
鍼灸師は、東洋医学に基づく知識とスキルで患者さんの健康にアプローチする専門家です。
そのなかでも美容鍼灸は、健康だけでなく美容への効果も期待できる施術であり、一般的な鍼灸師とは仕事内容や活躍の場に違いがあります。
一方で、一般鍼灸師と同様、美容鍼灸師にもはり師・きゅう師の国家資格は必須となるため、専門性を高めながら計画的に資格取得をめざしましょう。
本記事では、美容鍼灸師の仕事内容や一般的な鍼灸師との違い、なり方、資格取得にかかる費用などを詳しく解説します。
美容鍼灸に興味がある方や鍼灸師としてキャリアの選択肢を広げたい方は、参考にしてみてください。
目次
美容鍼灸師とは?
美容鍼灸師は、美容に特化した鍼灸治療を提供する専門家です。
東洋医学に基づく従来の鍼灸治療をベースに、健康と美容の両面にアプローチします。
美容鍼灸のうち鍼治療は、顔にあるツボを刺激して皮下組織に働きかけ、血流改善や肌のたるみ、乾燥などの改善をめざすことが主な目的です。
一方の灸治療は、身体を温めることで新陳代謝を高め、肌質改善や皮膚の保水力の向上などを促します。
美容鍼灸師は、これら2つの技術を組み合わせて、患者さんの身体の内側から美容と健康をサポートするのが特徴です。
美容鍼灸師と一般的な鍼灸師の違い
美容鍼灸師と一般的な鍼灸師の大きな違いは、前者の場合、美容に関わる全般的な知識や専門スキルが求められるという点です。
美容鍼灸師は多くの場合、顔周りの繊細な部分を重点的に施術します。
肌に傷をつけないよう細心の注意を払いながら、患者さんが抱える美容の悩みに応じた専門的な治療を施さなければなりません。
また、美容鍼灸を行っているサロンでは、アロマテラピーやエステなどの施術もあわせて提供しているケースがあります。
勤め先によっては、美容鍼灸だけでなくこれらの施術にまつわる知識も身につけておくことが望ましいでしょう。
このように患者さんの美容と健康をトータルでケアするため、美容鍼灸師にはより幅広い知識と専門性が求められます。
ただし、美容鍼灸師も一般的な鍼灸師と同様、国家資格が必須であることに変わりはありません。
美容鍼灸師の仕事内容
美容鍼灸師の主な仕事は、美容に特化した施術やアドバイスを行うことです。
具体的には、次のような業務を担当します。
- お客さまの肌トラブルや美容に関する悩みをヒアリング
- 悩みを改善できるツボを鍼や灸で刺激
- その他エステなどの必要な施術を提案
- 自宅での生活改善に役立つアドバイス
鍼灸治療の提供のみならず、患者さん一人ひとりに合わせてアプローチをカスタマイズする必要があります。
また、美容鍼灸の効果を最大限に引き出すには、患者さん自身の生活習慣も重要です。
よって美容鍼灸師は、患者さんのヒアリング内容に応じて食事や運動、スキンケアなどに関するアドバイスも行います。
美容鍼灸師の主な職場
美容鍼灸師はさまざまな働き方ができますが、主に次のような職場での活躍がめざせます。
働く場所 | 特徴 |
美容鍼灸サロン | ● 美容目的の鍼灸サロン ● 肌質の改善やたるみの解消など、美容目的の治療を専門に扱う ● 鍼灸をはじめエステやアロマテラピーを取り入れているサロンもある |
鍼灸治療院 | ● 美容に限らず、身体の不調全体の改善をめざす鍼灸専門の治療院 ● 美容コースなどを提供している治療院では、美容鍼灸の技術を活かせる ● あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師と連携して働くケースもある |
独立開業 | ● 美容鍼灸師となって独立開業をする ● 法律の範囲内で自由に施術メニューを考えられるほか、訪問鍼灸など活動の幅を広げることも可能 |
職場によって働き方には少なからず違いがあるため、自分が実現させたい美容鍼灸師の理想像やキャリアプランに適した職場を検討しましょう。
美容鍼灸師のキャリアを積むなかで、将来的に独立開業をめざす選択肢もあります。
美容鍼灸師になる方法
美容鍼灸師になりたい場合、通常の鍼灸師と同じく「はり師」と「きゅう師」の国家資格を取得しなければなりません。
これらの国家試験の受験資格を得るには、養成施設などで3年以上学び、鍼灸の知識とスキルを身につける必要があります。
はり師・きゅう師以外で必須となる国家資格は特にありませんが、エステやアロマテラピーなどの業務に関連した民間資格を取得していると、就職・転職時に役立つでしょう。
資格保有は、美容鍼灸師のキャリアの選択肢を広げられるだけでなく、より質の高いサービスを提供するための専門性の習得にもつながります。
また、美容業界の最新情報やトレンド、新たな技術を吸収できるよう、セミナーなどへ定期的に参加するのも有効な取り組みです。
美容鍼灸師の資格取得にかかる費用
美容鍼灸師に必要なはり師・きゅう師の国家資格を取得するには、まず専門学校や大学で学ばなければならず、卒業までには420万〜710万円程度の費用がかかります。
学校によって実際の費用は異なりますが、一般的には次のような内訳で構成されています。
- 入学金:30万~70万円程度
- 授業料:年間100万~150万円程度
上記費用に加えて、教材費や実習費なども発生するため、トータルでの費用はもう少し高くなる可能性があります。
また、美容関連の民間資格を追加で取得する場合、テキスト代や受験料なども考慮する必要があるでしょう。
美容鍼灸師をめざす方は、資格取得に向けて確保すべき費用と学習時間を十分に検討したうえで、計画的に準備を進めることが大切です。
美容鍼灸師の年収
厚生労働省が運営する職業情報サイト「job tag」によると、鍼灸師全体の平均年収は459.3万円(2023年調査)となっています。
この数字は、国税庁が「令和4年分 民間給与実態統計調査」で公表した日本の平均年収458万円とほぼ同等です。
よって、鍼灸師の年収は平均的な水準にあるといえます。
美容鍼灸師のみを対象とした公的なデータは存在しませんが、通常の鍼灸師と大きく年収が離れるとは考えにくく、おおむね同程度となると予想できるでしょう。
ただし、独立開業して、エステやアロマテラピーなどを組み合わせたサービスを提供する場合、平均以上の収入を得られる可能性もあります。
個人の技術力と実績、サービスの質、経営能力を発揮し、より高い年収を実現させることも不可能ではありません。
美容鍼灸師は身体の内側からキレイを作る仕事
美容鍼灸師は、東洋医学の知識と技術を駆使して、患者さんの身体の内側から美しさを引き出す専門家です。
鍼灸治療によって血流を改善し、肌トラブルなどにアプローチするほか、エステ、アロマテラピー、日常生活のアドバイスを組み合わせたトータルケアを提供します。
患者さんの悩みとニーズに合わせた施術を提供するうえで、鍼灸師としてのスキルはもちろん、美容に特化した専門性も欠かせません。
はり師・きゅう師の国家資格のみならず、美容に関する民間資格の取得やセミナーへの参加など、専門性を高める機会を積極的に作りましょう。
なお、国家資格を取得するには、大学や専門学校へ進学しなければならず、費用と学習期間がある程度かかることも念頭に置いておく必要があります。
美容分野で活躍できる鍼灸師をめざして、計画的に準備を進めてみてください。