BLSは、看護師をはじめとした医療従事者にとって必要不可欠な救命技術です。
心肺停止あるいは呼吸が停止した状態にある患者さんの命を救うために、BLSを十分に学び、適切な心肺蘇生やAEDの使用を実践できるようにしましょう。
本記事では、「BLSとは何か」という基礎知識をわかりやすく解説するとともに、BLS講習で学べる内容や受講のメリットをお伝えします。
患者さんの急変時でも冷静に対応し、命を救える看護師をめざして、BLS講習には積極的に取り組んでみてください。
目次
BLSとは

BLSとは「Basic Life Support」の略称で、心肺停止時や呼吸停止時に実施する一次救命処置のことをいいます。
BLSで用いるのは、主に心肺蘇生と人工呼吸、AEDです。
BLSを行うメリット
心肺蘇生の際にAEDを使用した場合、心肺停止状態だった方が社会復帰できる可能性は、心肺蘇生を行わなかった場合と比べて2~3倍も高くなるといわれています。
BLSは、AED以外の特殊な機器(除細動・挿管など)を使わなくても行えます。
一般市民の方でも知識・技術があれば実践できるため、いざというときのために医療資格がない方も学んでおくメリットがあるスキルといえるでしょう。
もちろん看護師も、院内急変時nに一人の医療従事者として冷静に対応できるよう、BLSについて学んでおく必要があります。
BLSを院内研修として導入している医療施設もある
BLSは、特に急性期病院や総合医療に関わる病院で、新人研修に組み込まれている場合があります。
医師や看護師、検査技師などの医療従事者のほか、事務などの一般職を含む全職員をBLS講習の対象者とする病院も珍しくありません。
BLSは、院内・院外を問わず、どのような場面でも患者さんを助けるうえで重要な技術であり、医療従事者と非医療従事者のどちらにとっても必要な研修といえます。
BLS講習の流れと学習内容
BLS講習は一般的に、院内・院外の多目的室や会議室などを利用しながら、1日(6時間程度)でBLSの技術・知識を学びます。
下表は、日本ACLS協会のBLSプロバイダーコースを例に講習の流れをまとめたものです。
| 所要時間 | 内容 | |
| 受付 | 30分 | |
| コースの紹介 | 10分 | レッスン1 ● 注意事項の説明 ● コース内容・スケジュールの説明 |
| 成人のBLS | 100分 | レッスン2~4 ● 現場の安全確認と評価 ● 成人に対する胸骨圧迫 ● ポケットマスク ● AED ● バッグマスク ● 成人に対するBLS(1人法・2人法) |
| 特別な留意事項 | 15分 | レッスン5 ● 口対口人工呼吸 ● 補助呼吸 ● 高度な気道確保器具を用いた人工呼吸 ● オピオイド(麻薬性鎮痛薬)による緊急事態 ● 妊婦の心肺停止 |
| 高い能力を持つチーム | 30分 | レッスン6 ● チームダイナミクス ● 高い能力を持つチームのアクティビティ |
| 小児のBLS | 15分 | レッスン7 ● 小児に対するBLS ● 小児に対するCPR(2人法) |
| 乳児のBLS | 30分 | レッスン8 ● 乳児に対するBLS ● 乳児に対する胸骨圧迫 ● 乳児用バッグマスク ● 乳児に対するCPR(2人法) ● 乳児~8歳未満の小児に対するAED |
| 窒息の解除 | 15分 | レッスン9 ● 成人および小児の窒息 ● 乳児の窒息 |
| まとめ | 5分 | まとめ |
| スキルテスト | 40分 | 成人に対するCPR・AEDのスキルテスト 乳児に対するCPRのスキルテスト |
| 試験 | 25分 | レッスン内容をふまえた試験 |
| 閉会 | 10分 | 試験結果発表 修了式 |
BLSで学べること
BLSを学ぶことで、主に以下5つのスキルを身につけられます。
- 自分自身を守りながら行える蘇生方法
- 急変時の初動
- BVM(バッグバルブマスク)の適切な使用方法
- 質の高いCPR方法
- 安全なAEDの使用方法
急変時でも冷静に、かつ危険のないようにBLSを実践するには、基本の知識だけでなく実践的な救命技術の習得も必要です。
