターで働く栄養士は行政栄養士と呼ばれます。
市民の健康づくりが主な仕事です。
保健所で働く行政栄養士は、地域の栄養改善、健康寿命の延伸や健康格差の縮小などを目標に、地域住民へ食事のアドバイスを行います。
また、国民栄養調査を行い住民の健康状態や生活習慣を把握し、医師などと協力して健康づくりのためのイベントを企画します。
災害時のサポートも行政栄養士の大切な役目です。
被災地の住民へのボランティアによる炊き出しや適温食の提供、実際の災害時の対応を例に今後の災害の発生に備えるなどをします。
その他にも、栄養士免許の申請受付の手続きや飲食営業の許可申請、飲食店によるヘルシーメニューの提供を促進することなども仕事内容に含まれます。
公務員の栄養士になる方法
栄養士の資格を取るためには「栄養士養成課程」と「管理栄養士養成課程」があります。公務員の栄養士になるには、より専門性の高い管理栄養士の資格を取っておくと就職時に有利です。
STEP1:栄養士の資格を取る
栄養士・管理栄養士の資格を取得するまでの流れは以下のとおりです。
栄養士養成施設は専門学校、短大、大学があります。
現状、栄養士養成施設は通信教育や夜間部はないので注意しましょう。
栄養士は栄養士養成施設卒業すれば、免許を受けることができます。
STEP2:公務員としての求人を探す
公務員試験に合格後、各自治体や事業所が出している求人に応募します。
公務員の栄養士の募集は各自治体により応募日程にばらつきがあります。
また、採用は不定期で退職者や欠員が出たときに募集されていることもあるので、こまめにチェックしましょう。
公務員の栄養士の求人を探す方法
公務員の栄養士の求人を探すには、以下の方法があります。
- インターネットで求人サイトを利用する
- 各自治体のホームページを確認する
- 広報誌を見る
・インターネットで求人サイトを利用する
自宅でも外出先でも気軽に見られる求人サイトは、情報量も多く常に新しい情報が掲載されるので便利です。
公務員の栄養士の募集は少ないので、定期的にチェックすることをおすすめします。
・各自治体のホームページを確認する
志望する自治体のホームページは確認しましょう。求人サイト同様、新しい情報をすぐに確認できます。
・広報誌を見る
自宅に配達される市や町の広報誌はさまざまなイベント情報とともに求人情報も掲載されています。
月に一度配達されるので目を通しておきましょう。
正しい情報を集めて公務員の栄養士を目指そう
公務員の栄養士について紹介しました。
- 栄養士として公務員になることは可能
- 公務員の栄養士は官公庁、病院、学校、保健所などで活躍している
- 公務員の栄養士になるためには栄養士免許を取得後、公務員採用試験に合格する必要がある
- 公務員の栄養士の募集は不定期なのでこまめにチェックする
食のリテラシーが高まっている現在、栄養士の社会的価値も高くなっています。
今後も活躍が期待される公務員の栄養士は人気が高く、狭き門のため努力が必要です。
しかし、活躍の場は広くまたやりがいがあり、給与や昇給も安定しているという点では魅力的な職場と言えます。
公務員として働ける栄養士の就職先を見つけることは簡単ではありません。
前もって正しい情報を集め、常に採用情報に目を配りましょう。