
介護職が人材不足である現状は多くのメディアで取り扱われていますが、介護福祉士の過不足について言及されるケースは少ないでしょう。
この記事では、介護職のなかでも介護福祉士の不足に焦点をあてて詳しく解説します。
人手不足の実態を公的なデータをもとに紹介しているので、参考にしてください。
目次
介護福祉士は不足している
介護福祉士に限らず、介護職全体で人材が不足しているのが実情です。
ここでは介護業界全体の人手不足にも触れつつ、介護福祉士の不足を解説します。
なお、介護福祉士の業務内容や資格取得方法は下記記事で解説しているので、参考にしてください。
介護職全体で人手不足が深刻
そもそも介護職は、業界全体で人手不足が深刻です。
厚生労働省が行った調査によると、令和3年の介護職における有効求人倍率は3.64倍です。
全職平均の1.03倍と比較すると、3倍以上も求人倍率が高く、介護業界の人材確保の難しさを物語っています。
また、平成27年度のデータでは、2025年に後期高齢者が2,000万人を突破し、約248万人の介護職人材が必要となるとの推定もあります。
当時の施策を継続した場合、2025年にはおよそ30万人の介護職人材が不足する計算となっており、介護人材の確保は急務といえるでしょう。
介護福祉士を取得しても従事しない人もいる
介護職自体が人材不足であるため、介護現場の中核を担う介護福祉士も当然不足しています。
下表は、厚生労働省がまとめた介護福祉士の数や従事者などの推移です。
年(平成) | 介護福祉士登録者数 | 介護福祉士の従事者数 | 介護福祉士の従事率 |
12 | 210,732 | 131,554 | 62.4% |
13 | 255,953 | 156,436 | 61.1% |
14 | 300,627 | 176,257 | 58.6% |
15 | 351,267 | 194,567 | 55.4% |
16 | 409,369 | 219,331 | 53.6% |
17 | 467,701 | 263,048 | 56.2% |
18 | 547,711 | 300,567 | 54.9% |
19 | 639,354 | 355,659 | 55.6% |
20 | 729,101 | 405,602 | 55.6% |
21 | 811,440 | 455,443 | 56.1% |
22 | 898,429 | 478,069 | 53.2% |
23 | 984,466 | 514,129 | 52.2% |
24 | 1,085,994 | 579,129 | 53.4% |
(参考:介護人材の確保について|厚生労働省)
上表のとおり、介護福祉士の登録者数は、平成12年以降増加傾向にあります。
実際に平成12年に210,732人だった介護福祉士登録者数は、平成24年の段階で1,085,994人と5倍程度にまで増加しています。
しかしその一方で、介護福祉士の資格を保持しつつも、実際に介護福祉士として従事しない人がどの年においても半数弱存在するのも事実です。
介護福祉士の登録者数や従事者数は増えているものの、従事割合は横ばいとなっています。
介護福祉士が不足する原因は?
介護福祉士が不足する原因としては、介護職に対するネガティブな印象が考えられます。
実際に厚生労働省主導で行われたアンケート調査では、介護職に対して体力的・精神的にきつい、給与水準が低めと、ネガティブイメージを多く持たれていることがわかっています。
「介護=辛くて給料が低い」とのイメージから介護職を避ける人が多い傾向にあり、それに付随する形で介護福祉士も不足しているといえるでしょう。
介護福祉士の不足が解消される可能性は?
介護職は現状人材不足といわれているものの、今後解消されていく可能性が十分に考えられます。
ここでは、介護福祉士の人材不足が今後解消される可能性を解説します。
介護福祉士の給与は増加傾向にある
介護福祉士は給料が低いとのイメージを持たれていますが、年々増加傾向にあります。
年(令和) | 平均月収 |
令和2年 | 322,680円 |
令和3年 | 328,720円 |
令和4年 | 331,080円 |
上表のとおり令和2年から令和4までの介護福祉士の平均月収を見ると、微量ながら年々増加しています。
令和4年の平均給与をもとに介護福祉士の年収をボーナスを換算せずに計算すると、約397万円です。
令和4年の民間給与実態統計調査によると、日本の平均年収は458万円と、上表をもとに計算した介護福祉士の平均年収よりも高いことがわかります。
しかし年2回給与の1ヶ月分ずつボーナスが出る事業所の場合では約66万円年収がプラスされるため、介護福祉士の年収は日本の平均年収より若干高くなります。
正社員の55%が残業なし
介護職は体力的・精神的にきついといったイメージを持たれがちですが、公益財団法人介護労働安定センターの調査によると、正社員の55%は残業がないのが実態です。
また同調査では1週間の残業が5時間未満の職員の割合が24.7%という結果になっているので、全体の約8割の職員が月の残業時間20時間未満だとわかります。
介護職だけが異常に残業が多いわけではなく、「激務」とのイメージだけが先行してしまっている実態がわかるでしょう。
介護福祉士は不足しているため需要が高い仕事
介護福祉士は多くの事業所で不足しており、需要が高い仕事です。
今後はより介護職の人材が必要となるので、より多くの介護施設で求められるようになるでしょう。
また近年は介護職の人材不足の問題に対して、国が対策に乗り出しているのも事実です。
今後は処遇改善などもさらに推進されていくと予想でき、介護福祉士をはじめ介護職全体がより経済的に安定していくと予想できます。
介護福祉士は責任が重い分、やりがいもある仕事であるため、興味がある人は資格取得にチャレンジしてみましょう。