
歯科助手として働こうと考えている方もいるでしょう。
歯科助手の仕事内容を知っていますか。
また、どのような器具や機械を使って、歯科医療を実践するのかご存じでしょうか。
歯科助手として働くには、歯科医療の現場でよく使う専門用語を理解しておく必要があります。
英語の略語や器具の種類など、覚えにくいものも多いです。
本記事では、歯科医療にまつわる頻出の専門用語を一覧としてまとめました。
ぜひ最後まで読み、専門用語の飛び交う現場でもスムーズに働けるようにしましょう。
目次
歯科助手は専門用語を覚える必要がある
歯科助手は、特別な資格の取得なしで就ける仕事です。
主な仕事は歯科医師の診療や歯科衛生士の処置をサポートすることですが、医療事務の業務を担当することもあります。
歯科診療においては業務に制限があり、歯科助手が治療に直接関わることはありません。
具体的には、診療をスムーズに進めるため、歯科助手は次のような業務を担当します。
- 治療で使用する器具の準備(器具をそろえておく、タイミングよく手渡すなど)
- 治療で使用した器具の洗浄・滅菌処理・片付け
- 受付業務(診察券や保険証の手続き、カルテの作成など)
- 会計業務(診療費の受け取り、診療費に関する質問への回答など)
- クラーク業務(問診票の記入、患者さんの案内など)
- レセプト業務(レセプトの作成・点検、診療費の計算など)
- 電話応対、予約管理
- 院内清掃
- 歯科材料の在庫管理・発注
歯科助手の仕事でも、治療器具や医療事務に使用する用語や治療内容を把握しておくことで、スムーズに仕事をこなせるでしょう。
歯科助手の専門用語一覧|一般診療関連
歯科助手の仕事内容から、専門用語を把握しておかなければ歯科医師と円滑なコミュニケーションが取れないことがわかるでしょう。
患者さんと関わる機会も多いので、歯科治療を理解していないと仕事がスムーズに進まないこともあります。
本章では、歯科助手の仕事に即して歯科治療、職場や業界の用語、多様な器具の名称などの専門用語をまとめました。
歯科治療に使う用語
歯科助手は、患者さんに直接治療することはありませんが、準備や診療補助のため、用語を理解しておく必要があります。
英語が混ざっていたりしてわかりにくいところもあるため、ぜひ参考にして覚えておきましょう。
印象 | 主にアルジネートと呼ばれるピンク色の印象材を使って歯型を取ること。入れ歯の場合、歯ぐきの型を取ります。 |
TBI | Tooth Brushing Instructionの略で、歯磨き指導のこと。患者さんの歯磨き方法をチェックし、歯の汚れを染め出したあと、模型を使った指導と実際にご自身の口で歯磨きをするという手順で行います。 |
スケーリング | 歯磨きのあとに残った歯垢や歯石を取り除くこと。歯石取りや歯石除去とも呼ばれ、SCと記載されます。虫歯や歯周病の予防のために重要です。 |
カリエス | 虫歯のこと。う蝕ともいわれます。 |
エキスト | 歯を抜くこと。 |
ぺリオ | 歯周病のこと。periodontai diseaseから派生した略語です。 |
P処 | 歯周病に対する処置のことで、ペリオ処置の略語。スケーリングのあとに行われ、患部の状態に応じて麻酔や消毒をします。 |
インプラント治療 | チタン製の人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯をかぶせて歯の抜けている部分に歯を作る治療法。 |
矯正歯科治療 | 歯がふぞろいで、上下のアゴの歯並びがきちんと噛み合わない状態を、しっかりと噛み合うようにして、きれいな歯並びにする歯科治療です。矯正装置を用い、歯やアゴの骨を時間をかけて動かします。 |
審美歯科治療 | 歯や口元の美しさに焦点を当て、機能性を考慮した総合的な歯科治療のこと。歯の白さを取り戻す、あるいは保つ、歯並びや形を整える、歯ぐきの色や見え方を調整し口元をより美しくする、といった治療が含まれます。 |
一般歯科 | 基本的に健康保険適用の診療のこと。虫歯治療や根管治療、歯周病治療などが多く行われます。 |
クラウン | 歯が虫歯で壊れたり神経治療で削ったりして、欠損した部分が大きく、詰め物で修復できないとき、修復するため歯を覆うかぶせ物のことです。 |
