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歯科医師法とはどのような法律?規定事項について簡単に解説

「歯科医師法」は、歯科医師が順守しなければいけない法律です。
専門用語や難しい表現の多い文章で構成されていることから、なかなか理解できなかったり、読んでも頭に入ってこない人もいるのではないでしょうか。

今回の記事では、章ごとに歯科医師法を引用しながらも、歯科医師法の記載内容がイメージしやすいように平易な言葉を用いて、概要を紹介していきます。
歯科医師をめざしている方は、ぜひ参考にしてください。

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歯科医師法の目的は?

歯科医師法の目的は?

歯科医師法の始まりは、明治39年に歯科医師の業務内容や身分の保証を目的として制定された旧歯科医師法です。
その後、昭和23年に現在の歯科医師法が施行されました。

現在の歯科医師法の構成内容は以下のとおりです。

第一章:総則
第二章:免許
第三章:試験
第四章:業務
第五章:歯科医師試験委員
第六章:罰則

歯科医師は歯科医師法を守る義務があり、違反した場合は罰せられてしまいます。

【歯科医師法:第一章】第一条 歯科医師の役割

歯科医師法第一章には、以下のように歯科医師の役割が定義されています。

第一条 歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

引用元:歯科医師法|e-Gov法令検索

歯科医師は、虫歯治療や親知らずの抜歯、義歯の装着、歯並びの矯正など、口腔内に関する治療を行います。
また、日常生活のなかで行える口腔内のケア方法を伝えたり、生活指導を行ったりといった保健指導によって、公衆衛生を守る役割も担っています。

【歯科医師法:第二章】免許の交付

歯科医師は国家資格であるため、歯科医師法で定められた方法に従って免許を取得しなければいけません。

歯科医師法第二章では、歯科医師の免許交付について定めています。

歯科医師法 第二・五・六条:歯科医師免許の交付方法

歯科医師の免許を取得するためには、年に1回実施される歯科医師国家試験に合格したうえで、厚生労働大臣に申請しなければなりません。

申請を受けた厚生労働大臣は、歯科医師免許に関する事項を厚生労働省にある歯科医籍に登録し、歯科医師免許証を交付します。

第二条 歯科医師になろうとする者は、歯科医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
第五条 厚生労働省に歯科医籍を備え、登録年月日、第七条第一項の規定による処分に関する事項その他の歯科医師免許に関する事項を登録する。
第六条 免許は、歯科医師国家試験に合格した者の申請により、歯科医籍に登録することによつて行う。
2 厚生労働大臣は、免許を与えたときは、歯科医師免許証を交付する。

引用元:歯科医師法|e-Gov法令検索

また、歯科医師免許を申請した人のうち、免許交付不可と厚生労働大臣が判断した人に対しては、免許を与えないことも可能です。
交付不可となった人は、希望すれば理由を知ることができます。

第六条の二 厚生労働大臣は、歯科医師免許を申請した者について、第四条第一号に掲げる者に該当すると認め、同条の規定により免許を与えないこととするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知し、その求めがあつたときは、厚生労働大臣の指定する職員にその意見を聴取させなければならない。

引用元:歯科医師法|e-Gov法令検索

歯科医師法 第四・七条:歯科医師免許の欠格事由

第四条には、歯科医師免許の欠格事由が以下のように規定されています。

第四条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一 心身の障害により歯科医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者

引用元:歯科医師法|e-Gov法令検索

第四条の一項に当てはまる事例として挙げられるのは、視覚・聴覚・言語・精神機能の障害により、歯科医師として適切な業務を行うことが難しいと判断される者などです。

また、殺人や暴行、業務上過失致死などの歯科医師として職業倫理に反するような行為を行った場合、第七条に則って以下のような処分を受ける可能性があります。

  1. 戒告:
    特定の行為に対して厳重注意を言い渡す処分。
  2. 3年以内の歯科医業の停止:
    最長で3年間、歯科医師として働くことを禁止する処分。
    停止期間を過ぎれば歯科医師として働くことが可能。
  3. 免許の取消し:
    歯科医師の免許を剥奪する処分。
    ただし、一定基準を満たせば、再免許を受けることができる。

