
社会福祉士はソーシャルワーク専門職として、さまざまな生活課題を抱える方の支援にあたる仕事です。
法律に基づいて認定される国家資格の一つですが、なかでも社会福祉士は名称独占資格に分類されます。
名称独占資格に該当する職種は、その資格の保持者しか名乗ることができません。
本記事では、名称独占資格の概要や業務独占資格との違い、社会福祉士が名称独占資格とされている理由について解説します。
目次
社会福祉士は名称独占の資格?
社会福祉士は、医療福祉系の国家資格のなかでも名称独占資格に該当します。
名称独占資格とは、資格を持っている方だけに名称の使用が認められている資格のことです。
社会福祉士は名称独占の資格である
社会福祉士は、法律で定められた名称独占資格の一つです。
社会福祉士の資格を持っていない方が社会福祉士の肩書きを名乗った場合、法律違反と見なされ、処罰の対象となります。
名称独占資格と同時に理解しておきたいのが、同じく国家資格の「業務独占資格」についてです。
名称独占と業務独占は似ていますが、それぞれ法律上での取り扱いが異なります。
社会福祉士資格の扱い方を誤らないためにも、両者の違いを念頭に置いておきましょう。
医療福祉系の名称独占資格と業務独占資格には、それぞれ次のようなものがあります。
名称独占の資格 | ・社会福祉士 ・精神保健福祉士 ・介護福祉士 ・保育士 ・公認心理師 |
業務独占の資格 | ・医師 ・看護師 ・薬剤師 |
社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士などは、名称独占資格に分類されています。
一方で、同じ医療福祉分野でも、医師、看護師、薬剤師は業務独占資格です。
業務独占資格との違い
名称独占資格と業務独占資格の大きな違いは、無資格者でも業務に携われるかどうかという点です。
業務独占資格は、無資格者が名称を名乗る行為はもちろん、その業務に携わること自体も法律で禁止されています。
例えば、医師免許を持っていない方は医師を名乗れず、さらに診察や手術などの医師に認められた業務に従事することもできません。
一方で、社会福祉士の主な仕事である相談支援業務は、社会福祉士の資格を持たない方でも行えます。
名称独占資格の特徴
名称独占資格の大ddddきな特徴は、以下3つです。
- 有資格者のみが名称を名乗れる
- 無資格者が名称を名乗ると罰せられる
- 資格取得には国・都道府県・指定団体の試験に合格しなければならない
社会福祉士の資格取得を考えている方は、名称独占資格に認められること・認められないことを十分に理解しておきましょう。
有資格者のみが名称を名乗れる
名称独占の資格は、資格保持者のみが肩書きを名乗れます。
無資格者は名称を使用できません。
「社会福祉士及び介護福祉士法」の第48条第1項では、社会福祉士と認められていない人が社会福祉士の名称を使用する行為を禁止しています。
(名称の使用制限)
第四十八条 社会福祉士でない者は、社会福祉士という名称を使用してはならない。
社会福祉士の資格を持っている方が、「社会福祉士です」と名乗って業務にあたることは問題ありません。
また、資格がない方でも「社会福祉士です」と名乗らなければ、社会福祉士と同じように相談・支援などを行えます。
しかし、社会福祉士と同様の相談支援業務などを行っている場合でも、資格がない状態で社会福祉士を名乗る行為は法律違反です。
無資格者が名称を名乗ると罰せられる
名称独占資格を持たない方が資格の名称を名乗る行為は、処罰の対象となります。
「社会福祉士及び介護福祉士法」第53条第3項では、無資格者が肩書きを使用した場合、30万円以下の罰金が科されることを定めています。
第五十三条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第三十二条第二項の規定により社会福祉士の名称の使用の停止を命ぜられた者で、当該停止を命ぜられた期間中に、社会福祉士の名称を使用したもの
