
医療事務は、医療機関での事務業務を担当する重要な職種です。
患者さんの受付や会計、保険請求など、幅広い業務をこなす医療事務員ですが、その給料で一人暮らしができるのかどうかは多くの人が気になる点でしょう。
本記事では、医療事務の給料で一人暮らしが可能かどうか、その難しさの理由や可能にする方法について詳しく解説していきます。
医療事務をめざす方や、現在医療事務として働いている方にとって、参考になる情報となるでしょう。
目次
医療事務で一人暮らしはできる?
医療事務の仕事は、医療機関にとって欠かせない存在です。
しかし、医療事務の給料で一人暮らしができるかどうか、多くの人が疑問に思っているのではないでしょうか。
実際のところ、医療事務の給料で一人暮らしをすることは可能な場合もありますが、さまざまな要因によって難しい場合もあります。
以下では、医療事務の給与と一人暮らしの関係について詳しく見ていきましょう。
医療事務で一人暮らしが可能かどうかは給与による
医療事務で一人暮らしができるかどうかを決めるのは、主に給与の額です。
医療事務の給与は、勤務先や経験年数、資格の有無などによって大きく異なります。
一般的に、医療事務の給与は他の職種と比べてやや低めとされていますが、それでも一人暮らしは可能な場合もあります。
しかし、給与が低い場合や、貯金をしたい、奨学金の返済がある、といった背景がある場合は、一人暮らしが難しいケースもあるでしょう。
特に、都市部では家賃が高いため、給与の多くが家賃に消えてしまう可能性があります。
比較的給与の高い医療機関で働けば、一人暮らしができる可能性は高くなるでしょう。
収支面から見てどのくらいの負担がある?
医療事務の給与で一人暮らしをする場合、実際にどのような収支バランスになるのか、具体的に見ていきましょう。
医療事務の平均月収と、一人暮らしにかかる平均的な支出を比較することで、より現実的な状況が把握できます。
以下の表は、総務省統計局によって公表された、民営借家(アパート・マンションなど)で一人暮らしをする人の支出の平均です。
支出項目 | 平均金額 |
食費 | 39,202円 |
住居費(家賃) | 53,691円 |
水道光熱費 | 11,814円 |
生活用品(家具・家事用品) | 5,236円 |
被服費 | 4,675円 |
保健医療費 | 6,209円 |
交通・通信費 | 24,618円 |
娯楽費 | 18,943円 |
その他(交際費・雑費など) | 24,863円 |
合計 | 189,251円 |
参考:総務省統計局「家計調査(家計収支編)調査結果」(2023年)
一方で、ハローワークの求人統計データによると、2023年度の医療事務の求人賃金月額は全国平均で19.3万円となっています。
求人賃金月額から支出平均を差し引くと、ほとんど手元に残るお金はないように感じるかもしれません。
しかし、住居費や食費は地域によって大きな差があり、特に都市部の家賃は高くなりがちです。
加えて、勤務する医療機関によっては残業があったり、家賃手当をはじめとした手当が支給されたりする場合もあり、収入が求人賃金月額の全国平均を上回る可能性もあります。
したがって、必ずしも「医療事務の給料で一人暮らしをするのは難しい」とは限りません。
とはいえ、医療事務の給与で一人暮らしをするとなると、堅実な家計管理は必須です。
場合によっては収入を増やすための工夫も必要となるでしょう。
医療事務の給料が安い理由
医療事務は重要な職種でありながら、給料が比較的低いといわれています。
なぜ医療事務の給料は安いのでしょうか。
ここでは、医療事務の給料が安い主な理由について解説します。
これらの要因を理解すると、給料アップやキャリア選択に役立てられるでしょう。
人気の職種ながら資格がなくてもできる
医療事務は、資格がなくても就職できる職種として知られています。
勤務するうえで専門的なスキルや資格は必須ではありません。
そのため、他の医療職種と比べて給料が低く設定されやすい傾向があります。
また、就職に資格が不要なことから、医療事務は医療や事務に興味がある人にとって比較的参入しやすい職種です。
看護師や医師のように国家資格を取得したり、高度な専門知識を身につけたりする必要がないため、多くの人が志望する人気の職種となっています。
この参入のしやすさが、給料の低さにつながっている可能性があります。
