「一人の患者さんとじっくり向き合う時間が取れる」
「ワークライフバランスを調整しやすい」
こういった理由から、訪問看護師のキャリアを検討する人もいるでしょう。
訪問看護ステーションの利用者数は、医療保険・介護保険ともに増加傾向です。
在宅医療推進も重要視されている背景から、訪問看護師はますます社会に求められる存在になるでしょう。
今回の記事では、訪問看護師に興味がある方に向けて、訪問看護師になるための資格やスキルを紹介します。
具体的に求められるスキルも紹介しているので、訪問看護師をめざす前に自身の看護師スキルを振り返ってみましょう。
目次
訪問看護師になるには?

訪問看護師は、医療処置や看護ケアを必要としている患者さんに対して、自宅で安心して暮らすためのサポートを行います。
患者さん一人ひとりと向き合って看護を提供でき、直接患者さんの反応を得られるため、大きなやりがいも感じられるでしょう。
訪問看護師になるための方法や、必要な資格についてみていきましょう。
訪問看護師になるために必要な資格
訪問看護師になるために必要な資格について紹介します。
正看護師・准看護師の資格
訪問看護師になるために必要な資格は、正看護師免許または准看護師免許のみです。
ただし、施設によっては准看護師免許では訪問看護師として働けない場合があるので、募集要項の確認が必要です。
看護師として働いている方や看護師資格を取得予定の方であれば、訪問看護師になるために、追加で特別な資格を取得する必要はありません。
訪問看護師になることを決めたら、すぐに挑戦できるでしょう。
また、看護師の専門スキルを示す資格として、専門看護師や認定看護師の資格があります。
緩和ケア認定看護師、在宅ケア認定看護師、在宅看護専門看護師などの資格を取得すれば、訪問看護師としてもキャリアアップできるでしょう。
地域によっては普通自動車運転免許が必要
働く地域によっては、勤務先から普通自動車免許を求められる場合もあります。
都市圏などの住宅が密集している地域であれば、徒歩や自転車を使って患者さんの自宅を訪問することが可能ですが、地方では患者さんの自宅が看護拠点から離れていることもあり、訪問の移動距離が長くなります。
徒歩や自転車での訪問は難しく、車やバイクでの訪問が一般的となるでしょう。
その場合、訪問看護師にも車の運転が求められ、「普通自動車免許」の取得が必要となります。
また、訪問先によっては、狭い道を通る必要があったり、駐車スペースが限られていたりすることもあるかもしれません。
車の運転が必要な地域の事業所に就職する場合は、車の運転には慣れておいたほうが良いでしょう。
訪問看護の事業所に転職する
訪問看護を実施している事業所に転職すれば、訪問看護師として活躍できます。
訪問看護事業を行っている事業所は、大きく分けて以下の2つがあります。
- 訪問看護ステーション
- 病院・診療所
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは、名前のとおり訪問看護サービスを提供するための事業所です。
訪問看護師になりたいと思ったときに、真っ先に転職先や就職先として思い浮かぶのは、この「訪問看護ステーション」ではないでしょうか。
2022年時点で、全国に約14,000もの訪問看護ステーションがあります。
訪問看護ステーションの数は、以下のグラフのように年々増加傾向であり、その分訪問看護師の需要も高まっているといえるでしょう。