自分自身を守りながら行える蘇生方法
BLS講習は、傷病者を発見するところから学習が始まります。
実際の現場も院内のように安全な場所であれば対応しやすいですが、交通量が多い道路などの場合、周囲の安全を確保しなければなりません。
BLSでは、傷病者を守るだけでなく、自分自身の守り方についても学ぶことができます。
まずは患者さんの周辺を確認して、車の往来や感電事故の恐れがないかを把握しましょう。
また、吐血や感染兆候がある場合を想定し、手袋を着用してから患者さんに触れるなど、周辺環境だけでなくさまざまな側面から自分自身を守る重要性を学べます。
急変時の初動
BLSを習得することで、急変時でもパニックになることなく、冷静かつ迅速に対応できるようになります。
東京消防庁「救急活動の現況(令和2年)第2章」によると、心肺停止の状態から3分以内に心肺蘇生を開始した場合、1ヵ月後の生存率は16.2%です。
一方で、心肺蘇生の開始までに4~6分かかった場合だと1ヵ月後の生存率は10.6%、7~10分では5.4%、11分以上では1.9%まで低下します。
このデータからもわかるように、急変時には初動の速さが重要です。
看護師が患者さんの急変に遭遇したとき、第一印象(迅速評価)によって緊急度を判断し、応援要請を行ったうえでBLSを速やかに開始する必要があります。
院内であれば、コードブルーチーム(院内急変蘇生チーム)の到着までのあいだ、BLSで学んだことをもとに必要な処置を実践できるでしょう。
BVM(バッグバルブマスク)の適切な使用方法
BLSでは、BVM(バッグバルブマスク)の適切な使い方も学びます。
BVMは、手動の人工呼吸器です。アンビュー社の製品が用いられることが多いため、現場ではアンビューバッグ」と呼ばれることもあります。
院内や病棟ごとに設置された救急カートに搭載してあるのが一般的です。
日頃から救急カートの点検などを行っている看護師の方でも、急変に当たった経験がない場合や就業先によっては実際に使う機会は少ないかもしれません。
不慣れな場合、いざ急変が起きたときにBVSを用いた換気の仕方がわからなかったり、マスク部分と本体が外れてしまったりと、適切に使用できない場合があります。
BVMの誤った使い方は、医療過誤につながりかねないため、いつ急変が起きてもBVMを正しく使用できるようBLSを学んでおく必要があります。
質の高いCPR方法
BLSを学ぶことで、BVMの使用法とともに適切なCPR法(胸骨圧迫)も身につきます。
CPRのポイントは、大きく以下4つです。
- 胸骨圧迫の位置は、胸骨の下半分(胸の真ん中あたり)
- 圧迫位置に対して垂直に力を加える
- 胸骨圧迫の速さは、1分間に100~120回のテンポで
- 胸骨が5センチメートルほど沈むまで深く押す
- 胸骨をしっかりと戻してから再度押す
ただ体重をかければ良いわけではなく、これらのポイントをすべて反映させることで、質の高い胸骨圧迫を実現できます。
BLS講習では、練習用人形を使ってCPRの実技も行うため、胸骨圧迫のテクニックとともに、体力が必要なことや疲労した場合は他者と交代する重要性なども学べるでしょう。
安全なAEDの使用方法
AEDも、BVMや胸骨圧迫と同様にBLSにおいて重要な役割を担っており、急変時にAEDを速やかに使用できれば、生存率を大きく向上させられる可能性があります。
AEDは、けいれん(細動)を起こした心臓に電気ショックを与えて正常な状態に戻す医療機器ですが、使用時に音声ガイダンスや自動で心電図の解析を行うなどの機能があるため医療従事者ではない一般の方でも使用可能です。
ただし、強い電圧を発生させる以上、扱い方には注意が必要になります。
適切な使用方法を知らなかった場合、感電のリスクがあるだけでなく、機器が心電図波形を読み取れず電気ショックの要否を正しく判断できないといった事態も考えられるでしょう。
BLSを学ぶことで、周囲にいる方への感電を避けるための安全確認や正しい装着方法などを習得できます。
BLS講習を受講するメリット

