社会福祉士をめざすうえで、国家試験の難易度が気になる方は多いでしょう。
社会福祉士の国家試験は合格率が低いため、合格が難しいと言われています。
本記事では、社会福祉士の合格率や推移、合格者の内訳、他の福祉資格と比較した難易度などを紹介します。
国家試験に向けて勉強中の方や、将来の進路として社会福祉士を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
社会福祉士の合格率や推移
まずは、社会福祉士国家試験について、令和4年度の合格率と、過去の合格率の推移をそれぞれ見ていきましょう。
令和4年度|社会福祉士の合格率は44.2%
厚生労働省の発表によると、令和4年度の社会福祉士国家試験合格率は44.2%でした。
内訳としては、受験者数36,974人のうち、合格者数16,338人です。
なお、新卒か既卒かで、合格率には大きな差があります。
詳しくは後述します。
社会福祉士の合格率の推移
下表は、社会福祉士国家試験の、直近5回の合格率の推移をまとめたものです。
年度(回) | 平成30年度(31) | 令和元年(32) | 令和2年度(33) | 令和3年度(34) | 令和4年度(35) |
受験者数(人) | 41,639 | 39,629 | 35,287 | 34,563 | 36,974 |
合格者数(人) | 12,456 | 11,612 | 10,333 | 10,742 | 16,338 |
合格率(%) | 29.9 | 29.3 | 29.3 | 31.1 | 44.2 |
出典:厚生労働省「社会福祉士国家試験の受験者・合格者の推移」
令和3年度までは合格率30%前後で推移していましたが、令和4年度は44%となり、大きく伸びています。
また、年々低下傾向にあった受験者数も、令和4年度には増加に転じました。
社会福祉士の合格率をさまざまな視点から見た内訳
続いて、社会福祉士の合格率の内訳を、以下の観点からそれぞれ見ていきます。
- 受験ルート別の内訳|新卒・既卒
- 学校種別|合格率が上位の学校
- 福祉系大学別の合格率内訳
- 短期養成施設別の合格率内訳
- 年齢別
- 性別
- 都道府県別
受験ルート別の内訳|新卒・既卒
社会福祉士国家試験を受けるためのルートには、以下の4つがあります。
- 福祉系大学
- 福祉系大学と実務経験
- 短期養成施設など
- 一般養成施設など
下表は、ルート別、新卒・既卒別の合格率をそれぞれまとめたものです。
新卒 | 既卒 | |||||
受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
福祉系大学 | 8,447 | 5,490 | 65.0 | 11,544 | 3,251 | 28.2 |
福祉系大学と実務経験 | ー | ー | ー | 1,525 | 338 | 22.2 |
短期養成施設 | 842 | 463 | 55.0 | 1,633 | 535 | 32.8 |
一般養成施設 | 5,365 | 3,615 | 67.4 | 7,618 | 2,646 | 34.7 |
参考:厚生労働省「第35回社会福祉士国家試験合格発表」
新卒の方が、既卒よりも合格率が高くなっています。
福祉系大学の場合は、新卒の合格率が65.0%なのに対し、既卒は28.2%と、その差は2倍以上です。
ここまで差が出る要因としては、既卒で働きながら試験勉強をすることの難しさが挙げられるでしょう。
学校種別|合格率が上位の学校
学校種別での合格率が上位の学校を、下記の2つの校種で紹介します。
- 福祉系大学
- 短期養成施設
それぞれ新卒と既卒の総数と、新卒の場合の合格率を紹介するので、参考にしてください。
福祉系大学別の合格率内訳
合格率が上位5校の福祉系大学は、次のとおりです。
なお、受験者10人以上の大学のみを対象としています。
総数 | 新卒者 | |||||
学校名 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
大分大学 | 36 | 34 | 94.4 | 32 | 32 | 100.0 |
大阪市立大学 | 16 | 15 | 93.8 | 15 | 14 | 93.3 |
京都府立大学 | 44 | 40 | 90.9 | 29 | 27 | 93.1 |
新潟県立大学 | 26 | 23 | 88.5 | 23 | 21 | 91.3 |
金沢大学 | 17 | 15 | 88.2 | 12 | 12 | 100 |
新卒者の合格率が高く、既卒者を合わせても約9割の受験者が合格しています。
短期養成施設別の合格率内訳
合格率上位の短期養成施設は、次のとおりです。
福祉系大学と同じく、受験者10人以上の学校を対象としています。
総数 | 新卒者 | |||||
学校名 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
NHK学園(通信) | 97 | 53 | 54.6 | 38 | 26 | 68.4 |
仙台医療福祉専門学校(通信) | 45 | 23 | 51.1 | 22 | 15 | 68.2 |
札幌医学技術福祉歯科専門学校(通信) | 32 | 16 | 50.0 | 24 | 16 | 66.7 |
日本総合研究所(通信) | 287 | 136 | 47.4 | 118 | 72 | 61.0 |