とはいえ、医療事務の仕事に関連する資格が存在しないというわけではありません。
国家資格ではありませんが、民間資格は多数存在します。
これらの資格を取得すると、より専門性の高い業務を任され、給料アップにつながる可能性もあるでしょう。
非正規雇用のケースも多い
医療事務職は、非正規雇用のケースも多く見られます。
正規雇用と非正規雇用では、給与体系に大きな差があることが一般的です。
パートタイムや派遣社員といった非正規雇用として働く場合は、時給制であるケースが多く、月給制の正社員と比べて収入が低くなりがちです。
勤務時間が短かったり、祝日が多い月は実働日数が少なくなったりすることもあります。
そのため、月々の給料が目に見えて低くなる場合があるのです。
また、賞与や各種手当てなどの待遇面でも、正社員との差が出やすい傾向にあります。
このような雇用形態による待遇の違いは、医療事務の給料が全体的に低いと感じられる要因の一つです。
ただし、近年では働き方改革の影響もあり、非正規雇用者の待遇改善も進んでいる傾向にあります。
給料が上がりづらい
医療事務は、他の医療職と比べて給料が上がりづらい傾向にあります。
看護師や医師などの専門職は、経験を積むことで専門性が高まり、それにともなって給料も上昇していくケースが多いです。
しかし、医療事務の場合、業務内容が比較的固定的であるため、経験年数だけでは大幅な給料アップにつながりにくい面があります。
一方で、医療事務の給料は景気や市場の影響を受けにくいという特徴もあります。
つまり、経済状況の変動による給料の下落リスクは比較的低いといえるでしょう。
安定した収入を得られる点は、医療事務の魅力の一つともいえます。
給料を上げて一人暮らしをするためには、さまざまな工夫が必要です。
例えば、資格取得によるスキルアップや、管理職への昇進をめざすなど、自己研鑽の継続が重要です。
また、より給与水準の高い医療機関への転職を検討するのも一つの選択肢となるでしょう。
医療事務で一人暮らしをする方法
医療事務の給料で一人暮らしをするのは難しい場合もありますが、決して不可能ではありません。
ここでは、医療事務で働きながら一人暮らしを実現するための具体的な方法を紹介します。
これらの方法を参考に、自分に合ったアプローチを見つけてください。
スキルアップして給料を上げる
医療事務の給料をアップさせるための有効な方法の一つが、スキルアップです。
前述のように、医療事務には多数の民間資格が存在します。
これらの資格は、就職に必須ではありません。
しかし、保有していると有利に働くことがあります。
特に注目したい資格は、診療報酬請求事務能力認定試験です。
診療報酬請求事務能力認定試験は医療事務資格のなかでも高い認知度を誇り、難易度も高いため、信頼性のある資格として評価されています。
取得すると、より専門的な業務を任されたり、給料アップにつながる可能性が高まります。
他にも、医事コンピュータの操作に必要な知識やスキルが学べる「医事コンピュータ能力技能検定試験」や、医療秘書としての専門知識や技能の習得を証明する「医療秘書技能検定試験」など、医療事務の資格はさまざまです。
これらの資格を取得すると、自身の市場価値が高まり、より高い給料をめざせるでしょう。
スキルアップは、長期的な視点で考えると、一人暮らしを可能にする大きな力となります。
昇進をめざす
医療事務にも、昇進の機会はあります。
パートやアルバイトとして働き始めたとしても、日々の業務に真摯に取り組み、成果を上げると、正社員への登用や管理職への昇進のチャンスが訪れる場合もあるでしょう。
昇進すると、給料面での待遇改善が期待できます。
また、責任ある立場に就くと、より幅広い経験を積むことができ、キャリアアップにもつながります。
昇進をめざすことは、一人暮らしを実現するための有効な方法の一つといえるでしょう。
日々の業務に真剣に取り組み、積極的に新しい仕事にチャレンジする姿勢を示すことが、昇進への近道となります。
また、上司や同僚とのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築くことも重要です。
職場へ相談する
給料アップや待遇改善を実現するために、直接勤務先に相談するのも一つの方法です。
しかし、この方法を選択する際には、慎重な自己分析が必要となります。
まずは、自分自身が職場に貢献できているか、日々の業務姿勢はどうか、などを客観的に評価することが大切です。