BLS講習を受講するメリットは、大きく以下の3つです。
- 急変時に何をすれば良いのかがわかる
- 自信を持って看護業務にあたることができる
- めざす方向性を見つけられる可能性がある
いつ急変に遭遇するかわからない仕事である以上、看護師にとってBLSの知識は必須です。
BLS講習を通じて急変時への行動ができるようになった結果、自信がつき、自分の実現したい看護師像が明確になる可能性があります。
急変時に何をすれば良いのかがわかる
BLS講習を受講すると、急変時に自分がどのような動きをすれば患者さんにとって最善なのか、迅速に判断できるようになるでしょう。
急変の第一発見者となったときには、コードブルー(院内緊急コール)要請や胸骨圧迫、応援を呼ばれた側であれば救急カート・AEDの持参など、役割を意識しながら動けます。
自分が働いている職場でBLS講習を受講できる場合、実際の現場や雰囲気に近く、急変が起きたときのイメージがしやすい点もメリットです。
自信を持って看護業務にあたることができる
BLS講習を受けることで、急変時にも必要以上に焦ることなく、受講時に学んだ知識や技術を活かして迅速にBLSを実施できます。
可能であれば複数回受講して、日頃から自分のなかでもイメージトレーニングを行うようにしてみてください。
BLSのスキルを着実に自分のものにしていけば、実際の臨床の場でも落ち着いて対応しやすくなります。
また、急変時の対応ができるという事実は、日々の看護業務に取り組むうえでの自信になるでしょう。
循環動態が不安定な患者さんのケアや観察でも、過度な不安を抱くことなく、良い緊張感を持って業務にあたれます。
めざす方向性を見つけられる可能性がある
BLS講習を受講して知識や技術が身につくと、「急変時に頼られる看護師になりたい」「小児・乳児に対するBLSスキルを高めたい」といった気持ちが生まれる場合があります。
その結果、明確な看護観や理想の看護師像がこれまでなかった方も、スキルアップ・キャリアアップをめざすきっかけになるでしょう。
BLSを実践するために必須の資格はないものの、専門性を磨くために役立つ資格には、BLSプロバイダーコースやPEARSプロバイダーコースなどがあります。
はじめは必要なスキルを学ぶ目的でBLS講習を受講しても、その後興味がわきインストラクターをめざす看護師もいるなど、自分では見つけられなかった側面を見つけることも可能です。
看護師としてキャリアアップをめざしたい方は、認定看護師や専門看護師の資格取得をめざすのも一つの選択肢です。
BLSに自信がないときほど受講するメリットがある
BLS講習は、新人看護師や比較的経験の浅いスタッフだけでなく、ベテラン看護師、専攻医など医療分野の経験が多くあるスタッフも受講対象になります。
経験の長さや専門性に関係なく、「患者さんの命をつなぐためにBLSを学びたい」という姿勢があれば、多くの知識や技術を吸収できるため、どのような経験年数やキャリアでも不安がなくなるまで、自分が納得するまでいつでも受講することができます。
急変対応に自信が持てない方は、いつ、どのような場面でBLSを求められても適切に行動できるよう、BLS講習を受講して知識と技術を自分のものにしましょう。
BLS講習を受けて急変時に動ける看護師になろう
BLSとは、医療従事者にとって必要不可欠な一次救命処置の技術です。
特に看護師は患者さんと日常的に接するため、急変の第一発見者となる可能性もあります。
受け持っている患者さんの急変が起きたときでも冷静に対応できるよう、心肺蘇生・人工呼吸・AEDの使用方法など、BLSの基本をきちんと学んでおくことが大切です。
BLS講習では、急変時の初動対応やBVM・AEDの使い方、質の高いCPR法などを、実技を交えながら身につけられます。
受講によって適切な急変対応のスキルを身につければ、自信につながり、日々の看護業務にも良い影響を与えてくれるでしょう。
急変対応に自信がないときこそ学習のチャンスといえるため、急変時に動ける看護師をめざして、BLS講習でスキルアップしてみてください。
