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介護職員処遇改善加算とは?制度の目的や条件をわかりやすく説明

介護職員の給与や労働環境の改善を促進するための制度が、介護職員処遇改善加算です。
請求手続きを行い、加算を受けて給与に反映すると、職員の意欲向上も期待できます。
さらに、施設運営の安定や職員定着率のアップにも寄与し、介護業界全体の活性化にもつながるでしょう。

加算を効果的に活用するためには、介護職員処遇改善加算の内容を十分理解することが大切です。
本記事では、介護職員処遇改善加算の対象者や取得に必要な条件、計算の手順などを詳しく解説します。

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介護職員処遇改善加算とは

介護職員処遇改善加算とは

介護職員処遇改善加算を有効活用するためには、制度の目的や混同しがちな特定処遇改善加算との違いも明確に理解しておく必要があるでしょう。
制度の概要や目的とその対象者、2つの加算の違いを以下で詳しく解説します。

介護職員処遇改善加算の概要・目的

介護職員処遇改善加算を簡単にいうと、介護職員の処遇を改善するための加算制度です。
厚生労働省によると、この制度の目的は介護職員の賃金改善や職場環境の整備とされています。

介護職員処遇改善加算には、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの3種類があり、介護保険サービスへの報酬に追加されます。
介護職員処遇改善交付金として2011年まで実施されていた制度が、2022年に介護報酬へ加算される形に移行しました。

介護職員処遇改善加算の対象者

介護職員処遇改善加算は、利用者さんと直接関わる職種のみを対象としており、介護サービスを行わない管理者や責任者は対象外です。
雇用形態に関わらず、パート・アルバイトや派遣社員なども加算の対象者に該当します。
なお、介護職以外の看護師やケアマネージャーなどは対象になりませんが、業務に支障がない程度に介護の仕事と兼務している場合は対象です。

また介護サービスには、対象となるサービスと非対象のサービスが設定されています。
加算の対象となる主な介護サービスは、次のとおりです。

<介護職員処遇改善加算の対象サービス>

居宅サービス ● 訪問介護
● 訪問入浴介護
● 通所介護
● 通所リハビリテーション
● 短期入所生活介護
● 短期入所療養介護
● 特定施設入居者生活介護
● 短期入所生活介護
● 短期入所療養介護 (老健)
地域密着型サービス ● 地域密着型特定施設入居者生活介護
● 認知症対応型通所介護
● 小規模多機能型居宅介護
● 認知症対応型共同生活介護
● 夜間対応型訪問介護
● 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
● 地域密着型通所介護
● 看護小規模多機能型居宅介護
施設サービス ● 介護老人福祉施設(特養)
● 介護老人保健施設
● 介護療養型医療施設
● 介護医療院
介護職員処遇改善加算の非対象サービス
●(介護予防)訪問看護
●(介護予防)訪問リハビリテーション
●(介護予防)福祉用具貸与
●特定(介護予防)福祉用具販売
●(介護予防)居宅療養管理指導
●居宅介護支援
●介護予防支援

出典:介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について

介護職員処遇改善加算と特定処遇改善加算の違い

介護職員処遇改善加算と同様に、介護職員の処遇改善を目的とする制度に、特定処遇改善加算があります。
介護職員処遇改善加算と特定処遇改善加算では、以下のように目的・対象者・算定要件・配分ルールなどが異なります。

  介護職員処遇改善加算 特定処遇改善加算
目的 介護職員の賃金改善や労働環境の整備 経験・技能のある介護職員の処遇改善
対象者

介護職員 勤続年数・技能を満たす介護職員
算定要件 ● キャリアパス要件の該当項目を満たしている
● 職場環境等要件の取り組みを1つ以上行っている
● 処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのいずれかを取得している
● 処遇改善加算の職場環境等要件の取り組みを複数行っている
● 処遇改善加算の取り組みを、ホームページなどを通じて公開している
配分ルール なし ● 経験・技能のある介護職員は月額8万円の改善、または「役職者を除く全産業平均水準を設定する
● 経験・技能のある介護職員の平均処遇改善額は、その他の介護職員より高くする

特定処遇改善加算は、経験や技能を持った介護職員の処遇改善を図るための制度です。
2019年の介護報酬改定によりスタートした加算で、介護職員処遇改善にプラスして支給されます。

介護職員処遇改善加算を請求する流れ

介護職員処遇改善加算の請求を行う流れは、次のとおりです。

  1. 介護職員処遇改善計画書の作成・提出
  2. 請求
  3. 支給
  4. 介護職員処遇改善実績報告書の作成・提出

介護職員処遇改善加算を受給するには、介護職員処遇改善計画書を作成し、都道府県や市区町村へ提出することが必要です。
次に国保連に加算の請求を行い、報告した計画の実施が確認されると、処遇改善加算が支給されます。
処遇改善加算を受け取ったあとは、支払いがあった月の翌々月の末日までに、介護職員処遇改善実績報告書を提出する流れになります。

