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言語聴覚士の訓練内容とは?具体的なリハビリ方法についても解説

この記事の監修者
霧ヶ峰
霧ヶ峰
【資格】
言語聴覚士

【プロフィール】
名前:霧ヶ峰
4年制大学で心理学を学んだ後、2年制の養成校を卒業。
回復期リハビリテーションから、維持期、訪問看護、小児など幅広い分野を経験。
現在は、言語聴覚士として働きながら、ライティング活動で医療系の記事執筆に携わっています。

言語聴覚士は、コミュニケーション障害や摂食・嚥下機能の低下に悩む患者さんのリハビリテーションを担当する専門家です。
本記事では、言語聴覚士が行う主な訓練内容と、それぞれの具体的なリハビリ方法について詳しく解説します。
言語訓練、構音訓練、高次脳機能訓練、嚥下訓練の各分野における実践的なアプローチを知ることで、言語聴覚療法の重要性と効果について理解を深めることができるでしょう。

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言語聴覚士の訓練内容

言語聴覚士の訓練内容

言語聴覚士は、コミュニケーション障害や摂食・嚥下機能の低下に悩む患者さんのリハビリテーションを担当する専門家です。
脳卒中や頭部外傷、神経難病、廃用症候群などさまざまな原因で起こるこれらの障害に対し、言語聴覚士は「言語聴覚療法」と呼ばれる訓練を行います。
この療法は、患者さんの症状や状態に合わせて個別に計画され、日常生活の質を向上させることをめざします。
それでは、言語聴覚士が行う主な訓練内容について、詳しく見ていきましょう。

言語訓練の内容

言語訓練は、失語症などの患者さんを対象に、言葉を理解する(聞く・読む)能力や、言葉を表出する(話す・書く)能力を向上させて、周囲の人と円滑にコミュニケーションが取れるようになるためのリハビリテーションです。
失語症の患者さんは、会話の内容を理解できなかったり、適切な言葉が出てこなかったりするため、日常的なコミュニケーションに困難を感じています。

言語訓練では、絵カードや物品を用いながら、単語や文の理解を促したり、言葉が適切に想起されるように促し、周囲の人々とスムーズなコミュニケーションが取れるようになることをめざします。
また、言語聴覚士は患者さんやご家族に対して、自宅でも継続できる言語訓練の方法の指導や、筆談やコミュニケーションボードなどの代替手段を用いたコミュニケーション方法の指導をすることもあります。
これにより、リハビリの効果を日常生活にも広げていくことができるのです。

構音訓練の内容

構音訓練は、呂律が回らない、またははっきりとした発声・発語が難しい患者さんを対象とした訓練です。
言語訓練の一種ではありますが、構音訓練が必要な患者さんの多くは、発声発語器官の麻痺や筋力低下、欠損などにより口の動きに問題が生じているケースが多いのが特徴です。

この訓練では、口をスムーズに動かすための口腔の体操や、はっきりと話せるようにするための音読課題などを実施します。
また、リハビリを行っても構音障害の改善が難しい患者さんに対しては、発語以外の方法で意思疎通がしやすくなる補助手段を提案することもあります。

このように、患者さんの状態に応じて柔軟に対応し、コミュニケーション能力の向上を支援していくのです。

高次脳機能訓練の内容

高次脳機能障害は、脳卒中や頭部外傷などによる脳の損傷が原因で起こる機能障害です。
この障害に対する高次脳機能訓練では、注意力や記憶力、視空間認知、遂行機能などに問題がある患者さんを対象に、言語聴覚士と作業療法士が連携してリハビリテーションを行います。

高次脳機能訓練の主な目的は、患者さんが日常生活動作をスムーズに行えるようになることで、職場復帰や自動車の運転などの社会復帰をはたすことも含まれます。
そのため訓練内容は、日常生活に直結した課題が中心です。

また、言語聴覚士は患者さんのご家族に対しても、日常生活を円滑に送るための助言を行うことがあります。
こうして、患者さんを取り巻く環境全体でサポートする体制を整えていきます。