インレー・アンレー | 虫歯のある歯を削ったあと、空いた部分の歯を戻すために使う詰め物のこと。大きめのものをアンレーと呼びます。 |
ブリッジ | なくなってしまった歯の両隣の歯を支えとして、かぶせ物でつなげる治療法です。 |
デンチャー | 入れ歯のこと。 |
レジン | コンポジットレジン(CR)という歯科用プラスチックのこと。虫歯を削ったあとに詰める際に使用します。 |
金銀パラジウム合金 | 虫歯治療で使われる、一般的に銀歯といわれる金属のこと。金:12%、パラジウム:20%、銀:約50%、銅:約20%、その他数%のインジウムなどで構成されています。 |
PMTC | Professional Mechanical Tooth Cleaningの略語で、歯科医院で専門家が行う徹底した歯面清掃のこと。歯磨きで落とせない歯石やプラークなど歯面の清掃と研磨を行います。 |
前歯部 | 左右上下で全12本の前歯のこと。 |
臼歯(きゅうし) | 前歯部以外の奥歯のこと。 |
デンタルレントゲン | 歯専門で、隣り合った3~4本の歯を撮影対象とした小さいサイズのレントゲン。 |
パノラマレントゲン | 大きなサイズで上下の歯全体を撮影できるレントゲンのこと。歯並びや顎骨内部の病気の有無を確認します。 |
CTレントゲン | 3Dデータにより立体的に描き出しができるレントゲンのこと。医科のCTを歯科用に作り変えた装置です。 |
セファロ | 矯正治療に使う、顔の骨格を調べるために使う頭部X線規格写真です。 |
医療事務に関わる職場で使う用語
先述のように、歯科助手の仕事には医療事務の要素が含まれます。
したがって、医療事務で用いる用語を知っているとスムーズに仕事できるでしょう。
レセコン | レセプトコンピューターの略語で、患者さんに行った保険診療に関する診療報酬明細書(レセプト)を作成するためのコンピューターです。 |
Dr | :Doctor(ドクター)歯科医師のこと。 |
Dh | Dental Hygienist(デンタルハイジニスト)歯科衛生士のこと。 |
Da | Dental Assistant(デンタルアシスタント)歯科助手のこと。 |
Dt | Dental Technician(デンタルテクニシャン)歯科技工士のこと。 |
Kr | Kranke(クランケ)患者さんのこと。 |
歯科助手が使う器具に関する用語
歯科助手の仕事は、歯科医院で使用する器具の準備、洗浄、片付けなど器具に関わる業務が多いです。
本章では、器具に関する用語を基本、歯周、補綴のジャンル別にまとめました。
基本
エキスプローラー | 口腔内を詳細に調べるための器具。先端が細長く曲がっているのが特徴で、歯石や修復部の探査のために使われます。 |
エキスカベーター | 虫歯になっている部分や被せ物、詰め物を取り除くために使う、先が耳かきのようになった器具のこと。略してエキスカともいわれます。先がスプーンのようになっているものをスプーンエキスカベーターと呼ぶなど、いくつか種類があります。 |
ミラー | 治療や定期健診で使用する器具。デンタルミラーともいいます。口腔内で直接目で見えない部分を見たり、視野を確保するため頬や舌を押さえたり、ライトの光を反射させ明るく見えやすくしたりするために使用します。 |
バキューム | 口の中の唾液や血液を吸い、視野を確保するために使用します。 |
ストッピングキャリア | 虫歯治療で歯を削ったあとの部分に、歯科用仮封材(テンポラリー・ストッピング)を注入する際に使われる器具。歯科用仮封材は温めるとやわらかく、冷やすと硬くなり、温めるための器具をストッピングキャリアといいます。 |
歯周
スケーラー | 歯石除去に使用する先の細いとがった器材のこと。手用スケーラー、超音波スケーラー、エアスケーラーなどがあり、歯石がついている位置や量で使い分けます。 |
ペリオプローブ | 歯周ポケットの深さをはかるため、先端が細くメモリのついた器具です。 |
シャープナー | スケーラーを研ぐ機械のこと。 |
補綴
印象トレー(印象用トレー) | 印象をとる際、口の中に入れて歯に印象材を密着させるため、印象材を載せる器具です。 |
スパチュラ | 印象材を練ったり形作ったりするためのへらです。 |