介護職員処遇改善加算の種類・金額

介護職員処遇改善加算にはⅠ・Ⅱ・Ⅲの3種類があり、受給に必要な条件や支給月額が異なります。
介護職員処遇改善加算の区分による、受給要件や処遇改善手当の金額は以下のとおりです。

  加算Ⅰ
(月額約37,000円/人)
加算Ⅱ
(月額約27,000円/人)
加算Ⅲ
(月額15,000円相当/人)
キャリアパス
要件
①・②・③すべてを
満たす
①・②を満たす ①または②を満たす
職場環境等
要件
満たす

介護職員処遇改善加算の算定要件

介護職員処遇改善加算の算定要件

介護職員処遇改善加算の算定要件には、キャリアパス要件と職場環境等要件の2つが設定されています。
キャリアパス要件は、従業員のキャリアアップ支援や、給与・昇給体制の整備などです。
職場環境等要件では、賃金改善以外での働きがいのある職場づくりや、ワークライフバランスの実現に向けての取り組みが焦点となります。

キャリアパス要件

キャリアパス要件の区分は①・②・③の3種類があり、必要な条件が異なります。
要件ごとに定められているルールや取り組みの具体例を、以下で紹介します。

キャリアパス要件➀

キャリアパス要件➀は、介護職員の職位や仕事内容に応じた賃金体系の整備を目的としています。

キャリアパス要件➀の算定要件
1. 職位・職責・職務内容に応じた任用要件を定めていること
2. 1で定めた職位や職務内容に応じた賃金体系を定めていること
3. 1と2で定めた内容を書面等で職員全体に周知すること

参考:介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について

<例>
フロアリーダー・主任・上級ヘルパー・中級ヘルパーなど、2段階以上の職位を設け、役職に就くための条件や職務内容を定める。
さらに職位ごとの給与表を作成し、資格手当や役職手当の設定など職位に応じた賃金体系を構築する。

キャリアパス要件②

キャリアパス要件②の算定要件は、介護職員のスキルアップ支援や研修機会の提供などです。

キャリアパス要件②の算定要件
1. 介護職員と意見を交換しながら、資質向上のための目標や具体的な計画を策定し、研修の実施や資格取得の支援を行うこと
2. 1に関する情報の詳細を記載した書類を作成し、介護職員全員に周知していること

参考:介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について

<例>
介護職員と意見交換を行い、スキルアップ目標を設定する。
介護職員向けの研修プログラムの実施によるスキルアップ支援、または資格取得のための費用助成・シフトの調整などの取り組みを行う。

キャリアパス要件③

キャリアパス要件③では、経験や資格に応じた昇給制度や、人事評価制度の整備などが条件とされています。

キャリアパス要件③の算定要件
1. 経験・資格に応じて昇給する仕組み、または定期的に昇給を判定する仕組みを設けること
2. 1の内容について、明確な根拠規定を書面で作成し、介護職員全員に周知していること

参考:介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について

<例>
経験・資格に応じて昇給する仕組み

  • 勤続年数や経験年数に応じて、基本給を〇〇円昇給する
  • 介護福祉士・実務者研修などを取得すると、〇〇円昇給する

定期的に昇給を判定する仕組み

  • 人事評価制度を設け、結果に基づき昇給を決定する
  • 昇給を判定するために、定期的に実技試験を行う

職場環境等要件

職場環境等要件は、賃金改善以外の側面から、職場を働きやすい環境に整えているかに着目しています。
例を挙げると、介護職員のキャリアアップの支援や従業員の健康管理、家庭と仕事を両立しやすい環境整備などです。

職場環境等要件を満たすには、以下の6つの区分のうち1つ以上の取り組みを実施していることが条件です。

職場環境等要件の区分
1. 入職促進に向けた取り組み
2. 資質の向上やキャリアアップに向けた支援
3. 両立支援・多様な働き方の推進
4. 腰痛を含む心身の健康管理
5. 生産性向上のための業務改善の取り組み
6. やりがい・働きがいの醸成

