
登録販売者(管理者)になるための要件は、1ヵ月80時間以上、直近5年以内の実務経験の時間数などが関わっていましたが、現在は緩和されています。
扶養内ではめざすのが困難とされていた登録販売者も、過去の実務経験時間を整理すると、要件を満たせる可能性があります。
本記事では、登録販売者が積むべき実務経験の月80時間ルールや、経験時間のカウント方法、登録販売者になる方法などを実務経験別に解説します。
登録販売者になりたい人は、参考にしてください。
目次
登録販売者の実務経験は月80時間未満でもカウントされるのか
登録販売者(管理者)になるための実務経験は、2020年から月80時間未満でもカウントされるようになりました。
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」のこれまでの改正歴を見ると、登録販売者試験の受験資格や登録販売者になる要件は次第に緩和されています。
改正時期 | 主な内容 | |
登録販売者試験の受験資格 | 研修から正規の登録販売者(管理者)になる要件 | |
2009年新設 | 登録販売者試験の受験資格は、高卒以上かつ実務経験が1年以上 | ー |
2015年 | 受験資格不要 | 直近の5年間のうち、1,920時間かつ2年以上の実務経験が必要
1ヵ月あたり80時間以上の実務で1ヵ月と認定できる |
2023年 | 受験資格不要 | 1ヵ月あたりの実務が80時間を満たない場合も、下記のいずれかを満たせば登録販売者とみなす
直近の5年間のうち、1,920時間かつ2年以上の実務経験 直近5年間のうち、1,920時間かつ1年以上の実務経験と、厚生労働省の追加的研修(計6時間以上)を修了 |
2009年に制定された登録販売者試験の受験資格は2015年に撤廃され、新卒者や実務経験がない人でも受験が可能になりました。
研修生として、薬剤師や正規登録販売者の管理下で実務経験を積みながら、要件を満たすと正規の登録販売者として働けます。
登録販売者の実務経験のカウントは、特に混乱しやすいポイントのため、2023年の改正前と改正後で詳しく解説します。
改正前|月80時間以上の実務経験が必要
改正前(2023年以前)は、登録販売者になるために、直近5年間に2年以上(1,920時間)の実務経験を積む必要がありました。
1ヵ月として数える基準は、1ヵ月あたりの実務時間が80時間以上あることです。
例えば、1ヵ月の実務時間が79時間で1時間足りない場合は、1ヵ月としてカウントできない決まりでした。
改正前は月80時間以上で2年以上の実務経験を積む必要があり、扶養内の勤務では要件を満たすことが難しいためハードルが高かった実態があります。
改正後|月80時間未満の実務経験でOK
改正後(2023年以降)には、これまでの要件がさらに緩和されました。
- 直近5年間のうち、1,920時間かつ1年以上の実務経験と、厚生労働省の追加的研修を終了(計6時間以上)
- 直近5年間のうち1,920時間かつ通算2年以上の実務経験(改正前と同様)
上記要件のいずれかに当てはまれば、登録販売者の要件を満たします。
追加的研修も6時間以上と、ハードルが低いです。
改正前にあった1ヵ月あたり80時間の縛りも廃止され、勤務時間が80時間より少なくても実務時間さえあれば1ヵ月としてカウントされます。
最短でも1,920時間かつ1年以上の、両方の要件を満たす必要がありますが、過去5年の実務経験も積算可能であり、扶養内の勤務でも要件を満たしやすいといえるでしょう。
改正前後における登録販売者の扱いの変化事例
改正前後で大きく異なるのは、実務経験としてカウントされるためには月に80時間以上の実務が必要という縛りです。
時給1,200円のパート・アルバイトの人が登録販売者要件を満たすために働く場合、改訂前後の事例は次のとおりです。
登録販売者要件を満たすために働くときの事例 | |
改正前 | 時給1,200円×80時間=96,000円(月給)、1,152,000円(年収)