咬合紙ホルダー | 咬合紙とは色のついた紙で、患者さんに咬んでもらい使います。噛んだときに紙にあたった部分にカーボンのインクが付くため、噛み合わせで接触している部分と接触していない部分を調べることが可能です。 上下に噛んだときと左右でギリギリさせたときの両方を評価し、咬合紙の厚みを使い分けて噛み合わせがズレている位置を判断します。咬合紙ホルダーは咬合紙を保持して患者さんの口に誘導する際に使用します。 |
歯科助手が知っておきたい用語|インプラント治療関連
インプラント治療は、多くの歯科医院で行われている治療ですが、専門性が高く、特殊な用語も多くあります。
歯科助手の仕事でもふれる機会が多いため、知っておくと安心して業務に取り組めるでしょう。
上部構造 | インプラントのうち、埋め込む人工の根ではなく上の歯の部分のこと。 |
アバットメント | 上部構造を直接接合する土台のこと。フィクスチャーに連結し、角度や高さを調整する用途もあります。 |
フィクスチャー | 顎の骨に埋め込むパーツのこと。インプラント体ともいわれ、人間の歯でいうと歯根にあたります。顎の骨と結合し上部構造を支える働きをします。形状は、ネジ式のスクリュータイプと円筒形のシリンダータイプが主流です。 |
骨造成術 | インプラントを安全に埋め込むため、骨の高さや厚みが必要です。骨量が不足していると診断された患者さんに、骨を増やす骨造成を行うことがあります。例えば、GBR(再生誘導法)やサイナスリフト、ソケットリフトなどの方法です。 |
上顎洞 | 頬の奥に存在する、骨の空洞です。上顎洞の骨が薄くインプラントが突出してしまうケースでは、埋入前に上顎洞底挙上術(サイナスリフト)を行うこともあります。 |
インプラント周囲炎 | インプラント治療後、メンテナンスが不十分な場合、細菌が歯肉とインプラントの間に侵入してきます。すると、インプラント周りが歯周病となり、これがインプラント周囲炎です。 インプラントが抜け落ちる原因になります。初期症状は、インプラント周囲の歯肉からの出血です。悪化すると、膿んできたり 腫れたりし、インプラントを支えていた骨がなくなってしまいます。 |
サージカルステント | インプラント治療の際、インプラントを埋め込む位置や方向をガイドするために使用するガイドプレートのこと。手術前に撮影したCTスキャンのデータをもとにあらかじめ型を取り、技工所でマウスピースのような装置を作ります。 |
資料取り | インプラント治療前の事前準備としてさまざまな検査をすること。CT撮影(全顎)、模型作成、口腔内写真(5枚法)、セファロなどを行います。 |
カスタムアバットメント | 個々の症例に合わせてオーダーメイドで作成した、理想的な形のアバットメントのことです。 |
テンポラリークラウン | 前歯を治療中、最終的な補綴物が入るまでに装着しておく仮歯のこと。TEK(テック)とも言います。 |
オーバーデンチャー | インプラントや残った歯を支持として入れ歯を支え、しっかりと固定する治療法です。 |
オールオン4 | 4〜6本のインプラントのみで複数の義歯を支えることで、即日完了をめざせる治療法です。1本ずつインプラントを埋め込むのではなく、最低限の本数のインプラントで複数本の義歯を支えます。 |
歯科助手が知っておきたい用語|審美素材
審美歯科の際には、以下のような素材が使われています。
ジルコニア | 白くて丈夫、耐久性があり、人体との親和性の高いセラミック素材です。 |
メタルボンドクラウン(メタルセラミック) | 金属の裏打ちの上にセラミックで形作った被せ物です。セラミックだけでは強度が不足しがちなため、内側の金属で強度を補います。 |
ジルコニアセラミック(ジルコニアボンド) | 歯の土台をジルコニアでかぶせ、さらに表面にセラミックの層を塗り重ねた被せ物です。天然の歯に近い透明度と透過度があり、強度と自然さをあわせもっています。 |
歯科助手は専門用語を覚えてスムーズに働こう
歯科助手の仕事に必要な専門用語を分野別にまとめて解説しました。
特別な資格が必要ない仕事ですが、専門性が高く、聞き慣れない用語が多い業界です。
ぜひ参考にして、専門用語を理解してください。
歯科助手の仕事もよりスムーズかつ的確に行えるでしょう。