
「三次救急という言葉は聞いたことがあるけれども実際に何を指しているの?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
日本の医療機関はそれぞれ果たす役割が決められており、患者さんの状態や必要としている医療によって受診するべき病院の種類が変わります。
今回の記事では、三次救急について医療機関の定義や特徴について紹介していきます。
目次
三次救急とは?
日本における救急医療体制は、「一次救急」「二次救急]「三次救急」の3つに分類され、患者さんの緊急度・重症度によって、受診すべき医療機関が異なります。
- 一次救急:重症度・緊急度ともに低く、入院治療が不要な患者さんの夜間・休日外来診療に対応。
- 二次救急:主に入院治療が必要な患者さんが対象。救急車で搬送されるケースが多い。
- 三次救急:二次救急医療では対応できない、重症度・緊急度ともに高く、早急に高度な医療を必要とする患者さんが対象。救急車やドクターヘリで搬送されてくる患者さんがメイン。
二次救急と三次救急の違いについては、こちらの記事で詳細に解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

三次救急の定義
三次救急は、緊急性や専門性の高い疾患や、複数の診療科にわたる幅広い疾患を有した患者さんを対象に受け入れる医療のことです。
三次救急の機能を備えている病院では、緊急手術やICUでの管理など、高度な専門医療を診療科を問わず提供でき、他の医療機関では対応できない患者さんを24時間体制で受け入れています。
三次救急対象の疾患・症状
三次救急が対象となる疾患・症状としては、以下のようなものがあります。
- 心肺停止
- 多発外傷
- 急性心筋梗塞や急性大動脈解離
- 急性期脳卒中
- 汎発性腹膜炎
- 敗血症
- 急性呼吸不全
- 薬物中毒
いずれも放置しておくと生命に危険が及ぶ症例です。
三次救急の病院では、まず救命救急センターなどで救命処置などの初期診療を行ったのち、それぞれの診療科での専門的な治療へとつなげます。
三次救急の医療機関
三次救急は、重症患者や複数の疾患を有している患者のすべてを受け入れる、いわゆる最後の砦のような存在です。
三次救急医療を提供できる医療機関は増加傾向であり、現在全国に200以上あります。
おもに大学病院や都道府県立病院・国立病院などの救命救急センター・高度救命救急センターで、三次救急の医療体制が整えられています。
救命救急センター
救命救急センターは、三次救急を提供できる医療体制を整えている医療機関に設置されます。
救命救急センターの役割や指定要件を見てみましょう。
役割
救命救急kセンターは、24時間体制で重症度の高い患者さんを受け入れるとともに、一次救急、二次救急の施設で受け入れが難しい患者さんの受け入れ先としての役割も担っています。
また、医療の提供だけではなく、医学生や臨床研修医への教育なども行い、将来の医師を育成することで、永続的な医療提供体制の構築に貢献しているといえるでしょう。
指定要件
救命救急センターとして医療を提供するためには、それぞれの都道府県が定めている要件を満たし、指定を受けなければいけません。
指定要件として、救命救急センターの運営方針や医師や看護師の設置などの人員体制、施設や設備の基準などがあります。
例えば、埼玉県の救命救急センターの指定要件には、以下のように非常に多くの基準が定められています。
【埼玉県の救命救急センター指定要件(一部抜粋)】
運営方針:
・救命救急センターは、原則として、重症及び複数の診療科領域にわたるすべての
重篤な救急患者を24時間体制で受け入れるものとする。
・救命救急センターは、適切な救急医療を受け、生命の危険が回避された状態にあ
ると判断された患者については、積極的に併設病院の病床または転送元の医療施設
などに転床させ、常に必要な病床を確保するものとする。整備基準:
・救命救急センターは、救命救急センターの責任者が直接管理する相当数の専用病
床(概ね20床以上)の専用病床を有し、24時間体制で、重症及び複数の診療科領域にわたるすべての重篤な救急患者に対する高度な診療機能を有するものとする。
・救命救急センターには、24時間診療体制を確保するために、必要な職員を配置
するものとする。
救命救急センターは24時間体制で患者さんを受け入れており、また医療提供体制が高い水準で整えられていることがわかるでしょう。
高度救命救急センター
救命救急センターの一段上位の救急医療機関が、高度救命救急センターです。
高度救命救急センターは、特殊疾患の患者さんを受け入れる医療体制を確保する目的で設置されています。
救命救急センターの受け入れ対象となる患者さんのうち、特に広範囲熱傷や指肢切断、急性薬物中毒などの特殊疾患の患者さんを受け入れます。
高度救命救急センターは令和5年度12月時点で、全国47ヵ所です。
三次救急病院は最も高度な救命救急医療に対応する機関
日本の医療体制は「一次救急」「二次救急」「三次救急」の3つに分かれており、三次救急施設は、診療科に関わらず高度な医療を必要とする患者さんを24時間体制で受け入れます。
三次救急病院の救命救急センターに配属となった際には、高度な医療を提供できる知識やスキルが求められます。
就職・転職活動で勤務先の病院を選ぶ際に、病院の機能を確認しておくと良いでしょう。