登録販売者は調剤薬局やドラッグストアなどで第二類・第三類医薬品を販売するのに必要な資格です。
しかし、その資格を持っているだけでは店舗管理者としての仕事ができないのをご存じでしょうか。
2021年8月から、店舗管理者になるには管理者要件を満たさなければならなくなりました。
今回は、登録販売者の管理者要件とはどのようなものなのか、法改正によって状況はどう変わったのかを解説します。
あわせて、管理者要件を満たすメリットと店舗管理者になるための方法を説明します。
目次
登録販売者の管理者要件とは
登録販売者試験は、以前までは受験するために学歴や実務経験が必要でした。
しかし、登録販売者制度の改正について「施行規則の一部を改正する省令」が2014年に公布、2015年に施行され、それ以降は実務経験がなくても登録販売者試験を受けられるようになりました。
反対に、以前は登録販売試験に合格すれば店舗管理者になれましたが、2015年以降は管理者要件を満たしていないと店舗管理者にはなれません。
実務経験がなくても資格が取れるようになった代わりに導入された制度といえます。
管理者要件とは店舗管理者として働くためにはなくてはならないものです。
管理者要件は何度か改正を行っており、複雑な仕組みになっているため、以下で一つずつ見ていきましょう。
登録販売者が満たすべき管理者要件【2021年8月改正版】
2008〜2014年までの登録販売者資格の旧制度では、登録販売者試験の受験資格として学歴や実務経験が必要だったことはすでに述べました。
2015年の法改正により、資格受験に学歴や実務経験が問われなくなる一方、実務経験などの要件を満たしてはじめて店舗管理者になれるように変わりました。
登録販売者の人材不足を解消するための制度改革です。
法改正により、旧制度で資格を取得した人は要件を満たしていない場合が生じたため、救済措置が用意されました。
その経過措置は終了し、2021年8月1日に新しい法律が施行されたのです。
次に、2021年8月1日に施行された最新版の内容をもとに詳しく解説していきます。
登録販売者が登録者要件を満たすと「店舗管理者」「区域管理者」として働ける
「店舗管理者」や「区域管理者」として働くには登録販売の資格を取得し、そのうえ管理者要件を満たさなければなりません。
店舗管理者とは、第二類・第三類医薬品を扱う調剤薬局やドラッグストア、ショッピングセンターなどで、店舗の責任者、つまり店長などとして働く人のことをいいます。
また、区域管理者とは、配置販売業の責任者として働く人を指します。
配置販売業とは、店舗を持たずに一般家庭を訪問して医療品を販売する置き薬などのことです。
登録販売者が満たすべき管理者要件
第二類・第三類医薬品を販売する調剤薬局やドラッグストア、ショッピングセンター、コンビニエンスストア、電気屋などの店舗管理者要件を満たす要件を挙げます。
店舗管理者になるためには、パターン1から3までのいずれかに該当する必要があります。
管理者要件【パターン1】
- 直近5年以内に薬剤師または登録販売者の下での実務または登録販売者としての業務に2年以上、合計で1,920時間以上従事していること
これは既存の基準であり、2020年3月に改正された内容です。
実務や業務に80時間以上従事した月が24ヵ月以上という意味です。
ただし、多様な勤務状況を考慮し、月の時間数の縛りはなくなり、従事した期間が2年間以上あり合計で1,920時間従事した場合も認められることになりました。
管理者要件【パターン2】
- 2009年6月1日以降に、通算して2年以上(1,920時間以上)の従事経験があり、店舗管理または区域管理者としての業務の経験があること
2021年8月に既存の内容に追加された要件です。
このパターンでもパターン1と同じく、実務や業務に80時間以上従事した月の数24回以上が基本ですが、月間の就業時間に関係なく、合計1,920時間でも認められるようになりました。
法改正前(パターン1)と異なるポイントは、直近5年以内の縛りがなくなったことです。
長期間離職していた人なども店舗管理者としての復帰が容易になりました。
管理者要件【パターン3】
- 2009年6月1日以降、通算で5年以上(4,800時間以上)の従事経験があること
- 外部研修を通算で5年以上受講していること
パターン3も2021年8月に改正された内容です。
1.2.のいずれかではなく、両方を満たす必要があるのでご注意ください。
こちらも直近5年ではなく、通算で5年に変更されました。
パターン3は経過措置として導入された内容なので当分は適用されますが、いずれ法改正によって廃止される可能性があります。
管理者要件を満たしたら必要書類を提出しよう
管理者要件を満たしたら、その経験を証明するために「実務従事証明書」および「業務従事証明書」を入手しましょう。
そして、手に入れた書類を勤務簿の写しと一緒に都道府県に提出してください。
実務従事証明書は一般従事者(例えば店員)として従事した証明書であり、業務従事証明書は登録販売者として従事した証明書です。
「実務従事証明書」および「業務従事証明書」のフォームは各都道府県のホームページからダウンロードできます。
