令和4年2月から実施される、保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業。
保育士や幼稚園教諭などの収入引き上げをめざして実施される特別措置です。
保育士として働いている方のなかにも、どれくらいの期間実施されて、いくら給料が増えるのかなど、事業の概要を把握していない方がいるのではないでしょうか。
この記事では、保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業の概要や対象職員、実施期間、注意点などを解説します。
保育・幼児教育の現場に勤務している方は、参考にしてください。
目次
保育士の給料が上がる!2022年最新情報
日本は少子高齢化によって、労働力が減少しています。
労働力を確保するために女性の社会進出が望まれるなか、同時に保育士の需要も高まっています。
2019年からは新型コロナウイルスへの対応が業務にのしかかり、保育士の負担が大きくなっているという背景もあり、2021年11月19日に、保育士らの給料引き上げをめざす保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業の実施が閣議決定されました。
事業の目的は、保育・幼児教育の現場における待遇改善です。
具体的には、保育士の給料の賃上げのための補助金が支給されます。
保育士の処遇改善手当について詳しくはこちらで説明しています。
賃金改善の内容
賃金改善の具体的な目安は、平均月額収入の3%程度である9,000円の引き上げです。
補助事業では、増加分の賃金に加え、賃金増加による社会保険料の事業者負担分も支給されます。
しかし、職員の負担分の社会保険料には支給がないため、職員の賃金から支払うという点はこれまでどおりです。
また、令和3年の人事院勧告による国家公務員給与の改定内容によって、令和4年4月から公定価格が減額されます。
これにともない、補助事業では減額相当分も補助されるとのことです。
賃上げの具体的な支給額は、園児数によって設定される保育士の最低人数をもとに計算されます。
<賃金改善部分> 単価×令和3年度年齢別平均利用児童数(見込)×事業実施月数
<国家公務員給与改定対応部分> 単価×令和3年度年齢別平均利用児童数(見込)×事業実施月数
引用元:保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業等に係るFAQ(ver.4・令和4年4月19日時点版)|内閣府
保育士の配置に関する基準は、例えば0歳児では3人に対して保育士1人、3歳児では20人に対して保育士1人と決められています。
対象となる施設や事業所の設置者が行政に申請することで、施設ごとに決められた額が支給されます。
賃上げ費用補助を受けることができる対象施設と要件
賃上げ費用補助を受けることができる対象施設は、次のとおりです。
- 保育所
- 幼稚園
- 認定こども園
- 家庭的保育事業
- 小規模保育事業
- 居宅訪問型保育事業
- 事業所内保育事業
- 特例保育を行う施設
私立の施設だけでなく、公立の施設や事業所も対象です。
補助要件には、次の3つの項目があります。
- 補助額の全額を賃金改善に利用する
- 改善額の3分の2以上を基本給または毎月決まって支払われる手当によって支払う
- 賃金改善の計画書と実績報告書を市町村に提出する
補助額はすべて教育・保育の現場で働く職員の賃金改善に使用することと規程されています。
さらに、決められた様式で賃金改善に関する計画書と報告書を作成して市町村に提出することも、賃上げ費用補助の要件として明示されています。
保育士の賃上げはいつからいつまで?
保育士の給料の補助事業には実施期間が定められており、実施期間終了後の対応も発表されています。
具体的な期間や、実施終了後の対応を確認しましょう。
実施期間
補助事業の実施期間は、令和4年2月〜9月の8ヵ月間です。
令和4年2・3月分に関しては、3月に一時金での支給も可能です。
令和4年9月の給与を翌月の10月に支払う場合も、補助の対象となります。
賃上げの申請をした施設や事業所の設置者は、令和4年4月から基本給の値上げ、または毎月決まって支払われる手当による賃金の改善を継続して実施しなければなりません。
実施期間が終了したあとの扱い
補助事業の実施期間が終了したら、賃金が下がってしまうと認識している方もいるでしょう。
補助事業が終了する令和4年10月以降も公定価格の見直しにより、平均月額収入の3%程度である9,000円を引き上げるといった補助事業と同等の措置を継続することが発表されています。
そのため、令和4年10月以降は賃金が下がるということはないと考えられるでしょう。
保育士の給料引き上げはパート・アルバイトや公務員も対象
保育士らの給与改善に関わる補助事業は、保育所の正職員だけではなく、職種や勤務形態に関わらず広い範囲の職員が対象です。
一方、対象にならない職員も存在します。
補助事業の対象になる職員や、対象外の職員について解説します。
施設に勤務するほぼすべての職員が対象
補助事業は、保育士や幼稚園教諭だけでなく、調理師や栄養士、事務職員など、対象施設に勤務する全職員が対象です。
また、非常勤職員やパート・アルバイトの職員も該当します。
さらに、公立の施設や事業所も対象になるため、公務員も対象です。
派遣職員も補助事業の対象ですが、派遣元の事業所を通して待遇改善が実施される必要があります。
引き上げ対象外となる人も
補助事業の対象は教育・保育施設に勤務するほぼ全員であるとはいえ、補助事業の対象外となる場合もあります。
法人役員として勤務している施設長のほか、延長保育・預かり保育などの通常の業務以外のみに従事している職員は補助事業の対象外です。
法人役員とは、賃金の経営判断に関わる者を指しています。
例えば社会福祉法人や学校法人では、理事、監事、評議員が該当します。
また、職員が育児休業を取得している場合は、育児休業期間の引き上げはありません。
補助事業を申請している施設や事業所であれば、育休復帰後に補助の対象となります。
【注意点】保育士の給料が必ず9,000円値上げになる訳ではない
令和4年2月から賃上げされる補助事業によって保育士全員の給料が必ず9,000円アップするように思えますが、実際はそうではありません。
補助事業では、支給される補助額の3分の2は職員に対する賃上げまたは毎月決まって支払われる手当に充てられることが定められていますが、残り3分の1の補助金は各施設の裁量に任されています。
また、行政が職員一人ひとりに補助金を直接支給するのではなく、園児数によって決まる保育士の最低人数によって決まった額が、まとめて施設に支給されます。
誰がどれだけ受け取るかといった裁量は施設に託されるため、職員全員が同額になるとは限りません。
ただし、施設の設置者は特定の職員に理由なく偏った配分をしてはならないと行政は明示しています。
さらに、保育士の最低配置人数より多い保育士が勤務している施設の場合、一人当たりの受け取れる補助額は9,000円の3分の2である6,000円より少なくなる可能性もあります。
これらの理由により、保育士の給料が必ずしも9,000円値上げされる訳ではない点には注意が必要です。
保育士の賃上げについて正しく理解しよう
保育士らの給料を増額することを目的とした保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業。
保育士の給料に対する補助事業は、教育・保育施設に勤務する職員のほぼすべてが対象ですが、全員の給料が9,000円上がる訳ではないため、注意が必要です。
保育や教育の現場で働く職員は、補助事業に関する理解を深めていただければ幸いです。