まだまだ未熟であったり、日々の業務態度に問題があったりする場合は、相談しても良い評価を得ることは難しいでしょう。
相談の際には、自身の成果や努力を具体的に示すと効果的です。
例えば、業務効率化に貢献した事例や、患者さんからの良い評価など、具体的な実績を挙げると、説得力のある相談となります。
また、今後の目標や会社への貢献意欲も示すと、前向きな印象を与えられます。
ただし、相談のタイミングには注意が必要です。
月末月初の忙しい時期を避けるなど、状況を見極めましょう。
副業をする
医療事務の給料だけでは一人暮らしが難しい場合は、副業を検討するのも一つの選択肢です。
近年は、さまざまな形態の副業が存在し、自分のライフスタイルに合わせて選択できます。
例えば、ポイ活などのすき間時間を利用した副業は、本業への影響を最小限に抑えながら収入を増やすことが可能です。
オンラインアンケートへの回答や、ウォーキングアプリを利用したポイント稼ぎといった、手軽に始められるものもあります。
一方で、より本格的な副業をする場合は、時間の確保が必要です。
フリーランスのライターやデザイナー、オンライン家庭教師など、スキルを活かした副業も考えられます。
ただし、本業に支障をきたさないよう、時間管理には十分注意が必要です。
副業をする際は、自分の興味や得意分野、費やせる時間などを考慮し、無理のない範囲で始めましょう。
また、副業に関する職場の規定を確認し、必要に応じて上司に相談するなど、ルールを守ることも重要です。
給料が高い職場へ転職する
医療事務は、勤務先によって給料に差があります。
一人暮らしを実現するために、より給与水準の高い職場へ転職を検討するのも一つの方法です。
一般的に、規模の大きい総合病院や大学病院などは、比較的給与が高い傾向にあります。
これらの医療機関では、業務の専門性や責任の重さが増す分、給与も高くなるケースが多いです。
また、大規模な医療機関ではキャリアアップの機会も多く、長期的な視点での給与アップも期待できます。
また、美容クリニックなどの自由診療を取り扱う医療機関も、給与が比較的高い傾向があります。
ただし、これらの施設では一般的な医療事務の業務に加えて、カウンセリングをはじめとした簡単な営業要素が含まれる場合も少なくありません。
そのため、インセンティブが付くなど、より高い収入を得られる可能性があります。
転職を考える際は、給与だけでなく、勤務条件や職場環境、将来性などを総合的に検討することが大切です。
また、転職先で求められるスキルや資格を事前に確認し、必要に応じて準備するようにしましょう。
寮付きの職場へ転職する
医療事務の給与で一人暮らしを実現する方法として、収入を増やすだけでなく、支出を抑える方法も考えられます。
その一つが、寮付きの職場への転職です。
寮付きの職場では、家賃の負担が大幅に軽減されるため、同じ給与でもより多くの可処分所得を確保できます。
特に都市部など、家賃の高い地域で働く場合は、寮付きの職場を選ぶと経済的メリットが得られるでしょう。
ただし、寮付きの職場は、大規模な病院や医療機関に多い傾向があります。
そのため、入寮を目的とした転職の際は、業務内容や責任の増加なども考慮する必要があるでしょう。
また、寮付きの職場以外にも、支出を抑える方法はあります。
例えば、シェアハウスに住んだりすると家賃や光熱費などの固定費を抑えることが可能です。
これらの選択肢も、一人暮らしを実現するための有効な方法となるでしょう。
医療事務でも快適な一人暮らしをめざす方法はある
医療事務の給与で一人暮らしをすることは、簡単ではありません。
しかし、さまざまな方法を組み合わせると、一人暮らしの実現は十分に可能です。
資格取得を通じてスキルアップしたり、自身の市場価値を高めたりすると、長期的な視点で考えると大きな効果があります。
また、昇進をめざしたり、より給与の高い職場への転職を検討したりするのも有効な方法です。
一方で、副業や寮付きの職場を選ぶなど、収入を増やしたり支出を抑えたりする工夫も効果的です。
これらの方法を自分の状況や目標に合わせて選択し、組み合わせることで、より快適な一人暮らしに近づけるでしょう。
一人暮らしをするならば、家計管理の徹底が欠かせません。
収支のバランスを把握し、無理のない範囲で生活することが、一人暮らしを長続きさせる秘訣です。
医療事務という職業を活かしながら、自分らしい快適な一人暮らしを実現させてください。