扶養対象は年収103万円以下のため、122,000円超える 管理者要件を満たすためには、時給を下げる必要がある |
改正後 | 時給1,200円×60時間=72,000円(月給)、864,000円(年収)
扶養内で働くため毎月60時間の勤務とし、扶養対象の要件を達成 1,920時間の実務経験を積むまで1,920÷60時間=32ヵ月 扶養内で働きながら、32ヵ月で登録販売者要件を達成 |
改正前には、登録販売者要件を満たすために時給を調整し、扶養内で働く人もいました。
対して改正後は、1ヵ月の労働時間を調整しさえすれば、時給は維持したまま扶養内の勤務で登録販売者要件を満たせます。
登録販売者になるには?【実務経験別】
正規の登録販売者として勤務するためには実務経験が必要ですが、実務経験がない人でも登録販売者試験を受験できます。
実務経験を積んだのちに試験を受け、登録販売者になるといった王道ルートにこだわらなくても良いため、キャリアに合わせて登録販売者をめざすと良いでしょう。
登録販売者の実務経験がない場合(1,920時間かつ1年以上の研修期間)
実務経験がない人でも、登録販売者試験に合格すれば、研修中の登録販売者として勤務可能です。
合格後は、初めての勤務先が所在する都道府県で、販売従事登録を行います。
正式な登録販売者になるためは、最短で1,920時間かつ1年以上の研修期間と、6時間の厚生労働省指定の追加的研修が必要です。
要件を満たすまでの間は、研修中として実務経験を積みます。
正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態は問われないため、扶養内で働けるようになりました。
しかし、試験の合格から1年で正規の登録販売者をめざすなら、5年以内に1,920時間かつ1年以上の実務経験を積めるように計算して働くようにしましょう。
なお、6時間の追加的研修を受けない場合は、2年以上の研修期間が必要です。
パート・アルバイトなどで登録販売者の実務経験が要件未満の場合
パート・アルバイトなどで登録販売者の実務経験がありながら、時間数や年数で正規の登録販売者の要件が未達成の場合は、残りの要件を満たすまで研修中として働きます。
直近5年以内の実務経験であればカウント可能です。
登録販売者試験合格前の実務経験や、いったん登録販売者の仕事を離れたブランク期間があるという人は、実務経験の積算期間を把握しましょう。
試験の合格前や休職前に要件に関わる実務経験がある場合は、前職から実務(業務)従事証明書の発行を受けることで実務経験時間や年数として合算可能です。
5年以内の実務経験を合わせて時間数や年数を達成すれば、正規登録販売者になることができます。
実務経験の要件を満たしている場合
試験合格前に実務経験の要件を満たしている場合、合格後はすぐに正規の登録販売者になれます。
直近5年以内に1,920時間かつ1年の実務経験を達成し、厚生労働省の追加的研修を受ければ、研修中として働く必要はありません。
研修中は登録販売者や薬剤師の管理の元でのみ働けますが、正式な登録販売者になると、一人で医薬品の販売ができて店舗管理者にもなれます。
直近5年以内に十分な実務経験がある人は、在職中の勤務先や前職も合わせて実務(業務)従事証明書を発行してもらい、登録販売者の申請を行いましょう。
登録販売者の実務経験をいつ積むかはキャリアに合わせよう
正規の登録販売者になるためには実務経験が必要ですが、登録販売者試験は実務経験がなくても受けられます。
試験よりも先に実務経験を積むか、試験合格後に積むかは、自身のキャリアに合わせて柔軟に選べます。
実務経験では、80時間以上働いた月のみをカウントするという従来の条件も緩和され、直近5年以内に1,920時間かつ1年(6時間の追加的研修の受講が必要)とされたため、扶養内の勤務でも要件を満たしやすいでしょう。
実務経験を持ちながら離職してしまった人もすぐに諦めてしまわず、まずは実務経験歴が要件を満たしているか整理することをおすすめします。
自分の描くキャリアに合わせて、最適なルートで登録販売者をめざしましょう。