嚥下訓練の内容

嚥下訓練は、食べたり飲み込んだりすることが難しい方を対象に、嚥下機能を向上させるための訓練です。
この訓練の主な目的は、食べ物が食道ではなく、誤って気管に入ってしまうことで引き起こされる誤嚥性肺炎や窒息のリスクを軽減しながら、口からの適切な栄養摂取をめざすことです。

嚥下訓練では、食事に必要な口や舌の筋力を強化する体操や、誤嚥した際に食べ物を吐き出す訓練などを行います。
さらに、患者さんの状態に応じて、食事形態の調整や適切な食べ方の指導も行われます。
これらの総合的なアプローチにより、安全に食事を楽しめる能力の回復をめざしていくのです。

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言語聴覚士が行う具体的なリハビリ方法

言語聴覚士が行う具体的なリハビリ方法

言語聴覚士の主な役割は、先に紹介した訓練を実施することです。
ここからは、それぞれの訓練における具体的なリハビリ方法について詳しく見ていきましょう。

これらのリハビリ方法は、高齢者や成人だけでなく、子どもの患者さんにも適用される場合があります。

子どもの患者さんに対する言語聴覚療法については、以下のリンクで詳しく解説しています。

言語訓練

言語訓練では、患者さんの言語理解力と表出力を向上させるために、さまざまな方法が用いられます。
ここでは、代表的な二つの訓練方法について詳しく解説しましょう。
これらの方法を組み合わせることで、患者さんの言語能力を効果的に改善していくことができます。

絵・文字カードを用いた訓練

言語訓練では、言語の理解・表出能力を向上させるために、絵や文字が書かれたカードや文などを使用します。
患者さんの症状が重度の場合は、絵カードとともに文字単語を見せたり、より想起しやすいように、訓練用の絵カードではなく、実物や写真を使用することもあります。
一方、比較的軽度の言語障害を持つ方の訓練では、単語ではなく、文法や文章の理解を促したり、表出訓練でも文で説明したり、会話を行ったりと、より実践的な訓練を行います。

言語理解の訓練では、複数枚の絵カードを机に並べ、言語聴覚士が読み上げた単語と一致する絵カードを患者さんに選んでもらいます。一枚から始め、徐々に枚数も増やしていきます。
言語表出の訓練では、言語聴覚士が絵カードを見せて、描かれた絵が何かを、患者さんに口頭で答えてもらう練習をします。

患者さんが回答に迷ったり、不正解だった場合は、単語の頭文字のヒントを与えたり、文字を見せて音読や復唱を促したりします。
このように、段階的なサポートを行いながら、患者さんの言語能力の向上を図っていきます。

実用的コミュニケーション訓練

実用的コミュニケーション訓練は、日常生活でのコミュニケーションをより円滑にすることを目的とした訓練です。
「お腹が空いた」「○○に行きたい」など、日常生活でよくある場面を想定して、自分の気持ちや訴えを伝える練習を行います。

この訓練の代表例が「PACE訓練」です。
PACE訓練は主に中程度以上の失語症患者さんを対象とし、カードを用いた訓練と並行して実施されます。
この訓練では、患者さんに自分の意見や気持ちを伝えることを促しますが、伝達手段は言葉に限定せず、ジェスチャーや絵カードの使用も認められています。

このアプローチにより、患者さんは言語以外のコミュニケーション手段も活用しながら、より効果的に自己表現する能力を身につけていくことが可能です。

構音訓練

構音訓練は、発音の明瞭さを向上させ、より聞き取りやすい話し方を習得するためのリハビリテーションです。
ここでは、構音訓練の中核を成す二つの方法について詳しく解説します。
これらの訓練を組み合わせることで、患者さんの発語能力を総合的に改善していきます。

口・舌の体操

構音訓練の一環として、口や舌の体操を行うことが一般的です。
構音障害の患者さんは、疾患による麻痺や筋力低下だけでなく、その話しにくさから人と話す機会が減少することで、舌や口の筋肉がより硬くなったり、筋力が低下したりする傾向があります。

