
臨床心理士は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格です。
臨床心理学を学問的基盤とした、クライエントが抱える心の問題を改善する心理職専門家であり、精神的健康の回復や保持増進をサポートします。
臨床心理士の仕事に興味はあるけれど、心の問題を取り扱うためにストレスや負担、また報酬などが気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、臨床心理士の仕事の大変さや厳しさなど、現実的な側面から解説します。
とはいえ、やりがいも大きい職種です。
どちらも実際の声とともに紹介しますので、仕事選びの参考にしてください。
目次
臨床心理士の仕事はきつい?大変なこととは
臨床心理士の大変さや厳しさは、精神面・給与面・職場環境面において、いくつかあるようです。
それぞれ一つずつ解説します。
精神的なストレスが多い
臨床心理士が関わるクライエントの境遇や症状はさまざまです。
- 自傷や自殺企図の既往がある
- 自らの感情をコントロールできない
- 他者へ攻撃的な言動をとってしまう
- 幻覚や幻聴に悩まされている
上述したのはごく一例ですが、このような問題によりクライエントは精神状態が不安定な場合が多くあります。
臨床心理士は、悩みや問題を抱えて心のバランスを崩してしまったクライエントに、真正面から向き合い続けなければなりません。
クライエントから悲しみや怒りといったマイナス感情をぶつけられたり、クライエントの問題に自らが感情移入してしまったり、問題の未解決により無力感を抱いたりと、臨床心理士側にも精神的ストレスがかかる場面は多いです。
一人職場が多く孤独を感じることがある
臨床心理士の活動の場は、医療・保健・教育・産業など多岐に渡ります。
しかし、一つの職場における採用人数は少なく、多くの場合、臨床心理士として一人で勤務するケースが多くあります。
同じ職場に同業種がおらず一人で働いていると、わからない仕事に直面したときに相談できず、自分だけで問題を解決しなければなりません。
また、前項で解説したような精神的ストレスを同僚と共有できず、孤独やプレッシャーを感じる瞬間も増えるでしょう。
仕事がつらいのに年収が低い
臨床心理士の平均年収は300万円台が最も多く、分布としては200万円から400万円が半数以上を占めています。
他の医療関係者と比べると、資格が必要な専門職としては年収が低い傾向にあるようです。
次項で解説するように臨床心理士は非常勤で雇われる場合が多くあります。
それにともない、給与形態が月給ではなく時給であること、勤務時間が限られていること、賞与がないことなどが、臨床心理士の年収を低く抑えている原因を生み出しています。
仕事のつらさを乗り越えるためにも、給与は大切なモチベーションです。
金銭的に将来への不安が募るかもしれません。
職が安定しない可能性がある
日本臨床心理士会が実施した調査では、臨床心理士の資格をもつ人のうち約半数は非常勤として働いていることがわかっています。
非常勤の場合、ボーナスがなく、常勤より年収が低い傾向にあるため、2か所以上の職場を掛け持ちして働くケースも少なくないようです。
非常勤は契約期間が決まっているため、契約が終了した場合の収入や、次の就職先の見通しがつきにくく、職が安定しない可能性もあります。
勤務時間外も専門知識の勉強が必要
臨床心理士は、資格を取得できたら勉強が終わるのではなく、生涯学習が求められる職種です。
資格の発効日から満5年経過ごとに更新が必要で、一定数の研修参加が要件となっています。
また、クライエントの問題や時代背景により、必要とされるスキルやアプローチ方法は多様で、どんどんアップデートされます。
勤務時間外に専門書を読んだり、休日を利用して学会や研修に参加したりと、クライエントへのより効果的な支援のために勉強し続ける必要があるのです。
臨床心理士自身が心身の調子を崩してしまわないように、仕事とプライベートの両立にうまく折り合いをつけなければなりません。
臨床心理士として働いている方の本音
実際に臨床心理士として働いている方の本音がわかる口コミを、一部抜粋してご紹介します。
- 決まった職場や仕事内容になりがちで、せっかく取得した資格を活用しきれない
- 契約や給料の不安定さが気になる
- 自身のメンタルをしっかりと保てないと厳しいと感じる
口コミからも、給与面や職の不安定さ、精神的な辛さを大変だと感じている方が多いとわかります。
しかし、以下のように臨床心理士の仕事に魅力ややりがいを感じている方も多くいるようです。
- 心理学のスキルは多くの分野で応用できるため、好きな人にとっては興味が尽きない
- さまざまな背景を持つ人たちに出会える
- 給料は不安定といわれるが、仕事の需要はあるのでずっと働ける
臨床心理士は楽ではないがメリット・魅力もある
高い専門性を持ち、クライエントの心と真摯に向き合う臨床心理士の仕事は、辛いことばかりではありません。
次に、臨床心理士の仕事のやりがいや魅力を解説します。
クライエントの変化を間近で見ることができる
臨床心理士は、クライエント自身が問題を解決する力や心の持ち方を身につけられるよう、支援する仕事です。
臨床心理士が問題自体を直接解決することはできませんが、心に傷を抱えたクライエントが少しずつ変化し、困難を乗り越えていく姿を間近で見れるのは喜びであるといえます。
クライエントの前向きな変化は、大きなやりがいであるとともに、臨床心理士側がクライエントから力をもらうことにもなるでしょう。
自分の支援が役に立った・クライエントの力になれたと感じられる変化や過程は、日々の仕事のモチベーションにもつながります。
- 心理学によって人がどう変化するのか知りたい
- 誰かの力になれるような仕事をしたい
といった思いがある方は、このやりがいを感じやすく、臨床心理士に向いているでしょう。
活躍できる場所が多い
年代や地域、職種を問わず、心のケアを求める人は多くいます。
臨床心理士が活動する場は、医療・保健・教育・産業などさまざまあり、具体的には以下のような職場が挙げられます。
- 医療・保険:病院、診療所、精神保健福祉センター、保健所、老人保健施設
- 教育:公立教育相談機関、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、予備校
- 福祉:児童相談所、身体・知的障害施設、女性相談センター、DV相談センター
- 司法・法務・警察:裁判所、少年院、警察関係機関
- 産業・労働:企業内健康管理センター、公共職業安定所
参考:一般社団法人 日本臨床心理士会
ストレス社会といわれる現代では、人々の心やメンタル面を重視し、大切にする動きは活発になっています。
新しく臨床心理士を雇用する企業や分野も増えており、今後も活躍の場は広まるでしょう。
仕事の進め方に自由が利きやすい
前章では臨床心理士が一人職場である点のデメリットを解説しましたが、一人だと仕事の進め方に融通が利きやすく、メリットもあります。
勤めている職場や業種によっては、仕事の進め方やタイムスケジュールを自分で組み立てられます。
仕事内容や業務量をしっかりとマネジメントする必要はありますが、他の職種に比べると就業時間内の自由度が高い点は、魅力の一つでしょう。
仕事のストレスの9割が人間関係だとも言われます。
自分のペースを守りながら仕事をしたい人にとっては、一人職場である臨床心理士が向いているかもしれません。
臨床心理士はきついと感じることもあるが、やりがいも多い仕事
昨今の複雑化する社会のなかで、需要が高まる心理職。
人間の心の問題を取り扱うために、大変さや厳しさなどきついと感じる面はあります。
一方で、クライエントの力になれること、ともに困難を乗り越えて感謝されることで、大いにやりがいを感じられる仕事でもあるでしょう。
心理学を学んで誰かの力になりたいと臨床心理士を目指している人は、ぜひ記事内容を参考にしてください。