参考:処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後):厚生労働省

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介護職員処遇改善加算の計算方法と加算率

介護職員改善加算を請求するためには、計算方法やサービスごとに異なる加算率も知っておきましょう。
介護職員処遇改善加算を計算する手順は、次のとおりです。

  1. 1ヵ月あたりの総単位数を計算する
  2. 総単位数に加算率を乗算する
  3. 総単位数を金額に換算する

以下で詳しく解説します。

1. 1ヵ月あたりの総単位数を計算する

最初に1ヵ月あたりの総単位数の計算が必要です。
総単位数は、前年の介護報酬の単位数を12で割って算出します。

前年1年間の介護報酬単位数÷12

<例>前年の介護報酬単位数:5,958
5,958÷12=496.5

2. 総単位数に加算率を乗算する

次に、1.で求めた総単位数にサービスごとの加算率をかけると、介護職員処遇改善加算の総単位数を求められます。

1ヵ月あたりの総単位数×サービス別の加算率

<例>加算率:10.2%
496.5×10.2=50.643

なお、上記の計算で求めた数値の小数点以下は四捨五入するため、総単位数は「51」となります。

介護職員処遇改善加算の計算に使用する、サービスごとの加算率は、次のとおりです。

サービス区分 加算Ⅰ 加算Ⅱ 加算Ⅲ
訪問介護 13.7% 10.0% 5.5%
夜間対応型訪問介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
(介護予防)認知症対応型共同生活介護 11.1% 8.1% 4.5%
(介護予防)認知症対応型通所介護 10.4% 7.6% 4.2%
(介護予防)小規模多機能型居宅介護 10.2% 7.4% 4.1%
看護小規模多機能型居宅介護
介護福祉施設サービス 8.3% 6.0% 3.3%
地域密着型介護老人福祉施設
(介護予防)短期入所生活介護
(介護予防)特定施設入居者生活介護 8.2% 6.0% 3.3%
地域密着型特定施設入居者生活介護
通所介護 5.9% 4.3% 2.3%
地域密着型通所介護
(介護予防)訪問入浴介護 5.8% 4.2% 2.3%
(介護予防)通所リハビリテーション 4.7% 3.4% 1.9%
介護保健施設サービス 3.9% 2.9% 1.6%
(介護予防)短期入所療養介護 (老健)
介護療養施設サービス 2.6% 1.9% 1.0%
(介護予防) 短期入所療養介護(病院等(老健以外))
介護医療院サービス
(介護予防)短期入所療養介護(医療院)

参考:介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(厚生労働省)

3. 総単位数を金額に換算する

金額への換算は、総単位数に地域区分をかけ合わせて行います。
地域区分とは、介護職員の地域差による人件費の差を、介護報酬に反映するために設けられた区分です。

処遇改善加算の総単位数×地域区分

(例)地域区分:10.84
51×10.84=552.84

なお、この計算で求めた数値は、1円未満の端数は切り捨てる必要があり、介護職員処遇改善加算の総額は「552」となります。

介護職員処遇改善加算に関するよくある質問・回答

介護処遇改善加算は介護職員でなくても対象になるのかや、介護処遇改善加算のⅠとⅡの相違点が気になる方もいるでしょう。
介護職員処遇改善加算のよくある質問2つにお答えします。

介護職員処遇改善加算は介護職員以外でも対象となる?

介護職員処遇改善加算は、原則として介護職員以外は対象外です。
介護職員処遇改善加算は、基本的には利用者と直接関わる食事や入浴などを担当している介護職員のみを対象としています。
雇用形態は問わず、派遣社員やパート・アルバイトなども支給の対象です。
ただし、業務に支障がない範囲で主たる業務と介護業務を兼務している場合は、対象者に含まれます。

介護職員処遇改善加算のⅠとⅡの違いは?

介護職員処遇改善加算のⅠとⅡでは、以下のようにキャリアパス要件を満たす条件や加算額が異なります。

  介護職員処遇改善加算Ⅰ 介護職員処遇改善加算Ⅱ
キャリアパス要件 ①・②・③をすべて満たす ①と②を両方満たす
算定額 37,000円相当 27,000円相当

介護職員処遇改善加算の主な違いの一つは、キャリアパス要件です。
介護職員処遇改善加算Ⅰでは、③の昇給する仕組みや評価制度の整備実施を含め、3つのキャリアパス要件をすべて満たす必要があります。
また加算額においては、介護職員処遇改善加算ⅠのほうがⅡよりも高額に設定されています。

介護職員処遇改善加算の要件を把握し適切な活用を

介護職員処遇改善加算は、介護職員の処遇改善とそれによる離職防止などを目的に設けられた制度です。
介護処遇改善加算の活用により、従業員のモチベーション向上や定着率増加、施設運営の安定化などが期待できます。

介護職員処遇改善加算の受給により、施設と介護職員の両方にメリットがあるでしょう。
介護職員処遇改善加算制度に関する理解を深め、職員の処遇改善や施設の課題解決に役立ててください。

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執筆者について

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