病院・診療所
みなし指定(※)訪問看護事業所として、訪問看護サービスを提供している病院や診療所もあります。
※「みなし指定」とは:病院や診療所などの健康保険の保険医療機関に指定された事業者を、介護保険法による医療系サービスの事業者としても指定されたとみなすこと
病院や診療所は一般に、訪問看護サービス以外の医療サービスも実施しています。
訪問看護師として働きたい場合は、入職時に希望する部門に配属されるかどうかを確認しておくと良いでしょう。
訪問看護師になるために必要な病棟経験
訪問看護ステーションによっては、応募資格に「病棟経験3年以上」など、一定の病棟経験を求めているところもあります。
訪問看護師は、患者さんへの看護ケアをすべて一人で実施しなくてはいけません。
3年の病棟経験を有していれば、一人前の看護師としての経験を積んでいるとみなされ、訪問看護師の即戦力として活躍できると判断されるでしょう。
一方で、訪問看護師の需要増加を背景として、新卒や経験の浅い看護師でも入職を歓迎してくれる訪問看護ステーションもあります。
そのような訪問看護ステーションでは、入職時の研修や教育制度、プリセプター制度など、未経験でも安心して訪問看護師の経験を積める環境が整えられています。
看護師経験が少ない、または新卒の方の場合は、就職先の教育体制やフォロー体制を確認しておくと良いでしょう。
訪問看護師になるのに必要なスキル
訪問看護師だからといって、入職当初から特別な看護スキルを求められるわけではありません。
基礎的な看護技術やアセスメントスキル、コミュニケーションスキルなど、一人前の看護師としての基本的スキルが訪問看護師においても重要です。
基礎的な看護技術
訪問看護の現場では、患者さんの状態に応じた医療処置や日常生活ケアを、一人ですべて実施する必要があります。
訪問看護の現場で日常的に必要とされるケアを確実に処置できるように、基礎的な看護技術を身につけておくと安心でしょう。
具体的に求められがちな医療処置・日常生活ケアをみてみましょう。
医療処置
在宅の現場で実施頻度の高い医療処置の例としては、以下になります。
- 服薬管理・点滴などの実施
- 浣腸・摘便
- 褥瘡予防・処置
- 経管栄養法の実施・管理
- 緊急時の対応
- 膀胱留置カテーテルの管理・交換
- 創部の処置(褥瘡以外)
病棟で働いていれば自然と身につく、基本的な看護技術ばかりであることがわかるでしょう。

引用:第182回(R2.8.19) 社保審-介護給付費分科会 資料3「訪問看護」(21ページ)
一方で、訪問看護現場では、病棟とは異なり使用できる物品に限りがあったり、家族負担となる物品の削減も考慮したりして処置を行わなければいけません。
病棟と同じ内容の医療処置を実施する場合でも、患者さんの自宅の環境に合わせた工夫が必要になります。
訪問看護師として働き始めたら、先輩の看護師から処置の工夫などを聞いて技術を磨いていきましょう。
日常生活ケア
訪問看護師が行うことの多い日常生活ケア・看護内容は、以下のとおりです。
- 病状観察
- 排泄介助
- ご家族への介護指導・相談対応
- 清拭や洗髪、入浴介助などの清潔ケア

引用:第182回(R2.8.19) 社保審-介護給付費分科会 資料3「訪問看護」(20ページ)
アセスメント能力
訪問看護師には、バイタルサイン測定の結果や表情、会話の内容を総合的にとらえ、患者さんの状態を正確に評価できるアセスメント能力が必要です。
患者さんの体調が悪いとき、医師による診察の必要性を判断したり、アセスメントの内容から患者さんに必要な看護ケアを考えて実行したりしなければいけません。
現時点で看護師として働いている場合は、「ケアや処置が必要な理由」を常に意識し、訪問看護の現場でも活躍できるようにアセスメント能力を磨いておきましょう。
コミュニケーション能力
訪問看護師には、コミュニケーション能力も重要です。
病棟とは異なり、訪問看護師は常日頃から患者さんの様子を確認できるわけではありません。
訪問時に患者さんが過去の体調不良について訴えた場合、訪問看護師は患者さんやご家族からどのような症状だったのかを聞き出し、状況を適切に把握しなくてはいけません。
適切なアセスメントを行うためにも、相手の理解力に合わせて話し方を工夫し、必要な情報を収集できるコミュニケーション能力が求められます。
訪問看護師になるには看護師資格のほかに専門的な資格・スキルは不要
訪問看護師になるには、正看護師・准看護師資格以外に訪問看護師としての専門的な資格や知識・スキルは求められません。
病棟勤務を通して自然と身につくような、基本的な看護知識とスキルがあれば、訪問看護師として最低限の活躍は可能です。
また、訪問看護師としてのスキルは、勤務先の研修制度や訪問看護師の経験を積むことでも、徐々に上げていけるでしょう。
とはいえ、訪問看護師として活躍するためには、基礎的な医療処置を行える技術に加え、アセスメント能力やコミュニケーション能力を磨いておく必要があります。
訪問看護師になりたい場合は、これらの能力を磨くことを意識しつつ、ご自身が働きたいと思う訪問看護事業所を探しましょう。