口や舌の体操を始める前には、深呼吸や首・肩のストレッチを行います。
これは、発声時に使用する呼吸筋をリラックスさせ、血流を促進するためです。
その後、以下のような動作を含む体操を行います。

  1. 口を大きく開ける・閉じる
  2. 頬を膨らませる・凹ます
  3. 舌を突き出す・戻す
  4. 舌を上下左右に動かす

これらのエクササイズを通じて、発語に必要な口腔内の筋肉を柔軟にし、口や舌の動作の改善を図ります。

発声発語訓練

口や舌の体操のあとは、発声発語訓練を行います。
この訓練では、患者さんが特に発音しにくい音に注意を払いながら、以下の順序で練習を進めていきます。

  1. 単音
  2. 単語
  3. 短文
  4. 文章
  5. 会話

発声発語訓練の代表的な例として「パタカラ体操」があります。
これは「パ・タ・カ・ラ」の4音を発声しながら行う口の体操で、呂律が回りにくい患者さんに特に効果的です。
さらに、この体操は嚥下機能の向上にもつながるため、誤嚥性肺炎の予防効果も期待できます。

高次脳機能訓練

高次脳機能訓練は、脳卒中や頭部外傷などによる脳の損傷によって生じた高次脳機能機能の障害に対するリハビリテーションです。
ここでは、高次脳機能障害の主な症状である記憶障害、注意障害、視空間認知障害に対する具体的な訓練方法を紹介します。
これらの訓練を組み合わせることで、患者さんの日常生活に必要な機能の改善をめざします。

記憶障害に対する訓練

記憶障害が起きると、重要な約束を忘れてしまったり、同じ質問を何度も繰り返したりするなどの症状が現れます。
訓練を開始する前に、言語聴覚士は患者さんがどのような記憶なら保持できるか、どの程度の時間記憶を維持できるかなどを観察・評価し、適切な訓練内容を検討します。

記憶障害に対する訓練は、主に以下のような方法です。

  1. 反復訓練:記憶した内容を繰り返し復唱する
  2. 内的記憶戦略法:患者さんの内面にあるイメージや視覚情報から言葉を引き出す
  3. カテゴリー法:情報をカテゴリー分類し、グループ化することで覚えやすくする
  4. 外的補助手段の実用訓練:メモやふせん、スマートフォンのメモ機能などを使って記憶を補助する手段の獲得を図る

これらの方法を患者さんの状態や生活環境に合わせて選択し、組み合わせることで、記憶機能の改善を図ります。

注意障害に対する訓練

注意障害は、作業を長時間続けられなかったり、周囲の状況を適切に判断せずに行動してしまったりする症状が現れます。
注意障害の患者さんを評価する際には、食事場面や日常生活での様子などを観察し、注意が散漫かどうか、適切に注意を切り替えられるか、集中力や注意力の持続性などを確認します。

注意障害に対する訓練は、以下のような内容です。

  • 抹消課題(図形抹消、仮名拾い)
  • 数字の指差し課題(数字を順番に指さす)
  • 間違い探し
  • かるた・トランプなどのカードゲーム
  • 辞書調べ
  • 電卓計算
  • 入力作業

訓練の初期段階では、個室で決まった担当者がリハビリを行ったり、短時間で完了できる課題を与えたりするなどの工夫が必要です。
患者さんの集中力や注意力が向上するにつれて、徐々に難易度や作業時間を増やしていきます。

視空間認知機能に対する訓練

高次脳機能障害により、視空間認知機能に障害が生じるケースもあります。
物の位置を認識できなかったり、片側の空間に対する認識や注意が欠如する症状(半側空間無視)が現れます。