【歯科医師法:第三章】第九条 歯科医師国家試験と臨床研修

歯科医師法第三章では、歯科医師国家試験と臨床研修について定めています。

歯科医師国家試験の受験資格があるのは、以下の条件のうちいずれかを満たす人です。

  1. 学校教育法に基づいた大学で歯学課程を履修し卒業したもの
  2. 歯科医師国家試験予備試験に合格し、そのあと1年以上実習を行ったもの
  3. 外国の歯科医学校卒業または外国で歯科医師免許を得て、②と同程度の学力を有していると認定されたもの

受験資格を得て、厚生労働大臣が実施する歯科医師国家試験に合格すると、歯科医師として必要な知識やスキルを持っていることを証明できます。

また、歯科医師国家試験合格後には、歯学・医学課程のある大学附属病院または厚生労働大臣が指定している病院や診療所において、1年以上臨床研修を受けなければいけません。

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【歯科医師法:第四章】業務内容

歯科医師法第四章では、歯科医師の業務内容について規定されています。
それぞれの章に分けて記載内容を見ていきましょう。

歯科医師法 第十七・十八条:業務独占・名称独占

歯科医師法第十七・十八条には、以下のように規定があります。

第十七条 歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない。
第十八条 歯科医師でなければ、歯科医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。

引用元:歯科医師法|e-Gov法令検索

少しわかりにくい記載ですが、これらは歯科医師が業務独占かつ名称独占資格であることを定めています。

業務独占:資格保持者だけがその業務を実施できること
名称独占:資格保持者だけがその名称を名乗れること

よって、歯科医師免許を持つ人でなければ、歯科医師を名乗ったり、歯科医師業務を行ったりすることはできません。

歯科医師でないのに歯科医業を行った場合は3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその両方が科せられ、歯科医師でないのに歯科医師と名乗った場合は50万円以下の罰金が課せられます。

歯科医師法 第二十条:診療せずに治療を行うことは禁止

第二十条 歯科医師は、自ら診察しないで治療をし、又は診断書若しくは処方を交付してはならない。

引用元:歯科医師法|e-Gov法令検索

患者さんの治療を行う際には、歯科医自身が診察を実施しなければいけません。

以下のような事例は、第二十条の違反に該当します。

  • 診察をせずに患者さんに処方せんを渡してしまった
  • 歯科医師が診察する前に、歯科衛生士に処置をさせた
  • 診療録に診察の記載がない

歯科医師法 第二十三条:診療録の保存義務は5年間

第二十三条 歯科医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する歯科医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その歯科医師において、五年間これを保存しなければならない。

引用元:歯科医師法|e-Gov法令検索

歯科医師は、患者さんを診察後、すぐに診療録(カルテ)を記載しなければいけません。
診療録に記載する事項は以下の4項目です。

  • 患者さんの住所、氏名、性別、年齢
  • 病名や症状
  • 治療方法
  • 診療日

カルテは、患者さんの経過を正確に記載することで適切な歯科診療の提供に役立つツールであると同時に、診療報酬請求の根拠となる重要な記録です。

そのため、患者さんの個人情報の取り扱いに留意しつつ、5年間の診療録保存が義務付けられています。

【歯科医師法:第五・六章】歯科医師試験委員と罰則

歯科医師法の第五章には、歯科医師国家試験および歯科医師国家試験予備試験に関する事務を行う歯科医師試験委員を、厚生労働省に置くことを規定しています。

また、第六章には歯科医師法に違反した際のさまざまな罰則が示されているため、歯科医師法の内容を理解して、順守するようにしましょう。
例えば、虚偽または不正の事実に基づいて歯科医師免許を受けた者は、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。

歯科医師が守るべき法律は歯科医師法だけではない

歯科医師が守るべき法律は、歯科医師法だけではありません。
刑法百三十四条一項には、歯科医師が守るべきルールとして、以下の内容が定められています。

第百三十四条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

引用元:刑法|e-Gov法令検索

刑法に記載の内容のうち、歯科医師は「医師」に含まれると解されています。
そのため、守秘義務に反して秘密を漏らした場合は、医師と同様に刑事罰が科せられるので注意しましょう。

歯科医師法の概要を理解しよう

歯科医師法は、歯科医師にとって基準となるルールを定めています。
歯科医師をめざす方はもちろん、現役の歯科医師として活躍中の方も、あらためて内容を確認しておくと良いでしょう。

また、法律を読んでもよくわからない場合は、施行規則なども一緒に確認すると、より細かいルールを知ることができます。

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