両方の書類を提出してはじめて管理者として勤務できます。
管理者要件を満たして管理者になるメリット
管理者要件を満たして店舗管理者になるメリットは以下の3つです。
- 責任ある仕事を任せてもらえる
- 収入が増える
- 市場価値が上がる
では、一つずつ見ていきましょう。
責任ある仕事を任せてもらえる
管理者要件を満たすと、店舗運営や指導者などの責任ある仕事を任せてもらえます。
例えば、人員の育成や評価、人員の配置など、指導者としての仕事の比重が増えるでしょう。
また、商品管理を任される場合もあります。
管理者要件を満たしていないと、管理者がいる店舗でしか医薬品の販売ができません。
店舗管理者になれば、他人の指示で動くのではなく自分自身の判断でできる業務が増えるため、やりがいもアップするでしょう。
収入が増える
店舗管理者になると「登録販売者手当」が支給されることが多く、年収アップが期待できます。
企業によっては、パートでも登録販売者手当が支給されるケースもあるようです。
管理者要件を満たしていれば、店長だけでなく、エリアを総括するマネージャーや部長などにもなれます。
本人が望めば、バイヤーや商品開発部、店舗開発部、採用担当などに異動し、さらなるキャリアアップをしていける可能性もあります。
市場価値が上がる
調剤薬局やドラッグストアを営業するには、少なくとも一人の店舗管理者が必要です。
店舗管理者になる資格がないと、ほかに管理者がいる店舗でしか医薬品を販売できません。
常に管理者要件を満たした登録販売者が店舗にいなければならないため、店舗管理者の人材は市場価値が高く転職に有利になるでしょう。
ドラッグストア以外のショッピンセンターや家電販売店などでも、薬を扱っている場合は店舗管理者を必要とします。
そのため需要が高く、幅広い店舗での活躍が期待できるでしょう。
また、店舗管理者になると第二類・第三類医薬品の販売が可能になります。
ドラッグストアなどで販売されている医療品の大半が扱えることになるので、自分で独立してフランチャイズ店を開くこともできます。
登録販売者が店舗管理者を目指す方法
ここでは、登録販売者が店舗管理者を目指す方法を店舗別に解説します。
店舗管理者を目指すには
店舗管理者を目指すには2つの方法があります。
登録販売者か薬剤師になることです。
では、2つの違いは何かを見ていきましょう。
登録販売者になる
ショッピングセンターやコンビニエンスストアではなく、薬をメインに扱う店で管理者になるには、薬剤師になるのが近道です。
第一類医薬品を販売する店舗の管理者には、基本的には薬剤師が推奨されています。
しかし、登録販売者でも、過去5年間のうち第一類医薬品を販売する店舗で登録販売者の実務経験が3年以上あれば、管理者になることが可能です。
ただし、管理者として働くには、補佐として薬剤師が必須になります。
薬剤師になる
薬剤師は、特別な条件なく店舗管理者(管理薬剤師)になれます。
管理薬剤師の主な業務は、管理業務や情報提供業務、副作用情報の収集や報告です。
1つの施設で一定時間以上勤務することは求められますが、ほかに管理薬剤師になるのに特別な条件はありません。
このように、薬剤師の資格を取得すれば、管理薬剤師として店舗管理者になるチャンスがあるということになります。
もっとも、薬剤師になるためには6年制の大学を卒業し、薬剤師国家試験に合格しなければならないので、登録販売者になるよりもハードルが高くなるでしょう。
店舗別の店舗管理者を目指す方法
それでは店舗の種類別に、店舗管理者の役割を見ていきます。
第二類医薬品、第三類医薬品を販売する店舗
医薬品を販売する店舗で店舗管理者になるには、登録販売者の資格を取得して管理者要件を満たすか、薬剤師資格を取得する必要があります。
ただし、第一類医薬品を扱わない店の場合は、登録販売者資格があれば十分です。
コンビニエンスストアや家電販売店のような第一類医薬品を扱っていない店では、登録販売者が重宝されます。
第一類医薬品を販売する店舗
第一類医薬品を販売する店舗では、薬剤師が基本的に店舗管理者になります。
また、調剤薬局では処方箋を扱える薬剤師の常駐が必須です。
しかし前述したとおり、場合によっては、過去5年間のうち第一類医薬品を販売する店舗で登録販売者の実務経験が3年以上あれば登録販売者でも管理者になれます。
とはいえ、薬剤師が不在の際は第一類医薬品の販売はできないため、その時間は第二類・第三類医薬品のみの販売に制限されます。
登録販売者として管理者要件をクリアしてキャリアアップしよう
今回は、登録管理者が店舗管理者になる管理者要件とは何なのか、法改正で何が変わったのかを解説しました。
また、管理者要件を満たすメリットや店舗管理者になる方法もあわせてご紹介しました。
法改正を重ねた結果、登録販売者試験は受験しやすくなり、資格取得がしやすくなっています。
しかし、すぐに店舗管理者になれるわけではなく、店舗で実務経験を積む必要があります。
医薬品の販売には資格が必要不可欠であり、店舗管理者の需要は高まっているので、登録販売者資格を取得し、店舗管理者を目指してみてはいかがでしょうか。