
訪問介護に携わるヘルパーの仕事の一つに、買い物代行があります。
しかし、買い物代行とはいっても利用者さんが望むものをなんでも買えるわけではありません。
ヘルパーにできる買い物代行は、利用者さんが日常生活を送るうえでの必需品の買い物だけと決められています。
この記事では、ヘルパーが買い物代行をする際に買えるものと買えないものの線引きを明確にするとともに、利用者さんとのトラブルに発展しやすい注意事項などを解説していきます。
目次
ヘルパーの買い物代行とは?
ヘルパーの買い物代行は、掃除、洗濯、調理などと同様、訪問介護における家事援助の一つです。
ただし、買い物代行でできるのは「日常品等の買い物」に限定されます。
ヘルパーが介護保険内で買い物代行できるもの
ヘルパーは買い物代行ができますが、利用者さんに頼まれたものなら何を買っても良いわけではありません。
ここでは、ヘルパーが買い物代行で買えるものと買えないものの区別を紹介します。
日用品など生活必需品
買い物代行で買えるものは、利用者さんが生活するうえで最低限必要なものです。
下記に例を示します。
- 食料品(食べ物、飲み物など)
- 台所用品(洗剤、スポンジ、ラップなど)
- 日常的な消耗品(トイレットペーパー、石鹸、ティッシュ、電池、歯ブラシなど)
あくまでも利用者さんが生活するうえで必要なものであるため、同居のご家族や来客のための品物は範囲外となります。
薬の受け取り
「薬の受け取り」も訪問介護の生活援助の一つです。
ただし、ヘルパーが利用者さんの代理で薬を受け取るだけであって、あくまでもケアプランに従うものとなります。
また薬の受け取りはできますが、本人の代理で医師の診察を受けることはできません。
例えば、ヘルパーが利用者さんのかかりつけ病院に出向き、「いつもと同じ薬を処方してください」と言って薬を出してもらってはいけないということです。
ヘルパーの買い物代行で注意すること
ヘルパーの買い物代行は、民間の家事代行とは異なり、介護保険の枠組みで利用できるサービスです。
よってヘルパーの買い物代行には制限があります。
ここではそれを具体的に紹介していきます。
お酒やタバコなどの嗜好品は対象外
利用者さんの日常生活の援助を逸脱するものは、ヘルパーの買い物の対象外です。
お酒やタバコなどの嗜好品は日常生活のなかで必要とはいえないため、ヘルパーが買うことはできません。
また嗜好品に限らず、同居のご家族や来客用のお菓子なども本人を直接援助するものではないため、ヘルパーの買い物代行の対象外となります。
遠方の店まで買いに行くことはできない
ヘルパーは利用者さんの日常生活範囲のなかでのサポートが基本であるため、行動範囲をこえて遠くのスーパーまで買い物に行くことはできません。
ただし、近くのスーパーでは売っていないものが遠くのスーパーになら置いてある場合などは、自治体の判断によって可否が分かれるため確認するのが良いでしょう。
ヘルパーの買い物代行でトラブルになりやすいこと
ヘルパーが買い物代行をした場合、さまざまなことで利用者さんとトラブルになることがあります。
ここでは、どのようなトラブルが起こる可能性があるのかを紹介していきます。
買い物内容と支払いのトラブル
利用者同行での買い物であれば別ですが、ヘルパーが一人で買い物に行く場合は注意が必要です。
買ってきた品物が違った、おつりが足りなかったなどのトラブルに発展するおそれがあるからです。
対処法としては、利用者さんから財布ごと預からない、利用者さんと一緒にレシートとおつりを照らし合わせて確認する、買ってくる品物の具体的な商品名や値段の上限などを確認しておくことがあげられます。
そして可能であれば、日頃から利用者さんのご家族とも金銭に関する取り扱いなどの情報を共有しておくのが良いでしょう。
ポイントカードやキャッシュレス決済の取り扱い
買い物代行をする際に、利用者さんからキャッシュレス決済をお願いされることがあります。
キャッシュレス決済は、事業所によって対応が異なるため、勤め先の事業所に確認が必要です。
例えば、プリペイド式の電子マネーのみ使用を認め、口座情報に紐づいている電子マネーは使用を禁止しているところがあります。
なお、当然のことながら、ヘルパー自身のポイントカードにポイントを付与してはいけません。
ヘルパーの買い物代行で買えるものを知って、利用者さんやご家族にも理解を求めよう
ヘルパーの買い物代行において、介護保険内で買えるものやできることなどを紹介してきました。
利用者さんに直接頼まれるとなかなか断りにくいものですが、ヘルパーは法律やケアプランに基づいたサービスしか提供できないため、買い物代行でできること、できないことの区別を利用者さんやご家族にも理解してもらう必要があります。
またお金のトラブルはヘルパーの信用にも関わってくるため、買い物の前には預かったお金の額を、買い物のあとには品物やお釣りを、利用者さんと一緒にしっかり確認しましょう。