認知機能障害に対する訓練には、以下の方法があります。

  • 指差しを用いた視覚探索訓練
  • 言語的手がかりを用いた視空間認知訓練
  • 塗り絵
  • 抹消課題

これらの訓練を通じて、患者さんの認知機能の改善を図り、日常生活での不便さを軽減していきます。

嚥下訓練

嚥下訓練は、安全に食事を摂取できるようにするための重要なリハビリテーションです。
この訓練は大きく分けて、食べ物を使わずに行う「基礎訓練(間接的嚥下訓練)」と、実際に食べ物を使用する「摂食訓練(直接的嚥下訓練)」の二つに分類されます。
それぞれの訓練方法について、詳しく見ていきましょう。

基礎訓練(間接的嚥下訓練)

基礎訓練とは、食べ物を使わずに行う訓練のことです。
この訓練の目的は、食べるために必要な口や喉の筋肉を動かしたり、刺激を与えたりすることで、機能の改善を促し、誤嚥のリスクを予防することにあります。

基礎訓練に該当する主な訓練方法は、以下のとおりです。

  1. アイスマッサージ訓練:凍った綿棒に少量の水分を含ませ、嚥下反射誘発部位を刺激して嚥下反射を誘発していきます。
  2. 嚥下体操:首や肩、胸郭、口腔器官など、嚥下に関わる機関のストレッチや運動を行います。
    この体操により、嚥下に必要な筋肉の柔軟性と強度を維持・向上させます。
  3. 頭部拳上訓練:嚥下に必要な筋肉の強化を図ります。
    具体的には、仰向けの状態から頭を持ち上げる動作を繰り返し行います。
  4. 咀嚼訓練:ガムやスルメイカを用いて咀嚼を促し、咀嚼に必要な筋肉の筋力強化をはかっていきます。

これらの基礎訓練を通じて、患者さんの嚥下機能の基盤を整えていきます。

摂食訓練(直接的嚥下訓練)

摂食訓練とは、実際に食物を使って食べる・飲む行為を通じて行う訓練です。
この訓練は、基礎訓練で嚥下に必要な筋肉を動かしたあと、嚥下しやすい環境を整えてから実施します。

摂食訓練を行う際の注意点として、以下のようなことがあります。

  • 患者さんの嚥下レベルに合わせた食べ物を用意する(例:トロミをつけた液体、ゼリー、刻んだ食材など)
  • 扱いやすい箸やスプーン、食器を用意する

摂食訓練にあたる主な訓練方法は、以下のとおりです。

  1. スライスゼリー丸飲み法:薄くスライスしたゼリーを丸飲みします。
    これは、嚥下機能が低下している患者さんでも比較的安全に行える方法です。
  2. 交互嚥下法:固形物と流動物を交互に食べます。
    これにより、口腔内に残った食べ物を効果的に洗い流すことができます。
  3. 反復嚥下法:一口嚥下したあとに再度嚥下をします。
    これは、喉に残った食べ物を確実に飲み込むための方法です。

これらの訓練を通じて、患者さんは徐々に安全に食事を摂取する能力を取り戻していきます。

言語聴覚士の仕事内容は患者さんにより変わる

言語聴覚士が行う訓練は、患者さんのコミュニケーション能力や摂食・嚥下機能の改善をめざす重要な役割を担っています。
主な訓練内容には、言語訓練、構音訓練、高次脳機能訓練、嚥下訓練があり、それぞれ患者さんの症状や状態に合わせた具体的な方法が用いられるのです。

言語訓練では絵・文字カードを用いた訓練や実用的コミュニケーション訓練が、構音訓練では口・舌の体操や発声発語訓練が行われます。
高次脳機能訓練では、注意障害、記憶障害、視空間認知機能障害に対するさまざまな訓練方法が実施されます。
嚥下訓練では基礎訓練と摂食訓練を組み合わせることで、安全な食事摂取をめざすのです。

これらの訓練は、患者さんの日常生活の質を向上させ、社会参加を促進するうえで非常に重要です。
言語聴覚士は、患者さんの状態を詳細に評価し、適切な訓練方法を選択・組み合わせることで、効果的なリハビリテーションを提供しています。

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執筆者について

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