二 第四十二条第二項において準用する第三十二条第二項の規定により介護福祉士の名称の使用の停止を命ぜられた者で、当該停止を命ぜられた期間中に、介護福祉士の名称を使用したもの
三 第四十八条第一項又は第二項の規定に違反した者
なお、社会福祉士の資格を持たない方が肩書きを名乗った場合でも、懲役刑はありません。
医師をはじめとした業務独占資格だと、懲役刑に科される可能性もあります。
ただし、懲役刑でなくとも、刑罰を受けることは社会的信用に悪影響を及ぼし、就職・転職の際も不利に働きかねないでしょう。
資格取得には国・都道府県・指定団体の試験に合格しなければならない
名称独占資格を取得するには、国や都道府県、または国から指定登録を受けた団体が実施する試験に合格し、認定を受ける必要があります。
社会福祉士の場合、毎年2月上旬に公益財団法人社会福祉振興・試験センターが実施する社会福祉士国家試験に合格しなければなりません。
試験合格後、同センターに必要書類を送付して受理・登録されると、社会福祉士として働けるようになります。

社会福祉士が名称独占である理由
社会福祉士が名称独占資格となっている理由は、大きく以下の2つです。
- 専門性を証明するため
- 支援対象者・他職種からの信頼を得るため
相談支援業務は社会福祉士の資格がなくてもできますが、名称独占資格を保持していることで、より円滑にサービスを提供できるようになります。
専門性を証明するため
社会福祉士が名称独占資格である理由の一つは、専門性を証明するためです。
上述したとおり、名称独占資格を取得しなくても、名称を名乗らなければ仕事はできます。
しかし、国が定めた名称独占資格の肩書きは、専門分野の知識・技術を有していることを客観的に証明するものです。
また、応募できる求人が増える可能性がある点も、専門性の高い資格ならではといえます。
職場によっては、社会福祉士を「必置資格」に位置づけている場合もあり、その際は社会福祉士の資格がないと応募すらできません。
必置資格とは、特定の事業所において、資格保持者を一人以上設置しなくてはならない名称独占資格または業務独占資格のことです。
例えば、地域包括支援センターの社会福祉士や児童養護施設の保育士などがそれにあたります。
社会福祉士の資格は、保険制度や福祉サービスなどの専門知識が一定以上あることを証明し、活躍の場を広げるために役立ってくれるでしょう。
支援対象者・他職種からの信頼を得るため
社会福祉士が名称独占資格であるもう一つの理由は、支援対象者からの信頼を得るためです。
社会福祉士の業務は、身体的・精神的・経済的な理由によって日常生活を送ることが難しい方に対して、助言や指導を行うことです。
支援対象者にとって安心して頼れる存在となるには、専門性の高さを証明する社会福祉士の肩書きが大きな意味を持ちます。
また、社会福祉士は、医療・福祉分野をはじめとしたさまざまな分野の専門家と連携する場面も少なくありません。
社会福祉士の資格保持者という信頼性があることで、多職種連携もスムーズにとりやすくなり、より良い支援を実践できるでしょう。
名称独占資格である社会福祉士になって活躍の場を広げよう
社会福祉士は、医療福祉系の国家資格のなかでも名称独占資格に分類されます。
名称独占資格は、資格を持っている方だけがその名称を使用でき、無資格者が肩書きを名乗ることは認められません。
名称を名乗りさえしなければ、有資格者が行うような業務に従事することは可能です。
業務独占資格の場合、無資格者による名称を名乗る行為だけでなく、業務に携わることも法律で禁止されている点で、名称独占資格とは異なります。
社会福祉士が名称独占資格となっている大きな理由は、専門性を証明し、支援対象者・他職種から信頼を獲得するためです。
社会福祉士の肩書きは、福祉サービスや法制度、心理学などの専門知識と実践能力が一定以上あることの確固たる証明になります。
ソーシャルワーカーとしてより幅広い分野で活躍するためにも、社会福祉士の資格取得をめざしてみてはいかがでしょうか。