専門学校高崎福祉医療カレッジ(通信) | 119 | 52 | 43.7 | 43 | 24 | 55.8 |
出典:第35回社会福祉士国家試験学校別合格率
短期養成施設は、福祉系大学よりも合格率が低い水準となっています。
また、福祉系大学と同様、新卒者の合格率のほうが高い傾向です。
年齢別
社会福祉士国家試験の、年齢別の合格率は次のとおりです。
年齢区分(歳) | 人数(人) | 割合(%) |
~30 | 7,081 | 43.3 |
31~40 | 2,865 | 17.5 |
41~50 | 3,558 | 21.8 |
51~60 | 2,211 | 13.5 |
61~ | 623 | 3.8 |
合計 | 16,338 | 100.0 |
30歳以下の合格者数が多い傾向です。
一方で61歳以上の合格者もいるため、高齢でも合格する可能性はゼロではありません。
性別
性別の区分では、次のような合格者の内訳となります。
区分 | 男 | 女 | 合計 |
人数(人) | 5,338 | 11,000 | 16,338 |
割合(%) | 32.7 | 67.3 | 100.0 |
男女比はおおよそ3:7で、女性のほうが多い傾向です。
都道府県別
都道府県別の内訳を、合格者数が多い順に紹介します。
都道府県別 | 合格者数 |
東京都 | 1,895 |
神奈川県 | 1,197 |
大阪府 | 1,085 |
埼玉県 | 964 |
愛知県 | 917 |
なお、合格者の受験時の住所であるため、実際の勤務地の有効求人倍率の順位とは異なります。
社会福祉士の合格率が低い要因
社会福祉士の合格率が低い要因として、以下の3点が挙げられます。
- 出題範囲が広くて問題数も多い
- 福祉系資格でも長い勉強時間が必要
- 合格基準が高い
それぞれ見ていきましょう。
出題範囲が広くて問題数も多い
社会福祉士国家試験の出題範囲は、以下の19の出題科目(18の科目群)です。
- 1. 人体の構造と機能及び疾病
- 2. 心理学理論と心理的支援
- 社会理論と社会システム
- 現代社会と福祉
- 社会調査の基礎
- 相談援助の基盤と専門職
- 相談援助の理論と方法
- 地域福祉の理論と方法
- 福祉行財政と福祉計画
- 福祉サービスの組織と経営
- 社会保障
- 高齢者に対する支援と介護保険制度
- 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
- 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
- 低所得者に対する支援と生活保護制度
- 保健医療サービス
- 就労支援サービス
- 権利擁護と成年後見制度
- 更生保護制度
参考:社会福祉士について|第6回福祉人材確保対策検討会(H26.10.3)資料1
出題範囲の広さや出題数の多さが、難易度の高さにつながっています。
19科目のうち、就労支援サービスと更生保護制度は同じ科目群です。
どの科目でも1点以上は獲得しなければならず、幅広い範囲の勉強が必要になります。
福祉系資格でも長い勉強時間が必要
社会福祉士国家試験の対策には、約300時間は勉強が必要だと言われています。
これは他の福祉系の資格と比較しても高い水準です。
そのため、いかに勉強時間を確保できるかは、合否を分ける大きな要素となっています。
新卒者であれば、勉強時間の確保はそれほど難しくないでしょう。
一方、既卒者の場合は、働きながら年300時間を確保する必要があるため、難易度が跳ね上がります。
合格基準が高い
合格基準が高く設定されていることも、社会福祉士の合格率が低い要因です。
苦手な科目があったとしても、すべての科目で1点以上は取る必要があります。
また、第35回(令和4年度)の試験では150点中90点が合格基準でしたが、試験内容によって合格基準は下記のように異なっています。
- 第34回(令和3年度):105点
- 第33回(令和2年度):93点
- 第32回(令和元年度):88点
実施された試験内容の難易度で合格基準が調整されるため、どのような問題が出題されても答えられるように準備しておくと良いでしょう。
社会福祉士の難易度|三大福祉国家資格とレベル比較
社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士の3つを総称して、三大福祉国家資格といいます。
下表は、3つの資格の受験者数と合格率をそれぞれ比較したものです。
資格 | 受験者数(人) | 合格率(%) |
社会福祉士 | 36,974 | 44.2 |
介護福祉士 | 79,151 | 84.3 |
精神保健福祉士 | 7,024 | 71.1 |
このとおり、社会福祉士は、介護福祉士や精神保健福祉士と比べても合格率が低く、難易度の高さがわかります。
出題範囲による難しさや出願条件などが合格率に影響を与えているのでしょう。
なお、社会福祉士と精神保健福祉士は、一部の科目が重複しています。
重複する科目は、一方の資格を取得後にもう一方を受験する場合、免除を受けることが可能です。
社会福祉士の合格率を把握して試験に挑戦しよう
社会福祉士の合格率は、最も高かった令和4年度で44.2%、それ以前の5年間は約30%であり、難しいといえる水準です。
学校種別や新卒・既卒の別でも合格率が大きく異なるため、選べる範囲内で合格率の高いルートを選ぶと良いでしょう。